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『ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ』

『ジョゼフ・コーネル 
コラージュ&モンタージュ』

Collage & Montage by Joseph Cornell


発行: DIC川村記念美術館
発売: フィルムアート社
2019年6月15日 初版発行
351p 
18×13.3cm
角背布装上製本 貼函
定価3,500円+税
デザイン: サイトヲヒデユキ


DIC川村記念美術館
2019年3月23日―6月16日



本書「ごあいさつ」より:

「ジョゼフ・コーネル(1903―1972)は、ニューヨークの古書店や雑貨店で探し求めたお気に入りの品々を、手製の木箱におさめた「箱」の作品で知られています。書物の切り抜きや絵画の複製図版、コーディアル・グラスやコルク球といった小物は、箱の中に配置されると互いに詩的な連関を帯びて響き合い、暗示的なイメージとなって作家の世界を構成します。
映画を愛したコーネルは、古いフィルムを蒐集し、映画作品の制作も行いました。既成の映画フィルムの断片をコラージュした作品や、映像作家の協力を得て、主にニューヨークの街中で撮影された監督作品は、戦後アメリカにおける実験映画の先駆としても評価されています。
また、創作活動の初期と後期を中心に、独自の魅力を放つ多彩なコラージュ作品を手がけています。平面コラージュの手法は、それが立体的に繰り広げられるアッサンブラージュの箱、そして時間軸上で展開するモンタージュ(編集)による映画にも連なり、この作家の創作の原点と言えます。
本展では、DIC川村記念美術館が有するコーネルのコレクションに加え、おもに国内の美術館や個人の所蔵するコラージュと箱約50点、そして上映される機会の少ない映画14作品が集結します。あわせて、コーネルがデザインした雑誌や展覧会案内状などの印刷物を紹介するとともに、アメリカ、スミソニアン協会アメリカ美術アーカイヴのご協力により、日記や構想ノート、友人たちと交わした手紙などの資料も展覧します。コラージュからモンタージュまで、ジョゼフ・コーネルの幅広い仕事を貫く精神を見つめ、作品制作の背景に垣間見える作家の日常や交友関係、その人となりにも想いを巡らす場となれば幸いです。」



コーネル コラージュ 01


アマゾンで予約しておいたのが届いたのでよんでみました。発行日は6月15日と記載されていますが実際には10日ほど延期されて、届いたのは6月27日でした。
ふつうの単行本よりやや小さめの、しかし堅牢な函入り布装本です。函には題簽シール(白い部分)と、「作品用素材」(コーネルによる切り抜き)シールが貼られています(このシールは何種類かヴァリエーションがあるようです)。スピン(栞ひも)二本付きです。


コーネル コラージュ 02


目次:

謝辞
ごあいさつ (DIC川村記念美術館 館長 大熊雅美)

図版
 第1章 初期コラージュ
 第2章 箱制作のかたわらで
 第3章 箱作品を中心に 1930―50年代
 第4章 後期コラージュ
 第5章 日記・手紙
 第6章 モンタージュ 映画

論考
 『メカスの映画日記』より (ジョナス・メカス/飯村昭子 訳)
 From *Movie Journal* (Jonas Mekas)
 Joseph Cornell Films: Explanatory Texts (Anne Morra)
 ジョゼフ・コーネルの映画: 作品解説 (アン・モラ)
 ジョゼフ・コーネル フィルモグラフィ (アン・モラ)
 Joseph Cornell Filmography
 ジョゼフ・コーネル (フェアフィールド・ポーター/中野勉 訳)
 Joseph Cornell (Fairfield Porter)
 ジョセフ・コーネル 箱の旅人 (金井美恵子/初出: 『切り抜き美術館 スクラップ・ギャラリー』 平凡社、2005年)
 ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ: 展覧会解説 (岡本想太郎)

