三谷一馬 『明治物売図聚』

三谷一馬 『明治物売図聚』

中公文庫 み-27-7
中央公論社 2007年11月25日初版発行
439p 口絵9点(カラー8点、モノクロ折込1点)
文庫判 並装 カバー 定価1,286円+税

「本書は『明治物売図聚』(一九九一年十二月、立風書房刊)を、再編集したものです。」



honto のポイントその他があったので本書を購入してみました。帯付でした。
「ちょろけん」がかっこいいなーとおもいました。

本書「はじめに」(平成三年)より:

「本書『明治物売図聚』の初版は、昭和五十二年七月に三樹書房より刊行されました。A4判横とじ二百八十二頁の絵の本と、A4判縦とじ百二頁の別冊解説書の二分冊からなる、箱入り二万三千円の豪華本です。」

初版「序文」より:

「江戸、明治の物売りは美声の売声と、奇想天外な扮装で庶民に親しまれ、移り変る季節を知らせる街の風物詩でもありました。」
「この図聚の絵は『風俗画報』『都の華』など、明治に出版された雑誌から私が模写したものです。しかし一点一画を原画に忠実に模写したものではなく、私の絵に描き直してあります。また、原画にない部分は描き足してあります。(中略)絵によっては原画が小さいので、それを拡大するため加筆したものもありますし、明治の写真を絵に描きあらためたものも少なくありません。ただし、同職種のものを参考にして、風俗画としての間違いはないようにつとめました。」
「なお、本書の題名は『明治物売図聚』としましたが、狭義の「物売り」ではなく、例えば「点灯夫」「立ちんぼう」「出張医」のような生業も含めました。」



明治物売図聚1


帯文:

「納豆売り、
ちょろけん、
人力車……
三百余点の絵とともに
明治の街角が
鮮やかに
甦る!」



カバー裏文:

「江戸時代の物売たちは、明治の世でどんな生き方をしたのだろうか? 江戸風俗画の第一人者である著者が、街の風物詩であった明治の物売を、当時の雑誌や様々な資料を元に模写復元した労作。三百余点の絵に詳細な解説を加え、文明開化による急速な変化に直面し、内面に矛盾を抱えながらも、たくましく生きる庶民の姿を鮮やかに描き出す。」


目次:

口絵
 納豆売り
 砂糖入り金時売り
 ゆであずき売り
 京都の蛍売り
 京都の辻占売り
 提灯売り
 稗蒔き売り
 ちょろけん
 東京の屋台店

はじめに

歳事
 太神楽
 猿廻し・女猿廻し
 万歳
 宝船売り
 達磨売り(一)
 達磨売り(二)
 角兵衛獅子
 獅子舞
 とんど売り
 鳥追い(一)(二)
 いり種売り
 苗売り
 鯉売り
 風鈴売り
 金魚売り
 京都の金魚売り(一)(二)
 京都の虫売り
 虫売り
 祭番附売り
 朝顔売り
 しのぶ売り
 釣草売り
 ほおずき市
 うちわ売り
 京都のうちわ売り
 岡山の灯籠売り
 灯籠売り
 おがら売り・笹売り
 草市
 アイスクリーム売り
 氷水売り
 氷売り
 京都の氷売り
 徳島の氷売り
 花火売り
 京都の花売り
 花売り(一)(二)
 草花売り
 秋水売り
 生姜市
 放し亀売り
 まゆ玉売り
 かがみ餅売り
 羽子板市
 お飾り売り
 餅つき


 魚売り
 京都の鰈売り
 京都の鮎売り
 金沢の魚売り
 徳島の鯖売り
 昆布売り
 どじょう運び
 しじみ売り
 乾海苔売り
 塩売り
 京都の海苔売り
 京都の唐辛子売り
 福島の唐辛子売り
 天麩羅屋
 いなり鮨売り
 東京の鮨売り
 大阪の鮨売り
 鮨屋
 なべやきうどん売り
 大阪のうどん玉売り
 京都のうどん屋
 京都の夜泣きうどん
 夜鷹そば
 ロシヤパン売り
 パン売り
 洋装夫婦のパン売り
 食パン売り
 牛乳配達(一)(二)
 油売り
 京都の酒売り
 酒売り
 酒粕売り
 大阪のかす汁売り
 牛肉売り
 牛肉のにこみ売り
 牛の腸売り
 一品洋食売り
 水売り
 煮豆・漬物売り(一)
 煮豆・漬物売り(二)
 漬物売り
 くき屋
 すぐき売り
 納豆売り
 豆腐屋
 京都の豆腐屋
 麩売り
 はったい粉売り
 富貴豆売り
 おでん屋
 大阪のおでん屋
 かまぼこ売り
 茶売り
 焼芋屋


