トーベ・ヤンソン 『誠実な詐欺師』 (冨原眞弓 訳/ちくま文庫)

「わたしとわたしの犬はあの人たちを軽蔑する。わたしと犬は共有しあう秘密の生のなかに匿われ、うちに秘めた野性のなかに隠されている……。」
(トーベ・ヤンソン 『誠実な詐欺師』 より)


トーベ・ヤンソン 
『誠実な詐欺師』 冨原眞弓 訳

ちくま文庫 や-29-2

筑摩書房 2006年7月10日第1刷
211p 文庫判 並装 カバー
定価740円+税
装幀: 安野光雅
カバーデザイン: 祖父江慎
装画: トーベ・ヤンソン
Tove Jansson : Den ärliga bedragaren, 1982

「本書は、一九九五年十二月、『トーベ・ヤンソン・コレクション』(全八冊)の第二巻として、筑摩書房から刊行されたものを大幅に改訳したものです。」



ヤンソン 誠実な詐欺師


カバー裏文:

「雪に埋もれた海辺に佇む〈兎屋敷〉と、そこに住む、ヤンソン自身を思わせる老女性画家。彼女に対し、従順な犬をつれた風変わりなひとりの娘がめぐらす長いたくらみ。しかし、その「誠実な詐欺」は、思惑とは違う結果を生み……。ポスト・ムーミンの作品の中でもNo. 1の傑作として名高い長編が、徹底的な改訳により、あざやかに新登場。」



◆本書より◆


「人びとはそろそろ起きだして噂する。また雪だ。ほら、カトリがまた狐の襟巻をして犬とでかけていく。自分の犬に名前をつけないなんて変だよ。」
「カトリ・クリングは数字と弟のことしか頭にない。それにしても、あの黄色い眼はだれからうけついだのか。(中略)カトリの眼はあの犬の眼と似たような黄色だ。眼を細めてみる癖があるので、あのふしぎな眼の色、灰色よりは黄色に近い眼の色に気づく者は、めったにいない。カトリの猜疑心はいつでもすぐに頭をもたげる。(中略)あの眼はひどく不安な気持をかきたてる。カトリ・クリングは人を信じない。六歳から守り育ててきた弟と自分自身にしか関心がないみたいで、どうにも近よりがたい。それに、名前もない犬が尻尾をふるなんてみたことがない。おまけにカトリも犬も人の好意をうけつけない。
 母親が死んでからは、カトリが雑貨店の仕事をひきつぎ、店の帳簿もつけるようになった。とても利口な娘なのだ。だが、その勤めもこの十月にやめた。店主はカトリを屋根裏部屋から追いだしたかったのだが、いいそびれている。弟のマッツときたら数にも入らない。姉より十歳年下の十五歳で、上背があって力は強いが、すこし頭がたりない。」

「わたし、カトリ・クリングは、しばしば夜中に考えごとをする。(中略)とくにお金、たくさんのお金のことを考える。すみやかに手に入れたい。賢明に、誠実に、蓄える。お金のことなんか考えずにすむように。ありあまるお金がほしい。(中略)なによりもまずマッツにボートを与えたい。(中略)毎晩、わたしは窓にあたる雪の音に耳をすます。雪のやわらかい呟きが聞こえる。海風に運ばれて窓ガラスを叩く雪だ。そう、雪が村を覆いつくし消しさってくれればいい。そうすればきれいになるのに……。長い冬の暗闇ほど静かで果てしないものはない。いつまでも、いつまでも、つづく。あるときは厚みをまして夜となり、あるときは夜明けの薄闇となる。すべてから匿(かくま)われ、守られて、人はふだんよりさらに孤独になる。そしてじっと待って、樹のように身を隠す。」
「あの犬はわたしが好きじゃない。でも、わたしと犬は互いを尊重する。わたしは秘密めいた犬の生活、本来の野性をいくらかはとどめている大きな犬の秘密を尊重する。だからといって信頼しはしない。自分をじっと観察する大きな犬をどうして信頼できよう。(中略)どうしてだれも自分の犬を怖がらないのか。野生だった動物が自分の野性をいつまで拒んでいられるものなのか。だれもが自分の飼い犬を理想化する。そのくせ犬の自然な生を軽蔑する。からだの蚤を掻いたり、腐った骨を埋めたり、ごみ溜めのなかを転がったり、うつろな樹にむかって夜じゅう吼えたてたり……。だけど、あの人たち自身はどうだというのか。(中略)わたしとわたしの犬はあの人たちを軽蔑する。わたしと犬は共有しあう秘密の生のなかに匿われ、うちに秘めた野性のなかに隠されている……。」

