『ポオ全集 第三巻』 (全三巻)

「ほんの子供の昔から 私はいつも
他の人達とは違っていた――他の人達が
見たものを 私は見ずにきてしまった――情熱を
みんなと同じ泉から汲むこともできず――
みんなと同じ源から悲しみを
ひき出すこともできず――みんなと調子を合せて
喜びに胸おどらせることもできず――」

(ポオ 「孤独」 より)


エドガー・アラン・ポー 
『ポオ全集 第三巻』

編集委員: 佐伯彰一/福永武彦/吉田健一

東京創元社
1970年11月20日 新装版 初版
1978年12月25日 8版
859p 目次3p 口絵(モノクロ)4葉
A5判 丸背バクラム装上製本 貼函
定価4,500円
装幀デザイン: 真鍋博



「お前は俺か。」
というわけで、本全集は第一巻と第二巻が小説、第三巻が詩と評論および書簡(抄)であります。


ポオ全集


目次:

口絵 (オディロン・ルドン)
 眼が、奇妙な気球のように無限に向う
 憂欝の黒い太陽の前に、レノアが現われる
 仮面が弔いの鐘を鳴らす
 『エドガー・ポオに』扉頁

詩 (福永武彦・入沢康夫 訳)
 チムール大帝 (入沢)
 唄 (入沢)
 夢 (入沢)
 死者たちの魂 (入沢)
 宵の明星 (入沢)
 夢の夢 (入沢)
 スタンザ (入沢)
 一つの夢 (入沢)
 もっとも幸せな日、もっとも幸せな時に (入沢)
 ――によせて (入沢)
 ソネット――科学によせる (入沢)
 アル・アーラーフ (入沢)
 ロマンス (入沢)
 ――によせて (入沢)
 ……川に (入沢)
 ――に (入沢)
 妖精の国 (入沢)
 ヘレンに (福永)
 イズラフェル (入沢)
 海の都市 (入沢)
 眠る女 (福永)
 レノア (福永)
 不安の谷 (福永)
 円型闘技場(コロセウム) (入沢)
 天国の あるひとに (入沢)
 讃歌 (入沢)
 F――に (入沢)
 F――s S・O――d に (入沢)
 未刊の劇『ポリシアン』より (入沢)
 婚礼の唄 (入沢)
 ザンテ島へのソネット (入沢)
 幽霊宮殿 (入沢)
 ソネット――沈黙 (入沢)
 勝ち誇る蛆 (入沢)
 夢の国 (福永)
 鴉 (福永)
 ユーラリイ――唄 (福永)
 ヴァレンタインの日のお道化唄 (入沢)
 M・L・S――に (入沢)
 ウラリューム――譚詩 (福永)
 謎 (入沢)
 ―― ―― ――に (入沢)
 鐘のうた (入沢)
 ヘレンに (福永)
 エルドラドオ (入沢)
 アニーのために (入沢)
 わが母に (入沢)
 アナベル・リイ (福永)
 エリザベス (入沢)
 遊戯詩(アクロスティク) (入沢)
 セレナーデ (入沢)
 ラテン語の讃歌 (入沢)
 勝利の歌 (入沢)
 孤独 (入沢)
 ウェストポイント諷詩 (入沢)
 ルイーザへの数行 (入沢)
 サラーへ (入沢)
 バラード (入沢)
 軍歌断片 (入沢)
 即興 (入沢)
 去りにし人 (入沢)
 神聖な王権 (入沢)
 スタンザ (入沢)

B――への手紙 (篠田一士 訳)
メルツェルの将棋差し (小林秀雄・大岡昇平 訳)
ブラックウッド風の記事を書く作法 (大橋健三郎 訳)
ある苦境 (大橋健三郎 訳)
エイロスとカルミオンとの対話 (松原正 訳)
室内装飾の哲学 (松原正 訳)
モノスとウナの対話 (松原正 訳)
韻文の原理 (永川玲二 訳)
シンガム・ボッブ氏の文学と生涯 (吉田健一 訳)
イギリスの古い詩 (永川玲二 訳)
言葉の力 (松原正 訳)
構成の原理 (篠田一士 訳)
ユリイカ (牧野信一・小川和夫 訳)
詩の原理 (篠田一士 訳)
詐欺――精密科学としての考察 (松原正 訳)

覚書(マルジナリア) (吉田健一 訳)
 マルジナリア
 悪口文
 弗全盛
 アメリカ
 アメリカ文学の本国性(nationality)
 類似
 絶滅
 聯想
 芸術の定義
 芸術のからくり
 芸術家
 短文
 ブルワ
 ブルワの『ポムペイの最後』
 ブルワの『夜と朝〉
 小説家としてのブルワ
 頭文字
 カーライル
 カーライル
 慈恵
 コウルリッジ
 コウルリッジの食卓談(Table-talk)
 議会
 会話
 卑怯
 批評
 批評、――アナクレオン
 デフォー
 自己説明嗜好癖
 Weeping-willow(枝垂れ柳)の語原
 ディッケンスの『骨董屋』
 ディッケンスとブルワ
 劇
 ギリシア劇
 戯曲に於ける場面の変り
 現今の雄弁
 エマソン
 表現
 優越者の宿命
 運
 天才
 天才
 天才
 天才と根気
 制御された天才
 ドイツ文学
 神と霊魂
 グラッタンの『大道小径』
 バシル・ホール
 ヘーバ
 ヘーゲルと哲学
 小説家達への注意
 想像力
 講演
 老練な論法家
 ロングフェロー
 ロングフェローとタッソに於ける文学的モザイク
 ロングフェローの『流浪の子』
 ロングフェローの『流浪の子』
 恋、――「少年詩人の恋」
 ロウェルの『談話集』
 雑誌文学
 雑誌
 マリブラン
 『催眠術の啓示』及び『ヴァルドマアル氏の病症の真相』
 暗比(メタフォア)
 ミルの命題
 群集
 現代多神論
 ムア
 棒杭を呑込んで居る道徳家達
 文学的倫理
 モーゼの天地創造説
 ヨナ書の独訳
 本の濫造
 「天体の音楽」("Music of the spheres")
 ニイルの作品、――その構成の不完全
 ニウンハムの『人間磁気』
 北米新報(ノース・アメリカン・レヴュウ)
 匂い、――連想
 光学的手品
 独創性
 独創性
 過去、現在
 ポオルディングの『ワシントン伝』
 旋毛曲り
 ペトラルカ
 哲学上の誤り
 剽竊、――文学の掏摸
 詩に於ける破格
 ラハルプのラシーヌの批評
 詩
 詩とは何であるか
 快楽禁止
 句読点
 此の論法
 循環論法
 改革、――反対
 宗教と哲学
 自分の生涯を生返すこと
 修辞学の規則
 押韻
 真実
 オーガスティンの摩尼教論
 魂の在所
 自然を超越すること
 シューの『パリの秘密』
 スウェデンボルグ派の軽信
 短篇
 テニソン
 思索
 『私の心を発く』
 『ウンディーネ』
 合衆国の標語
 復讐
 ヴォルテール著作集
 故ジョン・ウィルソン
 天才
 哲学体系
 シェークスピア批評
 禁酒運動
 禁酒運動
 リイ・ハント
 批評
 音楽
 自然の状態
 作品の転載
 事実と小説
 学識

