飯吉光夫 編・訳 『パウル・ツェラン詩文集』

「芸術を拡大する?
いや、そうではありません。そうではなくて、芸術とともにひたすらおまえ自身に固有のせまさのなかへ入れ、そしてきみ自身を解放せよ、です。」

(パウル・ツェラン)


飯吉光夫 編・訳 
『パウル・ツェラン詩文集』


白水社 
2012年2月1日印刷
2012年2月20日発行
202p 
四六判 丸背紙装幀上製本 カバー 
定価2,400円+税
装幀: 奥定泰之



本書「解説」より:

「本書はパウル・ツェランの代表的な詩、そしてほとんどすべての詩論(講演と散文)を納めたものである。」

「ツェランの人怖じする性癖はことのほか強かったといわれる。むこうから人ごみがこちらへ向かってきただけでも逃げだしたといわれる。ひとことで迫害妄想といわれるもので、同様の運命の持ち主ネリー・ザックスも同種の病いに終生悩まされた。ツェランは彼女を病院に見舞ったことがあるが、彼自身、治癒不能の病人だった。」



本文中モノクロ図版3点(ジゼル・ツェラン=レストランジュ1点、エドガー・ジュネ2点)。


ツェラン 詩文集 01


帯文:

「未曾有の破壊と
喪失の時代を生き抜き、
言葉だけを信じ続けた
20世紀ドイツ最高の詩人の
代表詩篇と全詩論。改訳決定版!」



帯裏:

「もろもろの喪失のなかで、
ただ「言葉」だけが、手に届くもの、身近なもの、
失われていないものとして残りました。(本文より)
パウル・ツェラン」



目次:

I 詩
罌粟(けし)と記憶
 死のフーガ
 光冠(コロナ)
 数えろ、アーモンドの実を
敷居から敷居へ
 入れ替わる鍵で
 夜ごとゆがむ
 沈黙からの証(あか)しだて
ことばの格子
 声たち
 白く軽やかに
 ことばの格子
 引き潮
 迫奏(ストレッタ)
誰でもないものの薔薇
 ぼくらにさしだされた
 頌歌
 あかるい石たち
息のめぐらし
 わたしをどうぞ
 立っていること
 糸の太陽たち
 灼きはらわれた
 ひとつのどよめき
糸の太陽たち
 刻々
 咬傷
 そのさなかへ
 おまえは
 アイルランド風に
 時がきた
 力、暴力
迫る光
 かつて
 ブランクーシ宅に、ふたりで
 さえぎられて
 あなたが
 祈りの手を断ちきれ
 狂気への道をたどる者の眼
 あらかじめはたらきかけることをやめよ
雪の区域(パート)
 落石

II 詩論
講演
 ハンザ自由都市ブレーメン文学賞受賞の際の挨拶
 子午線
 ヘブライ文芸家協会での挨拶
散文
 エドガー・ジュネと夢のまた夢
 逆光
 パリのフリンカー書店主のアンケートへの回答
 山中の対話
 ハンス・ベンダーへの手紙
 フリンカー書店主のアンケートへの回答
 真実、雨蛙、作家、赤ん坊を運んでくる鸛(こうのとり)
 シュピーゲル誌のアンケートへの回答
 詩(ポエジー)は……

解説 (飯吉光夫)
パウル・ツェラン年譜



ツェラン 詩文集 02



◆本書より◆


本書収録詩より:


「夜ごとゆがむ」より:

「かれらは世界にはなればなれに立っている、
それぞれがそれぞれの夜のもとに、
それぞれがそれぞれの死のもとに、」



「声たち」より:

「傷口は
塞がろうとしない。」



「迫奏(ストレツタ)」より:

「この夜に
星はいらない、どこにも
お前を尋ねる声はない。」



「立っていること」より:

「だれのためでもなく――なにのためでもなく――立っていること。
だれにも気づかれず、
ただ
おまえひとりだけのために。」



本書収録散文より:


「ハンザ自由都市ブレーメン文学賞受賞の際の挨拶」より:

「詩は言葉の一形態であり、その本質上対話的なものである以上、いつの日にかはどこかの岸辺に――おそらくは心の岸辺に――流れつくという(かならずしもいつも期待にみちてはいない)信念の下に投げこまれる投壜通信のようなものかもしれません。詩は、このような意味でも、途上にあるものです――何かをめざすものです。」


「子午線」より:

「これは人間的なものからの踏みだし、人間的なものに対峙している無気味な領域への(中略)踏みだしです。」

「ゲオルク・ビューヒナーには――わたしはいまこう問いかけざるをえません――「みじめな生き物」の詩人であるゲオルク・ビューヒナーには、芸術に対するごく低声な、もしかするとごく無意識な、しかしだからといって決して不徹底ではない、いやむしろそれゆえにこそ最も本来的な意味で徹底的(ラディカル)な芸術に対する問いかけが、(中略)存在するのではないでしょうか。つまり今日すべての詩がなお問いかけようとするならば、必ずそこへ立ちもどって行かなければならない問いかけが? 別のいくらか飛躍的な言葉でいうなら――わたしたちは、今日多くの場所で行なわれているように、芸術に対して、それがあたかもあらかじめ与えられたもの、無条件に前提されたものとして、取りかかっていいものでしょうか。わたしたちは、はっきりと具体的に言うならば、とりわけマラルメを――と申しましょう――最後まで徹底的に考えなくてもよいものでしょうか。」

「ことによると――わたしはただ問いかけます――ことによると詩もまた芸術同様、われを忘れた「わたし」とともに、この気味の悪いもの、この疎ましいもののもとまで行ってそこで自身を――と言ってもそこはどこなのでしょう? そこはどんな場所なのでしょう? 誰とともにというのでしょう? 何になりかわってというのでしょう?――そこで自身をふたたび解放するのではないでしょうか?」

