マックス・エルンスト 『百頭女』 巌谷国士 訳 (眼は未開の状態にある叢書)

「『百頭女』は、すべてのサロンが「湖の底」へと降り行き、しかも、これを強調することこそ妥当なのだが、そのすべての魚の光沢、その天体たちの金箔、その草の舞踏、その水底の泥、その映光の衣裳をともなって漂うことがますます明らかになるであろう現代の、この上もない絵本となることだろう。」
(アンドレ・ブルトン 「『百頭女』前口上」 より)


マックス・エルンスト 
『百頭女』 
前口上: アンドレ・ブルトン
巖谷國士 訳

眼は未開の状態にある叢書 1

河出書房新社 
昭和49年12月25日 初版発行
昭和55年5月30日 3版発行
ノンブル記載なし(全328p) 
24.5×19.5cm 
仮フランス装 函 函ビニールカバー 
定価4,800円
装幀: 野中ユリ

付録「マックス・エルンスト頌――百頭女のために」:
瀧口修造「奇遇」/澁澤龍彦「目で見る暗黒小説」/赤瀬川原平「コラージュ体験」/窪田般彌「百頭女」/加藤郁乎「クライマックス」(詩) /埴谷雄高「エルンストの《物霊(ディングガイスト)》」/巌谷国士「顔のない書物――解説風に」
20p 13.5×13.5cm 中綴じ ホチキス留め
装幀: 野中ユリ



本書付録小冊子所収、巌谷国士氏「顔のない書物」より:

「20世紀芸術の生んだ最大の奇書、マックス・エルンストの最初にして最高のコラージュ小説である『百頭女』は、1929年、盟友アンドレ・ブルトンによる序文を得て、パリのカルフール社から、1000部限定で出版された。(中略)計147葉、9章から成るこの大部の書物の生み出された最初のきっかけは、言うまでもなく、(中略)マックス・エルンストによるコラージュの方法発見の日付、すなわち、1919年にまでさかのぼる。既成の図版の貼合わせをもって一つの絵画をすること(中略)「視覚的イメージの錬金術」としてその方向にコペルニクス的転回を与え、これを一つの新しい絵画思想の中軸に据えたのは、もとより現代の見者エルンスト個人の創意にほかならない。(中略)コラージュとはしかしまず何よりも、「剽窃」行為の体系化であり、技巧の否定と作家人格の縮少にもとづく、新しい普遍的創造の一原理であった。ここには当然、挑戦(個人的絵画への侮蔑)の方向と、回復(絵画の複数性の再建)の方向とが含まれる。(中略)あくまで一篇の「小説」としてこれを読み進めた場合、百頭女とは、それ自身「騒乱」であるがゆえに百の異った頭をもち、またそれゆえにこそ顔をもたぬ女主人公の呼び名であり、また「私の妹」と言われていることからも、マックス・エルンスト自身の個人神話に属する実の妹、いわば潜在的な近親相姦の対象としての、永遠の女性の謂であることが分る。一方あえて言うなら、「鳥類の王」と呼ばれる怪鳥ロプロプこそは第二の(男性の)主人公であって、エルンストその人の分身にほかならぬこの鳥が、恋人の百頭女を悦ばせるために、いたるところに異常な騒動をまきおこしてゆくというのが、ここに読みとれるひとつの粗筋であろう。この騒動はやがて、ローマ末期をも思わせる恐ろしい劫掠へと発展するが、(中略)最後の章にいたると、百頭女は男たちの眼をえぐりとり、自らの「秘密を守る」という挙に出る。一方ロプロプもまた、「いくらか残った宇宙の破片の上に、接骨木(にわとこ)の弾丸数発を」発射したあと、物語はふたたび冒頭へ戻るのであって、結局、最後まで「秘密」は守りぬかれ、永遠の回帰に委ねられてしまうことに注意しなければならない。すなわち銅版挿絵のどこまでも偶然的な細部をもつ『百頭女』は、同時に私たちの読解をも無限の拡散の方向へと誘い、イメージの極端な「開放」自体によって謎を保存するのである。(中略)どちらかといえば、私はこの顔のない書物を通じて、彼らの演じる匿名の放縦と狂態とが、来るべき何らかの「騒乱」に益することを願ってやまないのである。」


エルンスト 百頭女 01


帯文:

「〔ブルトン序/巌谷国士訳〕 超現実主義最大の怪物的名著
「シュルレアリスム宣言」50周年記念
★147点のコラージュを駆使した目で見る暗黒のロマン★
付録「エルンスト頌」=瀧口修造・埴谷雄高・澁澤龍彦・赤瀬川原平・窪田般彌・加藤郁乎・巌谷国士」



帯背:

「眼は未開の状態にある叢書 1
二十世紀の奇書
コラージュ・ロマン ブルトン 序」



帯裏:

「昔、始めて見たときの「百頭女」は静かな炸裂のように私の若さをゆるがした。その出現は、時知らずの暗黒の大密林で出遭う沈黙の稲妻のようなものであった。 瀧口修造

一九二九年、マックス・エルンストが出版したコラージュ・ロマン「百頭女」は、まさに二十世紀の奇書であり、現代の最もオリジナルな暗黒小説と呼ばれるにふさわしい作品である。最もオリジナルと私が言うのは、むろん、それが目で見るイメージの暗黒小説だからである。全部で百四十七葉、九章に分れたこの大判の書物のページを、私は二十代の若年から、幾度繰り返して、楽しみ乍らめくってみたことだろう。 澁澤龍彦」



