ウィリアム・モリス 『民衆の芸術』 (中橋一夫 訳/岩波文庫)

「しかしながら、あらゆる美を破壊した怪物――その名前は商業の利潤という――この怪物に依然として対抗している人々は昔と同じように今日でもいる。」
(ウィリアム・モリス 「芸術の目的」 より)


ウィリアム・モリス 
『民衆の芸術』 
中橋一夫 訳

岩波文庫 白 34-201-2


岩波書店 1953年4月5日第1刷発行
/1977年4月30日第3刷発行
194p 文庫判 並装 定価200円
正字・新かな



本書「解説」より:

「ウィリアム・モリスの芸術的社会主義といわれる方面をしめす小論文を集めてみた。その大部分は講演であって、後にパンフレットあるいは単行本の形で出版された。『民衆の芸術』は一八七九年バーミンガムの市公会堂で行われた講演で、同年パンフレットとして出版され、一八八二年に『芸術の希望と恐怖』の中に収められた。『芸術の目的』は一八八七年パンフレットとして出版、一八八八年『変化の徴』の中に収められた。『芸術と社会主義』は一八八四年パンフレットとして出版、一九〇二年に『建築、産業、財貨』の中に収められた。『如何にして私は社会主義者になったか』は一八九四年、雑誌『ジャスティス』誌上に発表、一八九六年パンフレットとして出版された。『芸術、財貨、富』は一八八三年マンチェスターで行った講演で、同年『マンチェスター・コータリー』誌上に発表された。『独占』は一八八七年頃、執筆され、一八九〇年にパンフレットとして出版された。『ゴシック建築論』は一八八九年「美術工芸展覧協会」のために行った講演で、一八九三年に出版された。」


民衆の芸術


帯文:

「真の芸術とは、人間の労働における幸福の表現であり、民衆により民衆のために作られるものであると説く「民衆の芸術」ほか六編。」


目次:

一 民衆の藝術
二 藝術の目的
三 藝術と社會主義
四 如何にして私は社會主義者になったか
五 藝術・財貨・富
六 獨占――如何にして勞働は奪われるか
七 ゴシック建築論

解説




本書所収「民衆の芸術」より:

「今日、文明世界の主なる義務は、すべての人々にとって労働を幸福なものにし、不幸な労働の量を極力少くするということにある。このことを諸君に納得させることができるならば(中略)、私の今夜の仕事は無駄ではなかったといえよう。
とにかくも、諸君がもっているかもしれない疑惑からのがれるために、今日の芸術味のない労働が幸福な労働だなどという誤った見解の背後にかくれてはならない。このような労働から生ずる偽せ芸術は喜びがない、ということを諸君にしめし、諸君に充分に理解してもらうには長いことかかるであろう。しかし、ここにそれが最も不幸な労働であるもう一つの証拠がある。それは諸君もすぐに理解できるであろう。しかも非常に嘆かわしい証拠なのであって、ここに立ってそれについて語っていても私は恥かしくて仕方のないことを諸君も信じていただきたい。しかし病気であることを認めなければ、それを癒すことはできないのだから、止むをえない。その不幸な証拠というのは、文明世界によってなされる労働は大部分は不誠実な労働だということである。
文明があるものをよく作る――意識的にも無意識的にも、現在の不健康な状態に必要であると判っているあるものをよく作ることは私も認める。簡単にいうと、これらのものは主として、あやまって商業とよばれている売買の競争を遂行するための機械である。そして、また、それは生命を破壊する機械でもある――すなわち、二つの種類の戦争のための材料である。そのうち、後者は疑もなく最も悪い。多分、ものそれ自体として悪いのではなく、この点において世界の良心はどうやら苛責を感じはじめているが故に最も悪いのである。しかし、一方では威厳のある日常生活を遂行するために必要なもの、思索する人々の唯一の真の生活である相互信頼と忍耐と互助との生活に必要なもの――こういうものを文明世界は悪くつくり、日々に悪くしつつある。」
「多くの人々が、無理に駆りたてられ、希望も快楽もないような仕事を、ずるけようとしないで、やれるものかどうかは疑わしい。いつも、このような状態では、そういう仕事を人々はずるけようとしてきたのだ。一方には、正しい心をもっていて、退屈で希望もないのに、あたえられた仕事をやりとげようとしている人々のいることは私も知っている。(中略)しかし、こういう人々を悲惨なヒロイズムにおしやり、大部分の人々をずるけさせ、なかば無意識の自己嫌悪と堕落の淵におとすようなことをする社会の状態には、なにか悪いところがあるに相違ない。確かに、盲目的で忙しい現在の文明こそ、この尨大な量の不愉快な労働にたいして重大な責任を負うべきである。このような労働は肉体のあらゆる筋肉や頭脳のあらゆる分子をなやまし、楽しみも、目的もなく為される労働であり、これに関係する人々はみな飢死と破滅の恐怖さえまぬがれるならば、できるだけ早く止めたいとおもっている労働である。」
「人々は堕落的な労働を制限し、結局これを廃止する方法を考察することが文明の今後の進歩のために必要である。」
「土地を耕し、網を投げ、羊を欄に入れたりする、こういう労働は荒い仕事であり、多くの困難をともなうが、(中略)よい仕事である。煉瓦工、石工といったような人々は、もし芸術が当然にあるべき本来の姿をもつものならば、これらの人々は芸術家であって、単に必要であるだけではなく、美しい、故に幸福な労働をしているのである。われわれが廃止する必要のあるのは、このような労働ではない。誰も必要としていない幾千という品物を作り、私が前に語った、誤って商業と称している、競争的な売買の要素としてしか用いられないような品物を作るような労働こそ廃止すべきなのだ。こういう労役が廃止されなければならぬことは、私の理性だけではなく、心情においても私は知っている。」






























