書評 (佐伯彰一・小泉一郎 訳)
 ド・ラ・モット・フーケ男爵『ウンディーネ』 (佐伯)
 ブルワ・リットン『夜と朝』 (佐伯)
 チャールズ・ディケンズ『バーナビー・ラッジ』 (小泉)

書簡 (坂本和男 訳)


作家論
 ポール・ヴァレリイ 〈『ユリイカ』をめぐって〉 (吉田健一 訳)

解説 (佐伯彰一)
ポオ年譜 (西川正身 編)



ポオ全集3 01



◆本書より◆


「一つの夢」より:

「まっくらな夜の 幻にひたって
  私は夢を見てきた 失われた喜びを。
けれども 昼間 覚めて見る生活と光の夢が
  砕けた心を 癒してくれたためしはない。」

「世の人があげて私をとがめたときも、
  あの きよらかな夢――きよらかな夢が
孤独な魂を導いて、美しい光芒のように
  私をたのしくさせてくれたのだ。」



「アル・アーラーフ」より:

「私は 自分が飛ぶのをやめて落ちていくのを覚えた。
先程 昇って来た時ほどの速度ではなかったが
しかし わなわなとふるえながら下降をつづけたのだ
明るい真鍮色の光線をよぎって この黄金の星まで!
墜落の時間は 長くはつづかなかった、
そなたの星が どの星よりも私の星に近かったのだから。
恐るべき星! 歓楽の一夜のさなかに迫って来た星、
おびえる地球の上に落ちかかった 紅蓮(ぐれん)の迷宮。」

「その小さな円盤は暗く、天使たちの眼だけが空に
その幻影を見ることができたのでした。そして、そのとき初めて、
アル・アーラーフは、自分のコースが さか落しに
星の海の彼方の その星へと向っていることを知りました――」



「アル・アーラーフ」注より:

「一つの星がチコ・ブラーヘによって発見された。突然空に現れて、数日のうちに木星にまさる明るさになり、そしてまた忽然と消え失せ、その後は二度と姿を見せなかった。」


「海の都市」より:

「見るがいい! 「死神」はみずからの王座を築いた、
ほの暗い西方のはるかな海に
ひとり横たわる異様な都に――
善人も 悪人も 至善のものも 極悪のものも
すべてがすでに永遠の憩いについた その都。
そこでは 社も 宮殿も 塔も
(歳月にむしばまれながら小ゆるぎもせぬその塔も!)
人の世のものと似ても似つかず――
周囲には 陰欝な海面が 風にさえ見放されて
波も立てず あきらめ切ったように
大空の下に横たわっている。」



「夢の国」より:

  「暗く人けない道を過(よ)ぎり、
  ただ悪霊の天使の群につき纏われ、
  そこに「夜」と呼ばれる一つの「まぼろし」の
  黒い玉座にあってたじろがず治めるところ、
  私は遂にここに達した、この土地に、ごく近頃、
  おぼろげなテューレの国の涯(はたて)から――
荒びた宿運の風土から、その荘厳に位置するところは、
   「空間」のそと――「時間」のそと。」



「鐘のうた」より:

「男でもなく女でもない彼ら
けものでもなく 人でもない彼らは
死肉を喰らう鬼のともがら――」



「孤独」より:

「ほんの子供の昔から 私はいつも
他の人達とは違っていた――他の人達が
見たものを 私は見ずにきてしまった――情熱を
みんなと同じ泉から汲むこともできず――
みんなと同じ源から悲しみを
ひき出すこともできず――みんなと調子を合せて
喜びに胸おどらせることもできず――
何を愛するにしても――一人きりで愛した。」



「モノスとウナの対話」より:

「そしてこういう人たち、すなわち詩人たちは、「功利主義者」たちにさげすまれながら生き、そして死んでいった。本来ならばさげすまれていた側にのみ与えられるべき権利を僭取した粗野な衒学者たちに、さげすまれながら生き、そして死んでいったのだ。」
「けれども、こういう、世間一般の無秩序の同調しない高潔な例外的人物の存在も、対立することにより、その無秩序を強めただけだった。ああ、悪い時代のうちでも特に悪い時代に、われわれは出くわしたのだ。」

「種族として人間は絶滅しないだろうが、人間は「生れ変ら」ねばならない、ということを私は悟ったのだった。
 そして、おまえと私が、毎日のように夢想にふけったのは、ウナよ、このときのことだった。そう、たそがれ時に、来るべき時代のことを――技術にそこなわれた地球の表面が、その度しがたい醜悪に対する唯一の治療法である浄火による焼却を受け、楽園のごとき緑草と山の斜面と朗らかな海という新しい衣裳をつけ、人間にとってふさわしい住みかとなるであろう時代のことを論じあったのだった。」



「ユリイカ」より:

「最初に、できるだけ明白に言っておきます、といっても論証しようとする定理のことなんかではありません――数学者たちが何と主張しようとも、少なくともこの世には論証などという代物の存在するわけはないのでありますから――まず言っておきたいのは、この書を通じて絶えず私が暗示したいと思っている主要な観念なのです。
 さて、私の一般命題とはこうであります。――最初のものの根源的な単一状態には、次代のすべてのものの続発すべき原因が潜んでいる、と共にそれらのものの必然的な破滅の萌芽も潜んでいる、ということ。
 この観念を例証するために私の提案したいのは、精神が独自の印象を真に受け入れ知覚し得るような宇宙の通観(サーヴェイ)をするということです。」



「覚書(マルジナリア)」より:

「私は時々、智力に於いて、他の人類よりもずっと優れた人間が居たとしたら、どうなるだろうと考えることがある。彼は勿論自分の頭が、他のもののよりも優れて居るのを知って居るだろう。そして、若し彼が他の点では、普通の人間と同じであれば、彼はその優れて居ると知って居るのを示さないでは居ないだろう。それで、彼は到る所に敵を作るだろうし、又、彼の意見や考察は、勿論他の全人類のと異って居ることだろうから、彼が気違い扱いにされることも明瞭である。これは何という悲惨なことだ! 非常に優れて居る為に非常に劣って居るとされる、これよりもひどい苦痛は地獄にもないだろう。
 それと同じように、他のものはただ口だけで言って居ることを自分は心から感じる、非常に寛仁な人物があったとしたら、彼はやはり何処に行っても誤解され、何を遣るにしても、その誠意を疑われるだろう。丁度極度の智力が低能と思われるように、過度の気高さもひどい卑しさと間違えられるだろう、――そしてこれは、智力とか寛仁のみならず、他の凡ての美質に於いても同じことである。この問題を追究するのは恐ろしいことだ。そのように他の人間を超越したものが居たことは、殆ど疑う余地がない。併し、その人達の存在の跡を歴史に徴してみる場合、我々は、「偉人及び善人」の伝記を悉く看過し、牢獄、或いは気違い病院、或いは絞首台の上で命を失ったものの、微々たる記録を念入りに調べて見なければならない。」

