石原吉郎 『石原吉郎全詩集』

地下道に旗立つところまでを秋 石原吉郎


石原吉郎 『石原吉郎全詩集』
花神社 1976年5月1日初版第1刷発行
592p 初出一覧x 石原吉郎著作目録1p A5判 布装 貼函 定価4,800円
装幀・挿画: 著者

 
石原吉郎の1976年までの全詩集および句集を収録。
本書以降に出版された詩集に『足利』、遺稿詩集『満月をしも』、また歌集として『北鎌倉』がある。
 
 
石原吉郎全詩集1
 
帯文:
 
「衝撃の処女詩集『サンチョ・パンサの帰郷』から最近詩集『北條』までの全詩集と未刊詩篇およびシベリアの強制収容所で作られ記憶の中に再現された幻のシベリア詩篇を収録、さらに『石原吉郎句集』をもあわせて一冊にまとめ、石原吉郎の全貌を伝える待望の詩集。」
 
 
石原吉郎全詩集2
 
帯背:
 
「『サンチョ・パンサの帰郷』から『北條』までの全詩集」
 
本文の初めにエピグラフとして
 
「第七の封印を解き給ひたれば、
凡(おほよ)そ半時(はんとき)のあひだ天静(しづか)なりき。
   ヨハネ黙示録八・一」
 
が置かれている。
 
 
本書収録内容:
 
詩集 「サンチョ・パンサの帰郷」
詩集 「いちまいの上衣のうた」
詩集 「斧の思想」
詩集 「水準原点」
詩集 「禮節」
詩集 「北條」
句集 「石原吉郎句集」
未刊詩篇
六つのあとがき
メモ
初出一覧
 
別冊: 「石原吉郎全詩集・手帖」(花神社 1976年4月 16p)
「<文章倶楽部>のころ」 谷川俊太郎
「「ロシナンテ」・神話の時代」 河野澄子
「「鬼」の時期の石原吉郎」 大野新
「「罌粟」における石原吉郎」 中平耀
「東京詩学の会における石原吉郎」 宇佐美敦子
「石原さんの膝」 新川和江
「「墓」解読私案」 大岡信
編集室から/年譜
 
 
石原吉郎全詩集3

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
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石原吉郎 『足利』

石原吉郎 『足利』
花神社 1977年12月1日初版第1刷
93p 石原吉郎著書目録1p A5判 布装 機械函 定価1,600円
装画: 新井豊美

 
石原吉郎最後の詩集(著者は1977年11月14日逝去)。収録作品は1975年から1977年にかけて発表された。
翌1978年2月には思潮社より、本書とほぼ同時期に書かれた作品からなる遺稿詩集『満月をしも』が刊行されている。

 
「ある日のうつくしさをそのままに
ちがう入口を通るなら
それが礼節ということだ」

(「うつくしい日に」より)
 
 
足利1
 
 
足利2
 
 
目次:
 
足利
私の自由において

完全な廃墟
はじまる
死者の理由
訂正
あおざめる
こはぜ
その折
目じるし
入水
北鎌倉壽福寺

レストランの片隅で
恐怖
生きなさい
風と花

一期
潮が引くように
相対
亀裂
黄金分割
航海
無辜
不幸

黒門町
切れ目
日没
うつくしい日に
野いちご
輪郭
書く
あなたがねむるとき
風景

ちがう
詩人
 
初出一覧
 
 
本書収録詩より:
 
足利
 
 足利の里をよぎり いちまいの傘が空をわ
たった 渡るべくもなく空の紺青を渡り 会
釈のような影をまるく地へおとした ひとび
とはかたみに足をとどめ 大路の土がそのひ
とところだけ まるく濡れて行くさまを ひ
っそりとながめつづけた
 
 
はじまる
 
重大なものが終るとき
さらに重大なものが
はじまることに
私はほとんどうかつであった
生の終りがそのままに
死のはじまりであることに
死もまた持続する
過程であることに
死もまた
末来をもつことに
 
 
こはぜ
 
ひっそりと白く
両手を重ねただけなのに
殺意と見たてて
柄(つか)をひきよせたが
下(さ)げ緒をたぐる
気配をみてとって
相手はひっそりと
のみ終えた茶器へ
足袋のこはぜを
おとして立った
 
 
入水(じゅすい)
 
水に入(はい)るひとの決意を
想ってもみただろうか
くるぶしから 腰へ
腰から胸元へと
ひたして行く水の
ひっそりとした気配を
それは決意の持続ではない
決意そのものの
茫然たる手放しでもあったはずだ
決意をさらに呼ぶはずの
決意は
そのままひっそりと
水底(みなそこ)へ沈みおちた
 
 
レストランの片隅で
 
つらい食事もしたし
うっとりと食事も終えた
おなじ片隅で
ひっそりと今日も
食事をとる
生き死にのその
証しのような
もう生きなくても
すむような
 
 
恐怖
 
まぎれもなく健康であることは
たぶん巨きな恐怖だから
きみはなるべく
病気でいるがいい
ドアが正常に開き
通行を保障されるのは
たぶん巨きな恐怖だから
きみはすみやかに
拘禁さるべきだ
二人の男が向きあって
なにごともなく
対話がつづくのは
たぶん巨きな恐怖だから
一人は 即座に
射殺せねばならぬ
 