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ウィリアム・モリス 著/ウィリアム・S・ピータースン 編 『理想の書物』 川端康雄 訳

「野蛮的、と言ったが、自分はこの語を悪い意味で使ってはいない。概してそれは文明よりもはるかにましなものだと考えるので。」
(ウィリアム・モリス 「印刷本の初期の挿絵」 より)


ウィリアム・モリス 
『理想の書物』 
ウィリアム・S・ピータースン 編
川端康雄 訳


晶文社 
1992年11月25日 発行
272p+1p 索引xlix
A5判 丸背紙装上製本 カバー 
定価3,200円(本体3,107円)
ブックデザイン: 日下潤一



本書「訳者解説」より:

「本書『理想の書物』は、十九世紀イギリスの装飾デザイナー、物語作者、そして社会主義運動家であるウィリアム・モリス(一八三四―一八九六)による書物芸術を主題とした現存する論文と講演を網羅した書物 William Morris, The Ideal Book : Esssays and Lectures on the Arts of the Book, edited and introduced by William S. Peterson (University of California Press, 1982)の翻訳である。(中略)本訳書では、原書の本文のほかに、新たに付録Cとして『ペル・メル・ガゼット』紙から求められた「良書百選」のアンケートへのモリスの回答の訳、および巻末に訳者が作成した「ケルムスコット・プレス刊本リスト・解題」を加えた。」


本文二段組。本文中図版(モノクロ)34点。


モリス 理想の書物 01


帯文:

「ウィリアム・モリスの書物の冒険
その思想と実践の全貌!」



帯背:

「書物を美しくする
ものは何か?」



カバーそで文:

「文明の主要な産物のひとつに新たな潤いと美をもたらす術を、モリスは私たちに教えてくれたのである。――編者序論より
1891年、ウィリアム・モリスは、ロンドン西郊ハマスミスの地に、印刷所ケルムスコット・プレスを設立し、みずから美しいと信ずる本の製作に着手した。
すでに詩人として、装飾デザイナーとして、社会主義者として、ヴィクトリア朝イギリスへの果敢な挑戦者であり続けたモリスの、これが生涯最後の冒険であった。そこで、1898年のその閉鎖までに、53点の本が印刷・刊行された。そのなかには「世界で最も美しい書物の一つ」といわれる『チョーサー作品集』もふくまれる。それこそモリスの『理想の書物』だった。
その活動のさなか、モリスが書物芸術を主題として発表したエッセーおよび講演記録のすべてを収録、初めてその思想と実践の全貌を明らかにした貴重な書。」



