小野二郎 『紅茶を受皿で ― イギリス民衆芸術覚書』

「下品、俗悪、法外にもかかわらずではなく、まさにそのゆえに、「尊厳(ディグニティ)」を獲得するということは、いささか唐突だが、民衆芸術と前衛芸術の出会う場所だろうと思う。」
(小野二郎 「ミュージック・ホール」 より)


小野二郎 
『紅茶を受皿で
― イギリス民衆芸術覚書』


晶文社
1981年2月20日 初版
1982年7月10日 7刷
306p 参考文献iv 初出一覧1p
19.3×15.6cm 
丸背紙装上製本 カバー
定価2,300円
ブックデザイン: 平野甲賀



本文中図版(モノクロ)多数。


小野二郎 紅茶を受皿で 01


カバーそで文:

「紅茶をカップから受皿にあけて、そこからすする――アイルランドの田舎町で偶たま目にした老婦人の作法が、民衆文化の基層を垣間見させる。お茶の飲みかたにも、器物と人間との交渉の深い歴史がかくされている。
 パイ。プディング。ケーキ。蜂蜜酒。ワイン。注器。陶器人形。版画。ちらし。絵本。壁紙。チンツ。ミュージック・ホール。石。樹木。庭園。……「もの」の触感を手掛りにイギリス民衆の生活芸術を掘り起す。

 ウィリアム・モリスの主張しているようなレッサー・アート(大芸術に対する小芸術、民衆芸術、装飾芸術)の広い世界にふれたい。さらに、レッサー・アートとさえいえないような事柄を、イギリス民衆の生活史のなかのあちらこちらから見つけていきたい。
 民衆の神話形成力というものは、時には日常生活の微妙な形にあらわれると私は信じます。その神話に不意に出会う時、私の想像力は大いに刺激されるというわけです。
小野二郎」



目次 (初出):


紅茶を受皿で (「展望」 1975年2月)
ビートン夫人の料理術 (「現代思想」 1976年9月)
オーウェル「イギリス料理の擁護」の擁護 (筑摩書房「世界文学大系」第87巻付録 1975年8月)
パイとプディングとパイのパイ (「現代思想」 1976年8月)
バーミンガムのワイン・バー (「現代思想」 1977年2月)
蜂蜜酒の故郷――リンディスファーン・ミード (「翻訳人」 1977年7月20日)
注ぐ (「手」2号 1978年8月)
スタッフォードシャ陶器人形 (「グラフィケーション」 1980年10月)


ブロードサイド物語――イギリスの「瓦版」 (「グラフィケーション」 1980年7月)
チャップ・ブックの伝統――イギリスの「立川文庫」 (「グラフィケーション」 1980年8月)
トイ・ブックスの周辺――絵本の源流 (「グラフィケーション」 1980年1月)
十九世紀の版画工房――W・J・リントンのことなど (「グラフィケーション」 1980年2月)
ウォルター・クレインの絵本 (「グラフィケーション」 1980年3月)
ヴィクトリア朝絵本を見る視点 (「ほるぷ図書新聞」 1980年4月5日)
端物印刷物の世界――ビラ・チラシ・切符など (「グラフィケーション」 1980年9月)


イングリッシュ・チンツのデザイン (「Color Design」 1979年6、8、9月)
 1 最初期の木版プリント
 2 銅版プリントの導入
 3 木版プリント――一七七〇年代以降
 4 ローラー・プリンティングの導入
 5 染料・染色法の変化
 6 ローラー・プリンティングのデザイン――一八二〇~五〇年代
 7 ウッド・ブロック・プリンティングのデザイン――一八二〇~五〇年代
 8 モリス以前のイギリス・チンツ・デザインの特徴
 9 モリス登場前夜のデザイン状況
 10 一八〇〇年から一八三〇年のウッド=ブロック・プリント
 11 ウィリアム・モリス
 12 モリスの後継者たち
 13 リバティ=ファブリックス
壁紙の歴史 (「in」1号~4号 1980年1月~9月)
 1 壁紙の前史
 2 壁紙の揺籃期
 3 壁紙の発展
 4 第一回万国博前後
 5 モリス前夜
 6 A・W・N・ピュージンとオーウェン・ジョーンズ
 7 モリス・ペイパー
 8 最初期のモリス・ペイパー
 9 最盛期のモリス・ペイパー
 10 モリス以後
 11 ウォルター・クレイン
 12 C・F・A・ヴォイジイ
アール・ヌーヴォーのプロデューサー――『リバティ百貨店』 (「翻訳の世界」 1979年7月)


ミュージック・ホール (「グラフィケーション」 1980年4、5、6月)
 1 始めに
 2 イン・タヴァーン・パブ
 3 遊園地とサルーンズ
 4 ソング・アンド・サパー・ルームズ
 5 「カンタベリー・ミュージック・ホール」とサム・コウエル
 6 「ライオン・コミックス」
 7 ミュージック・ホールの天才マリー・ロイド


自然・風景・ピクチュアレスク
 1 ザ・ランドスケイプ・ガーデン (「カイエ」 1979年9月)
 2 コンスタブル (美術出版社 世界の巨匠シリーズ「コンスタブル」 1979年9月)
イギリスのオークについて (「現代思想」 77年11月~12月)
イギリスの雑木林(コピス) (集英社 「吉田健一著作集」第25巻月報 1980年10月)
コッツウォルド・ストーン (「グラフィケーション」 1980年11月)