 大福餅売り
 栗餅売り
 だんご売り
 草餅売り
 もろこしだんご売り
 駄菓子卸屋
 鹿の子餅売り
 菓子売り(一)
 菓子売り(二)
 菓子売り(三)
 菓子売り(四)
 花林糖売り
 かりかり煎餅売り
 カルメラ売り
 甘酒売り
 京都の甘酒売り
 豊年踊り
 親孝行の菓子売り
 京都のぜんざい売り


 飴売り(猫八)
 飴売り(一)(二)
 飴売り(三)
 京都の飴売り
 鮹の飴売り
 棒飴売り
 飴細工(一)(二)
 飴湯売り
 水飴売り
 唐人笛の飴売り
 拳骨飴売り(一)(二)
 よかよか飴売り
 京都の取り替えや
 人形を使う飴売り
 
菜・果
 京都の八百屋
 八百屋
 京都の大根売り
 ねぎ売り
 両国の西瓜売り
 京都の西瓜売り
 くだもの売り・柿売り
 蕗売り
 焼き栗売り
 京都の焼き栗売り
 栗売り
 いり豆売り(一)
 いり豆売り(二)
 京都の豆売り


 カンドリヤ売り
 毒消し売り(一)(二)
 オ一二の薬売り(一)(二)(三)
 定斎屋
 富山の薬売り(一)(二)
 凰脳丹売り
 枇杷葉湯売り
 千金丹売り
 赤蛙売り
 鼠とり薬売り
 京都の薬売り
 薄荷売り


 ホーカイ節
 阿呆陀羅経
 流行歌門附
 新内門附
 愉快節
 辻占売り(一)(二)
 祭文語り
 女読売り
 読売り
 声色つかい
 住吉かっぽれ
 ちょぼくれ
 義太夫節
 涼船の義太夫
 独楽廻し
 居合抜き
 源次郎の曲芸
 歯力
 籠ぬけ
 ひとり角力
 人形使い
 首掛芝居
 綱渡り

玩具
 独楽売り
 おもちゃ屋(一)(二)
 燕売り
 宝伝鳥売り
 烏凧売り
 鶴のおもちゃ売り
 鳩ぽっぽに豆喰わしょ
 みみずく売り
 板返し売り
 麦わら細工売り
 しん粉細工(一)(二)
 人形売り
 姉さま人形売り
 纏人形売り
 紙面売り
 吹出し面売り
 与次郎兵衛売り
 板角力売り
 風車売り
 住吉踊売り
 傘売り
 ラッパ売り
 吹玉売り(一)(二)
 風船売り(一)(二)
 紙風船売り(一)(二)
 ほおずき売り・海ほおずき売り
 魚の餌売り
 虫の鳴き声売り
 梨釣り
 おもちゃの鼠売り
 はね兎売り
 ずぼんぼ売り
 蝶々売り
 器械蝶々売り

道具
 笊売り
 陶器のせり売り
 籠売り
 京都の土器売り
 鍋屋
 ほうき売り(一)(二)
 かみそり磨ぎ
 洋傘直し
 傘直しの注文取り
 京都の灯しん売り
 火屋売り
 京都のランプ売り
 空びん売り
 たが屋
 呉床売り
 はしご・つち売り
 はしご・はり板売り


 蓄音機屋
 点灯夫
 街灯火屋磨き
 鷹匠
 鶏売り
 鳥刺し
 鳩の豆売り
 せり市
 呉服のせり市
 古道具屋
 古着市
 支那人の行商
 小間物売り(一)
 小間物売り(二)
 羅宇屋(一)(二)(三)
 美人煙草売り
 煙草売り(一)
 煙草売り(二)
 出張医
 女あんま師
 あんま師
 水まき(一)
 水まき(二)
 洗い屋
 売り湯
 東京の生洗い屋
 大阪の生洗い屋
 大阪の糊売り
 京都の糊売り
 魚・草履売り
 下駄の歯入れ(一)(二)(三)
 大阪の磨き砂売り
 雪駄直し
 屑拾い
 屑屋(一)
 屑屋(二)
 衛生掃除屋
 灰買い
 炭売り
 号外売り
 新聞売子(一)(二)
 新聞配達員
 東西屋
 広目屋(一)
 広目屋(二)
 絵葉書売り
 刷毛書
 易者(一)(二)
 法印
 観音巡り
 金比羅参り
 お札くばり
 立ちんぼう
 人力車(一)(二)