目次:

編者序論 (ウィリアム・S・ピータースン)
本文と図版についての注 (ウィリアム・S・ピータースン)

中世彩飾写本についての若干の考察 (モリス未発表の断章)
中世彩飾写本覚書 (一八九四年発表のエッセイ)
印刷本の初期の挿絵 (一八九五年の講演)
ゴシック本の木版画 (一八九二年の講演)
十五世紀のウルムとアウグスブルクの木版画入り本の芸術的特性について (一八九五年発表のエッセイ)
印刷 (一八九三年発表のエッセイ)
理想の書物 (一八九三年の講演)
ケルムスコット・プレス設立趣意書 (一八九六年発表のエッセイ)

付録 A ケルムスコット・プレス小史 (シドニー・C・コッカレル著)
付録 B ウィリアム・モリスへの四つのインタヴュー
 印刷者としての詩人 (「ペル・メル・ガゼット」 一八九一年)
 「印刷親方モリス」――ケルムスコット・プレス訪問 (「デイリー・クロニクル」 一八九三年)
 ケルムスコット・プレスのW・モリス氏 (「イングリッシュ・イラストレイティッド・マガジン」 一八九五年)
 ケルムスコット・プレス――W・モリス氏へのインタヴュー、挿絵つき (「ブックセリング」 一八九五年)
付録C ウィリアム・モリスの愛読書 (「良書百選」アンケート/「ペル・メル・ガゼット」 一八八六年二月二日号)


謝辞 (ウィリアム・S・ピータースン)
図版目次

訳者解説 (川端康雄)
ケルムスコット・プレス刊本リスト・解題 (川端康雄 編)

索引



モリス 理想の書物 03



◆本書より◆


「ゴシック本の木版画」より:

「すべての有機的芸術、真に成長をとげるすべての芸術には、二つの性質が共通にある。叙事詩的性質と装飾的性質がそれで、物語を語ることと、空間を、つまり手でさわれる物を飾るという二つの機能である。芸術作品としてわれわれの注意を引くどんなものをも生み出すのに必要な労力と創意は、この二つの目的以外のために使われるなら、無駄になる。脈々として絶えぬ伝統の連なりの結果である中世芸術は、この二つの機能をしっかりとつかんでいた点で際立っており、実際、これらは他のいかなる時代にもましてその時代に深く浸透している。その特殊な芸術のすべてが装飾として明瞭かつ単純に美しいだけでなく、その装飾がまた力強い意図で生き生きとしており、その結果、どちらの点でも生命力が衰えることがなく、視覚的喜びが欠けることも決してない。」
「アイルランドの写本の見事なカリグラフィをもって始まる中世初期は、あらゆる時代にまして〈書くこと〉の時代だった。八世紀から十五世紀まで、ほとんどすべての書物のページが、たとえ装飾を加えていない場合でも、美しい。」
「本が絵で満たされ、細心の注意を払った直裁なデザインをもって、そして技法については、まことにすっきりした輪郭ときわめて繊細な色づかいをもって、書かれた物語が再び絵で語られたとき、私たちに言えるのは、完璧な中世の書物にまさる芸術作品は、完璧な中世建築だけだ、というぐらいである。これは、およそ一一六〇年から一三〇〇年までの書物群について、ほとんど留保なしで言えるはずだ。この時期をすぎると、純粋さと素朴さの点で、挿絵の性質上作品は得るものより失われるものの方が多くなり、十五世紀中葉をすぎるとついに、彩飾本は装飾面でその個性の多くを失ってしまう。そして、未だ美しいものではあっても、大抵の場合、そのなかの彩飾画(ミニアチュア)がすぐれているときにかろうじて凡庸さを脱している。」



「ケルムスコット・プレス設立趣意書」より:

「私が本の印刷を始めたのは、美しいといえる資格をはっきりもち、同時に読みやすくて目をくらませることもなく、また風変わりな字形で読者の頭を混乱させたりしないものを作りたいと望んでのことである。私は常々、中世のカリグラフィと、それに取って代わった初期の印刷を絶賛する者であった。十五世紀の印刷本については、その多くには装飾がふんだんにほどこされてはいるが、たとえそのような装飾を加えずとも、それらがタイポグラフィの力だけで常に美しいものになっていることに気づいていた。そこで、活字を印刷し配列したものとして見ることがひとつの喜びになるような本を生み出すことが私の企図の核となった。それで、私の冒険をこの観点から見ると、主として以下の事項を考慮せねばならぬことがわかった。すなわち、用紙と活字体、それに文字と単語と行の相対的な間隔、そして最後にページの上の組版の位置がそれである。」

「最後に、(中略)ページ上の版面の位置が問題になる。これは常に、内側の余白を最も狭くし、天をそれよりいくぶんか広くし、外側(前小口)をそれよりさらに広く、そして地を一番広くとるようにするべきである。中世の書物では、写本であれ印刷本であれ、この規則からの逸脱はまったく見られない。近代の印刷者たちは示し合わせたようにこれにそむいている。そのため、本の単位は一ページではなくて見開き二ページだという事実と明らかに矛盾してしまっている。わが国の最も重要な私設図書館に数えられるところで司書をしている友人の話だが、入念な調査をおこなってみて、おのおのの余白の差が二十パーセントずつになるようにするのが中世の規則だったという結論に達したという。」
































































ウォルター・クレイン 『書物と装飾 ― 挿絵の歴史』 (高橋誠 訳)

ウォルター・クレイン 
『書物と装飾
― 挿絵の歴史』 
高橋誠 訳


国文社 
1990年11月5日 初版第1刷発行
1991年4月15日 初版第2刷発行
418p(うち別丁口絵11p) 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価3,811円(本体3,700円)
装幀: 平野甲賀



本書「訳者解説」より:

「本訳書(中略)は〈アーツ・アンド・クラフツ〉の装飾デザイナー、挿絵画家ウォルター・クレイン(Walter Crane, 1845-1915)の主著 The Decorative Illustration of Books Old and New (London: G. Bell & Sons, 1896)を全訳したものである。」
「本書は、(中略)一八八九年に「芸術協会」の席で講演した「カンター・レクチャー」をもとにしたものだが、(中略)新しい章(第四、五章)を大幅に追加し、当時最新の動向にも目を配った構成からなっている。本書は一八九六年の初版以後、一九〇一年、一九〇五年に増補改訂版が刊行され、(中略)第四、五章にはさらに新しい文章が加えられた。翻訳の底本は原則的に初版に拠ったが、(中略)追加・訂正がある場合はそれに従った。なお改訂版には初版に見当たらない図版も付加されているため、それも本訳書に掲載した。」



図版(モノクロ)152点。各章末に訳注。
クレイン自身による挿絵図版も多数掲載されています。


クレイン 書物と装飾 01


目次:

口絵
 1 六世紀アイルランド 『ケルズの書』 (カラー)
 2, 3, 4 一四世紀イギリス 『アランデル詩篇書』 (モノクロ)
 5 一四世紀フランス 『フィリップ・ド・コミーヌからリチャード二世に宛てた書簡』 (モノクロ)
 6, 7 一五世紀フランス 『ベッドフォード時祷書』 (モノクロ)
 8 一五世紀イギリス 『薔薇物語』 (モノクロ)
 9 一五世紀イタリア 『聖歌楽譜書』の頭文字 (モノクロ)
 10, 11 一九世紀日本 『北斎漫画』 (モノクロ)