ウィリアム・モリスと古代北欧文学 (「ユリイカ」 1980年3月)
ウィリアム・モリス『世界のかなたの森』 (晶文社 「世界のかなたの森」あとがき 1979年10月)
C・S・ルイス『別世界にて』 (「翻訳の世界」 1975年5月)
D・G・ロセッティとジェイン・モリスの往復書簡 (中央公論社「新版・世界の名著」第52巻「ラスキン・モリス」月報 1979年11月)

あとがき
参考文献
初出一覧



小野二郎 紅茶を受皿で 02



◆本書より◆


「紅茶を受皿で」より:

「W・B・イエイツの故郷スライゴーでも私は相変らずスーパーマーケットをうろついた。」
「そのスーパーの入口の向って右側に屋根の低い工事現場の簡易プレハブ風の建物があり、それが食堂だった。ちょうど昼時でもありそこに入りこんだ。私のテーブルの隣りに一人の小柄な、というか色々な理由でちぢんでしまったようなおばあさんが坐っていた。やがて運ばれてきたものは一杯のお茶と薄いトースト二枚である。」
「私はおばあさんの次の行為にあっと息をのみ、説明しがたい感動のようなものにとらわれたのである。それはそれほど奇矯な振舞いというのではなくて、ただお茶をカップから受皿にあけて、そこからすすっただけのことである。だが私は一人勝手に昂奮してしまった。ジョージ・オーウェルが第二次大戦中、BBCにつとめていたころ、仲間のインテリに対するいやがらせとしてこれと同じことをしたという話を即座に思い出したからである。」
「私の印象、記憶では、オーウェルはいやがらせのために、ただ不作法な下品な行為をしたということになっていた。(中略)そういう記憶をもっていたからこそ、そのおばあさんの所作に一撃をくらったのである。あのオーウェルの振舞いは、単なる下品、無作法なものでなく、それ自体一個のいわば作法であり、思いつきの出鱈目というのではなく、あるひとびと、あるいはある階級にとっては正統な行動様式なのではなかろうかということである。それが今は何かによって圧しつぶされ、表にあらわれなくなってきているのに、あのおばあさんはその抑圧から自由に生きて、何気なく無心に行動してそれを表現したのだった。確信にみちて静かに受皿からお茶をすすっているおばあさんに、他の誰れも自分はそうしているわけではないけれど、特に注意を払わない。自分たちはカップで飲んでいるだけである。
 ああオーウェルのあの行為の背景にはこういう「伝統」があったのだ(中略)。オーウェルはそれを素直に表現できなかった。できるわけがなかった。それが人に不作法に映ずること、不愉快に思われることはわかりきっているからだ。だからいやがらせになる。あてこすりになる。
 しかしオーウェルが憧れているものには実体があった。」



「ブロードサイド物語」より:

「これら印刷されたバラッドは、一枚の紙の片面のみにそうされていたのでブロードサイドと呼ばれた。これにはバラッドだけではない。ニュース、情報もまた刷られ、大衆の手にわたった。いやバラッドもまたニュースの役割りを果たしもしたのである。十六世紀初め、テュダー朝から十九世紀半ばまで、持続的に存在した。
 これ以前は、バラッド・シンガーたちは、さまざまな行商仕事と結びつけて、地方地方を唄い旅していたのだが、今やそのバラッドのコピイを唄ってきかせて売ることができるようになったのである。
 古い馴染みの節(ふし)に新しい歌詞がつけられるというのが、よくやられる手であった。細長い紙の頭のところは、大きな木版画(ウッド・カット)で飾られ、紙の長さは歌詞の分量で色々だった。デザインも作りも粗っぽく、活字は重苦しいブラック・レター(ひげ文字)で木版も洗練にほど遠いものであったが、その木版画は未熟な技術にかかわらず、原始芸術の力強さ、直截性、自由、に似た不思議な魅力をもっている。しかも、ゴシックの彫刻(中略)のもつユーモアとグロテスクの精神とあふれんばかりの幻想とにもみちみちている。
 この怪奇な幻想は、大衆の求めるセンセイション、露骨にしてきわどいユーモアによって強められた。」

「さてその唄の中身と言えば、様々だが、労働者階級の欲求不満と怒りが表現されていると言ってしまえば簡単すぎようが、(中略)下層階級の街頭生活の暴力と即物主義を反映するのは当然、おすましの気取った連中を無残に嘲弄する唄もまた愛好された。
 しかし、ベスト・セラーはやはり犯罪物であった(物語が散文で書かれ最後にバラッドがあるという形式)。犯罪と言ってもむろん殺人で、当時世間を騒がせた事件だが、よりセンセイショナルに仕立ててあるわけである。殺人者や犠牲者の絵ばかりでなく、殺人現場を生々しく再現した。」



「ミュージック・ホール」より:

「イギリスが自分が生んだものだと誇らかに、かつ正当にも宣言しうる芸術があるとすれば、それはミュージック・ホールだという。」
「その最盛期とされている一八九〇年代(中略)のスター中のスターであった、例えばダン・リーノウやマリー・ロイドの芸や歌の輝きの質が、居酒屋の真只中から生まれてきたものであったということが肝心だ。汚濁と洗練、暗い悲哀と乾いた機智。」