 
一期(いちご)
 
一期にして
ついに会わず
膝を置き
手を置き
目礼して ついに
会わざるもの
 
 
相対(あいたい)
 
おのおのうなずきあった
それぞれのひだりへ
切先を押しあてた
おんなの胸は厚く
おとこは早く果てた
その手をとっておんなは
一と刻(とき)あとに刺したがえた
ひと刻の そのすれちがいが
そのままに
双つの世界へふたりを向かわせた
 
 
亀裂
 
北の大路の
いちずなやすらぎを
かきのけるようにして
ものの気配が
一文字にはしりぬけた
馬背の物の怪(け)が
一気にはしりぬけた
物の怪ばかりが
一気にかけぬけた
事が起るということへ
一途に賭けた
足うらばかりが見える下を
かならず起るといいたげにして
ひとすじの亀裂が
さらにかけぬけた

 
 
足利3
 
「打ちあげて華麗なものの降(くだ)りつぐ」

「写真・宮本忠和 (C)日本交通会社「旅」編集部」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

石原吉郎 『詩集 満月をしも』

石原吉郎 『満月をしも』
思潮社 1978年2月25日発行
109p 菊判 布装 貼函 定価1,600円

 
著者最後の詩集『足利』と同時期の、1975年から1977年にかけての作品を収録した遺稿詩集。
 
 
満月をしも1
 
帯文:
 
「満月をしも
成就というであろう
満月の
その満月をしも。
…………
 
深い断念につらぬかれたテーマと固有の詩法を極度につきつめ、みずからを追いつめることによって確固たる詩宇宙の達成を示して急逝した著者の遺稿詩集」

 
 
帯背:
 
「遺稿詩集」
 
 
満月をしも2
 
帯裏:
 
「死
 
死はそれほどにも出発である
死はすべての主題の始まりであ
生は私には逆向きにしか始まらない
死を<背後>にするとき
生ははじめて私にはじまる
死を背後にすることによって
私は永遠に生きる
私が生をさかのぼることによって
死ははじめて
生き生きと死になるのだ」

 
 
満月をしも4
 
 
満月をしも3
 
「爪先
 
くぐり戸を
あけたところで
思惑がつりあった
待ちうけている
であろう気配を
承知のうえで
踏み出してくる爪先を
あらかじめ踏んだ
踏んだ爪先へ
踵のような月が墜ちた」

 
 
目次:
 
受け皿
哀愁1
死角
前提



提灯
片馬
洗礼
疲労
幸福
くずれるように
疲労について
寝がえり
義務


旱天

絶えま
楡と頬
物の怪
爪先
死に霊(りょう)
出会う
かみなり
寂寥
歯ぎしり

逡巡
飛沫
理由

なぎさ
成就
無題
哀愁2
置き去り
うしろめたさ
目安
つきあい
控え
呼吸
死病
単純な要塞
気配
盲導鈴
 
 
 
 
本書収録詩より:
 
「受け皿
 
おとすな
膝は悲しみの受け皿ではない
そして地は その受け皿の
受け皿ではさらにない
それをしも悲しみと呼ぶなら
おれがいまもちこたえているのは
錐ともいえる垂直なかなしみだと
おそれずにただこたえるがいい
 
 
疲労について
 
この疲労を重いとみるのは
きみの自由だが
むしろ疲労は
私にあって軽いのだ
すでに死体をかるがるとおろした
絞索のように
私にかるいのだ
すべての朝は
私には重い時刻であり
夜は私にあって
むしろかるい
夜にあって私は
浮きあがる闇へ
かるがるとねむる
そのとき私は
すでに疲労そのものである
霧が髭を洗い ぬらす
私はすでに
死体として軽い
おもい復活の朝が来るまでは
 
 
物の怪
 
仰向けた掌(て)へ
一個の碗を置き
瞑目して呼吸をととのえるさまを
物の怪に憑かれた余計者が
ひっそりとたたみを踏みしなに
ふりかえった
 
 
逡巡
 
<恥らい>が含む<恥>を
想ってもみただろうか
逡巡の果てに来る<逡巡>を
一人の男が待つように
 
 

 
レストランの片隅で
ひっそりとひとりで
食事をしていると
ふいにわけもなく
涙があふれることがある
なぜあふれるのか
たぶん食べるそのことが
むなしいのだ
なぜ「私が」食べなければ
いけないのか
その理由が ふいに
私にわからなくなるのだ
分らないという
ただそのことのために
涙がふいにあふれるのだ
 
 
無題
 
無ければ それでいいだろう
そこまでで
もう無いなら
 
 
哀愁2
 
哀愁はあきらかな
ひとつの意志である
哀愁がひとつの病いであるとき それは
意志である
病いもまた ひとつの
意志となることを忘れるな
 
 
うしろめたさ
 
しずかなものを
おさえかねた
白刃のような
ほとばしりへ
男は背を向けて
はっきりと目をとじた
目をとじて
わずかにこらえた
うしろめたさを
男はさらにこらえた
 
 
控え
 
いわれなく座に
耐えることではない
非礼のひとすじがあれば
礼を絶って
膝を立てることだ
膝は そのためにある
そろえた指先も
そのためにある」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー

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