序文
第三版への覚え書き

第一章 原始時代に始まる挿絵と装飾衝動の展開
――第一期の装飾的挿絵である中世彩飾写本について

第二章 一五世紀における印刷技術発明以後
――第二の過渡期にある装飾的挿絵について

第三章 一六世紀以後における書物デザインの装飾感覚の凋落
――現代における復活について

第四章 最近の書物における装飾的挿絵の発展
――現代における印刷芸術の復活について

第五章 書物の装飾と挿絵のデザインに関する一般的原則
――書物の構成、活字配列、ページ・デザインについて

訳者解説――「花の詩人」W・クレイン
索引



クレイン 書物と装飾 02



◆本書より◆


「本書で扱う装飾と挿絵のテーマは広範囲に及び、おそらく他の芸術形態よりも人間の思想と歴史に深くかかわっている。だから、それをあらゆる側面から包括的に扱うのはきわめて困難だろう。したがって、芸術的側面を解明するのに必要である以上には、歴史的・尚古的観点から論ずるつもりはない。主として、書物デザイン、もっと厳密にいえば書物のページに応用されたデザインの問題を、その芸術的側面から取りあげたいと思う。書物のページに見られる挿絵デザインについては、さまざまな時代と国から選択した典型的な作品の図版を使って説明したいと考えている。
 筆者自身が書物デザイナー、イラストレーターであるため、自分の仕事のテーマは当然ながら、装飾と挿絵に絞られていた。人生の大部分、そのテーマと実践的に取りくんできたといっても差しつかえないだろう。したがって、筆者の達した結論は、個人的思想や経験に色どられ、影響を受けたとしても当然である。そうなると、本書の結論はそれらの結果に基づいているといってもよいだろう。」

「われわれ現代人は資材が厖大に増加したため、急速に安価な書物を大量生産できるようになったことを自慢し、印刷機械の威力に満足を感じている。(中略)いわゆる「暗黒時代」である中世の写本の数は、現在と比較してみればたしかに少ない。しかし、それらの中世写本は歴史の荒波にも耐え、その書を所蔵していたひとの心にたえず美と喜びを与えてきたという事実を忘れないほうがよいだろう。祈祷書は単にお祈りのための書ばかりではなく、挿絵本でもあった。それは、聖なる社(やしろ)、世界を映し出す小さな鏡、花苑の中の聖所のようなものでもあったのだ。」

「ところで、私が力強い輪郭、平塗りの色(フラット・カラー)、どっしりとした黒の量塊(マッス)を使うようになったのには、多くの要因があげられるが、中でもとくに日本の浮世絵版画の影響力が大きかったと思う。この浮世絵版画は、ある海軍大尉が日本からの珍しい土産品として私に贈ってくれたものだった。当時一八七〇年ごろから私は子供向けの絵本の挿絵を描いていたが、それはこの浮世絵版画から学んだ力強い輪郭、平塗りの色、黒の量塊の使い方をさまざまに応用した成果なのである。」

「本当に美しい書物の挿絵を描くには、的確な構想(プラン)、ページの版面の均衡、比例関係、嵩、それに、活字との関係といった装飾面の問題を考慮することが重要だと思う。」
「書物の挿絵は、気まぐれに素描を集めたもの以上でなければならないと思う。書物をデザインするには、書物の理念そのものである構成的・有機的要素は無視できない。したがって、書物の本質を成す不可欠の部分として、挿絵をデザインするとき、その全体との有機的関係を無視してしまうのでは、とても芸術的とは言えないだろう。
 しかし、筆者は装飾的挿絵が唯一の方法でしか生み出せないというつもりはない。もしそんなことにでもなれば、装飾的挿絵の方面で独創性や、個人的感情は圧殺されてしまうだろう。芸術には絶対的なものなどはない。断定はできないが、いかなるデザインにおいても、ある条件は認めなければならないと思う。しかも、不承不承認めるばかりではない。ゲームをしようとする前にその規則に従うように、進んでその条件を受けいれなければならないのだ。
 スポーツやゲームは規則と条件のおかげで、独特の個性や魅力が加わってくる。その規則と条件によって、最大の快楽と鋭い興奮が最終的に生まれるのだ。ちょうど、芸術や手工芸に課せられた条件や限界を守ると、製作するものは限りない喜びを体験し、それを見る者は美しい作品を鑑賞できるのと同じことなのだ。」