資料
 ジョゼフ・コーネル略年譜 (佐藤芙有 編)
 主要参考文献/展覧会歴 (佐藤芙有 編)
 出品作品リスト
 コピーライト/写真クレジット



コーネル コラージュ 05



◆本書より◆


「『メカスの映画日記』より」(ジョナス・メカス)より:

「かつて私は愚かにも、コーネルに彼の映画が完成した正確な年代を訊ねたことがある。《コティヨン》ができたのはいつですか? 《六月の日々》ができたのはいつですか? わからないよ、そんなことは訊かないでくれ。年代はものごとを束縛するだけだ、とコーネルは言った。本当にそうだ。いつ作られたかって?……どこかで……長いことかかって……あの時の私はなんという愚か者だったのだろう。あんな馬鹿げた質問をするなんて。年代だなんて! コーネルの芸術はその制作(あるいは成長)の過程に関しても、作品そのものに関しても、年代とは無縁である。彼の作品には――箱(ボックス)であろうとコラージュであろうと映画であろうと――どこか時間の停止した領域に置かれているような質があり、まるでわれわれの“現実の世界”をわれわれの実体が固着されうる別の世界まで延長したものであるかのように思える。われわれの住んでいる世界は、あらわれては消えてゆく無常のものだが、コーネルの世界は永遠で、つねに彼の作品を見にくる人びとの感受性に何度でも触れうるものである。ああ、この空間、この世界、コーネルの作品に幾何学と天文学がどれほど含まれていようと何の不思議もない。そこには、彼の作品が天界の音楽という言語でわれわれに応えることのできる、ある非常に素晴らしい別の世界に自分が存在しているというわれわれの感じ、考え、夢、状態をたどるのに似た何かがある。
 あるいはあの、コーネルの芸術の中の永遠の少女のように、あるいは天使でも子供たちでもいいが――いずれにせよ彼らは、時間が停止し、存在しない次元に存在する。妖精(ニンフ)には年齢がなく、天使にもない。青い服を着て、公園で、何をするでもなく、永遠の夢の中で時間をもて余しながらあたりを見回している10歳くらいの少女にもない。」
「ジョーゼフ・コーネルの箱(ボックス)、コラージュ、ホーム・ムーヴィーは、われらの時代の目につかぬ寺院である。つまり、今日われわれにまだ残されている素晴らしいものはすべて、ほとんど目につかぬものばかりなのだ。しっかりと探してみなければ、ほとんど目につかない。」



コーネル コラージュ 03


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コーネル コラージュ 06

































































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Deborah Solomon 『Utopia Parkway: The Life and Work of Joseph Cornell』 (Other Press)

「He continued to correspond with his many friends, but there could be no pretending that he had much news to report. Cornell's last letter to Donald Windham was mailed in a translucent envelope, on which he wrote, "No need to open."」
(Deborah Solomon 『Utopia Parkway: The Life and Work of Joseph Cornell』 より)


Deborah Solomon 
『Utopia Parkway:
The Life and Work of
Joseph Cornell』

(Revised and Updated Edition)


Other Press, New York, 2015
xxii, 560pp., 8pp. of colored plates
22.8x15cm, paperback
Production editor: Yvonne E. Cárdenas
Text designer: Julie Fry



デボラ・ソロモンによるジョゼフ・コーネル伝(初版刊行は1997年)の改訂新版がアマゾン(マケプレじゃないほう)で1,386円で売られていたので注文しておいたのが届いたのでよんでみました。
別丁カラー図版8点、本文中モノクロ図版52点。


solomon - utopia parkway 01


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Contents:

List of Illustrations
Preface to the 2015 Edition
Introduction

1. "Combination Ticket Entitles Bearer To...": 1903-17
2. Dreaming of Houdini: 1917-21
3. Life of a Salesman: 1921-28
4. The Julien Levy Gallery: 1929-32
5. The Persistent Memory of Salvador Dalí: 1933-36
6. Introducing the Neo-Romantics: 1937-39
7. A Night at the Ballet: 1940-41
8. Voices from Abroad: 1942
9. *Bébé Marie*, or Visual Possession: 1943-44
10. The Hugo Gallery: 1945-49
11. The Aviaries: 1949
12. The Egan Years: 1950-53
13. The Birds: 1954-55
14. The Stable Gallery: 1956-57
15. Breakfast at Bickford's: 1958-59
16. Pop Goes the Art World: 1960-63
17. The Life and Death of Joyce Hunter: 1964
18. Goodbye, Robert: 1965
19. Goodbye, Mrs. Cornell: 1966
20. The Guggenheim Show: 1967
21. "Bathrobe Journeying": 1968-71
22. "Sunshine Breaking Through...": 1972

Notes
Index



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◆感想◆


本書の旧版はMFA(Museum of Fine Arts)の再刊本で持っているのですが、新版の序文によると、本文は大幅に改訂されて(「This new edition of *Utopia Parkway* is amply revised. I have cut dated material and added new findings.」)、さらに活字もよみやすくなって紙質もよくなって以前は無かったカラー図版も掲載されているということなので、せっかくなので新版で再読してみました。たしかに字が大きくなって一頁あたりの行数も少なくなっているのでたいへんよみやすいです。改訂の詳細に関してはいちいちチェックしたわけではないですが、たとえば第五章でコーネルとシュルレアリスムのかかわりについて、

「Cornell was always quick to assert that he never joined up with the Surrealist movement, as if fearful of being linked with its naughty activities. Yet secretly, it seems, he was fascinated by the movement, and in general his feelings for Surrealism echoed the ambivalent nature of many of his other attachments. He had a passionate desire to be part of the art scene, and an alternating desire to pull back, to be insular and private and alone. His conflicted feelings extended to his work as well: he emulated the latest developmens out of Paris, but in his own furtive way.
 As much as the French Surrealists provided the context in which Cornell made his earliest collages and *objets*, they were also the impetus behind the various cinematic projects Cornell now undertook.」


とあったのが、

「Cornell was always quick to assert that he never joined up with the Surrealist movement. Yet their influence on him cannot be doubted. They provided the context in which Cornell made his earliest collages and objets, and they were also the impetus behind the various cinematic projects Cornell now undertook.」

と簡潔になっていたり、第十七章で草間彌生さんについて、

「Kusama enjoys a substantial reputation for her soft cloth sculptures and for pattern-based paintings that prefigured American Minimalism, but her creations inside the studio pale beside her antics outside it. She came to New York from Tokyo in 1957, eager to make a name for herself and, like Yoko Ono, turned to performance art to generate attention.」

とあったのが、

「Kusama enjoys a stellar reputation for her obsessively patterned paintings and sculptures, which include a huge, yellow pumpkin covered with a rhythmic array of black polka dots. In the early sixties, she came to attention after she organized a series of happenings.」

となっていて、「相当な」(substantial)が「輝かしい」(stellar)にアップデートされてはいるものの、どうも著者は草間さんに対してあまり好意的ではないようです。

著者の見解には同意しかねる部分もありますが、しかしざっと目を通すだけのつもりが今回も熟読してしまいました。


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ユートピア・パークウェイのコーネル家の庭に置かれたウサギの置物と鏡。




こちらもご参照ください:

Deborah Solomon 『Utopia Parkway: The Life and Work of Joseph Cornell』 (MFA Publications)




























































Mary Clare McKinley 『Birds of a Feather: Joseph Cornell's Homage to Juan Gris』

「Based on aesthetics and certain commonalities in their life stories, personalities, and infatuation with France, Cornell considered him a "warm fraternal spirit."」
(Mary Clare McKinley 「Cornell and Gris: Birds of a Feather」 より)


Mary Clare McKinley 
『Birds of a Feather:
Joseph Cornell's Homage
to Juan Gris』

Leonard A. Lauder Research Center for Modern Art

Published by The Metropolitan Museum of Art, New York / Distributed by Yale University Press, New Haven and London, 2018
96pp, 23.5x18.5cm, hardcover
Edited by Livia Tenzer
Designed by Roy Brooks
Production by Lauren Knighton
Bibliography edited by Amelia Kutschbach