「わたしたちは今もしかして、あの疎ましいものの住んでいた場所、ひとりの人物がみずからを一つの――疎ましいものとされる――「わたし」へ解放することのできた場所を見出すのではないでしょうか? そのような場所、足を一歩踏みだすそのような行為を、わたしたちはいま見出すのではないでしょうか?
 「逆立ちして歩けないことだけが、彼にはときおり不快だった」〔『レンツ』参照〕――これこそがまさしく彼、レンツです。」
「逆立ちして歩くものは、足下に空を深淵として持ちます。」

「詩――それは息のめぐらしを意味するものであるかもしれません。詩はもしかするとその道のりを(中略)このような息のめぐらしのために進むのではないでしょうか? もしかすると詩は、疎ましいもの、つまり奈落ならびに(引用者注: 「ならびに」に傍点、以下同)メドゥーサの首、深淵ならびに自動機械が、まったく同じ方向に並ぶように思われるところ――まさしくそこで、疎ましいものから疎ましいものを区別することに成功するのではないでしょうか。もしかするとまさしくそこで、メドゥーサの首はたじろぎすくみ、自動機械は停止してしまうのではないでしょうか――一度しかないこの短い瞬間に? もしかするとそこで、一つの「わたし」とともに――そこでそのようにして(引用者注: 「そこでそのようにして」に傍点)解き放たれ疎ましいものとなった「わたし」とともに―ーもう一つの「別のもの」が、自由の身の上となるのではないでしょうか?」

「詩は、まぎれようもなく、沈黙へのつよい傾斜をしめしています。」
「詩は、おのれみずからのぎりぎりの限界において自己主張するものです、――それは、みずからの「もはやない」からみずからの「まだある」の中になおも存続しうるために、みずからを呼びもどし連れもどすものです。」
「詩は(中略)ひとりびとりの人間の、姿をとった言葉であり、――そのひたすらに内面的な本質からいって、現在であり現前であるのです。
 詩はひとりぼっちなものです。詩はひとりぼっちなものであり、道の途上にあります。詩を書くものは詩につきそって行きます。
 しかし詩はまさしくそれゆえに、つまりこの点においてすでに、出会いの中に置かれているのではないでしょうか?――出会いの神秘のうちに。」

「芸術を拡大する?
 いや、そうではありません。そうではなくて、芸術とともにひたすらおまえ自身に固有のせまさのなかへ入れ、そしてきみ自身を解放せよ、です。」

「わたしは……わたし自身に出会いました。」

「わたしは見つけます、わたしがみなさまの面前でこのありえない道を、このありえないものの道を進んできたことへのいささかの慰めともなりうる何ものかを。
 わたしは見つけます、むすびつけるもの、詩のように出会いへとみちびくものを。
 わたしは見つけます、なにか――言葉のように――非物質的に、しかも地上的なもの、現実的なもの、円環をなすもの、両極をこえておのれ自身に立ちもどるもの、しかも――愉快なことに――熱帯地方をもよぎっているものを。わたしは見つけます……子午線(引用者注: 「子午線」に傍点)を。」



「エドガー・ジュネと夢のまた夢」より:

「ところで、ぼくは簡潔な言葉を好む人間である。もちろんぼくは、今回の旅行に出かけるまえ、自分が背後にする世界ではひどいこと、間違ったことが行なわれていることを知っていた。しかもぼくは、もし自分がそれらの事柄を名指しにするなら、それらを根底からゆさぶることができると信じていた。そのような振舞いに出るためには、絶対的な無垢に戻ることが前提となることを、ぼくは知っていた。この無垢をぼくは、過去何世紀にもわたるこの世界の嘘の滓(かす)を洗い落とした末の初源的な光景と見なしていた。」
「人間が外的生活の鎖にしばられて呻吟しているばかりでなく、さるぐつわをかまされて話もできない状態になっていることは、ぼくには明らかだった(中略)なにしろ人間の言語(身振り、動作)は、千年にもわたる捩(ね)じまげられた偽の誠実さの重荷に喘いでいるのだから。」



「詩(ポエジー)は……」:

「詩(ポエジー)はもはやみずからを押しつけようとするものではなく、みずからを曝(さら)そうとするものである。」

























































































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パウル・ツェラン/ネリー・ザックス 『往復書簡』 (飯吉光夫 訳)

「この暗黒の日々の中でまだ答えられていない問い。この妖鬼じみた、沈黙したままの「まだ……ない」、そしてこの一層妖鬼じみた、一層沈黙したままの「もはや……ない」、さらには「はやくも……また」。そしてその間に、明日中にも、今日中にも、起こり得る、しかも予測しかねるもの。」
(ツェランからザックスへ)


パウル・ツェラン
ネリー・ザックス 
『往復書簡』 
飯吉光夫 訳


青磁ビブロス 
1996年11月11日初版発行
225p 訳者略歴1p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,000円(本体1,942円)
装幀: 伊勢功治
カバー、表紙写真: パウル・ツェラン(1958年、ジゼル・ツェラン=レストランジュ撮影)/ネリー・ザックス(1960年、アンナ・リウキン撮影)
Paul Celan/Nelly Sachs : Briefwechsel



編纂者による解説より:

「ネリー・ザックスとパウル・ツェランは約十六年間にわたって――一九五四年から一九六九年暮れまで――手紙のやりとりをした。両者がこの文通をどれほど大切にしていたかは、この文通が注目すべき完全さで保存されていたことからも明らかである。」


本書「訳者あとがき」より:

「本書(中略)は、一九九三年にズールカンプ出版社から出版された。パウル・ツェランもネリー・ザックスもともにユダヤ=ドイツ系の作家で、前者は一九二〇年生まれ、後者は一八九一年生まれである。ネリー・ザックスは一九六六年にノーベル文学賞を受賞している。」
「両者の手紙は、何よりも二人の精神を病んだ人間の心の交流の観を呈している。その根を掘り下げると、そこには第二次大戦下のナチスによるユダヤ人迫害という問題が浮かび上がる。
 しかし、この『往復書簡』は戦後の産物である。ナチスによるユダヤ人迫害による両者の精神異常の徴候は戦後の出来事に触発されて発現している。
 ツェランの精神不調の原因は、(中略)一九五九年の批評家G・ブレッカーによる新聞紙上でのツェラン批判、一九六〇年物故詩人ゴルの妻クレールによる、自分の夫の作品をツェランが剽窃したという弾劾、一九六〇年以前の作家アンデルシュとの不和などである。
 これに対して、ネリー・ザックスの不調の原因は、一九六〇年に彼女の居住地ストックホルムで反ユダヤ主義の怪文書が出回ったという事実、これとの関連で、ザックスが無線による監視をネオ・ナチから受けているという妄想や、神経ガスで殺されそうになっているという妄想にとらわれたという事実、などである。」
「最晩年のザックスは癌による苦痛の中で死んだ。ツェランは妻子との別居(中略)まで招いたほど精神障害に苦しんでいた。ツェランがパリのミラボー橋(といわれる)から投身自殺したのは一九七〇年四月末か五月初めであるが、その後一箇月と置かず、五月十二日にザックスはこの世を去った。」



本文中モノクロ図版7点(ツェランおよびザックスの筆跡5点、ジゼル・ツェラン=レストランジュによる銅版画2点)。


ツェラン ザックス 往復書簡 01


帯文:

「20世紀を代表する
ふたりのユダヤ=ドイツ語詩人
ネリー・ザックス(ノーベル文学賞受賞)
とパウル・ツェランの交感する
傷ましくも美しいことばたちに
みたされた書簡集。」



目次:

編纂者バルバラ・ヴィーデマンによる解説

『往復書簡』

ザックス/ツェラン対照年譜
人名注釈

訳者あとがき



ツェラン ザックス 往復書簡 02

本体表紙。パウル・ツェラン。


ツェラン ザックス 往復書簡 03

本体裏表紙。ネリー・ザックス。



◆本書より◆


「ザックスからツェランへ 一九五八年一月九日」より:

「わたしの胸のうちには、わたしたちが携わっている仕事は、犠牲者たちの灰の苦しみを身に徹して知り、その灰を霊化することだという信仰が、昔も今も、一呼吸ごとにうずいています。わたしは、この暗い営為を刻むことができる目に見えぬ宇宙があることを信じます。わたしは苦しみの石を音楽に変えて昇天させることのできる光のエネルギーを身に感じます。わたしはわたしたちの胸を誕生のときから死のときまで刺しつらぬいている憧れの矢先を、たしかな場所を探しもとめたいという憧れの矢先を、耐えています。自分自身の民族のものとしてのハシディズムの神秘主義がわたしを助けます。この神秘主義は他のあらゆる神秘主義と関連を持ちつつ、あらゆるドグマや制度から遠いおのれの住む場所を、たえず新たなる産みの苦しみの中に創造しています。」


「ツェランからザックスへ 一九五八年五月三十日」より:

「この暗黒の日々の中でまだ答えられていない問い。この妖鬼じみた、沈黙したままの「まだ……ない」、そしてこの一層妖鬼じみた、一層沈黙したままの「もはや……ない」、さらには「はやくも……また」。そしてその間に、明日中にも、今日中にも、起こり得る、しかも予測しかねるもの。」


「ザックスからツェランへ 一九六〇年七月二十五日」より:

「ナチの心霊術者たちの協会が無線電信を使って恐ろしいほど巧妙にわたしを追いつめています。わたしがどこに赴くかを、すべて知っています。旅に出たときは、神経ガスを用いようとしました。もう何年も前からひそかにこの家に入って、マイクで壁ごしに聞いています。」


「ザックスからツェランへ 一九六〇年八月八日」より:

「そして黒い網がわたしのまわりに張りめぐらされています。」


「ザックスからツェランへ 一九六〇年八月十六日」より:

「わたしをとりまく不安と恐怖の闇は、まだ除かれていません。(中略)わたしは今わたしの愛する死者たちに憧れています。」


「ツェランからザックスへ 一九六〇年八月十九日」より:

「親愛なるネリー! 網はまだ張りめぐらされているのですね、そうおいそれとは除去できないのですね……でもあなたはそれを除去しなければなりません、除去できるし、何としても除去する必要があります――あなたの身近かにいるものたちをおもって、あなたの身近かにいるまだ生きているものたちをおもって、です! あなたにはあなた自身のための手があります、詩を書く手があります、(中略)それに加えてどうか、わたしたちの手も取ってください! まだ手であろうとするもの、助けようとするものを取ってください。あなたのために、あなたの御無事のために、あなたのそばであなたとともに自由の天地にいられることのために、あなたを助ける手であろうとするものを取って下さい。どうか、今日でも明日でも、今後いついかなる時でも、わたしがあなたのおそばへ行けることをおもって下さい、わたしにあなたを助けさせて下さい!
 わたしはたえずあなたのことをおもっています。わたしたちは、いつも、あなた、ならびにあなたによって生かされている人びとのことをおもっています! まだおぼえておられますか、あなたとわたしたちが二度目に神について話したとき、このわたしの家の、あなたのものであり、あなたを待っているものであるこのわたしの家の壁に、金色の光が映えていたのを? あなたを通して、あなたがそばにおられることを通して、それが眼に見えるようになったのです。そうなるにはあなたが必要だったのです。そうなるには、自分のすぐそばにいるとあなたが信じられる神のおぼしめしによるのかもしれませんが、いずれにしろあなたがおられることが、わたしたちとともにおられることが必要だったのです。そうなるには、今後も、まだまだあなたが必要です。あなたの眼差しがどうしても必要です――どうかこの眼差しをふたたびみんなのいる場所に送って下さい。その眼差しにあなたの真の、あなたの解き放つ言葉を添えて下さい。あなた自身をその眼差しに委ねて下さい。わたしたちを、あなたの同時代人たちや、あなたとともに住む者たちを、この眼差しに委ねて下さい。すでに自由であるわたしたちをさらにその上自由である者にして下さい。あなたとともに光の中に立つ者にして下さい!」











































































猫と訳すパウル・ツェラン 「STEINSCHLAG (落石)」

◆猫と訳すパウル・ツェラン◆その1◆
(猫と訳すので猫の主観が入り込みますが、その点はご了承下さい)


STEINSCHLAG hinter den Käfern.
Da sah ich einen, der log nicht,
heimstehn in seine Verzweiflung.