「マリブラン
 最も厳格な鑑賞家も、最も感受性の鋭いものも、彼女には讃辞を惜まなかった。人間の経験した勝利の中で、マリブランの程歓びと興奮に満ちたものはなかった。或いは、あるとすれば、それはタリオニの場合に於いてだけである。個人的な女性に対する熱狂的な称讃、あの自発的な、その場での、疑う余地のない喝采、マリブランが同時に見、聞き、又自分がそれに価するのを知って居た、情の籠った涙や溜息に比べれば、強要されて捧げられる戦勝者への讃辞、否、名声あり、勢力もあり、多くの熱心な愛読者を持つ、人気作家たる栄華も、正に何でもないのである。マリブランの短い生涯は、一つの燦然たる夢だった、――不運なこともあったけれど、それは彼女のものだった栄光に比べれば、微塵の重さもない。」
「短命は、マリブランの歓喜に満ちた生涯の一条件であった。心あるもので、マリブランが歌うのを聞き、その短命を予覚しないものはなかった。彼女は数十年を数時間の内に盛り、その千年の存在を終えて、二十五歳で亡くなったのである。」


























































































































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『ポオ全集 第二巻』 (全三巻)

「が、そもそも人間の願いがかなえられたためしがあるだろうか。」
(ポオ 「ミイラとの論争」 より)


エドガー・アラン・ポオ 
『ポオ全集 第二巻』

編集委員: 佐伯彰一/福永武彦/吉田健一

東京創元社
1969年11月25日 新装版 初版
1973年3月15日 5版
649p 目次3p 口絵(モノクロ)4葉
A5判 丸背バクラム装上製本 貼函
定価3,000円
装幀デザイン: 真鍋博



東京創元社版ポオ全集は装幀がよいでありますな。


ポオ全集


目次:

口絵 (ハリー・クラーク)
 メエルシュトレエムに呑まれて
 マリー・ロジェの謎
 黄金虫
 黒猫

モルグ街の殺人 (丸谷才一 訳)
メエルシュトレエムに呑まれて (小川和夫 訳)
妖精の島 (松村達雄 訳)
悪魔に首を賭けるな (野崎孝 訳)
週に三度の日曜日 (宮本陽吉 訳)
楕円形の肖像 (河野一郎 訳)
赤死病の仮面 (松村達雄 訳)
庭園 (松村達雄 訳)
マリー・ロジェの謎 (丸谷才一 訳)
エレオノーラ (高橋正雄 訳)
告げ口心臓 (田中西二郎 訳)
黄金虫 (丸谷才一 訳)
黒猫 (河野一郎 訳)
陥穽と振子 (田中西二郎 訳)
鋸山奇談 (小川和夫 訳)
眼鏡 (佐伯彰一 訳)
軽気球夢譚 (高橋正雄 訳)
催眠術の啓示 (小泉一郎 訳)
早まった埋葬 (田中西二郎 訳)
長方形の箱 (田中西二郎 訳)
不条理の天使 (永川玲二 訳)
「お前が犯人だ」 (丸谷才一 訳)
ウィサヒコンの朝 (野崎孝 訳)
シェヘラザーデの千二夜の物語 (高松雄一 訳)
ミイラとの論争 (小泉一郎 訳)
天邪鬼 (中野好夫 訳)
タール博士とフェザー教授の療法 (佐伯彰一 訳)
ヴァルドマアル氏の病症の真相 (小泉一郎 訳)
盗まれた手紙 (丸谷才一 訳)
アモンティリャアドの酒樽 (田中西二郎 訳)
アルンハイムの地所 (松村達雄 訳)
メロンタ・タウタ (高橋正雄 訳)
ちんば蛙 (永川玲二 訳)
×だらけの社説 (野崎孝 訳)
フォン・ケンペレンと彼の発見 (小泉一郎 訳)
ランダーの別荘 (松村達雄 訳)
スフィンクス (丸谷才一 訳)

作家論
 アレン・テイト 〈わが従兄ポオ氏〉 (沢崎順之助 訳)

解説 (佐伯彰一)



ポオ全集2 01



◆本書より◆


「モルグ街の殺人」より:

「ぼくたちが知りあったのは、モンマルトル街の仄暗い図書館においてである。」
「ぼくのパリ滞在中、二人はいっしょに住むことになった。ぼくの経済状態は彼のそれよりいくらか良かったので、ぼくが彼の許しを得て金を出し、フォーブール、サン・ジェルマンの奥まった寂しいあたりにある、迷信のせいで長いあいだ打ち捨てられていた(ぼくたちは、どういう迷信なのかと訊ねはしなかった)、今にも倒れそうな、古びたグロテスクな邸を借り、そして、ぼくたち二人の共通の気質であるかなり幻想的な沈欝さに似つかわしいスタイルで、家具をととのえた。
 もしこの邸におけるぼくたちの日常が世間の人に知られたならば、彼らはぼくたちを狂人――ただしたぶん無害な狂人――と思ったにちがいない。ぼくたちの、世間からの隔絶ぶりは完璧であった。客の来訪は許さなかったし、この隠れ家のある場所は、ぼくの知りあいにも秘密にして置いた。それに、デュパンを知る者がパリの街に一人もいなくなってから、かなりの歳月が流れていた。すなわち、ぼくたちはまったく二人きりで生きていたのである。
 夜そのものの故に夜に魅惑されること、それがぼくの友人の趣味(ほかにどんな呼び方があろう?)であった。そしてぼくはこの奇癖(ビザルリー)にも(他のものの場合と同様)いつとはなしにかぶれてしまい、彼の奔放な気まぐれに徹底的に身をゆだねた。もちろん漆黒の女神はぼくたちと常に一緒にいるわけにはゆかぬ。しかし彼女を贋造することは可能であった。夜明けの最初の兆(きざ)しが訪れると、ぼくたちは邸じゅうの重く大きな鎧戸を閉ざし、一対の蠟燭をともす。すると蠟燭は、きつい香りをはなちながら、この上なく蒼ざめた、この上なく仄かな光を投げるのだ。こうしてぼくたちは、真の《闇》の到来を時計が告げるまで夢想に耽り――読書、執筆、会話に没頭するのだった。ぼくたちはそれから、腕を組み合って通りへ散歩に出かけ、その日の話題について語りつづけたり、遅くまで遠歩きしたりして、ただあの静かな観察のみが与えてくれる無限の精神的興奮を、人工稠密な都会の、兇暴な光と影のなかに求めたのである。」



「妖精の島」より:

「わたしは心に思った――「もし魔法の島があるとすれば、これこそまさにその島だ。これこそ、わずか生き残ったやさしい妖精たちの住み家だ。あの緑の塚は妖精の墓だろうか――それとも、彼らもまた人間同様に息絶えてその愉しい生涯を終るのだろうか。まさに死のうとするとき、彼らはむしろ悲しげにやせ衰えてゆくのではなかろうか。これらの木々が一つまた一つと影を放出して、その実体を消滅させてゆくように、彼らもその生命を少しずつ神へ返してゆくのであろうか。やせ細ってゆく木と、木の影を呑み込んで、このえじきのおかげでいっそう黒ずんでゆく水――この両者の関係はまさに、妖精の生命とそれを呑みこんでゆく『死』との関係にも相通ずるのではあるまいか」」