「The catalogue is published in conjunction with "Birds of a Feather: Joseph Cornell's Homage to Juan Gris," on view at The Metropolitan Museum of Art, New York, from January 23 through April 15, 2018.」



本書はメトロポリタン美術館で開催されたジョゼフ・コーネルによる「グリス」シリーズの展覧会図録です。アマゾンで注文しておいたのが届いたのでよんでみました。2,008円でした。
展示作品図版(カラー)13点。参考図版34点(所在不明の「グリス」シリーズ作品6点はモノクロ図版で再録)、部分拡大図(カラー)6点。
布背継表紙のハードカバー(ダストジャケットは元から無いタイプ)で本文用紙もやや厚めなしっかりした造本です。


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Contents:

Foreword (Daniel H. Weiss)
Acknowledgments

Cornell and Gris: Birds of a Feather

Plates
1. A Parrot for Juan Gris, 1953-54/57
2. Homage to Juan Gris, 1953-54
3. Juan Gris Cockatoo No. 4 (ca. 1953-54/1956)
4. Untitled (Juan Gris), ca. 1953-54
5. Untitled (Juan Gris Series), ca. 1953-54
6. Serenade for Juan Gris, Romantic Hotel, ca. 1953-60
7. Josette; Juan Gris #5, ca. 1959-60
8. Le Déjeuner de Kakatoes pour Juan Gris (Juan Gris Cockatoo Series), ca. 1959-60/1966
9. For Juan Gris #7, ca. 1954-60
10. Untitled (Juan Gris Series, Black Cockatoo Silhouette), ca. 1959-60
11. Grand Hôtel Bon Port, ca. 1959-60
12. Untitled (Parrot Collage; Grand Hôtel de la Pomme d'Or), ca. 1959-60
13. Untitled (L'Abeille), ca. 1959-60

Catalogue of the Juan Gris Series
Exhibition Checklist
Notes
Selected Bibliography
Photograph Credits



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◆感想◆


1953年、マンハッタンの画廊でフアン・グリスの作品「カフェの男」(1914年)を見たジョゼフ・コーネルは強い興味を抱き、グリスについての資料を集め始めます(伝記や書簡集をよんだり、デュシャンからグリスの思い出を聞いたり)、その成果は1966年までに21点のグリスへのオマージュ作品(箱18点、コラージュ2点、砂トレイ1点)として残され、そのうちの13点が本書の図版セクションに掲載されています。これらのほとんどに登場する、このシリーズを象徴する存在といっていいのが、19世紀の博物画(のフォトコピー)から切り抜かれた白いオウム(Alexander Francis Lydon, Great White-Crested Cocatoo, from William Thomas Greene, Parrots in Captivity, vol. 1)であります。
「カフェの男」は、カフェの片隅で新聞(ル・マタン紙)に読み耽る帽子を被った男(背後の壁には男の影、テーブルにはビールジョッキ)が描かれたキュビズム絵画ですが、なぜコーネルはこの絵に惹かれたのか、そしてなぜグリスに共感を覚えたのか、グリスから与えられたインスピレーションはどのように箱作品に反映されているのか、変容するオウム(シルエットになったり、断片化されたり、輪郭だけ残して空白になったり、箱の裏側に貼られたり、いなくなったり)の意味は、等々を、コーネル自身の日記を参照しつつ、作品制作のプロセスを辿りながら検証していて(グリス Gris とバレエダンサーのカルロッタ・グリジ Grisi が観念連合される過程も興味深いです)、100ページに満たない本ではありますが、たいへん読み応えがありました。


joseph cornell - birds of a feather 03


フアン・グリス「カフェの男」。ビールの泡がオウムっぽいです。




THE MET
Birds of a Feather:
Joseph Cornell's Homage to Juan Gris







































































Jodi Hauptman 『Joseph Cornell: Stargazing in the Cinema』

Jodi Hauptman 
『Joseph Cornell:
Stargazing in the Cinema』


Tate University Press, New Haven & London, 1999
xiv, 250pp, 26x21cm, hardcover, dust jacket
Printed in China