Wie deinem Einsamkeitsstrum
glückt ihm die weit
ausschreitende Stille.

(Schneepart)


[ねこ訳]

甲虫たちの背後で落石。
そこにわたしは見た、偽ることをしない一匹が、
みずからの絶望のなかに引きこもり立てこもるのを。

汝の荒れ狂う孤独にみあう
沈黙のうちの広範な歩測を
その甲虫は成就する。

(詩集「雪のパート」より)


[ねこ釈]

神からみれば人間は地上を這い回るオサムシのようなものだ。
神は孤独だ。人間たちに殺され、見放され、忘れられて。
荒れた心で、神は人間たちに「天災」を与える。
人間たちは逃げ惑い、慌てふためく。
そして、神を忘れた人間たちは、科学的に、勤勉に、「災害」に対処しようとする。
しかし人間たちのなかには、災が神の仕業であることを認識し、それゆえ絶望し、
一切の行動をやめて立ち尽し、引きこもるものもいる。
だが、そのような人間だけが、ことあげすることなく、お喋りすることもなく、
無言のうちに、内部の広大な荒野を這い回り、なにごとかを知るのだ。


[ごたく]

甲虫は、シンボル事典とかをみると、死、そして再生や復活のシンボルだと書いてあります。復活のシンボルは古代エジプトのスカラベ、死の方は英語だと「deathwatch beetle」、ドイツ語だと「Totenuhr」、日本語だとシバンムシ(死番虫)だとおもいます。












































































































































Paul Celan "Die Gedichte" (Suhrkamp Taschenbuch)

Paul Celan : Die Gedichte
Kommentierte Gesamtausgabe
in einem Band
Herausgegeben und kommentiert
von Barbara Wiedemann

Suhrkamp Taschenbuch 3665
Suhrkamp, 4. Auflage 2012 (Erste Auflage 2005)
1000pp, 18.8x11.8x5.2cm



詳注版パウル・ツェラン全詩集(全一巻)、バーバラ・ヴィーデマン編。

中村朝子訳『パウル・ツェラン全詩集』の改訂新版が去年出ていたのを最近知ったのでネットで古本を探して買いました。定価より5,000円ほど安く買えたので、差額でツェラン本人による朗読CDと、本書を買いました。
ツェラン詩鑑賞三点セットが揃いました。あとは読むだけです。


celan 1


ペーパーバックですが3,100円もします。1,000ページもあるのでかなり厚いです。1ページ3円ちょっとなので日本の文庫本と同じくらいです。そう考えると安いような気もします。


celan 2


前半550ページくらいが詩の原文で、後半430ページくらいが注解です。


celan 3


ツェランの詩は短いものが多いです。本書では画像のようにだいぶ詰めて印刷してあるので、550ページくらいで全部収まるのです。

字はかなり小さめです。


celan 5


ちなみに画像右側に写っているのはビブリオテーク・ズーアカンプ版ツェラン詩集(二冊本のうち第二巻、ハードカバー)です。


celan 6


ビブリオテーク版(画像右側。既刊の詩集を集成したもの。注はついていません)は一ページにつき詩一篇なので余白が多いです。ビブリオテーク版には入っていない詩も本書には多数収録されています。

詩は『息の転換』(Atemwende)より、「あなたはわたしを/雪でもてなしてくださってかまいません」(Du Darfst mich getrost / mit Schnee bewirten:)。


celan 4


画像は注解ページです。ユダヤ教やユダヤ文化などの、われわれにはわかりにくい点についてもコメントされているようです。


Inhaltsuebersicht:

I Von Paul Celan zu Lebzeiten publizierte Gedichte . . . . . . . 9
II Aus dem Nachlass publizierte Gedichte . . . . . . . . . . . . 307

Kommentar . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 559
Verzeichnis der Gedichte . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 987
Inhaltsverzeichnis . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 999



(目次:

1 パウル・ツェランの生前に刊行された詩
2 没後刊行詩より

注解
収録詩索引
詳細目次)


詳細目次:

I Der Sand aus den Urnen
Mohn und Gedaechtnis
Verstreute Publikationen aus dem Zeitraum >>Der Sand aus den Urnen<< und >>Mohn und Gedaechtnis<<
Von Schwelle zu Schwelle
Sprachgitter
Verstreute Publikation aus dem Zeitraum >>Sprachgitter<<
Die Niemandsrose
Verstreute Publikation aus dem Zeitraum >>Die Niemandsrose<<
Atemwende
Verstreute Publikation aus dem Zeitraum >>Atemwende<<
Fadensonnen
Zyklus >>Eingedunkelt<<
Verstreute Publikationen aus dem Zeitraum >>Fadensonnen<<
Lichtzwang