出典・参考文献
索引



明治物売図聚2


本書より:

「ちょろけん
ちょろけんは江戸時代の末から明治にかけて京都の正月にきた門附けで、またの名を「ちょろ」あるいは「手伝い踊り」ともいいました。
大きな黒い笠に白い顔、赤い腰巾をつけ、両手に持った先割りの竹を打ちながら走ってきて、
「ちょろがさんじました。大福ちょろじゃ。ちょろを見る人福徳来る、厄難厄病皆な取り払う」
などと囃して銭を乞いました。」



明治物売図聚3


本書より:

「パン売り
絵は「木村屋のパン、西洋のパン、アメリカのパン、パン、パン、パン」という売り声できた、木村屋のパン売りです。木村屋のパンは文明開化の食べ物だというので、明治二十年前後に大流行しました。
(中略)
絵のパン売りの太鼓はブリキ製で、中にパンが入れてありました。天幕の日除けは鹿鳴館の夜会のものを真似ています。
 パン売りの太鼓も鳴らず日の永き 子規」



明治物売図聚4


本書より:

「点灯夫
瓦斯灯がついたのは、明治五年横浜市街がはじめです。東京では八年三月、京橋、万世橋、常盤橋通り、浅草橋、次に浅草広小路の順でした。
「この瓦斯灯は、当今、上野公園と赤坂離宮だけでしょう。赤坂の方はたくさんもありませんから、宮内省の瓦斯係が点火していましょうが、上野公園のは博物館周辺(いまわり)で、ソレでも只今九十四基あります。ソレへ毎夜点火して毎朝消灯して歩くのが、片手間ではありますが私の職業で、東京広しといえども私より外にはありますまい。場所は山の方が東京市になりましたから博物館の前から館の庭内、裏手徳川御廟へかけて午後四、五時から始め、二時間ぐらいで点火し終り、午前は夜の引明に消灯しますから、七時半に終ります。日暮里へ帰りますので、二里半――マズザット一日、朝夕五里歩くんです。往復点火棒を担ぎますから、人様の眼につきますが、天秤棒を除(の)けたら、私と鳥差でしょう、棒を担ぐのは……ソノ鳥差はツイゾ見当らなくなりました」
〔『明治開花綺談』〕」



こちらもご参照下さい:
三谷一馬 『江戸商売図絵』
三谷一馬 『彩色江戸物売図絵』
柴田宵曲 『明治の話題』『明治風物誌』
長谷川小信 画 『文明開化の神戸古版画集』 (プロメテウスライブラリー)
川上澄生 『明治少年懐古』 (ウェッジ文庫)


















































































































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三谷一馬 『彩色江戸物売図絵』

2013年6月17日。


三谷一馬 『彩色江戸物売図絵』

中公文庫 み-27-3
中央公論社 1996年3月18日初版/同6月25日再版
312p 文庫判 カバー 定価1,165円+税
カバーデザイン: 三谷靭彦



オールカラーでよみがえる、江戸の物売りたちの姿。
初版は昭和53年9月に立風書房から『彩色江戸物売百姿』として刊行された。本書はその文庫版。文庫化にあたり、さらに50点の絵と解説が追加されている。


彩色江戸物売図絵1


カバー裏文:

「奇抜な着想から生まれた人目をひく衣裳、思わず笑いを誘われる軽妙な身振り―。江戸の街を往来し、庶民に日用品を運んできた物売りの数々を、当時の絵画資料をよりどころにいきいきと再現、それぞれに鮮やかな彩色をほどこす。江戸風俗画の研究に打ち込んできた著者が二十数年の歳月をかけて描きあげた物売り百五十姿を、オールカラーで収録。」


本書「あとがき」より:

「江戸の物売りは俗に一文商いといわれる貧しい庶民の商いでした。しかし、その商いぶりには、思わず目をみはるような点が間々あります。(中略)しかし、それほど工夫をこらしたにもかかわらず、彼等の寿命は割合に短かったようです。人々に飽きられたり、ゆきすぎた異装を幕府からとがめられたりして、いつの間にか消えてゆきました。すると、すぐに次の新手の物売りが装いも新たに登場してきます。
考えてみますと、こうして物売りが尽きることなく現われた江戸時代は、物売りの最も盛んな時代ではなかったかと思います。
こうした物売りたちは、庶民からは日用品を運んでくる一種の便利屋として親しまれ、またときには季節の推移を知らせる使いの役をもつとめ、江戸の街を彩る風物詩として欠かせぬものだったのです。」
「収録した作品は、今までの著作と同じく黄表紙や洒落本の挿絵、肉筆浮世絵、版画等から、江戸期の物売りの風俗を復元したものです。絵によっては人物の姿を描き改めたり、原画の不足の部分を描き足したり、ときには小さい絵を拡大したりしたものもあります。
作品の原画は、二、三のものを除くと一色で描かれたものです。ですからほとんど著者自身の考えによって彩色したわけですが、着色に際しては他の絵を数多く参考にし、当時の風俗として間違いのないようにつとめました。」



目次:

季寄せ
 凧の卸売り
 払い扇箱買い
 絵馬売り
 太鼓売り
 桜草売り
 稗蒔売り
 菖蒲太刀売り
 母衣蚊帳売り
 七夕の竹売り
 朝顔売り
 すだれ売り
 きりぎりす売り
 灯籠売り
 盆提灯売り
 おがら売り
 放し鳥売り
 すすき売り
 赤鰯売り
 福寿草売り
 荒神松売り
 御神酒の口売り
 お飾り売り
 飾り松売り

飲・食
 冷水売り(一)
 冷水売り(二)
 お茶売り
 酒売り
 白玉売り
 塩売り
 法論味噌売り
 たたき納豆売り
 七味唐辛子売り
 乾物売り
 おさつの丸揚売り
 ゆで玉子売り
 座禅豆売り
 すいとん売り
 風鈴そば屋
 おでん燗酒売り
 鮨売り
 鯉売り
 鰯売り
 鰻の辻売り
 わらび売り
 枝豆売り
 まくわ瓜売り
 西瓜の切売り
 実梅売り
 茄子売り

飴・甘
 狐の飴売り
 お万が飴売り
 おじいが飴売り
 土平飴売り
 ホニホロ飴売り
 唐人飴売り
 取替えべい飴売り
 花輪糖売り
 孝行飴売り
 金時売り
 あやめ団子売り
 大福餅売り
 しるこ売り
 お豆さん売り


 胸腹一切薬売り
 枇杷葉湯薬売り
 弘慶子
 伽蘭湯薬売り
 膏薬売り
 与勘平膏薬売り
 藤八五文薬売り
 百眼の米吉

手遊び
 しゃぼん玉売り
 しん粉細工売り
 評判の俵売り
 手車売り
 亀山のお化け売り
 舌切すずめ売り
 槍持奴売り
 かんざし売り
 三番叟売り
 御来迎売り
 目かずら売り
 玉すだれ売り
 唐人笛売り
 団十郎の機関売り
 小判売り
 蝶々売り
 面売り

道具
 草箒売り
 笠売り
 笊売り
 鉢たたき
 団扇売り
 扇地紙売り
 竹細工売り
 古傘買い
 樽買い
 草履売り
 銭ござ売り
 樋竹売り
 焼継屋
 茶碗売り
 今戸焼売り
 臼の目立屋
 鋳掛屋
 とぎ屋
 毛抜売り
 針・糸売り
 針売り
 釘売り
 手拭売り
 灯心売り
 文庫・提灯箱売り
 三絃売り


 刻み煙草売り
 油売り(一)
 油売り(二)
 つけ木売り
 薪売り
 たどん売り
 竈塗り屋
 黒渋屋
 看板書き
 花売り
 植木売り
 羽織の紐直し
 高荷木綿売り
 竹馬きれ売り
 貸本屋
 小間物屋
 眼鏡売り
 筆墨売り
 富の札売り
 十九文見世
 傀儡師(一)
 傀儡師(二)
 耳の垢とり
 猫の絵かき

大道芸・物貰い
 奥山のけしの助
 砂文字かき
 片身かわりの物貰い芝居
 知盛の幽霊
 幽霊の物貰い
 千両箱の軽子
 考え物
 おちよ舟
 鳥渡一服
 唄比丘尼
 すたすた坊主
 異風の托鉢