ジョディ・ホープトマン著『ジョゼフ・コーネル――映画スター(星)の観測』。あるいは「シネマの占星術」でしょうか。本書はまだよんでいなかったのでアマゾンマケプレで最安値(3,000円+送料257円)のを注文しておいたのが届いたのでよんでみました。角背紙装上製本。本文中図版108点(うちカラー印刷42点)、巻頭にコーネルを被写体とした写真(モノクロ)4点。図版はコーネル作品の他、作品が捧げられた映画女優の写真や関連図版(ドラクロワ、ダリ、アッジェ、等)です。


joseph cornell - stargazing in the cinema 01


Contents:

Acknowledgments

Introduction: The Enchanted Wanderer, or Love at Last Sight
1. The Romantic Museum
2. A Cinematic Imagination: The Penny Arcade Portrait of Lauren Bacall
3. The Erupting and Occluded Body: Rose Hobart
4. A Pearl Suspended: Greta Garbo
5. Night-Wandering: Souvenirs for Singleton
6. Innocence Unpacked: The Crystal Cage
Conclusion: The Custodian

Notes
Bibliography
Index



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◆本書より◆


「Notes」より:

「A three-person exhibition featuring Cornell along with Marcel Duchamp and Yves Tanguy, "Through the Big End of the Opera Glass," opened at the Julien Levy Gallery in December 1943. Although the origin, source, and justification for the exhibition's title remains a mystery, a slight variation of the phrase can be found in Thomas Mann's novel *The Magic Mountain* (1924). Mann describes the sensation of listening to a record album: the music's inaccessibility, he writes, is like looking "at a painting through the wrong end of an opera-glass, seeing it remote and diminutive." Peering through the "big end of the opera glass" shrinks the subjects of the viewer's gaze, lenghthens spatial distances, and enlarges the gap between spectator and spectacle.」

(コーネル、デュシャン、タンギーの三人展「双眼鏡の大きい方の端から覗いて」は1943年12月にジュリアン・レヴィ・ギャラリーで開催された。展覧会のタイトルの出典や根拠は謎だが、トーマス・マンは小説『魔の山』(1924年)で、レコードで音楽を聴くときの疎隔感を、絵を鑑賞するのに「双眼鏡を逆向きにして覗くと、遠く小さくみえる」のに譬えている。「双眼鏡の大きい方の端」から覗くことによって、観測の対象は縮小し、空間的距離は引きのばされ、見るものと見られるものの間の隔たりは増大する。)



◆感想◆


ちなみに江戸川乱歩「押絵と旅する男」は1929年です。

本書はジョゼフ・コーネルとハリウッド映画をテーマとしたモノグラフィー(研究書)でありまして、著者はベンヤミン(シュルレアリスム、都市散策、子ども時代、歴史――過去の救済)やアドルノやラカン等を援用しつついろいろ論じています。参考文献にはドゥルーズやデリダやサイードも挙げられています。