II
Verstreute Publikation
Schneepart
Zeitgehoeft. Spaete Gedichte aus dem Nachlass
Das Fruehwerk (Edition von 1989)
Die Gedichte aus dem Nachlass (Edition von 1997)
Zeitraum >>Mohn und Gedichtnis<<
Nicht aufgenommene Gedichte
Verstreute Gedichte
Zeitraum >>Von Schwelle zu Schwelle<<
Verstreute Gedichte
Zeitraum >>Sprachgitte<<
Verstreute Gedichte
Zeitraum >>Die Niemandsrose<<
Nicht aufgenommene Gedichte
Zeitraum >>Atemwende<<
Nicht aufgenommene Gedichte
Verstreute Gedichte
Zeitraum >>Fadensonnen<<
Nicht aufgenommenes Gedicht
Gedichte aus dem Umkreis des Zyklus >>Eingedunkelt<<
Verstreute Gedichte
Zeitraum >>Lichtzwang<<
Nicht aufgenommene Gedichte
Einzelnes verstreutes Gedicht
Zeitraum >> Schneepart<<
Nicht aufgenommene Gedichte
Verstreute Gedichte
Spaete Gedichtsammlung
Spaete verstreute Gedichte
Schwer zu datierende Gedichte
Paul Celan - Kurt Leonhard

kommentar
Zu dieser Ausgabe
Abkuerzungen, Siglen und Kurztitel
Bibliographie
Einzelkommentar
Verzeichnis der Gedichte



※ めんどくさかったので、「ü」「ö」等ウムラウトの表記は「ue」「oe」等で、エスツェット(「ß」)は「ss」で表記しました。

































































中村朝子 訳 『パウル・ツェラン全詩集』 (改訂新版・全三冊) 

中村朝子 訳 
『パウル・ツェラン全詩集』 (改訂新版) 
第I巻


青土社 2012年2月10日第1刷印刷/同20日第1刷発行
516p 口絵2p 四六判 丸背紙装上製本 貼函 定価6,800円+税
装幀: 中島かほる
装画: マーブル・ペーパー (アトリエ・ミウラ所蔵)


中村朝子 訳
『パウル・ツェラン全詩集』 (改訂新版) 
第II巻


青土社 2012年2月10日第1刷印刷/同20日第1刷発行
696p 口絵2p 四六判 丸背紙装上製本 貼函 定価6,800円+税
装幀: 中島かほる
装画: マーブル・ペーパー (アトリエ・ミウラ所蔵)


中村朝子 訳
『パウル・ツェラン全詩集』 (改訂新版) 
第III巻


青土社 2012年2月10日第1刷印刷/同20日第1刷発行
326p 口絵2p 四六判 丸背紙装上製本 貼函 定価4,800円+税
装幀: 中島かほる
装画: マーブル・ペーパー (アトリエ・ミウラ所蔵)



ツェラン全詩集1


「改訂新版あとがき」より:

「一九九二年五月『パウル・ツェラン全詩集』を翻訳、刊行させて頂いたが、今回改訂新版を刊行するはこびとなった。訳語に関しては、今の時点で適切と思われる表現に変えるよう若干の手を加えた。注についても同様に手を入れたが、いくつかの注を新しく書き加えた。」


ツェラン全詩集3


第I巻 帯文:

「象徴主義やシュルレアリスムの流れに立ち、ユダヤ人としてナチズムの惨禍、スターリニズムの傷痕を心の奥深くに宿しながら、現代詩人の命運を生き、自死した、パウル・ツェラン、本邦初の個人完訳全詩集。」


第I巻 帯背:

「本邦初の
全詩集」



第II巻 帯文:

「現実とは何かと鋭く問いかけ、狂気にむしばまれるなかで、詩作によって、あり得ない現実を獲得しようとしたツェラン。晩年に刊行された『息の転換』『糸の太陽たち』、生前既にツェラン自身によって印刷に付された『光輝強迫』、詩人自身の念入りな清書原稿に基づく『雪の声部』を収録。」


第II巻 帯背:

「晩年から
没後刊行の
詩集まで



第III巻 帯文:

「喪失からの出発。言語の解体。そして誰でもないものへの問い。ツェランの詩は、他者への回路を失った現代人の深部に谺する。処女詩集『骨壺たちからの砂』、『時の屋敷』、『補遺詩篇』などを収録。」


第III巻 帯背:

「処女詩集
遺稿・補遺」



ツェラン全詩集2


第I巻 目次:

罌粟と記憶 (一九五二)
 骨壺たちからの砂
  荒野の歌
  (夜にはお前の身体は)
  (徒に)
  マリアンネ
  樹脂蝋燭
  (掌を時刻で一杯にして)
  半分の夜
  海を渡るお前の髪
  (ハコヤナギよ)
  シネラリア
  羊歯の秘密
  骨壺たちからの砂
  最後の旗
  (鉄の靴の軋む音が)
  饗宴
  九月の暗い目
  海からの石
  フランスの思い出
  影につつまれたある女のシャンソン
  夜の光
  お前からぼくへの幾歳
  遠方の賛辞
  全生涯
  晩く そして 深く
  コロナ
 死のフーガ
 逆光
  旅にあって
  エジプトで
  霧笛のなかへ
  (まだかれの目が)
  (お前とそしてすべての)
  烙印
  (心を夜に)
  結晶
  経帷子
  沖で
  (ぼくは一人だ)
  壺たち
  (夜に)
  (さあ眠れ)
  (こうしてお前は)
  堅固な城塞
  (鳩たちのなかで一番白い鳩が)
 夜の茎たち
  眠りと糧
  旅の仲間
  (目――)
  永遠
  磯波
  (心臓と脳から)
  (落ち着きのない心)
  (彼女は その髪を)
  (お前が言葉に目眩まされ)
  風景
  静かに!
  水と火
  (アーモンドを数えよ)