「ミュージック・ホールの歴史を飾るスターたちは数多くあったが、もっとも強い光を発する存在といえば、男性ではダン・リーノウ(Dan Leno 1860~1904)であり、女性はマリー・ロイド(Marie Lloyd 1870~1922)というところが動かないようだ。」
「一九二二年、マリー・ロイドが、幕が降りた直後舞台の袖で倒れ、三日後に死んだ時、イギリス全土がいかに一瞬息を止めたか、プルウストやエリュアールが死んだ時のフランスと同じだったと言っているのは、フォード・マドックス・ブラウンである。実際、新聞の売り子が「マリー・ダイズ! マリー・イズ・デッド!」と叫んで通りを走り抜けた時、すべての交通は三十秒止まったと言う。」
「T・S・エリオットは「クライテリオン」の二号に短文ながらマリー・ロイドという文章を寄せて、その中でこう書いている。
 「民衆の魂を表現する能力にかけてマリー・ロイドは無類だったと思われる。……しかし、彼女が他の喜劇役者たちと違っていたのは、その演技の完璧よりもその用い方にかけてであった。マリー・ロイドのやることには畸型的なものが何もなくて、そのおかしさは少しも誇張に頼らず、まったく選択と集中の結果だった。」
 またこうもいう。「彼女は他の寄席芸人よりも、ある意味では倫理的に優れていたのであって、彼女の民衆に対する理解と共感、及び民衆がその私生活でもっとも高く評価しているいくつかの美徳を彼女が体現しているのを、民衆の方で知っていたことが、マリー・ロイドに彼女の生前に占めていた地位を与えたのだ。」つまり民衆は彼女のなかに「彼ら自身の生活の表現と尊厳(ディグニティ)を見出していた」というのである。
 「尊厳(ディグニティ)」ということが肝心だと思う。ほぼ四十年も経ってから、ジョン・デイヴィッドソンというスコットランド生まれの世紀末詩人のことを、同じ言葉を使って論じている。この詩人は今はほとんど忘れられてしまっているが、『フリート街牧歌』その他ロンドンの陋巷を歌い、T・S・エリオットにラフォルグに向わせたといわれている。週三十シリングの安事務員を歌うのに、通常の詩語でなく、民衆の卑語俗語が用いられ、それがテーマの偉大さを誘い出し、その事務員の存在に尊厳(ディグニティ)を与えているというのである。
 下品、俗悪、法外にもかかわらずではなく、まさにそのゆえに、「尊厳(ディグニティ)」を獲得するということは、いささか唐突だが、民衆芸術と前衛芸術の出会う場所だろうと思う。」



「ウィリアム・モリス『世界のかなたの森』」より:

「だがイエイツの言葉はとても素晴らしいので引用したくなります。少年時代のことです。
 「私は、それまで不幸な人たちを同情しなさいと、さんざん教えられ、うんざりしてしまうほどだった。ところが、まったくモリスのロマンスを読んだおかげで、あふれんばかりの橅(ぶな)の木の枝や、はちきれそうな麦の穂を心のうちに持っていて、何もかも幸福の種にしてしまうような人間の存在に気づき共感できるようになったのだ。」
 また中世ヨーロッパ文学のすぐれた学者であり、「ナルニア国物語」の作者であるC・S・ルイスの少年期からの愛読書でもありました。彼はいいます。
 「モリスの想像世界はスコットやホメーロスのそれのように、風が吹き、手でしっかりと触わられ、響きを発し、立体的である。」
 モリスは風景(ランドスケイプ)を描くことに関心がない、ただ土地の形勢(ライ)を伝えるだけだ。他の人の物語は景色があるだけだが、モリスのには地理がある、ルイスはこのようにもいいました。」



小野二郎 紅茶を受皿で 03




こちらもご参照下さい:

角山栄 『茶の世界史』 (中公新書)
R・D・オールティック 『ヴィクトリア朝の緋色の研究』 村田靖子 訳 (クラテール叢書)
平野敬一 『バラッドの世界』
ウォルター・クレイン 『書物と装飾 ― 挿絵の歴史』 (高橋誠 訳)
川崎寿彦 『森のイングランド』
富士川義之 『幻想の風景庭園』
『1800 Woodcuts by Thomas Bewick and His School』 ed. by Blanche Cirker




























































































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小池滋 『ロンドン 世界の都市の物語』 (文春文庫)

小池滋 
『ロンドン 
世界の都市の物語』
 
文春文庫 こ 21 1

文藝春秋
1999年2月10日 第1刷
333p 
索引xii 参考文献vi ロンドン年表vii
文庫判 並装 カバー
定価514円+税
カバー: 安野光雅


「単行本 文藝春秋 一九九二年六月刊」



本書は「世界の都市の物語」シリーズの一冊として刊行されました。本書はその文庫化。本文中図版(モノクロ)多数。


小池滋 ロンドン 01


カバー裏文:

「伝統と繁栄を誇る大英帝国の首都ロンドン。その歴史ゆえに時と場所が交錯し、訪れる人々を混乱させる、このミステリアスな都市をディケンズ、亡命中のマルクス、フォールスタッフ、演奏旅行中のモーツァルト、切り裂き屋ジャックらこの街ゆかりの人物たちが案内してくれる、歴史と観光スポットを織りまぜたロンドン総合ガイド。」


目次:

序章 あの人と一緒にロンドン漫歩
 居間に座って時間旅行
 ローマ人の占領時代
 中世のロンドン

1 フォールスタッフと夜の散歩
 いざボアーズ・ヘッド亭へ
 辛口白ワインの効能
 ご馳走は一番乗り、いくさはどん尻
 爺さんの言うことにゃ
 曰く、勇気の神髄は分別
 ウィルの旦那とのお付き合い
 イーストチープの夢枕

2 ピープスとイーヴリンの火事見物
 シティ・オヴ・ロンドンが焼野原
 旦那さま火事です
 何と長い時間が経ったように思えたことか
 昼間同様の明るさ
 日記に見る性格

3 ジョナサン・ワイルド この世の最後の道行き
 ロンドンに名高い二つの監獄
 恐怖の司法制度
 「ロンドン犯科帳」
 ここは地獄の三丁目
 ニューゲイト紳士録
 タイバーンへの道
 悪人は死して名を残す
 