彩色江戸物売図絵2


本書より:

「七味唐辛子売り

「とんとんたうがらし、ひりゝとからいハさんしよのこ、すハすハからいハこしやうのこ、けしのこ胡麻のこちんひのこ、とんとんたうがらし、中ノヨイノガ娘ノ子、イヽ子フリスルノガ禿の子」
(中略)
七味唐辛子の原料は粉唐辛子、焼唐辛子、山椒、胡麻、麻の実、陳皮、罌粟(けし)の七種。
(中略)
唐辛子の本場は、内藤新宿八ツ房の唐辛子で、最上等品として売られました。
唐辛子売りの身装(みなり)は、絵のような扮装に限られたものではなく、いろいろあったようです。」



彩色江戸物売図絵3


本書より:

「狐の飴売り」

「飴売り、薬売りには、異様な姿をした売り子が多かったようですが、これなどはその代表的なものといえます。
子供が飴を買うと、絵のような狐踊りをして見せました。」



彩色江戸物売図絵4


「片身かわりの物貰い芝居」


彩色江戸物売図絵5


本書より:

「幽霊の物貰い

安政頃、杖をたよりに歩く足の不自由な物貰いがいました。「常に幽霊にふんして銭を乞ふ。或時小幡小平次又お菊の幽霊等得意なり」とあります。」



彩色江戸物売図絵6


本書より:

「異風の托鉢

「これは嘉永年間であつて遂に回向院から苦情を持出して差止めになつたが、総勢五人にて内四人は猫の目鬘(めかづら)をかけ麻の法衣(ころも)に白の脚絆草鞋ばき、それで大きな鮑貝を持ち、また一人は普通の僧形ではあるが、長き杖の頭へ床節(とこぶし)を五ツ六ツ吊し錫杖の如くに見せ、かちんがさかちんがさと突立て『ねこう院仏しやう』と澄して歩く。猫の目鬘かけた坊主は普通勧化僧のやうに戸毎に立つ、鉄鉢の代りに大鮑貝をつゝと差出す。その姿のをかしきより人々銭を投じやると『おねこー』と高く叫びて真面目だ。すると和尚さんが床節のついた錫杖をがさがさがさと振て『にやごにやごにやごにやご』と回向した。余程風変りで滑稽であつたさうな。此当時回向院の勧化があつたので例の橋本町あたりから出懸た物貰ひの趣向であつた」(『文芸倶楽部』)
原画の文に「両国猫小院仏施 にやんまみ陀仏陀仏がらがらがら」とあります。」

































































三谷一馬 『江戸商売図絵』

三谷一馬 『江戸商売図絵』

中公文庫 み-27-2
中央公論社 1995年1月3日印刷/同18日発行
632p 口絵8p(カラー図版4点) 
文庫判 カバー 定価1,300円



初版は青蛙房、昭和38年刊。のち三樹書房から昭和50年に新版。さらに昭和61年に立風書房より新装改訂版(「定本」)、本書はその文庫版で、若干の加筆・訂正が施されている。

「文庫版あとがき」より:

「この本は江戸中期以降の庶民生活を絵で再現しようとしたものです。なかには現在見ることの出来ないものが数多くあります。
例えば江戸の町の風物詩でもあった物売りがあります。彼等は庶民へ日用品を運んでくる便利屋さんでしたが、いつも同じ時刻に来るので、時計の役目も果していたことが合巻本に書かれています。
読者の皆様が、この時代の庶民の生活の息吹を感じとって下されば、著者としてこれに過ぎる喜びはございません。」



江戸商売図絵1


古本なのでカバーの端の方が日焼けして色落ちしています。

カバー裏文:

「大江戸に生き、この都市の繁栄を支えてきた庶民の生業(なりわい)の数々―。江戸風俗画の研究と模写に打ち込んできた著者が、当時の商いの姿を描いた膨大な絵画資料を博捜、精確に復元し、それぞれに平易な解説文を付す。当時の人々の生活の息吹までもいきいきと再現する江戸風俗絵引きの決定版。」


江戸商売図絵2


カラー口絵「古椀買い」。


目次:

はじめに


 紅屋
 白粉店
 女髪結
 廻り髪結
 髢屋
 お六櫛屋
 元結職
 元結屋
 半襟屋
 扇地紙売り
 簪売り
 ビードロ簪売り
 烏帽子屋
 武具屋
 呉服屋
 糸組み
 綿摘み
 糠屋
 紺屋
 染物屋
 上絵師
 縫箔屋
 古着屋
 古着売り
 笠店
 笠縫い
 笠売り
 傘屋
 古傘買い
 扇屋
 小間物売り
 眼鏡屋
 楊枝屋
 針売り
 糊売り
 足袋屋
 草履屋
 下駄屋
 下駄売り


 茶飯売り
 麦飯売り
 一膳飯屋・飯屋
 米屋
 米搗き
 八百屋
 江戸の八百屋
 大坂の八百屋
 江戸の魚屋
 大坂の魚屋
 鰻屋
 笊入鰻売り
 浅蜊売り・蛤売り
 剥き身売り
 海苔屋
 海苔売り
 塩屋
 塩売り
 豆腐屋
 豆腐売り
 半平屋
 おでん屋
 田楽豆腐売り
 天麩羅屋
 鯖鮓売り
 稲荷鮨屋
 鮨売り
 鮨屋
 雑穀屋
 枝豆売り
 煮豆売り
 焼芋屋
 唐辛子屋
 唐辛子売り
 そば屋の出前持ち
 そば屋
 風鈴そば売り
 ところてん売り
 百獣屋
 鳥屋
 麦湯店
 水売り
 葉茶屋
 酒屋
 居酒屋
 醤油売り
 水茶屋
 楊弓屋
 白酒売り
 甘酒売り
 甘酒屋
 漬物屋
 鮎売り
 白玉売り
 米饅頭屋
 茹で玉子売り
 団子売り
 大福餅売り
 粟餅屋
 菓子屋
 花林糖売り
 唐人飴売り
 女飴売り
 土平飴売り
 取り替えべい飴売り
 飴細工売り
 鎌倉節の飴売り
 汁粉屋
 汁粉売り
 岩おこし売り
 雷おこし屋


 反魂丹売り
 定斎屋
 枇杷葉湯売り
 医者
 神楽巫女
 市子
 薬種店
 熊の膏薬売り
 鼠取薬売り
 居合抜き
 按摩
 検校
 耳垢取り
 藤八五文薬売り
 弘慶子売り
 歯磨売り(百眼の米吉)
 易者


 大工
 石屋
 左官屋
 竈屋
 屋根職
 瓦屋
 畳屋
 硝子(ビードロ)屋
 瓦器売り
 瀬戸物屋
 ろくろ屋
 塗師
 陶器場
 銅物屋
 蒔絵師
 唐物屋
 焼き接ぎ師
 打物屋
 葛籠屋
 ござ売り
 笊や味噌漉し売り
 茶筅売り
 棕梠箒売り
 針金売り
 樋竹売り
 仏師
 経師屋
 蝋燭屋
 線香突き
 数珠屋
 時計師
 油売り
 油屋
 提灯屋

職人
 硯師
 筆店
 筆師
 看板書き
 帳屋
 手習い師匠(寺子屋)
 刷毛師
 彫師
 摺師
 刀鍛冶
 庖丁鍛冶
 研ぎ師
 彫金師
 鉄砲鍛冶
 印判屋
 眼鏡売り
 鏡研ぎ
 障子張替え
 箍直し
 鋳掛屋
 下駄の歯直し
 江戸の雪駄直し
 大坂の雪駄直し
 錠前直し
 火口屋
 羅宇竹作り
 煙草刻み
 煙管店
 羅宇屋・煙管師
 火打鎌売り
 カルタ屋
 数珠師
 人形師
 檜物師
 箱屋
 
芸能
 中売り
 女形役者
 立役
 女役者
 寄席
 長唄師匠
 三味線屋
 辻講釈
 祭文語り
 手品遣い(水芸)
 からくり的(吹き矢)
 人形遣い
 覗きからくり
 曲馬
 猿回し
 獅子舞
 角兵衛獅子
 狐舞
 太神楽
 節季候
 金輪遣い・剣呑み・籠抜け
 紅かん
 一人角力
 傀儡師
 春駒