敷居から敷居へ (一九五五)
 七つの薔薇だけ遅く
  ぼくは聞いた
  晩い赤のなかに
  輝く
  一緒に
  斧たちと戯れながら
  重いもの
  一粒の砂
  髪の房
  海から
  二つの姿
  遠方
  氷があるところに
  暗闇から暗闇へ
  猪の姿となって
  ブルターニュの海岸
  よい
  二人して
  客
 取り替わる鍵で
  フランソワのための墓碑
  目に接ぎ木されて
  ぼくたちに時刻を数えた者が
  アッシジ
  今宵もまた
  一本の蝋燭の前で
  取り替わる鍵で
  ここ
  静物画
  そして 美しい
  森林におおわれて
  語たちの夕べ
  斜面
  ぼくは知っている
  畑
  追憶
 島に向かって
  夜に 尖らされて
  時の目
  翼の夜
  これらの石たちのどれをお前は持ち上げるのか
  ポール・エリュアールの思い出に
  合言葉(シボレート)
  ぼくたちはお前を見る
  記念碑
  お前も語れ
  時の赤い唇で
  沈黙からできた証言(アルギュメントゥム・エ・シレンティオ)
  葡萄摘みの人々
  島に向かって

言葉の格子 (一九五九)
 I
  (声たち)
 II
  確信
  手紙と時計と一緒に
  一つの絵の下に
  帰郷
  下で
  今日と明日
  条痕
 III
  テネブレ
  花
  「白い」そして「軽い」
  言葉の格子
  雪の寝台
  風に応じて
  夜
  ブルターニュのマチエール
  ごみ運搬の小舟
 IV
  ケルン、アム・ホーフ
  遠くへ
  一日そしてまた一日
  口の高さに
  ひとつの手
  けれど
  万霊節
  ある風景の下絵
 V
  ひとつの目、開いて
  (上で、音も立てず)
  (世界、ばくたちのほうへ)
  (木の星が一つ)
  夏の報告
  (低水位)
  線路の土手、道端、荒廃した場所、瓦礫
 エングフュールング

誰でもない者の薔薇 (一九六三)
 I
  (かれらのなかに 土があった)
  (「深み - に向かって - いく」という語)
  (葡萄酒と孤独のもとで)
  チューリヒ、シュトルヒェン館にて
  三人で、四人で
  (ぼくたちに差し出される)
  (お前はあちらがわにいる)
  (両手に)
  十二年
  あらゆる想いと一緒に
  水門
  (押し黙る秋の香たち)
  氷、エデン
  詩篇
  テュービンゲン、一月
  ヒューミッシュ
  サラゴダのチェルノヴィッツ出身の/パウル・ツェランによる/ポントワーズ近郊のパリで歌われた/詐欺師と泥棒の歌
 II
  繊毛の木
  漂移性の
  (いくつかの 手に - )
  ……泉がせせらぐ
  (それはもはや)
  ラディックス、マトリックス
  (黒土)
  (ある夕べ、扉の前に立っていた)
  大光輪
  (誰にも頬寄せず)
  (雌雄異株だ)
  シベリアのように
  祝福された女(ベネディクタ)
  研ぎすまされた切先で
 III
  (明るい石たちが)
  アナバシス
  (ブーメラン)
  ハブダラー
  メンヒル
  サーカスと城砦と一緒の午後
  日の光のもとで
  ケルモルファン
  (ぼくは竹を切った)
  コロン
 IV
  (何が起きたのか?)
  ひとつに
  (冠をかぶされて)
  (あの不滅だった語がぼくに)
  地球(レ・グロブ)
  フーエディブルー
  小屋の窓
  苦痛という音綴
  外岸
  (すべては違っている)
  そして タルッサからの書を携えて
  (空中に)



第II巻 目次:

息の転換 (一九六七)
 I
  (あなたは)
  (夢に見られないものに)
  (戸の隙間の)
  (未来の北方の)
  (お前の晩い顔の前に) 
  (憂鬱の早瀬を抜けて)
  (数たち)
  (お前の手の)
  (堀削された)
  (地上に向かって)
  (こめかみのペンチ)
  (霰の粒のせいで)
  (立つこと)
  (目覚めによって)
  (迫害された者たちと)
  (糸の太陽たち)
  (蛇の車に乗せて)
  (甲冑のつけたみみずばれ)
  (語の盛り上がり)
  (ぼくはお前を知っている)
  (体験してもいないことを)
 II
  (大きな)
  (歌うことができる残り)
  (滔々と流れる)
  (二十の)
  (もはやどんな砂の芸術も)
  (明るさへの飢え)
  (ぼくたちにあの白いものが)
  (がらんどうの生の屋敷)
  (海に)
  (白い経札に)
  (盲目になれ)
  (編み目のような葉脈の走る)
  (今日)
  (真昼に)
  (ぼくの手の皮膚の下に)
  (砂時計)
  港
 III
  (黒く)
  (槌の頭のようなもの)
  (骨壺に定められた存在たち)
  (曲芸師の太鼓)
  (もしお前が)
  (炭でいかさまの目印をつけられた)
  プラハで
  (あのハクサンチドリから)
  (半ば食い破られた)
  (拳から)
  (うなり木)
  (夕べ)
  (集められた)
  (屹立する土地)
  (あちこち飛ばされた)
  (三叉路で) 
 IV
  (書かれたものが)
  (苦痛の後ろから)
  フリヘード
  (珪化された文句を)
  (どこで?)
  (王の憤怒)
  溶解せよ(ソルヴェ)
  凝固せよ(コアグラー)
  (頭蓋の思い)
  (復活祭の煙)
  (岸壁の休息)
  (移し変えられた)
  (視覚の糸たち、意味の糸たち)
  (ひとつの響動き)
  (狂人たちの鉢)
  (リヒテンベルクの)
  キヴ ザ ワード
  (夕べ、ぼくを取り囲む)
 V
  (外へと!)
  (スレートの目をした女)
  (ぬかるんで)
  (お前)
  (天空たちとともに熱せられた)
  (靄の横断幕の、スローガンの横断幕の蜂起)
  (お前の傷のなかで休息せよ)
 VI
  (いつか)