「庭園」より:

「高度の天才は必ず野心的だとしても、最高度の天才はつねにいわゆる野心などは超越している、といったことは果して考えられないことだろうか。もしそうだとすれば、詩人ミルトンよりもはるかに偉大でありながら、満足して「鳴かず飛ばず」で終った者も数多く存する、といったことにもならないだろうか。より豊かな芸術における、人間の能力の極致ともいうべき輝かしい成果などは、いまだこの世には現われなかったし、何かいくつもの偶然が重なって、最高の精神を鞭打っていとわしい努力に駆り立てることがなければ、今後もおそらく現われることはないだろうと思う。」


「エレオノーラ」より:

「私は盛んな空想力と烈しい情熱で有名な人種の出である。人々は私を狂人と呼ぶが、狂気が最も崇高な知性であるかどうか――光輝あるものの多くが――深遠なもののすべてが――病める思考から――月並みの知性を犠牲にして高められた精神状態から――生れるものかどうか、この疑問はいまだに解決されていない。白昼夢を見る人は夜しか夢を見ない人の気づかない多くのものを認識する。ぼんやりした幻想の中で、彼らは永遠をのぞき見し、眼ざめた時、自分が大変な秘密の瀬戸ぎわにいたことを知って、戦慄をおぼえる。」
「しかし、人々は私を狂人というだろう。」



「タール博士とフェザー教授の療法」より:

「メーヤール氏が語った、患者を煽動して叛乱を起した男というのは、どうやら彼自身のことであった。この人物は、二、三年来この院長を勤めてきたのだが、そのうち発狂して、自身が患者となったのだ。」


「ヴァルドマアル氏の病症の真相」より:

「「死んだんだ! 死んだんだ!」という叫びが、患者の唇からではなしに舌から、ほとばしり出るのを聞きながら、私が急いで催眠術の按手を施していると、彼の全身は、一分も経たぬうちに、いやそれよりも短い時間に、だしぬけに縮(ちぢ)まり――崩れ、私の手の下ですっかり腐り果ててしまった。一座の人々全部の眼前で、ベッドに横たわっているのは、胸がわるくなるような――いまわしい腐敗物の、液体に近い塊(かたま)りだった。」


「アルンハイムの地所」より:

「普通アルンハイムにゆくには河を利用する。訪問者は朝早く市を出る。午前中は、人里近い、静かで美しい眺めの両岸にはさまれて、舟を進める。そこには無数の羊が草をはみ、ゆるやかに起伏する牧場のあざやかな緑を、真白な羊毛で点々と彩っていた。次第に農耕を連想させるものが乏しくなり、牧畜を思わせるものに変っていった。そして、その印象に徐々に隠遁的な感じが加ってゆき――それがまた、やがて寂寥をおぼえるような風光へと移っていった。夕暮が迫ってくるにつれ、川幅はさらに狭くなり、両岸はますますけわしくなってゆき、しかも、いっそう欝蒼と茂る木の葉に掩われるようになった。水はますます透きとおって見えた。流れは幾たびとなく曲りくねるので、光る川面はいつでも二百メートル以上は見通せなかった。木の葉の茂みが、越えがたく抜けがたい壁となってまわりを取りかこみ、床こそないものの、紺青の襦子のような屋根となって上からかぶさり、舟はつねに魔法の輪の中にとじこめられたかのようだった。何かのはずみで逆さにひっくり返った幻の舟が、まるでほんものの舟を支えようとするかのように、いつもつき従って浮んでいたが、ほんものの舟の竜骨は、いともたくみに幻の舟の竜骨の上に載っているのだった。」

「この羊腸と曲折する流れを縫うように上ってゆくこと数時間、陰欝な木下闇(こしたやみ)は刻一刻と深まっていったが、その時とつぜん舟は思いがけず急角度に曲って、峡谷の幅に比較してはかなり広い、丸い池のようなところへ、まるで天から舞い下りたかのようにすべり込んだ。(中略)この池は非常に深かった。しかし、水がとても透きとおっているので、まるい石花石膏の小石が分厚く敷きつめられているらしい水底は、それに眼をやりさえすれば――もっとも、水中深く倒さに映る天空に、丘の傾斜の花々がそっくりそのまま水に映って咲き乱れているので、それに眼を奪われてはだめなのだが――はっきりと見すかせた。(中略)しかし、くっきりと水際に接するあたりから、おおいかぶさる雲の層にいつとはなく交わるあたりまで、限りなく色とりどりの丘の斜面を下からずっと見上げてゆくと、おびただしいルビー、サファイア、オパール、金色の縞めのうなどが、音もなく空からこぼれ落ちてきて、さながら宝石の滝のパノラマをくりひろげている、としか思いようはなかった。」
「ここで旅人は今まで乗ってきた舟から下りて、象牙づくりの軽やかな丸木舟に乗りかえる。」
「舟はゆっくりと池をめぐって、やがてその舳(へさき)は太陽の方に向う。そして、静かに、しかし次第にその速力を加えながら舟は進み、かすかに起るさざ波は、象牙の舟べりに砕けて、えもいわれぬ美しい調べを奏でる――おどろいた旅人は、いったいこの調べはどこから起るのかと、あたりを見まわしてみても何も見当らぬままに、慰めるような悲しませるようなこの楽(がく)の調べは、どうやらこのさざ波の立てる音としか思いようもないことを悟る。
 丸木舟は休みなく進んで、行く手の奥深いながめに通ずる岩の門に近づいてきた。そこでその岩の奥までがいっそうはっきりと見分けられるようになった。」
「速度をやや早めながら、静かに舟を進めてゆくうち、幾度となく小さく曲ってから、旅人は、巨大な門というか、それとも磨き上げた黄金の扉ともいうべきものに、どうやらその進路がさえぎられていることに気づく。その扉は、丹精こめた彫りものをほどこし、稲妻模様で飾られてあって、今やあわただしく落ちてゆく夕日の光をまともに反射して、その輝かしさは、まわり一帯の森を焰に包むかと思うばかりである。(中略)丸木舟はこの支流に入って、門に近づく。その重たい扉が美しい響きを立ててゆっくりと開かれる。その間を舟はすべり込み、すみやかに流れを下りはじめて、ついに、紫の山々にまわりをぐるりと取り巻かれた、広々した円い盆地へと入ってゆく。(中略)アルンハイムの楽園の全景が突如として今や眼前に展開される。心を酔わすような楽の調べが流れてくる。ふしぎな芳香が胸苦しいまでに感ぜられる。ほっそりと丈高い東洋の木々、茂る灌木、金色や真紅の鳥の群れ、ゆりの花に縁どられた湖、すみれやチューリップやけしやヒヤシンスや月下香の咲き乱れる牧場、多くの銀色の小川が長くもつれ合った線――さながら夢のように、こうしたものが入り交って眼に映る。そして、すべてこうしたものの真唯中から、半ばゴシック風、半ばサラセン風の一群の建物が、無数の張り出し窓やミナレットやピナクルを見せてまるで奇蹟のように中空に懸りながら、真赤な太陽の光に染まって光り輝いている。そしてそれは、空気の精や妖精や魔神や地の精がみな力を合せて造り上げた、さながらまぼろしの建物とも見えるのであった。」