願人坊主・物貰い
 住吉踊り
 金比羅参り
 順礼
 竈祓い
 七ッ坊主
 鹿島の事触れ
 わいわい天主
 三都の虚無僧
 御利生
 旅の虚無僧
 御行
 山伏
 六十六部
 すたすた坊主
 さんげさんげ
 ちょぼくれ坊主
 お釈迦
 盥廻し
 淡島様
 高野行人
 千日参り
 半田稲荷
 庄助しょ
 お天気御祈祷
 親孝行
 和尚今日ハ
 考え物
 天満の神楽神子


 馬子
 旅籠屋
 立場茶屋
 四つ手駕籠
 宿駕籠
 七里飛脚
 三度飛脚
 便り屋
 船宿
 猪牙舟
 うろうろ舟

季寄せ
 暦売り
 宝船売り
 宝引き
 万歳
 凧の卸売り
 鳥追
 払扇箱買い
 赤鰯売り・柊売り
 太鼓売り
 絵馬売り
 内裡雛小人形売り
 雛店
 桜草売り
 苗売り
 菖蒲太刀売り
 稗蒔売り
 簾売り
 蛍売り
 虫売り
 蚊帳売り
 七夕の短冊売り・七夕笹売り
 花火売り
 納太刀売り
 扇売り
 団扇売り
 金魚売り
 西瓜売り
 灯籠売り
 放し亀売り
 放し鳥売り
 海ほおずき売り・丹波ほおずき売り
 薄売り
 炬燵矢倉売り
 荒神松売り
 煤竹売り
 草箒売り
 門松売り
 はぜ売り
 御酒の口売り


 十九文見世・三十八文見世
 鳥刺し
 面売り
 植木屋
 花売り・花売り婆
 付け木売り
 江戸の夜中時廻り
 大坂の夜中時廻り
 石榴口(湯屋)・石榴口内部
 芝居新狂言
 絵草紙屋
 読み売り
 本屋
 影絵売り
 貸本屋
 祭番付売り
 蝶々売り
 からから売り
 しゃぼん玉売り
 新粉細工売り
 笛売り
 与次郎売り
 評判俵
 御来迎売り
 手車売り
 人形売り
 水からくり売り
 団十郎艾売り
 煙草屋
 煙草売り
 紙屑拾い
 紙屑買い
 質屋
 両替屋

出典・参考文献目録
文庫版あとがき
索引



中には、どんな商売なのか名前だけではわからないものもあります。「すたすた坊主」は、「寒い風の日、縄の鉢巻をしめ、素裸に注連縄(しめなわ)を腰蓑のように巻きつけ、扇、幣(ぬさ)、錫杖を持ってやって来た願人坊主です。「すたすたや、すたすたすたすた坊主の来る時は、世の中よいと申します。とこまかせでよいとこなり。お見世も繁昌でよいとこなり、旦那もおまめでよいとこなり」などとよいこと尽しを言いながら、家々を元気に踊って銭を乞いました。」とあります。「うろうろ舟」は、「両国近辺を中心に、屋根舟、猪牙舟の行き来する間をくぐって西瓜、梨、とうもろこし、瓜などを遊客に売りました。うろうろするところから、この名があります。(中略)闇の中に赤い行灯がボウと点(とも)り、それが川の波間にゆらゆらと映った趣は、両国情緒を一層増しただろうと想像されます。」とあります。

各商売に図絵と、説明文、当時の川柳の引用があり、元になった絵の出典が明記されています。


江戸商売図絵3


「西瓜売り」


江戸商売図絵4


「御利生

願人坊主の一種で、文政以降のものです。御利生(ごりしょう)というのは仏家から出た語で、男性のモノをいう隠語です。伸びたり縮んだりする狐の首を男のモノになぞらえて、狐の頭を鳥居の内から飛び出させます。「葛西金町(かさいかなまち)半田の稲荷、御利生御利生大きな御利生、すてきな御利生」と言いながら市中を歩いて銭を乞いました。」



江戸商売図絵6


「傀儡(かいらい)師」


江戸商売図絵5


「三都の虚無僧

「こもそう」と読みます。元来は、薦(こも)を抱えたり薦の上に坐ったりしたため、「こも」という名がついたといいますが、薦僧では物乞いじみて幅がきかないので、後に虚無空寂などという字に附会して、虚無僧と呼ぶようになりました。他にも梵論字、ぼろぼろという呼び名があります。」


「商売」のなかに「願人坊主・物貰い」のコーナーがあるところが、この本のすばらしいところなのです。





























































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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