糸の太陽たち (一九六八)
 I
  (瞬間 瞬間)
  フランクフルト、九月
  (偶然はいかさまの目印をつけられて)
  (誰が治めているのか)
  (どこでもないところに)
  (永遠の深みのなかで)
  (見えるまま)
  (迂回路の)
  (粗麻地の頭巾)
  (痙攣)
  (腕のなかにお前の両目を抱いて)
  ヘンダイユ
  ポー、夜に
  ポー、後に
  (花咲いている)
  (狂気の奥深く)
  (ざわめきの中で)
  リヨン、射手たち
  (頭たち)
  (どこにぼくはいるのだろう)
  (とうに見つけられたものたちが)
  (お前の封印はすべてこじ開けられたのか? 決して)
 II
  (眠りのかけらたちが)
  (真実が)
  (近くの)
  (孵った)
  (永遠たち)
  (人形のようなユキノシタが)
  (間に - )
  (首尾よく)
  (雨でぬかるんだ)
  (白いざわめき)
  (悪魔のような)
  (暗闇 - 接ぎ木される若木たち)
  (二番目の)
  (掘削された心)
  (勤勉な)
  (ぶつかり合うこめかみたち)
  (天にくるまれるように)
  (もしぼくが知らないなら)
  (住み着きながら - 住処を奪われ)
  (巨大な)
  (嘶かれた柩の祈り)
  (永遠たちが)
  (ダストシュートの口を開けた合唱たち)
 III
  (悪魔のいなくなった刹那)
  (有限なもののなかの)
  (愛が)
  (お前は)
  (右側に)
  (解体されたタブーたち)
  (海の外と内を巡る)
  (静寂よ)
  (あの)
  (熱いそして辛い葡萄酒を傍に)
  (斜めにかしいで)
  (真夜中に)
  (保護されず)
  (捏ねまわされた)
  (永遠が)
  (夕刻)
  (実生たちが)
  (連なる丘に沿って)
  (おいで)
  (残滓を取り除かれて)
  (認知不能症となって)
  (隣の女である夜)
  (鴎の雛たちが)
 IV
  アイルランドの
  (綱)
  (露)
  (夥しいアナウンスが)
  (麺棒で伸ばされたこの日)
  (油のように)
  (あの暗い鏡の中で)
  (天使の材料から)
  (吹き払われた光の種が)
  (内張りをせよ 語の洞穴たちを)
  (高くされた世界)
  (ぶつぶつ呟いている)
  (……そしてどんな)
  (近くに、大動脈弓の中に)
  (投げ降ろせ お前がかじりついている太陽年を)
  (お前が 苦境をものがたる破片を)
  (来たのだ 時が)
  (唇たち、「あなた」 - 夜の)
 V
  (諸々の力、激しい力)
  (昼の漆喰)
  (言葉が築く壁たち)
  (雷雨の捏槽の中で)
  (二人の)
  (転がされて消えていった)
  (色となって)
  (燕が)
  (白く)
  (覆われていない女)
  (お前に対する沈黙の突き)
  癲癇
  (鳩の卵の大きさの腫瘍が)
  (冬になり始めた)
  (外で)
  (誰がふるまったのか?)
  (縺れあう心)
  (名づけるはずの)
  思い浮かべよ

光輝強迫 (一九七〇)
 I
  (聞いていた残り、見ていた残り)
  (かれを夜が駆った)
  (貝の山たち)
  (灰を掬う杓子で)
  (火打ち石をいくつも嵌め込まれて)
  (夜のなかへいった)
  (ぼくたちは)
  (地雷が)
  (誰がお前に向かってきたのか?)
  (反照でおおわれて)
  (この離陸も)
  (航路標識の - )
  (失われたものから)
  (ぼくたちを)
 II
  (かつて)
  (ぼくたちの頭上には)
  (「予知した」が)
  ブランクージ宅で、二人で
  (ぼくが)
  (とうに)
  トートナウベルク
  (ぼくの)
  (今)
  アジアの一人の兄弟に
  (「かさぶたと痂皮、かさぶたと痂皮。」)
  (お前がぼくのなかで)
  ハイゲート
  (稲妻に驚かされて)
 III
  (投擲される円板よ)
  (光の楔たちを)
  (逃げた)
  (暗い搏動の中で)
  (飛び地)
  (書き込まれていない)
  (切りとれ あの祈る手を)
  (必要とされるだけの星たちが)
  (ぼくはお前をまだ見ることができる)
  (ただ)
  (空ろなものの中で)
  (粘土でできた注がれる捧げ物)
  (野性の心臓)
 IV
  (永遠たちが)
  (フィブラとなった心臓の響き)
  (並び合って)
  (特別にもう一杯盛られた夜は)
  (寒気に筋をつけられた甲虫たちの後ろで)
  (アイルランドの女が)
  (ぼくに遺された)
  (邪悪な)
  (製造 - )
  (泡箱の中で)
  (口の中に)
  (差し始めた潮が)
  (ウスバカマキリが)
  (もはや一本の挽材もなく)
  (語と語の間の)
  (話しかけられやすかったのは)
 V
  オラーニエン通り 一番地
  (井戸の - )
  (夢の原動機によって)
  (雲雀の影のために)
  (切断された)
  (褪せた声をもち)
  (無響の 妹となる殻)
  (天候を感じる手)
  (時の隅で)
  (ぼくをも)
  (後ろ向きに語られた)
  (次第に道化師の顔となり)
  (封鎖するドラム罐の言葉)
  (潮の下を)
 VI
  (狂気をいく者たち - 目)
  (かさばる明日よ)
  (注意書き - 苦痛)
  (オーカーを)
  (白鳥の危険)
  (閏世紀)
  (いくつもの水源地点)
  (曳船の時)
  (お前はお前のようであれ)
  (先立って働きかけるな)
 