「カトリは屋敷をみつめる。これまでも毎朝、灯台への道すがら、こうして眺めてきた。あそこにアンナ・アエメリンがひとりで住んでいる。たったひとりで、お金に埋もれて。」
「村びとはこの屋敷を〈兎屋敷(カニンフセット)〉と呼ぶ。」

「アンナ・アエメリンは親切な人といえるかもしれない。そもそも悪意を剥きだしにする必要に迫られたことがない。いやなことは忘れる尋常ならぬ能力をもちあわせているので、ぶるっと身体をふるわせてから、掴みどころなく、そのくせかたくなに、自分の流儀をつらぬきとおす。(中略)彼女が真剣に生きるのは、描くためにその稀有な能力を傾けているときだけで、いうまでもなく描いている最中はひとりきりだ。アンナ・アエメリンには一途な人間に固有の強烈な説得力がある。たったひとつのことしか眼に入らず、たったひとつのことしか理解できず、たったひとつのことにしか興味がない。森の情景、森にひろがる土壌がそうだ。アンナ・アエメリンは森の情景を忠実に詳細に描くことができる。針葉樹の葉一枚もおろそかにしない。彼女の描く水彩は小さく、どこまでも自然主義的で、はかない植物や苔に覆われたしなやかな大地のように美しい。ところが人はうっそうと茂る森のなかを歩いても、この大地の美しさをほんとうにはみていない。アンナ・アエメリンはこの美しさを気づかせてくれる。人びとは森の本質(イデー)を眼にし、忘れていたものを思いだし、なごやかで希望にみちた郷愁をふとおぼえる。残念なことに、アンナは兎たちを描きこんで絵を台なしにする。兎のパパ、兎のママ、兎の子の三羽だ。(中略)いつだったか、児童書の批評欄でこの兎たちが槍玉にあがった。アンナは傷つき自信をなくしたが、どうしろというのか。子どもたちのためにも出版社のためにも、兎を描かないわけにはいかない。」

「スキーにむかない天気よねとか、(中略)そのうち街が除雪車をよこすわよとか、とにかく関心を示すなり示す振りをするなりして、だれもが場をつくろうためにすることを、カトリだってできるだろうに。いやいや、カトリ・クリングはそんなことはしない。ただじっと立って煙のむこうからみている。机の上に身をかがめると、黒髪がたてがみのように顔にまとわりつく。寒いので毛布にくるまり、両手でしっかりと押さえている。魔女みたいだ、とエドヴァルド・リリィエベリは思った。」

「姉と弟はめったに話をしない。ただ、仲間うちでかわす沈黙、やすらかで自然な沈黙を共有していた。」

「マッツには秘密がない。だからこそ秘密にみちている。あの子の心を乱すことは赦されない。あのまま単純で純粋な世界にいるべきなのだ。」

「日常めったに起こらない難題をかくも易々と理解できるくせに、難題をもちこんでくる当人たちとは折りあえないというのも、じつに奇妙だった。カトリの沈黙には気まずくさせられる。実務的な質問には答えるが、お喋りをしない。たまたま顔をあわせたときだって、にこりともせず、愛想もいわず、相手の意を汲もうともしない。」
「そんなわけで、人びとは用があるときだけカトリをたずね、用がすめばそそくさと退散するのだった。」

