T・フィッタリング 『セロニアス・モンク 生涯と作品』 後藤誠 訳

「どんな時でも、彼は音楽のことしか考えていないのです。たとえ直接、口に出さなくても、いつも頭の中は音楽でいっぱいなんです。彼は、人がいっぱいでごった返した部屋の真ん中でも、突っ立ったまま、平然と作曲できる人です。彼ほど自分の殻に閉じこもるのが得意な人はいないと、わたしは思います。」
(ネリー・モンク)


T・フィッタリング 
『セロニアス・モンク 
生涯と作品』
後藤誠 訳


勁草書房 
2002年6月20日 第1版第1刷発行
v 159p+146p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価3,800円+税
装丁: 寺山祐策



Thomas Fitterling: Thelonious Monk : His Life and Music, Berkley Hills Books, 1997
前半(「モンクの生涯」「モンクの音楽」)は縦書、後半(「モンクの作品)は横書です。本文中モノクロ図版多数。
本書の原文はドイツ語、日本語訳はロバート・ドビン(Robert Dobbin)による英訳からの重訳ですが、英訳・日本語訳ともに原著者の協力の上で作成されているようです。
序文はソプラノ・サックス奏者のスティーヴ・レイシー。レイシーは『Big Band and Quartet in Concert』でモンクと共演しました。
2010年になってロビン・ケリー(Robin Kelley)による浩瀚な伝記が出版されるまで、モンクに関するめぼしい本は、フランス人ローラン・ド・ウィルド(Laurent de Wilde)による伝記(邦訳は音楽之友社刊)と本書の、ヨーロッパの著者によるものしかなかったというのも、モンクが本国でどのような扱いを受けていたかを証明しているようで興味深いです。


フィッタリング セロニアスモンク 01


目次:

まえがき (トーマス・フィッタリング、2001年9月)
序文 (スティーヴ・レイシー、1997年1月)

PART1 モンクの生涯
 天才の誕生 (1917年~1941年) ミントンズ時代: ビバップの席巻 (1942年~1946年)
 ブルーノート時代: 輝かしい前途 (1947年~1952年)
 プレスティッジ時代: 大転換期 (1952年~1954年)
 リヴァーサイド時代: 大いなる躍進 (1955年~1961年)
 コロンビア時代: 世界的評価を確立 (1962年~1968年)

PART2 モンクの音楽
 モンクのサウンド
 アンサンブルにおけるモンク・スタイルの展開
 〈バグス・グルーヴ〉でのモンク (1954年)
 作曲家としてのモンク

PART3 モンクの作品
 アルバム研究
 モンクに関する映画・ビデオのリスト
 付録A モンクの代表的名盤
 付録B 音楽用語小辞典
 参考文献
 訳者あとがき



フィッタリング セロニアスモンク 02



◆本書より◆


スティーヴ・レイシーによる「序文」より:
 
「この他にもセロニアスが残した名言はある。いくつか紹介すると
 「天才とは、どんな状況でも自分自身を貫き通す人間だ」
 「世の中はいつも夜だ。でなければ光はいらない」
 「モンク(MONK)=知る(KNOW)=(自分の居場所を)いつも意識している」
 「ひとつの楽音は、山のように大きくもなれば、針のように小さくもなる。その大きさは、演奏するミュージシャンの想像力にかかっている」」

「セロニアスは、特別のユーモアセンスと遊び心をもった、素晴しい人間でもあった。もろもろの遊びが好きで、死んだふりをするのも、彼の特技だった。
 あれはたしか夏のできごとだった。われわれがジャズギャラリーで演奏している時、休憩時間のとき、われわれは、クラブの前の通りに出ていた。するとモンクが、通りを過ぎていく車と信号で遊んでいた。その姿は、まるで闘牛をあやつる闘牛士のようだった。」

「彼は「若い頃は、数学が得意だったんだ」と教えてくれた。わたしは、なるほどと思った。なぜなら彼のタイムとスペースに対するセンスは、超人的だったからだ。」

「この世を去る一、二年前に、ニカ男爵夫人の家に、一度だけモンクを訪ねたことがある。
 セロニアスは、あらゆるものに興味や欲求をもてなくなっていた。ピアノには、ここ七年間ずっと触っていないんだ、といわれた時、そんな彼を目の当たりにするのは、胸が張り裂けそうになるほどつらかった。」



「モンクの生涯」より:

「少なくともひとり、モンクのユニークさを認めていた評論家がいた。ハービー・ニコルズである。ニコルズはピアニストでもあったが、彼の音楽にも、初期のモンク同様、謎に秘められた部分が多かった。」

「「新聞は読まないし、本も読まない。最新の情報はテレビをずっとみながら得ている」。
 「眠ることは好きだ。睡眠時間は、何時から何時と、とくに決めていない。疲れたら眠る。それでいいんだ」。」
「ネリー・モンクが、マスコミむけに以下のような発言を残したことは有名だ。
 「どんな時でも、彼は音楽のことしか考えていないのです。たとえ直接、口に出さなくても、いつも頭の中は音楽でいっぱいなんです。彼は、人がいっぱいでごった返した部屋の真ん中でも、突っ立ったまま、平然と作曲できる人です。彼ほど自分の殻に閉じこもるのが得意な人はいないと、わたしは思います。
「セロニアスは音楽を作ること以外には、何にも興味がないんです。今も昔もそうですが、彼は楽観主義者なのです」」
 
「同じ曲をいつも繰り返して演奏している理由を尋ねられたモンクは、こう答えた。
 「その曲のための聴衆を作るためだ」」

「モンクの病気について、ニカ男爵夫人は、こう語っている。
 「彼がここに住みはじめた最初の年の出来事でした。(「ここ」とは、彼女が新しく得たニュージャージー州ウィーホーケンの家)。われわれはニューヨークから車で帰る途中で、彼が突然わたしの方を向いて、こういったのです。
 『わたしはたいへんな重病なんだ』
 これがセロニアスが病気であることについて聞いた、たったひとつの言葉でした。彼はそのことを二度と口にしませんでした」。
 公の場に顔を出すことをモンクが嫌がるようになったことに関して、チャーリー・ラウズはさらりと語っている。
 「何かきっかけがあたんだろうな。もうこれ以上ピアノを弾きたくない、と思わせるようなことがあったんだよ」」

「モンク晩年の日々は、ニカ男爵夫人の所有する家で引退生活を過ごした。そして、一日の大部分を、ベッドに横たわりながらテレビを見てすごす、という生活を続けた。」
「外界との接触は、バリー・ハリスのような親しい友人とわずかな関係者に限られた。ハリスは語る。
 「モンクはこころの病気を患っていました。どこが悪かったのか、誰もたしかなことはいえないのです。(中略)最後の数年間は、まずピアノを弾きませんでした」」





































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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