4 引越しにもあきなかったジョンソン博士
 博士の華麗なるロンドン遍歴
 シャツが清潔な日にぼくは人を訪ねた
 三文文士と大文豪
 引越し魔の跡を追う
 「オールド・チェシャー・チーズ」亭
 道楽者ボズウェルとグルメな博士
 ソーホーが出来るまで
 ダウニング街いまむかし

5 モーツァルト一家が歩いたロンドン
 八歳の神童
 クィーンズ・パレスの御前演奏
 縞馬とシンフォニー
 モーツァルトの崇拝者たち

6 ディケンズ少年の「ホーム」カミング
 ウォレン靴墨工場のある土地
 痩せても枯れてもホワイトカラー
 監獄の内と外
 チャールズくんのどたん場の知恵
 ウォータールー橋の南側
 作家ディケンズの誕生

7 カール・マルクスの放浪
 資本主義帝国へ亡命
 律義者の子沢山?
 降る日照る日も図書館通い
 大いなる遺産

8 英国式鉄道殺人事件
 走る密室
 犯行現場にて
 帽子と金時計の行方
 大西洋抜きつ抜かれつ
 処刑台への道
 ミューラー事件の波紋
 列車通勤の時代
 時代は三等へ

9 イースト・エンドの恐怖(その一)
 二つの未解決事件
 テムズ河のパーキング・エリア
 ドックのための産業城下町
 第一の殺人事件
 引き続く兇行
 真犯人は誰か?
 死体を“処刑”

10 イースト・エンドの恐怖(その二)
 「ジャック・ザ・リッパー」のあばれた街
 猟奇的な殺人
 元祖「怪人二十一面相」
 ジャック最後の犯行
 二〇世紀都市型犯罪

11 長谷川如是閑のロンドン 一九一〇年
 ジャーナリスト長谷川如是閑
 高級下宿の「ペイイング・ゲスト」
 レディとそろばん
 明治男の見たフェミニズム運動
 「女性に投票権を!」
 女の細腕で飲み干す大杯

ロンドン年表
参考文献
索引



小池滋 ロンドン 02



◆本書より◆


「ディケンズ少年の「ホーム」カミング」より:

「既に述べたように、当時の法によると、個人間の借金でも返済しないと、訴えられれば投獄されることになっていたのである。これはひどく残酷非道のように思えるかもしれないが、実はそれほどでもない。というのも、借金が払えない人の入れられる監獄は、(中略)人殺しや泥棒が入れられる監獄とは別種の、債務者監獄という場所であった。ここは普通の監獄とはかなり規則が違っていて、より寛大だった。なにしろ、ここは家族ぐるみで入ってもよい監獄で、もちろん当人は外へ出ることは許されないが、家族は門の開いている昼間は自由に出入りできる。」
「何のことはない宿泊費無料の公営住宅のようなもので、ここにいる限り外の債鬼に責めたてられることはなく安全なのだから、一生入っていたくなるくらいなものだ。(中略)ジョン・ディケンズも監獄の門を入る時には息子チャールズに向って、「わしにとって太陽は永久に沈んでしまったのだ」なんぞと芝居がかったセリフを吐いたものの、むしろ塀の中の生活の方が気楽と思っていたのではあるまいか。」

「両親がチャールズに労働を強いたのは、決して意地悪からではなかった。むしろ、悪意からであった方が、少年にとっては楽であったろう。父母を公然と責めることができたろうから。ところが、両親は善意から、チャールズのためによかれと思って、彼に仕事を課したのだ。つまり、息子の繊細な気持を想像すらできないという、善意の無知がその原因であった。これがチャールズにとっては故意の悪意よりも我慢できなかった。
 ボブの場合も同じで、もともとは彼の善意から生じた迷惑だった。いやみや底意地悪いいじめから、家まで送ってやるとしつこく言い張ったのなら、ボブを憎み返す正当な理由を見つけ出すことができたはずだ。ところが友人の心中を察することができないという、善意の無知から生じた行為だから、相手を憎んで、それで忘れるという単純な意趣返しで自分の気持を鎮めることができない。
 チャールズの憎悪はうっ積屈折した形でしか復讐(ふくしゅう)の方法を見出すことができなかった。善意の無知ほど世の中で恐ろしい迷惑はない、ということを思い知らされたのだ。自分で気付かぬうちに他人を迫害している人間ほど、始末に負えぬ悪人はいない、とつくづく思ったのだ。なぜなら、そうした加害者に対しては、正当単純な形での復讐が許されないというのが世の常識だから。
 チャールズに残された唯一の意趣返しは、想像力によって架空(フィクション)の世界の中で行なうことだった。」



「イースト・エンドの恐怖(その一)」より:

「ロンドンのイースト・エンド――と、こう書いただけで、いつまでも変らない一つのイメージが人びとの頭の中に定着してしまいそうだ。貧困、無法、暴力、などなどが、霧の中に渦巻いて、恐ろしい地獄絵図を展開させる。水夫たちが飲んだくれて、殴り合い、殺し合いが日常茶飯事の安酒場。中国人が経営する地下のアヘン窟、その裏の落し戸から夜な夜な何者かの死体がテムズの底知れぬ水面に葬られる。狭い路地には売春婦が立ち並んで客を待つ。」
「だが、現実はこうした悲惨さを売りものにしたロマンチシズムのヴェールを、どんどんはぎ取ってしまった。二〇世紀になってから再開発と社会福祉の波が、真先にこの地区に押し寄せた。そこへ第二次世界大戦中の空爆が重なり合って、多くの地表面を瓦礫(がれき)の山に変え、その整理が終ったところには、現代的な――しかしながら散文的な都市風景が姿を現わした。
 ことに最近急激に押しよせたドックランド再開発は、東京におけるウォーターフロント計画と同じように、テムズ河下流沿岸地域の様相を、よかれ悪しかれ、目ざましく変えてしまった。これを非難するか支持するかは人によってさまざまであろうが、ともかく今では切り裂き屋ジャックの幽霊が一〇〇年後に甦(よみがえ)ったとしても、戸惑うしかあるまい。
 というわけで、今日のイースト・エンドを通る人は、周囲を見まわして他のロンドンとほとんど変るところがない――いや、他のロンドンよりもずっと新しく、整然とした街頭が見られることで驚き、かつ失望させられたような気持になるようである。」










































































































