エルンスト 百頭女 02



◆本書より◆


エルンスト 百頭女 03


「おい君、鞄をあけたまえ。」


エルンスト 百頭女 04


「精気たちのぼる。」


エルンスト 百頭女 05


「ロプロプ、燕、が帰ってくる。」


エルンスト 百頭女 06


「彼女の微笑、火は、黒い霜と白い錆の形をして、山腹に落ちかかるだろう。」


エルンスト 百頭女 07


「九度目の誕生のあとにつづく七周年を思い起させるために、
見えない眼をしたジェルミナルと月とロプロプとは、彼らの頭でいくつかの卵形を描き出す。」



参考図版:

広重「王子装束ゑの木大晦日の狐火」
ジュール=ジョゼフ・ルフェーブル「蝉」


エルンスト 百頭女 08


「そして蝶たちが歌いはじめる。」


参考図版:

丸尾末広 DDT

丸尾末広「童貞厠之介」より。
単行本『DDT』(青林堂、1983年)所収。


エルンスト 百頭女 09


「つづき。」











































































































スポンサーサイト

マックス・エルンスト 『絵画の彼岸』 巌谷国士 訳 (眼は未開の状態にある叢書)

マックス・エルンスト 
『絵画の彼岸』
巖谷國士 訳

眼は未開の状態にある叢書 3

河出書房新社 
昭和50年9月25日 発行
173p 
24.5×19.5cm 
仮フランス装 函 
定価3,500円 
装幀: 野中ユリ



「本書は、Max Ernst : Au-dela de la peinture (Editions Cahiers d'Art, Paris, 1937) の日本語版である。訳出にあたっては、英語版 Beyond painting, and other writing by the artists and his friends (Wittenborn, Schults Inc., New York, 1948) を常時参照した。」
「日本語版編集にあたっては、上記二書の内容を折衷しつつ、独自の方針で収録テクストと図版を決定した。」



エルンスト 絵画の彼岸 01


帯文:

「超現実主義の歴史的絵画論
コラージュとフロッタージュ
の美学。収録作品250点。
眼は未開の状態にある叢書 3」



エルンスト 絵画の彼岸 02


帯背:

「眼は未開の状態にある叢書 3
画論・自伝・作品」



エルンスト 絵画の彼岸 03


目次:
 
第一部
絵画の彼岸(1936)
 Ⅰ ある博物誌の来歴
 Ⅱ ウイスキー海底での進水
 Ⅲ 同一性スナップ
意のままの霊感(1932)
M. E. の青春についての若干のデータ(1942)
 
第二部 フロッタージュ
「博物誌」(1926)(全)
1925年から今日(1936)まで
 
第三部 コラージュ
「ウイスキー海底での進水」展(1920)(抄)
マックス・エルンスト、ポール・エリュアール 三つの詩画集より(1922―1942)
 「復讐」(全・コラージュのみ)
 「不滅者の不幸」(全・コラージュのみ)
 「視覚の内部、8つの見える詩」(抄・コラージュのみ)
 
第四部 コラージュ・ロマン
「百頭女」(1929)(抄)
「カルメル修道会に入ろうとした少女の夢」(1930)(抄)
「慈善週間、あるいは七大元素」(1934)(抄)
 
第五部
マックス・エルンストについて
 アンドレ・ブルトン/ハンス・アルプ/ルイ・アラゴン/ポール・エリュアール/バンジャマン・ペレ/ルネ・クルヴェル/ロベルト・マッタ・エチャウレン
参考図版
解説にかえて(開かれた眼、開かれた自然――マックス・エルンストの錬金術) (巌谷国士)



エルンスト 絵画の彼岸 04



◆本書より◆


「M. E. の青春についての若干のデータ」より:

「【1906年】 隠秘現象や、魔術、妖術の力との最初の接触。彼の友人のひとり、いちばん利巧で思いやりのある桃色インコが、1月5日の夜に死んだ。翌朝その屍骸を見つけたとき、ちょうど父親が彼に、妹のロニが誕生したということを告げたので、マックスはおそろしいショックをうけた。少年の心中の騒乱はあまりにも大きく、気絶してしまったほどだった。想像力のなかでは、彼は両方の出来事を結びつけており、鳥の命の消滅を、赤ん坊のせいにしていたのである。一連の不思議な失神、ヒステリーの発作、昂奮と銷沈がつづいた。鳥と人間とのあやうい混同が彼の心に根をおろし、デッサンや絵のなかにも顔を出すようになった。この妄執につきまとわれたあげく、彼はやがて1927年に「鳥たちへの記念碑」を建立するが、その後も、マックスはすすんで自分を「ロプロプ、鳥類の王」と同一視している。この幻はもう一つの作品「騒乱、私の妹、百頭女」からも、やはり切りはなせないものだった。」


エルンスト 絵画の彼岸 06


エルンスト 絵画の彼岸 07


エルンスト 絵画の彼岸 08


エルンスト 絵画の彼岸 09



こちらもご参照下さい:

マックス・エルンスト 『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』 巖谷國士 訳 (河出文庫)
眼は未開の状態にある叢書 1 マックス・エルンスト 『百頭女』
眼は未開の状態にある叢書 6 マックス・エルンスト 『慈善週間――または七大元素(小説)』
















































































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本