1946年12月、コーネルはマンハッタンのフーゴー・ギャラリー(Hugo Gallery)で「Romantic Museum」と題する展示を行いました。パンフレットによると、それはマリブラン(歌手)やタリオーニ(バレエダンサー)やドゥーゼ(女優)、ガルボやバコールといった映画女優、そして彼が「ベレニス」(Berenice)と呼ぶ理想化された想像上の少女をテーマとしたインスタレーションだったようですが、これらの女性は皆、すでに物故しているか、実在しないか、現存するとしても遠くて手が届かない「スター」であり、これらの人物に寄せるコーネルの感情を著者は Love at first sight (ひとめぼれ)ならぬ「Love at last sight」であると定義しています。つまり、対人的コミュニケーションの不在あるいは不可能を前提として、ひたすらそれらの愛惜の対象が残した痕跡を偏執的に拾い集める作業(コーネルはこうして収集された資料やオブジェを「dossier」(調査書類)と呼んでいました)を通して作品に結晶化させる、そうして作られた作品にはコーネルの「無垢」(innocence)への希求が表現されているわけですが、一般的には「セックス・シンボル」とみなされていたハリウッド女優にそのような作品が捧げられることの意味を、本書はローレン・バコール(第二章)、ローズ・ホバート(第三章)、グレタ・ガルボ(第四章)、ジェニファー・ジョーンズ(第五章)、マーガレット・オブライエンやディアナ・ダービン、ヴァージニア・ウェイドラーといった「ベレニス」としての子役女優(第六章)、マリリン・モンロー(結論)について、具体的に検証しています。父親不在で母親は心を病んでいたので孤児院や里親をたらい回しにされ虐待を受けるなど不幸な子ども時代を過ごしたモンローに(ということはつまり愛惜の対象と自己同一化したコーネル自身に)「守護者」(Custodian)を与え、そのイノセンスを「クリスタル・ケージ」(Crystal Cages)に閉じ込めることによって外界から守ろうとしたのだというのが本書の結論なのではないでしょうか。


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「ロマンティック・ミュージアム」パンフレット。


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箱「無題(蝶の生息地)」。


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コラージュ「無題(蟻とトランプ)」。


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ローズ・ホバート。


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コーネル。




こちらもご参照ください:

ローズ・ホバート主演『ボルネオの東』(East of Borneo)。




ジョゼフ・コーネルが『ボルネオの東』のローズ・ホバートの出演シーンをコラージュして作った『ローズ・ホバート』。










































































Kynaston McShine (ed.) 『Joseph Cornell』 (MoMA 1980)

『Joseph Cornell』
Edited and with an Introduction by Kynaston McShine
Essays by Dawn Ades, Carter Ratcliff, P. Adams Sitney, and Lynda Roscoe Hartigan

The Museum of Modern Art, New York, 1980
Reprint 1990 by Prestel Verlag, Munich
296pp, 28.2x22.2cm, hardcover (clothbound), dust jacket
Designed by Patrick Cunningham and Keith Davis
Printed in the Federal Republic of Germany

Originally published on the occasion of the exhibition *Joseph Cornell*, November 17, 1980 - January 20, 1981, The Museum of Modern Art, New York



1980年にニューヨーク近代美術館で開催されたジョゼフ・コーネル回顧展のカタログを10年後の1990年に同一内容で書籍化(丸背布装上製本)したもので、これは1996年に増刷されたものだとおもいます。
カラー図版32点、モノクロ図版294点収録。ほかに参考図版(モノクロ)多数です。


joseph cornell - moma 01


Contents:

Acknowledgments (Kynaston McShine)

Introducing Mr. Cornell (Kynaston McShine)
The Transcendental Surrealism of Joseph Cornell (Dawn Ades)
Joseph Cornell: Mechanic of the Ineffable (Carter Ratcliff)
The Cinematic Gaze of Joseph Cornell (P. Adams Sitney)
Joseph Cornell: A Biography (Lynda Roscoe Hartigan)

Plates

Bibliography
A Dossier for Joseph Cornell
List of Illustrations
Photograph Credits
Lenders to the Exhibition



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◆感想◆


本書はジョゼフ・コーネルの基本文献でありますが、もっていなかったのでアマゾンで中古(可)が2,047円(送料込)で売られていたのを購入してみました。
図版はほとんどモノクロですが、それはそれで時代色というか、趣があります。
編者による序文、シュルレアリスム(ドーン・エイズ)、ロマン主義(カーター・ラトクリフ)、映画作品(P・アダムス・シトニー)、と、さまざまな側面からのコーネル論三篇、そしてリンダ・ロスコー・ハーティガンによるバイオグラフィー(コーネルの妹エリザベスが情報提供しています)と、よみもの面も充実しています。


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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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