仁賀克雄 『ロンドンの恐怖 ― 切り裂きジャックとその時代』 (ハヤカワ文庫)

「シャーロック・ホームズ(一八八七年)、切り裂きジャック(一八八八年)、ドラキュラ伯爵(一八九七年)は、イギリスの十九世紀末が生み出した、サブ・カルチャーの三大スーパースターではあるまいか。」
(仁賀克雄 『ロンドンの恐怖』 「あとがき」 より)


仁賀克雄 
『ロンドンの恐怖
― 切り裂きジャックとその時代』

ハヤカワ文庫 NF146

早川書房 
1988年7月31日 発行
1994年4月30日 2刷
374p 
文庫判 並装 カバー 
定価600円(本体583円)
カバー: 建石修志



著者による「あとがき」より:

「一九七九年から「私の愛する切り裂きジャック」のタイトルで、ハヤカワ・ミステリマガジンに、断続的に二十二回連載した。(中略)連載完了後、最初から章の構成を立て直し、新たに書き下したのが本書である。
 私としては、切り裂きジャック事件を通じて見た、ヴィクトリア朝末期の大英帝国の首都ロンドンの一面を書きたかった。」



初版は1985年刊、本書はその文庫化。本文中図版(モノクロ)多数。


仁賀克雄 ロンドンの恐怖 01


カバー裏文:

「1988年、繁栄を謳歌するロンドンで五人の売春婦がつぎつぎと惨殺された。喉を切り裂き局部をえぐる残虐な手口に市民は震え慄き、警察は威信をかけて捜査を重ねたが、犯人は捕まらなかった。犯罪史上屈指の猟奇殺人者として、また矛盾にみちたヴィクトリア朝の象徴的存在として伝説の中に生き続ける〈切り裂きジャック〉とは何者だったのか。時代背景と事件経過を鮮やかに再現し、希代の怪物の正体に迫る。」


目次:

プロローグ 犯行以前
1章 第一の殺人
2章 第二の殺人
3章 スコットランド・ヤード
4章 第三の殺人
5章 第四の殺人
6章 ジャックの挑戦状
7章 ウォーレン総監辞任
8章 第五の殺人
9章 その後の類似事件
10章 切り裂きジャックの正体
11章 さまざまな容疑者
12章 ジャックの子孫たち
13章 切り裂きジャック伝説
エピローグ 百年後の犯行現場

主要参考図書
犠牲者一覧
有力容疑者一覧

終章のないミステリー (島田荘司)

あとがき (1985年)
文庫版あとがき (1988年)



仁賀克雄 ロンドンの恐怖 04


イースト・エンド地図。



◆本書より◆


「大英帝国の史上空前の繁栄の基盤には、悪辣な搾取に苦しむ植民地が存在したように、ヴィクトリア朝の絢爛たる栄華と豪奢の背後には、恐るべき悪徳と貧困とが横たわっていたのである。とくに産業革命が進み、人口集中の著しいロンドンでは、天国と地獄が共存していた。
 切り裂きジャックは、その地獄の腐敗した土壌に育まれた悪の華の一つにすぎない。この時代のアンダーワールドや犯罪実話の記録を繙(ひもと)けば、この種の犯罪は特殊なものでないことがわかる。」

「切り裂きジャック事件の前年、女王の即位五十周年祝典には、全ヨーロッパの王室や政府、大英帝国の植民地からの代表が参列し、国民こぞってこの偉大な女王の長寿を祝った。その余韻がいまだ醒めやらぬうちに、このいまわしい事件は起ったのである。
ヴィクトリア朝の最盛期に、この事件が起きているのは決して偶然ではない。
 対外戦争はたびたび起っても、国内においては、かつてのスペインやフランスとの戦いのように、イギリスが存亡の危機にさらされる事態はなく、植民地の拡張か分割による外地での戦争ばかりだった。ところが国内では富の流入と産業革命による貧富の格差、平和と安寧が長く続いたために道徳的堕落や腐敗などが、犯罪をひき起す温床となった。
 貴紳が地位と金銭に飽かして悪徳を行えば、庶民は貧困と絶望から悪事を働いた。それに加担しないまでも、一般大衆は猟奇的事件や犯罪に、うさばらしと異常な関心を寄せていた。世紀末の文化的爛熟や時代の閉塞状況がその背後にあった。
 ヴィクトリア時代の人々がこうしたことを気ばらしに愛好していた例が、公開処刑や、(中略)残酷見世物の繁盛ぶりである。公開処刑は一八六六年に廃止されるまで、ニューゲイト監獄をはじめ各監獄の門前で行われていた。」
「「人殺し(マーダー)! 恐ろしい人殺し(ホリブル・マーダー)だよ!」
 当時のゴシップ紙、絵入り新聞は、その販売部数を伸ばすために、好んで猟奇事件を扱い、街頭で売子にこう連呼させて、人々の興味を誘った。(中略)切り裂きジャック事件がセンセーショナルに扱われ、大パニックを起した背景には、当時のマスコミ、新聞の力によるところが大きい。」