「ちんば蛙」より:

「しかしちんば蛙は、足の畸型のために道路や床板のうえでは大きな苦痛や困難なしに歩けないけれども、いわば下肢の欠陥のつぐないとして自然が彼の腕に異常にたくましい筋肉をあたえたのであろうか、樹木、綱、そのほか、よじのぼることが問題になる場合には、さまざまの離れ業を彼はみごとにやってのける。そんなとき彼は蛙どころか、たしかに栗鼠(りす)や小猿を思わせるのだった。
 ちんば蛙の出身地がどこであるかを、正確には私は知らない。とにかくそれは、だれも聞いたことがない未開の地方――われらの王の宮廷から極めて遠いところだ。ちんば蛙と、もうひとり彼と大差ないほど小人めいた(しかし見事な均整をそなえ、すばらしい踊り手である)少女とを、国境をへだてたそれぞれの故郷から強制的に連れだして王への贈り物にしたのは、常勝を誇る彼の将軍たちのひとりだった。
 こうした状況のもとで、小さなふたりの囚われびとのあいだに親密な友情が芽ばえても不思議ではない。」

「「やっとはっきり見えたぞ」と彼は言った。「この仮面の奴らがどんな人間だったか。偉大な王様と、その七人の大臣さまだ――無防禦な娘を平気でなぐる王様、それに、その乱暴をけしかける七人の大臣さまだ。俺のことなら、俺はただのしがない道化、道化のちんば蛙さ――そして、これが俺の道化の最終回だ」
 麻糸と、その下塗りのタールと、両者がもつ高度の引火性のおかげで、小人がこの短い演説を終ったころには復讐の作業はすでにほとんど完了していた。八つの死体は鎖につながれたまま、悪臭を放つ、黒焦げの、醜怪な、区別のつかぬひとつの塊りになって揺れ動いていた。びっこは彼らに炬火を投げつけてから、ゆっくりと天井までよじ登り、天窓をくぐって姿を消した。
 おそらくはトリペッタが、あらかじめ大広間の屋根にひそんで、彼女の友人の激しい復讐の共犯者をつとめたのだろう、そして彼らは手をたずさえて自分たちの故国への脱出を果したのだろうと思われている。なぜなら、以来このふたりは二度と姿を見せなかった。」



「スフィンクス」より:

「七十四門の砲を備えた、我が国古戦艦の姿は、この怪物の外形について何がしかの観念を伝えるかもしれない。太さは普通の象の胴体ぐらい、長さは六、七十フィートほどある鼻のさきに、口があるのだ。そして鼻の根本には、水牛二十頭分の毛を集めたよりも多い、厖大な量の黒い毛が密生している。この毛すら下方に、二本の光り輝く牙が垂直に突き出ているのだが、それらは猪の牙を途方もなく巨大にしたようなものである。鼻を平行に、左右から、長さ三、四十フィートの棒状のものが前に出ている。これは純粋の水晶で出来ているらしく、形は完全なプリズムを成し――落日の光をこの上なく豪奢に反映していた。胴体は、大地に尖端を突きつけた杭のような形をしている。そしてそこから二対の翼が生え――一つの翼が長さ百ヤード――一対は他の一対の上にあって、すべて金属の鱗でおおわれている。一つ一つの鱗は、どうやら、直径が十ないし十二フィートあるらしい。上段、下段の翼が強靭な鎖で連絡してあることをぼくは認めた。しかしこの恐ろしい怪物の主たる特徴は、ほぼ胸全体を覆っている髑髏(されこうべ)の絵であった。それは体の黒地の上に、まるで画家が入念に描きあげたかのように正確に、眩ゆい白で描かれてあったのだ。
 この恐ろしい動物、特に胸のあたりの様子を、恐怖と畏怖のいりまじった或る感情で――理性によってはどのようにしても追いやりがたい不吉の到来の予感をいだきながら、ぼくが見まもっていたとき、鼻の尖端にある巨大な顎が突然ひろがり、哀傷にみちた轟然たる響がそこから発せられたのだ。それはまるで葬いの鐘のようにぼくの心を打ちのめした。そう、この怪物が麓へと姿を消した途端、気を失って床へと倒れるほどに。」








































































『ポオ全集 第一巻』 (全三巻)

「夢みることは、ぼくの生涯の仕事だった。だからぼくは、自分のために、御覧の通り、『夢の部屋』って奴を作りあげたのさ。」
(ポオ 「約束ごと」 より)


エドガー・アラン・ポオ
『ポオ全集 第一巻』

編集委員: 佐伯彰一/福永武彦/吉田健一

東京創元社
1969年10月15日 新装版 初版
1972年10月30日 5版
683p 目次3p 口絵(モノクロ)4点
A5判 丸背バクラム装上製本 貼函
定価2,500円
装幀デザイン: 真鍋博



久しぶりにポー全集を通読したであります。
やはりポーは一周まわってすばらしいであります。
そのうちまた通読したいであります。


ポオ全集1 01

函。


ポオ全集1 02

見返し。


ポオ全集1 03


目次:

口絵 (ハリー・クラーク)
 約束ごと
 モレラ
 リジイア
 沈黙

壜のなかの手記 (阿部知二 訳)
ベレニス (大岡昇平 訳)
モレラ (河野一郎 訳)
ハンス・プファアルの無類の冒険 (小泉一郎 訳)
約束ごと (小泉一郎 訳)
ボンボン (永川玲二 訳)
影 (河野一郎 訳)
ペスト王 (高松雄一 訳)
息の喪失 (野崎孝 訳)
名士の群れ (野崎孝 訳)
オムレット公爵 (永川玲二 訳)
四獣一体 (高松雄一 訳)
エルサレムの物語 (高松雄一 訳)
メッツェンガーシュタイン (小泉一郎 訳)
ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語 (大西尹明 訳)
リジイア (阿部知二 訳)
鐘楼の悪魔 (野崎孝 訳)
使いきった男 (宮本陽吉 訳)
アッシャー家の崩壊 (河野一郎 訳)
ウィリアム・ウィルソン (中野好夫 訳)
沈黙 (永川玲二 訳)
ジューリアス・ロドマンの日記 (大橋健三郎 訳)
実業家 (宮本陽吉 訳)
群集の人 (中野好夫 訳)
煙に巻く (佐伯彰一 訳)
チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか? (宮本陽吉 訳)

作家論
 D・H・ロレンス 〈エドガー・アラン・ポオ〉 (羽矢謙一 訳)

解説 (佐伯彰一)



ポオ全集1 05



◆本書より◆


「ベレニス」より:

「一冊の本の欄外或いは本文中の瑣細な図案に注意を固定させて、長く倦きずに考えこんだり――夏の長い日の大部分を、掛絨毯や床の上に斜めに落ちる奇妙な影の形を眺めて過したり――一晩中、ランプの動かぬ焰や暖炉の燠(おき)を見詰めて自分を忘れたり――一つの花の匂いについて、毎日毎日考えこんだり――変哲もない言葉を、繰り返すためその音が心になんの意味も伝えなくなるまで、飽きずに繰り返したり――運動と物理的存在の感覚を失うまで長く頑固に体を動かさないでいたり――これらが私の精神力の状態から結果した、最も普通で害の少ない気まぐれの例であった。この気まぐれは、たしかに全く類のないものではないにしても、あらゆる分析や解釈のようなものを、拒否している。」


「モレラ」より:

「だがこのときの記憶ばかりは、決して流れ去ることはあるまい。わたしとても、花咲き葡萄の実る歓楽の世界を知らぬわけではなかった――だが毒人参と糸杉の黒い影が、夜となく昼となくわたしにつきまとっていた。わたしには時もなく処(ところ)もなく、すでにわが運命をつかさどる星々は天空から消え、地上は暗く、人々の姿は飛び交う影のように通りすぎ、その中にわたしはただ一つ――モレラの姿のみを見つめていたのだ。天空を渡る風も、わたしの耳にはただ一語のみを囁き、海原のさざ波も無限に――モレラとのみ、つぶやいていたのだ。」


「約束ごと」より:

「「夢みることは」と彼は、吊り香炉の明るい光の方に見事な壷の一つをかかげながら言った。――「夢みることは、ぼくの生涯の仕事だった。だからぼくは、自分のために、御覧の通り、『夢の部屋』って奴を作りあげたのさ。」


「影」より:

「プトレマイスと呼ばれる小さな町のとある立派な邸宅に、わたしたち七人は夜ふけて、キオス島産の赤葡萄酒(ぶどうしゅ)の瓶をかこんで坐っていた。部屋には、真鍮製の大扉をのぞけば他に出入口はなく――工匠コリンノスによって作られた見事なその大扉は、内側から固く閉ざされていた。扉とともに、陰欝なこの部屋にかけられた黒い垂れ布もまた、わたしたちの視界から月や、不気味な星や、人気(ひとけ)のない町の通りを隠していた……だが、「禍い」の前兆と記憶だけは、そのようにしめ出すことは出来なかった。わたしたちの身辺には、明確な説明を下し得ぬさまざまな――物質的、精神的な――ものが取り巻き、大気の重苦しさ……窒息感……不安……そしてとりわけ、五感ははっきりと目覚めながらも、思考力の眠りから覚めぬとき、神経質な人々の味わうあの怖ろしい不安な存在感があった。どっしりとした重い雰囲気が、わたしたちの上におおいかぶさっていた。」

「そして見よ! 歌の音色の消えた黒い垂れ布の間からは、形のさだかならぬ一つの黒い影が――中天低くかかった月が、人の姿から形どるような影が現われた……だがそれは、人の影でも、神の影でもなく、見なれたいかなるものの影とも異なっていた。それはしばらく部屋の垂れ布の中でふるえていたが、やがて真鍮の扉のおもてに全姿を現わした。」
「やがて遂に、わたしオイノスは、低い声で、その影に名と棲み家を訊きただしてみた。すると影は答えた――「わたしは『影』というもの、してわたしの棲み家は、プトレマイスの墓窖(カタコム)のかたわら、汚ないカロニア運河に隣り合ったヘリュージョンの遠くかすんだ野にある」その答えに、坐していたわたしたち七人は、愕然として飛び上がり、ふるえ、おののき、茫然とその場に立ちすくんだ……その影の声は、ただひとりの人間の声ではなく、すでに世を去った何千という友人たちの、忘れもせぬ懐しい声となり、一語一語抑揚を変えて、陰欝にわたしたちの耳に落ちてきたからである。」



「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」より:

「わたしはかれの話の明るい面には、その身になって思いやるほどの、深い共感が湧かなかった。わたしのもっぱら空想したのは、難破して飢えることだとか、野蛮人に殺されたり、あるいは捕えられることだとか、絶海の、名も知れぬ荒涼たる離れ島で、悲しみ、嘆きながら、えんえんとしてすごす生涯のことばかりに限られていた。」

「三月九日。――灰そっくりのものが、絶えまなくあたりにおびただしく降っていた。南方にある水蒸気の嶺は、水平線に大きくもくもくと立ち昇って、ますます形がはっきりとしてきた。それはただ、遙か無限のかなたにある天の城壁から、ひっそりと海中に転げ落ちて行く涯しない瀑布とでもいうほかにはたとえようがない。」
「三月二十一日。――陰欝な暗さが、いまや空一面に低迷していた(中略)。白い灰の雨が、カヌーとそれに乗っているわれわれとに降りそそいで、あやうく船が沈みそうになった。が、灰は落ちると水に溶けた。あの瀑布の頂上は、薄暗いうえに距離が遠いので、もうすっかり見えなくなっていた。が、どう見てもわれわれのカヌーは、恐ろしい速さで近づいて行くらしかった。ときどきその瀑布のなかに広い切れ目があんぐりと、しかしほんの一瞬だけ開くのが見えたかと思うと、さらにまた、渾沌(こんとん)として去来する不明瞭な影像を内に孕(はら)んでいるその切れ目から、力づよく吹き抜けてきながらも音を立てようとしないひっそりとした風が、その行く手に赤々と燃えている大海原をかき乱すさまも見てとれた。」
「三月二十二日。――暗さは目に見えて増してきたが、ただ行く手に見える、あの白い水蒸気の幕から反射してくる、深海の煌々たる眩ゆい光だけは、その暗さを柔らげていた。巨大な青白い鳥が、その幕の向こうから、絶えまなく飛んできた。そしてわれわれの視界から消えるときには、あの相も変らぬ、テケリ・リ!という叫び声をあげた。(中略)そしていまわれわれは、あの瀑布のふところ目がけて突進していた。その瀑布には、われわれを迎え入れる割れ目が開いていた。だがわれわれの行く手には、凡そその形が比較にならぬほど人間よりも大きい、屍衣(しい)を着た人間さながらのものが立ち塞がっていた。そしてその人間の姿をしたものの皮膚の色は、雪のように真っ白であった。」



「沈黙」より:

「「わたしの物語をきけ」と悪霊はぼくの頭に手をおきながら言った。「この物語の舞台は荒涼たるリビアの僻地、ザイレ河の流れるあたりなのだが、そこには平和もそして沈黙もない。
 河の水は病的なサフラン色。海にむかって流れようともしないで、太陽の赤い眼のもとで痙攣的な不安な動きをくりかえしながら、ただ永遠に鼓動している。泥ぶかい河床の両側は見わたすかぎり、何マイルもの幅にわたって巨大な青白い睡蓮ばかり。睡蓮たちは孤独のなかでたがいに溜息をかわし、亡霊じみた長い首を天にむかってさしのべ、頭はいつはてるともなくたえず揺れうごいている。そして彼らの群のなかから、地下を走る水音のような不明瞭なつぶやきがきこえる。
 しかしこの地域にも境界はある――暗いものすごい、そびえたつ森林にとりかこまれているのだ。ここでは下生えの低い樹々はヘブリディーズの島々をとりまく波のようにたえずざわめいている。空には風もないというのに。そびえたつ原始の樹木たちは永遠に揺れうごきながら砕けんばかりの大音響をたてる。その梢から、ひとしずくずつ、はてしなく露がおちる。根もとでは毒のある草花たちが悪夢にうなされては身をよじっている。頭上では、はげしい絹ずれのような音をたてて、灰色の雲が永遠に西へ西へと突っ走ったあげく、地平線の断崖を踏みこえて滝となって落ちる。空にはちっとも風はないというのに。ザイレ河の岸辺には平和もそして沈黙もない。
 夜だった。空から雨が落ちていた。そして、落ちてくるときは雨なのに、落ちてしまうと、それは血だった。そして、わたしが背の高い睡蓮にとりかこまれて沼地に立っていると、わたしの頭に雨が落ちた――そして睡蓮たちは厳粛な孤独のなかでたがいに溜息をかわしていた。
 そして、薄い不気味な靄のなかから、とつぜん月が昇った。真赤な月だ。そしてわたしの眼はそのとき月のひかりに照らしだされた河岸の巨大な灰色の岩にとまった。そしてその岩は灰色に、不気味に、そびえていた――そしてその岩は灰色だった。その前面の岩肌にきざみこまれた文字があった。そしてわたしは睡蓮の沼のなかを歩いて岸辺にちかづき、岩肌の文字を読もうとした。けれどもよく読みとれなかった。そしてわたしが沼地のなかに引返したとき、月はますます赤いかがやきを発し、わたしが振返ってふたたびあの岩と文字とに眼をむけると、それは『寂寥』という文字であった。」



「群集の人」より:

「「この老人こそ、深い罪の象徴、罪の精神(こころ)というものなのだ」と、ついに私は呟いた。「あの老人は一人でいるに堪えられない。いわゆる群集の人なのだ。後を尾けてもなにになろう。彼自身についても、彼の行為についても、所詮知ることはできないのだ。」」


ポオ全集1 04


ポオ全集1 06























































































阿部保 訳 『ポー詩集』 (新潮文庫)

「彼等は男でもなければ女でもない――
獸(けもの)でもなければ人間でもない――」

(ポオ 「鈴の歌」 より)


『ポオ詩集』
阿部保 訳

新潮文庫 赤 28 C

新潮社 
昭和31年11月20日発行
昭和57年1月25日32刷
107p 
文庫判 並装 カバー 
定価140円
カバー: 崎原操



正字・新かな。
カバーには「ポー詩集」とありますが、本体は「ポオ詩集」になっています。本書はカバーの背の部分が青地に白文字ですが、まえにもっていたこれより古い刷のは背も白で黒文字でした。


ポオ詩集


カバー裏文:

「詩人として、小説家として、19世紀アメリカ文学の中で特異な光を放つエドガー・アラン・ポー。彼の詩は悲哀と憂愁に彩られ、ボードレールのフランス語訳によってフランス象徴主義の詩人たちに深い影響を与えたことはよく知られている。本書には、ポー自身が『詩の原理』の中で創作過程を明かしたことで著名な「大鴉」のほか「ヘレンに」「アナベル・リイ」などの代表作を収める。」


目次:

はしがき (阿部保)

大鴉
夢の夢
ヘレンに
海中の都市
死美人
レノア
不安の谷間
圓形劇場
ヅァンテ島の歌
幽鬼の宮
勝利のうじ蟲
幻の郷
ユウラリイ
ユラリウム
ヘレンに贈る
黄金郷
アナベル・リイ
鈴の歌

詩の眞の目的

詩人エドガア・アラン・ポオ (阿部保)
あとがき (阿部保)




◆本書より◆


「幽鬼の宮」より:

「優しい天使の住んでいる
   この谷間の緑のこの上もなく濃いあたり
むかし美しく嚴かな宮殿が
   燦然たる宮殿が――聳えていた。」



「幻の郷(さと)」より:

「夜という妖怪が、眞黒(まつくろ)い王座によつて
悠々とあたりを覆い、
只惡心の天使ばかりうろつく、
朦朧(ぼんやり)と淋しい道を通り、
遠く仄暗いチウレから――
空間と時間を超えて
荘厳にひろがる荒涼と怪しい郷から
漸く私はこの國に着いた。

底の知れない谿と果しない氾濫、
裂け目や洞穴や巨人族の森、
一面に露が滴り
その姿を誰もさだかに見ることも出來ない。」



「ユウラリイ」より:

「私はひとり
呻吟の世界に住んでいた。
私の靈は澱んだ潮であつた。」



「ユラリウム」より:

「さて今は夜もふけ、
星の時計の曙を示すとき――
星の時計の曙をほのめかすとき――
我らの道の果に水のような
朧の光があらわれた。」














































































ポー 『黒猫』 (富士川義之 訳/集英社文庫)

「病的に鋭くなった感覚のために彼はひどく苦しんでいた。およそ風味のない食物しか食べられない。衣服は特定の生地のものしか着られないし、花の匂(にお)いはすべて息が詰まるように感じられる。眼はほんの僅(わず)かな光によっても激しい苦痛を与えられる。恐怖を掻き立てない音はただ特殊な音、弦楽器の音だけなのだ。」
(ポー 「アッシャー館の崩壊」 より)


ポー 『黒猫』 
富士川義之 訳

集英社文庫 ホ-3-1

集英社
1992年5月25日第1刷
1992年6月20日第2刷
280p 口絵(モノクロ)4p
文庫判 並装 カバー
定価380円(本体369円)
装画: 西方久
AD: 菊地信義
口絵レイアウト: 野崎麻里



富士川義之訳エドガー・アラン・ポー短篇集。
口絵図版14点、年譜中図版17点。


ポー 黒猫 01


カバー裏文:

「「この猫は大きくて美しく、全身真っ黒で驚くほど利口だった」妻と一緒に可愛がっていた一匹の黒猫。だが、精神をむしばまれた男は、その猫を虐待するようになり、発作的に殺してしまうが……戦慄の復讐譚「黒猫」など、狂気と夢幻に彩られた特異な小説世界を創造した天才の傑作集。」


目次――ポー短篇集:

リジーア
アッシャー館の崩壊
ウィリアム・ウィルソン
群集の人
メエルシュトレエムの底へ
赤死病の仮面
黒猫
盗まれた手紙

語注 (富士川義之)
解説――幻想空間の冒険 (富士川義之)
鑑賞――ポー、あるいは時間の恐怖 (種村季弘)
ポー 年譜 (富士川義之)



ポー 黒猫 02



◆本書より◆


「リジーア」より:

「彼女は影のように訪れ、影のように立ち去って行ったのだ。」

「この世のものとも思えぬ、精神を高揚させるような美しさだった。けれども、彼女の顔立ちは、異教徒の古典的労作によって誤って崇拝するように教え込まれて来た、あの均斉の取れた造りではなかった。「絶妙な美しさには必ずどこか、均斉の面で奇異なところがあるものだ」とは、ヴェルラム卿ベーコンが、美のあらゆる形態と種類について正しく言い当てた言葉である。しかし、リジーアの顔立ちが古典的な均斉の取れた造りではなく――その優美さがまことに「絶妙な」ものであることを認め、そこに「奇異なところ」が多分に行き渡っていることを感じていたとはいえ、いざその不均斉な点を見つけ出そうとすると、あるいは「奇異な」という自分自身の感じをできるだけ突きとめようと骨折る段になると、結局無駄に終わるのだった。」

「心の科学では不可解で異例なことは数多いが、とりわけ最も興味をそそられるのは――学界ではまるで注目されていないようだが――長いあいだ忘れていたことを何とか思い出そうといろいろやってみるとき、いまにも思い出せそうでいて、結局は思い出せずに終わることがあるという事実である。そしてこれと同じように、リジーアの眼を真剣に見つめているとき、その表情をいまにも完全につかめそうな気がしながら――それでいてやはりいまひとつはっきりとはつかめず――結局は全然つかめずに終わるということが、どんなにしばしばあったことだろうか! だが(中略)この宇宙のごくありふれた事物のなかに、わたしはあの表情に似通ったものをかずかず見出すのであった。つまり、リジーアの美しさがわたしの精神のうちにいつのまにか入り込み、そこを聖堂のようにして住みついたとき以来、わたしは物質界における数多(あまた)の存在から、彼女の大きく明るい瞳がわたしの心のなかにいつも掻(か)き立ててくれるような気がしたのと同じ感情を、獲得するようになったのである。(中略)わたしはすくすくと成長する葡萄(ぶどう)の蔓(つる)を眺めるとき――蛾(が)を、蝶(ちょう)を、蛹(さなぎ)を、流れ行く水をじっと見つめるとき、その感情を抱いた。わたしは海洋に、落ちる流星にその感情を抱いた。桁外(けたはず)れに年取った老人の眼差(まなざ)しにそれを感じたこともある。それから望遠鏡で天体を観測している際にも、わたしがその感情を掻き立てられることに気づいた星が一つか二つあった(とりわけ、琴座の大きな星(一等星ヴェガ)の近くに見出される、変光性の二重星である六等星がそうだった)。弦楽器の奏でるある種の音にも、またしばしば書物のなかの一節によっても、そのような感情に充(み)たされた。他にも数知れぬほど例があるが、なかでもわたしがよく覚えているのは、ジョゼフ・グランヴィルのある書物の次のような一節であって(中略)、それはいつもきまってその感情を呼び起こすのだった――「そしてそのなかに意志が存在するが、これは死に絶えることがない。力強さをそなえた、この意志の神秘のかずかずを知る者が果たしているだろうか? なぜなら、神とはその本性たる集中力によって万物に浸透する大いなる意志にほかならないからだ。人間はただ弱い意志という弱点によらぬ限り、天使にも、また死にも完全に屈服するものではない」」

「しかし、その部屋の壁掛けのなかにこそ、ああ! 何ものにもまさる幻想的なところがあったのだ。途方もなく高い――不釣り合いなほど高い――壁面には、天井から床まで、重々しい、いかにもどっしりして見える綴(つづ)れ織が、幾重にも襞(ひだ)をつくって垂れ下がっていた――この綴れ織の生地は、床の上の絨毯や、長椅子や黒檀の寝台の被(おお)いや、寝台用の天蓋や、さらには窓の一部をおおっている豪華な渦巻き模様のカーテンの布地としても用いられていた。その生地は豪奢(ごうしゃ)きわまる金糸入りのもので、そこには一面に直径一フィートほどのアラベスク模様風のものが、不規則な間隔を置いて散らばり、それらは漆黒の絵模様となるように布に細工されていた。しかし、この模様がアラベスク模様としての本性を示すのは、ある一つの視点から眺めたときだけに限られる。いまではありふれたものとなっているが、実際、その起源を遠い遠い古代にまでさかのぼることのできる仕掛けによって、それらは眺める位置に応じて変化するように作られているのだ。部屋に一歩足を踏み入れると、それらはただもう奇怪なばかりに見える。だが、さらになお進みつづけると、こういう感じは次第に消えてゆく。つまり部屋のなかを一歩進むごとに位置が変わるにつれて、ノルマン人の迷信にあるような、あるいは修道僧の悪夢に出て来るような恐ろしい外形をしたものの果てしない行列に、自分が取り囲まれていることに気づくのである。この魔術幻灯的な効果は、壁掛けの背後からたえず人工的に吹き送られる強い風の流れによって著しく強められ――壁掛け全体に無気味で不安な活気のようなものを与えていた。」



「赤死病の仮面」より:

「その舞踏会こそは、まことに遊蕩三昧(ゆうとうざんまい)の光景にほかならなかった。だがまず初めに、それが催された部屋について語ることにしよう。部屋数は七つで――王者にふさわしいひと続きの部屋であった。(中略)部屋部屋がすこぶる不規則な配置になっていて、一時にひと部屋以上を見渡すことはほとんどできないのである。二、三十ヤード進むたびに急な曲がり角があって、曲がるたびに何か目新しい趣向が見られるのだ。右にも左にも、どの壁の中央にも、高くて狭いゴシック風の窓がついていて、それが曲がりくねってつづく部屋部屋に沿って走っている閉め切った廊下に面しているのである。これらの窓には焼絵硝子(ステンド・グラス)が嵌(は)め込まれていたが、その色は、それが臨んでいる部屋の装飾の基調となっている色合いに応じて変化するのだった。たとえば、東の端の部屋には青色の壁掛けがかかっていたので――その窓も鮮やかな青色だった。二番目の部屋は装飾も繡帷(タペストリー)も紫色なので、窓硝子(ガラス)も紫色だった。三番目の部屋は全体が緑色で統一されていたので、窓も緑色だった。四番目はその家具類も窓硝子も橙黄色(だいだいいろ)――五番目は白――六番目は菫色(すみれいろ)だった。七番目の部屋は天井全体から壁まで黒い天鵞絨(ビロード)の繡帷(タペストリー)で蔽(おお)われ、それは同じ生地と同じ色合いの絨毯(じゅうたん)の上に幾重にも重たく襞(ひだ)をなして垂れ下がっていた。しかしこの部屋のみは、窓の色が室内装飾の色と一致していなかった。この部屋の窓硝子は真紅――濃い血の色であった。」


「盗まれた手紙」より:

「あの連中ときたら、頭のよさということを、自分自身の尺度でしか考えない。だから、隠し物を捜すときには、自分たちだったらどういう隠し方をするか、ということにしか注意を向けないことになる。あの連中のやり方はここまでは正しいんだよ――つまり、連中の頭のよさが、大衆の頭のよさを忠実に代表している、というところまではね。しかし、悪党の悪賢さが連中のものとは性質が違うときには――もちろん裏をかかれてしまうわけだ。」























































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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