「すでに述べたように、「デザイン」には最終的な規範も絶対的基準もない。デザインというものは、ある要素をたえず組み換え、調整と修正をくり返し、もとの要素を変成することすらあるのだ。想像力の生み出す一種の化学作用が、形、量塊(マッス)、線、嵩を変容させ、たえず新しい組み合わせが展開していく。とにかく、、個々の芸術的問題が提起されるごとに、それを臨機応変に解決しなければならない。それぞれの問題が変貌していき、そのたびに新しい質問が発せられるので、特定のケースにあてはまるような絶対的な規則も原理も立てることができないことになる。もっとも、習慣から編み出された、ある一般的な指導原理が大きな価値を持つとはいえる。その原理を地図とコンパス代わりに使えば、デザイナーはある程度進路を取ることができるからである。」







































































William Morris - Ornamentation & Illustrations from The Kelmscott Chaucer

William Morris
Ornamentation & Illustrations from The Kelmscott Chaucer

With an introduction by Fridolf Johnson
Dover Publications Inc, 1973
xiv 112p 31x21.5cm

 
 
kelmscott chaucer 1
 
 
ケルムスコット・プレス版『チョーサー作品集』(The Works of Geoffrey Chaucer, Kelmscott edition, 1896)から、バーン=ジョーンズによる全87葉の木版挿絵と、ウィリアム・モリスによる装飾文字とボーダー(枠飾り)、余白カットの全てを収録、実物の72%のサイズで再現。よい本です。
 
 
kelmscott chaucer 3
 
 
kelmscott chaucer 2
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Gillian Naylor (ed.) - William Morris by Himself

William Morris by Himself,
Designs and Writings
Edited by Gillian Naylor

Macdonald Orbis/Macdonald & Co. Ltd, London & Sydney, 1988
328p 31.5x25.5cm

 
発言や手紙、著作からの引用によって、ウィリアム・モリスの生涯を再構成する本。写真や作品などの図版も多数掲載されている。
 
 
william morris by himself
 
 
Contents :
 
Introduction
Dreamer of Dreams
Fine Art Workmen
Queen Square
Kelmscott Manor
Commitment
Design and Socialism
The Final Years
William Morris by Others
Guide to the principal personalities mentioned in the text
List of plates
Select bibliography

 
 
william morris by himself 1
 
ウィリアム・モリス、1889年。
 
 
william morris by himself 2
 
オックスフォード・ユニオン(学生会館)。
1857年、ロセッティ、バーン=ジョーンズと共に壁絵を描く。
 
  
william morris by himself 3
 
レッド・ハウス (Red House)。ケント州ベクスレイ・ヒース (Bexley Heath, Kent)。フィリップ・ウェッブ (Philip Webb) が設計。1860年完成、奥さんのジェーンと共に住む。バーン=ジョーンズ/ジョージアーナ・マクドナルド夫妻、ロセッティ/エリザベス・シダル夫妻が頻繁に訪れ、内装を施す。
 
 
william morris by himself 4
 
モリスによる油彩画「麗しきイゾルデ」(別題「王妃グィネヴィア」)。1858年作。モリスは少年時から教会建築に興味を持ち、建築家を志していたが、アートに携わるものはすべからく絵を描くべきであるというロセッティの勧めを受けて絵の修行をした。
 
 
william morris by himself 5
 
ウィリアム・モリスのカリグラフィー。1873年頃。本文はアイスランド・サガの翻訳。
 
 
william morris by himself 7
 
テキスタイルのためのドローイング。1883年。
 
 
william morris by himself 8
 
モリスと娘たち。バーン=ジョーンズによる落書。1865年頃。
 
 
william morris by himself 9
 
アイスランドのモリス。バーン=ジョーンズによる落書。この頃モリスはアイスランド・サガに熱中し、自ら翻訳。1871年と1873年の二回にわたってアイスランドに旅行している。
 
 
william morris by himself 6
 
テキスタイルの実用例。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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