仁賀克雄 ロンドンの恐怖 05


「上) ハンバリー・ストリート29番地の殺人現場。
下) 第2の犠牲者アニー・チャプマン。」

(「Annie Chapman - before and after death」)。


仁賀克雄 ロンドンの恐怖 03


切り裂きジャックの手紙。


「 地獄より
  ラスクさんへ
 ある女から切り取った腎臓の半切れを送るぜ。あんたのために取っておいたやつさ。残りの半片はフライにして喰ってしまったよ。かなりいける味だぜ。もう少し待ってさえくれれば、そいつを切り取った血まみれのナイフを送るぜ。
     署名 出来るものなら捕まえてごらん、ラスクさんよ」



From Hell letter (Wikipedia)



Univers Zero - Jack the Ripper




Judas Priest - The Ripper





こちらもご参照下さい:

R・D・オールティック 『ヴィクトリア朝の緋色の研究』 村田靖子 訳
































森洋子 編著 『ホガースの銅版画』 (双書 美術の泉)

「彼は、街頭で偶々、奇妙で滑稽な顔をみかけると、即座に立ち止った。「何をしているのか」と尋ねる友人に、彼が見せたのは親指の爪の上に描いた似顔絵であった。」
(森洋子 「ウィリアム・ホガース 人と芸術」 より)


森洋子 編著 
『ホガースの銅版画
― 英国の世相と諷刺』

双書 美術の泉 48

岩崎美術社 1981年6月10日発行
図版(モノクロ)88p 本文29p 
25.7×18.2cm 並装 カバー 
定価1,800円



森洋子 ホガースの銅版画1


帯文:

「産業革命の爆発するエネルギーと激動する社会、そこにしたたかに生きるイギリス人の喜怒哀楽を諷刺とユーモアとパロディをこめて表情ゆたかに生きいきと描き出す、わが国初のホガースの版画集」


帯背:

「18世紀英国の世相と諷刺」


帯裏:

「掲載作品: 「ヒューディブラス」挿絵、娼婦一代記、放蕩息子一代記、当世風結婚、勤勉と怠惰、残酷の四段階、一日の四つの時、選挙(以上連作)、南海泡沫事件、富くじ、真夜中の団欒、女死刑囚サラ・マルカム、笑う聴衆、サザックの縁日、悩める詩人、納屋で衣装をつける女旅役者、ビール街、ジン横丁、美の分析、闘鶏場、ジョン・ウィルクス殿、フィンチレーへの進軍、タイムスI、宗教的熱狂を図解すれば、他93点。」


内容:

図版
 1 南海泡沫事件 (1721)
 2 富くじ (1721)
 3 仮装舞踏会とオペラ (1923/24)
 4-15 サミュエル・バトラー著 『ヒューディブラス』 挿絵 (1725/26)
 16 ガリバーに科せられた刑罰 (1726)
 17-18 自然の女神を覗き見する童子(プットー)たち (1730/31)
 19-24 「娼婦一代記」 (1732)
 25 真夜中の団欒 (1732/33)
 26 女死刑囚サラ・マルカム (1732/33)
 27 笑う聴衆 (1733)
 28 サザックの縁日 (1733/34)
 29-36 「放蕩息子一代記」 (1735)
 37 ことの前 (1736)
 38 ことの後 (1736)
 39 居眠りする会衆 (1736)
 40 講義を聴く学生 (1736/37)
 41 悩める詩人 (1736/37)
 42 納屋で衣装をつける女旅役者 (1738)
 43-46 「一日の四つの時」 (1738)
 47 性格と戯画 (1743)
 48 絵画戦争 (1744/45)
 49-54 「当世風結婚」 (1745)
 55 上流階級の趣味 (1746)
 56 カレーの門 (1748/49)
 57-68 「勤勉と怠惰」 (1749)
 69 ビール街 (1750/51)
 70 ジン横丁 (1950/51)
 71-74 「残酷の四段階」 (1750/51)
 75 フェリックスの前で説教する戯画化されたパウロ (1751)
 76 フェリックスの前で説教するパウロ (1752)
 77 ファラオの娘たちのもとに連れられる幼児モーゼ (1752)
 78 フィンチレーへの進軍 (1750/51)
 79-80 「美の分析」 (1753)
 81-84 「選挙」 (1755)
 85 闘鶏場 (1759)
 86 ジョン・ウィルクス殿 (1763)
 87 ウィリアム・ホガースの肖像 (1748/49)
 88 喜劇のミューズを画くホガース (1758)
 89 鬘の五柱式 (1761)
 90 裁判官席 (1758)
 91 宗教的熱狂を図解すれば (1761頃)
 92 タイムズI (1762)
 93 竜頭蛇尾 (1764)

ウィリアム・ホガース 人と芸術 (森洋子)
 ホガースの少年時代と徒弟生活
 諷刺版画で世に出る
 画かれた道徳――ホガース版画の本質
 ホガース法
 ホガース版画の時事性
 臨機応変な画面変更
 性格描写の天才
 社会正義派のホガース
 外国嫌いなホガース
 ホガース版画の絵画的源泉
 『美の分析』――ホガース絵画の基本原理
 ホガース版画の文学性