雪の声部 (一九七一)
 I
  (洗われず、塗られず)
  (お前は)
  (黄色い窓の)
  (風の中で)
  (黴の生えていく)
  (この世界の)
  (娼婦のような「ほかに」)
  (何が)
  (ぼくは聞く、斧が花咲いたと)
  (野鼠の声で)
  (蜥蜴の - )
  (雪の声部)
 II
  (吃る口でまねされる世界)
  (暗闇のパチンコをもつお前)
  (茨で覆われた)
  (ぞんざいでいいのだ)
  (刈り取られぬままに)
  (進行方向右から)
  (木でできた顔をもち)
  ラルゴ
  (夜の秩序へと)
  (いくつもの袋小路と)
  (夜のような何か)
 III
  (なぜこの不意の「家で」)
  (なぜ掬われなかったものから)
  メイプスバリー・ロード
  (桶をかぶされた叫び声)
  (暗闇となって現れ出て)
  (お前 綛糸と)
  (ルーン文字でできたものも)
  (お前の、お前の)
  壁の文句
  エリックのために
  (誰が何も鋤き返さないのか?)
  (アラセイトウ)
  (あなたは尋で測りきる)
  エリックのために
  (お前のブロンドの髪)
  (深淵たちが徘徊する)
  (お前の鬣 - こだま)
 IV
  (あの「耳の器官の中で」が)
  (半ば食い破られた)
  (一葉)
  (プレイタイム)
  (過ぎ去ったことから)
  (開いた声門)
  (沼沢土壌から)
  (高層湿原)
  (鉱石の光る筋(エルツフリッター))
  (一稜石)
  (葡萄摘みのナイフで)
  (黄土の人形たち)
 V 
  (鋼のように急降下する視石)
  (そして力 そして苦痛)
  (ざわめきによって)
  (甲虫たちの)
  (ぼくはお前の裏切りを)
  (光る棒たち)
  (一本の読むための大枝)
  (進水台からお前に)
  (石灰 - クロッカス)
  (もうすでに)
  (真実への)
  (そして今)
  (速射 - 近日点)
  (ぼくたち 深くされすぎた者たち)
  (こめかみのかけらたちの後ろで)
  (切手 - 鈴蛙たちの - )
  (暗くなった 破片に砕けたこだま)
  (永遠は)



第III巻 目次:

骨壺たちからの砂 (一九四八)
 いくつもの門で
  向こうに
  夢の所有物
  子守歌
  井戸のほとりで
  雨のリラ
  ある戦士
  罌粟
  山の春
  オリーブの木
  墓に近く
  アルテミスの矢
  九月の王冠
  翼のざわめき
  孤独な者
  黒い雪片
  夢の敷居
  最後の門で
 罌粟と記憶
  荒野の歌
  (夜には お前の身体は)
  (徒に)
  ハーモニカ
  マリアンネ
  獣脂蝋燭
  (掌を時刻で一杯にして)
  (半分の夜)
  (お前の髪も)
  (ハコヤナギよ)
  (暗闇のなかに)
  唯一の光
  シネラリア
  羊歯の秘密
  夜の音楽
  骨壺たちからの砂
  最後の旗
  (鉄の靴の軋む音が)
  至日の歌
  饗宴
  九月の暗い目
  海からの石
  フランスの思い出
  夜の光
  お前からぼくへの幾歳
  遠方の賛辞
  全生涯
  デウカリオンとピュラー
  コロナ
  旅にあって
  死のフーガ

時の屋敷 (一九七六)
 I 時の屋敷
  (さすらう宿根草よ)
  (悪意のある月たちが)
  (金色)
  (沈んでいく鯨の額から)
  (お前は横たわる)
  (絹に覆われたどこでもないところが)
  (葡萄畑の壁が)
  (ぼくがお前に)
  (最も遠い)
  (エメラルドの軌道に)
  (お前が)
  (二つの見る膨らみ)
  (ぼくの)
  (お前は ぼくの)
  (囁くことしか許されぬ家)
  (小さな夜)
  (不安定なものに)
  (ぼくは ぼくの夜と)
  (お前の時計の顔が)
  (ぼくは 世界の)
  (ぼくの)
  (一つの星が)
  (ぼくをここで掴んでいる)
 II
  (アーモンドの女)
  (存在していた)
  (赤く燃える火が)
  (ぼくたち、ハマムギのように 真実であるものたち)
  (ひとつの指輪が、弓を引き絞るために)
  (輝くこと)
  (お前、宇宙の中にある)
  (おいで)
  (長靴一杯の)
  (ラッパの箇所は)
  (両極が)
  (王の道)
  (ひとつの意味もまた)
  (ぼくは葡萄酒を飲む)
  (何かが)
  (無が)
  (鐘のようなものの中で)
  (ぼくが)
  (見知らぬものが)
  (ぼくがお前の中で)
 III
  (塗擦されて逝かされて)
  (物質たちのあいだで)
  (世界、世界)
  (何が 苦くなって)
  (沈められた)
  (クロッカス)
  (葡萄つくりの人々が)
 
補遺詩篇
 海の歌
 陸地
 黒い冠
 迷い
 眠る恋人
 (どんな風に 時は枝分かれするのか)
 数え歌
 韻でできたものと 母音押韻をもった/大きな誕生日の青青(ブラウブラウ)
 (仲違いさせられた思考の音楽が)
 ST
 (この)
 暗闇に包みこまれて
  (顧みることなく)
  (光の放棄の後に)
  (くっきりと)
  (高く張った綱から)
  (いくつもの頭上を越えて)
  (文字を刻まれた)
  (異議を申立てられた石)
  (鍵の権能が)
  (荒地を)
  (分かたれないものの)
  (ぼくたち)
  (両手をつかって)

パウル・ツェランの作品と生涯
年譜
訳者あとがき (一九九二年六月)
改訂新版あとがき (二〇一二年一月)



青土社ホームページ:
「パウル・ツェラン全詩集 [改訂新版] 全3巻」






























































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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