あとがき
ウィリアム・ホガース略年譜
参考文献



森洋子 ホガースの銅版画2

「放蕩息子一代記」より。


森洋子 ホガースの銅版画3

「一日の四つの時」より。


森洋子 ホガースの銅版画4

「性格と戯画」。



◆本書より◆


「36 「放蕩息子一代記」第8図、精神病院にて」

「すべての望みを絶たれたトムは監獄で発狂し、ついにベドラム精神病院に収容される。最後までトムに献身的な恋人のサラはここでもやさしい看護の手を差しのべ、彼を励ます。しかし半裸体になったトムはすでにナイフで自殺を試みたのか、胸に絆創膏が貼られている。鎖に繋がれるのは要注意患者。看護人の一人はトムの世話より、サラに興味を示す。ホガースはこのシリーズの終幕で種々のタイプの狂人を見事に描出している。」
「ところで壁にむかって地球を描き、経度を計測する地理学狂人がいる。第3ステートではさらにその脇に1763年と記し、ブリタニアの寓意像を加筆した。すなわち、ホガースはこうした狂人の世界を1763年のイギリス社会のアナロジーと考えたのではなかろうか。廊下に二人の着飾った婦人の見物人がみられるが、その一人は扇ごしにこっそり裸体の狂人を覗き見ている。当時のロンドンっ子やお上りさんにとって、ベドラム精神病院の見物は日曜日の楽しみのひとつであった。」



森洋子 ホガースの銅版画5






















































































R・D・オールティック 『ロンドンの見世物』 (小池滋 監訳)

R・D・オールティック 『ロンドンの見世物 I』 
小池滋 監訳

浜名恵美・高山宏・森利夫・村田靖子・井出弘之 訳

国書刊行会 1989年12月20日初版第1刷発行
441p 訳者紹介1p
A5判 丸背紙装上製本 カバー 定価4,300円(本体4,175円)
装訂: 平野甲賀
Richard D. Altick : The Shows of London, 1978



「訳者あとがき」(第III巻所収)より:

「リチャード・ダニエル・オールテッィックは一九一五年の生まれ、アメリカのオハイオ州立大学の先生を長く勤め、現在は退職して名誉教授であるが、(中略)いまでも研究と執筆に勤勉にとり組んでいるようである。」
「専門は英文学研究で、とくに一八・一九世紀が彼の得意の領域である。(中略)彼はある特定の批評理論を奉じて、その教祖になるというような、最近のアメリカの大学の先生によくあるタイプの学者ではない。もっと伝統的な、よくも悪くも「イギリス的」な手堅い経験主義で武装して、尨大な資料文献の山にアタックし、それを噛みくだいて消化するという姿勢を、最初から最後まで崩さない。」



ロンドンの見世物01


帯文:

「英国見世物年代記
聖遺物から自動人形、世界の珍獣、パノラマまで
〈見る〉〈集める〉という行為に憑かれた
大衆の想像力を絵解きする見世物大百科!!」



帯背:

「娯楽興行
の社会史」



帯裏:

「登場する主な見世物
トラデスキャントの箱舟/巨人の骨/リーヴァー博物館/ピドコック巡業動物園/学者豚/ベドラム精神病院/彩色のプリンス/サーモン夫人の蝋人形/覗きからくり/自動人形/マーリンの魔法の洞窟/哲学的花火/ヴォクスホールの気球/ウェストミンスター寺院/ロンドン塔/ロイヤル・アカデミー展/エイドフュージコン/レスター・スクエア・パノラマ館/コロシアム/他」



カバーそで文:

「産業革命と植民地経営によって、未曾有の繁栄を誇ったイギリスはまた、世界随一の見世物王国でもあった。中世末期から19世紀にかけてロンドンで興行され、人びとを夢中にさせた見世物、娯楽施設の数々を、同時代の証言と貴重な図版で紹介。〈見る〉〈集める〉という行為に憑かれた、近代ヨーロッパ大衆の想像力を絵解きする見世物大百科。
第1巻は、教会の聖遺物、収集家の珍品キャビネットの英国見世物史の濫觴から、学者豚、蝋細工、覗きからくり、自動人形など、あの手この手の見世物興行、ロンドン塔、ウェストミンスター寺院、ベドラム精神病院などのロンドン名所案内、遊園地が催す噴水ショー、花火、気球の打ち上げ、ロイヤル・アカデミー美術展の開催、エイドフュージコン、ロンドン名物コロシアムの巨大パノラマの登場まで、17世紀初頭から18世紀の見世物業界の活況ぶりを生き生きと描く。」



目次:

序論
第1章 キャビネットから博物館へI 1600-1750年
第2章 キャビネットから博物館へII 1750-1800年
第3章 妖怪変化屋ならびに世にも不思議な見世物師たち
第4章 蝋細工と時計仕掛け
第5章 機械仕掛けの発明展
第6章 水、火、空気と天の寝台
第7章 一八世紀ロンドンの名所と行楽地
第8章 アート・オン・ディスプレイ
第9章 エイドフュージコン
第10章 レスター・スクエアのパノラマ
第11章 歓楽宮のパノラマ
文献注
一七世紀ロンドン市街図



ロンドンの見世物02

「1784年にパンテオン劇場で展示されたルナルディの気球」


ロンドンの見世物03

「マジック・ランタン」


ロンドンの見世物05

「エイドフュージコン。万魔殿の景を見せている」



R・D・オールティック 『ロンドンの見世物 II』 
小池滋 監訳

浜名恵美・高山宏・森利夫・村田靖子・井出弘之 訳

国書刊行会 1990年2月28日初版第1刷発行
491p 訳者紹介1p
A5判 丸背紙装上製本 カバー 定価4,300円(本体4,175円)
装訂: 平野甲賀
Richard D. Altick : The Shows of London, 1978



ロンドンの見世物06


帯文:

「世界を一望の下に!!
世はまさにパノラマ時代、猫も杓子もパノラマ通い。
フリーク・ショーに動物園、蝋人形館も大入満員。
ますます巨大化、多様化する見世物興行の数々。」



帯背:

「パノラマ
黄金時代」



帯裏:

「登場する主な見世物
ディオラマ/動くパノラマ/コズモラマ/ファンタズマゴリア/親指トム将軍/シチリアの妖精/生ける骸骨/ホッテントット・ヴィーナス/アステカの小人族/エジプシャン・ホール/ナポレオンの馬車/古生物の化石/中国展覧会/人魚/サルタン・ティプーの虎/珍獣ボナサス/鯨の骸骨/リージェンツ・パーク動物園/象のチュニー/模擬海戦/サリー動物公園/火山噴火ショー/マダム・タッソー蝋人形館/活人画/造形ポーズ」



カバーそで文:

「世はまさにパノラマ時代。巨大なカンヴァスに写し出される世界の町々、アルプスの山々、最新の戦争光景。ディオラマ、動くパノラマ、コズモラマと次々現われる新機軸に、幽霊ショーでロンドン市民を恐懼せしめたファンタズマゴリアも上陸。東洋の珍品、古代遺宝を並べたてたブロックのエジプシャン・ホールが異国趣味、古代幻想をかきたてれば、新大陸やアフリカから連れてこられた「高貴な野蛮人」や、フリーク・ショーが一世を風靡する。動物園には世界の珍獣奇獣が集められ、マダム・タッソー蝋人形館は大入満員。大英帝国の繁栄の下、ますます巨大化・多様化する見世物興行の数々。」


目次:

第12章 ディオラマ
第13章 パノラマ百態
第14章 パノラマ劇場
第15章 動くパノラマ
第16章 光学、機械、幽霊
第17章 幕間――見世物とロンドンの市民生活
第18章 ウィリアム・ブロックとエジプシャン・ホール
第19章 進歩の時代のフリークス
第20章 高貴な野蛮人再考
第21章 古代趣味と異国趣味
第22章 動物王国における生と死
第23章 動物園と遊園地
第24章 蝋人形と肉体芸術
文献注
一八世紀ロンドン市街図



ロンドンの見世物07

「ディオラマ。「霧の廃墟」」


ロンドンの見世物08

「コズモラマ。」


ロンドンの見世物09

「ピカディリー通り22番地にあるブロックのリヴァプール博物館」


ロンドンの見世物10

「カッペルリのネコの芸当の広告ビラ、1832年。」



R・D・オールティック 『ロンドンの見世物 III』 
小池滋 監訳

浜名恵美・高山宏・森利夫・村田靖子・井出弘之 訳

国書刊行会 1990年6月30日初版第1刷発行
421p 訳者紹介1p 索引xxxii
A5判 丸背紙装上製本 カバー 定価4,300円(本体4,175円)
装訂: 平野甲賀
Richard D. Altick : The Shows of London, 1978



ロンドンの見世物11


帯文:

「万国博と見世物の饗宴
世紀の大イベント、ロンドン万国博覧会と
帝都を熱狂せしめた新奇な発明、ショーの数々
驚天動地のヴィクトリア朝見世物盛衰記」



帯背:

「水晶宮の
影の下に」



帯裏:

「登場する主な見世物
姿なき少女/大発見/アポロニコン/顎叩き/自動オーケストラ/天文学ショー/科学講演/酸水素顕微鏡/カンテロの孵卵器/テムズ・トンネル/蒸気銃/アデレイド・ギャラリー/潜水鐘/ポリテクニック/戦場模型/刺繍画/ナショナル・ギャラリー/大英博物館/幸せな家族/水晶宮/インドへの大陸横断路/ワイルドの大地球儀/モンブラン登頂/パノプティコン/サウス・ケンジントン博物館/ペパーの幽霊」



カバーそで文:

「19世紀のめざましい技術革新は見世物の世界にも変化をもたらした。自動オーケストラ、詩作機械、「姿なき少女」など、新奇な機械仕掛けの数々が人々を驚倒させ、天文学ショーやファラディの公開科学講座が、教育と見世物を結びつける。戦場や都市の精巧なミニチュア模型、ワイルドの大地球儀、「モンブラン登頂」ショーが、大英帝国の版図拡張に沸く国民の好奇心をかきたて、大英博物館など公共施設の開放が国会で審議される。そしてハイド・パークの「ガラスと鉄の殿堂」水晶宮の下、世界中の人・物・情報を集めた世紀の大イベント――1851年ロンドン万国博覧会の開催。その未曾有の盛況ぶりにヴィクトリア朝見世物産業の変遷を追う。見世物の社会史全3巻完結。」


目次:

第25章 またまた機械仕掛けの見世物
第26章 科学のふたつの顔
第27章 大衆のためのテクノロジー
第28章 手工芸品と模型
第29章 民衆に開かれた美術
第30章 幕間――見世物産業の内幕
第31章 国家的モニュメント
第32章 水晶宮の年――一八五一年
第33章 五〇年代I 新しいライフ・スタイルとパノラマの衰退
第34章 五〇年代II 旧き秩序は移ろう
エピローグ
文献注
一九世紀ロンドン市街図
英国見世物史年表
訳者あとがき (小池滋)
人名索引/事項索引



ロンドンの見世物12

「幸せな家族」(The Happy Family)
「多種類の小動物、鳥が、単一の檻の中で仲睦まじく暮らしている」


ロンドンの見世物13

「水晶宮内部」


ロンドンの見世物14

「ロイヤル・パノプティコン」


ロンドンの見世物15

背表紙。


ロンドンの見世物16

カバーを外してみた。順不同。


the learned cats






























プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー

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