「「ああ、そうかもねえ」とアンナはあいまいに答える。「きまって花を育てていると思われるのは、どうしてかしら……」
 「わかりますよ。花に子どもに犬」
 「は?」
 「花や子どもや犬が好きだと決めつけられる。でも、そんなもの、あなたは好きじゃない」
 アンナは顔をあげ、するどく視線を走らせた。」

「「気を悪くしないでくださいね、クリングさん。ただ、人が期待することはぜったい口にしないあなたの対応のしかたが、なんだか気にいってしまって。いわゆる――そのう――礼儀正しさの片鱗すらなくて……。礼儀正しさはときに欺瞞だったりする、そうでしょう? わかっていただける?」
 「ええ」とカトリは答える。「わかります」」

「マッツは窓と下水を修理した。雪をかき、薪を挽(ひ)き、アンナの美しいタイルストーヴに火をおこす。しかし、たいていは本を借りにやってくる。マッツとアンナのあいだには友情が芽生えつつあった。遠慮がちで、むしろ照れくさそうに。本の話しかしない。」

「「契約というのは」とカトリは真顔でつづける。「想像をはるかにこえる驚くべきもので、ただ人と人をむすびつけるだけではないのです。契約のもとで生きるほうが人間にとって楽なのだということに、わたしは気づきました。不決断と困惑から解放され、もはや選択せずにすむのですから。」」

「「そうはいっても」とカトリは反論する。「人間は群れたがります。できるだけ人と同じになろうとして。だれもが五十歩百歩の動きをすると知って慰められるのです」
 「個人主義者だっているわ!」
 「たしかに。その場合、もっと必死で群れのなかに身を潜めなければならない。知っているのです、人と異なる者は狩りたてられることを」」

「あの犬はどこへ走りさったのか、夜なのに、いったいどこへ。あの犬はもうだれも信じない。だから狼のように危険な存在になった。しかし狼たちはもっとしたたかだ。群れている。はぐれた孤独な狼だけが、狩られて、殺される……。」




































































































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トーベ・ヤンソン 『ムーミン谷の十一月』 (鈴木徹郎 訳/講談社文庫)

「ふたりは、雪がちらちらまう中に、すがたをけしていきました。そのうしろすがたには、別れには、いつもつきものの、さびしいかげと、ほっとしたようなようすとがただよっていました。」
(トーベ・ヤンソン 『ムーミン谷の十一月』 より)


トーベ・ヤンソン 
『ムーミン谷の十一月』 
鈴木徹郎 訳

講談社文庫 や-16-8

講談社 1980年10月15日第1刷発行/1999年3月11日第27刷発行
265p 文庫判 並装 カバー
定価447円+税
デザイン: 菊地信義
カバー装丁: 辻村益朗
カバー絵・さし絵: ヤンソン
Tove Jansson : Sent i November, 1971



本書は、著者のお母さんが亡くなった直後に書かれたムーミンシリーズ最終巻です。
不在のムーミンママを待ち続ける孤児のホムサは、「心の闇」を抱えているようです。
ウィキペディアには、本書は「textbook on letting go, being a mature orphan, existing spiritually alone」(手放すこと、十全たる孤児であること、精神的に孤独な存在であることの教科書)であると引用されています。


ヤンソン ムーミン谷の十一月1


カバー裏文:

「まっ白な雪にとざされて、長い冬眠に入る前のムーミン谷の十一月……人恋しくてムーミン家に集まってきたフィリフヨンカ、ホムサ、ヘムレン、スナフキンたち。ところが、心をなごませてくれるはずのムーミン一家は旅に出ていて……。ヤンソンが読者に贈るファンタジックで魅力的なムーミン童話の最終巻。」


目次:

第一章 スナフキン、旅に出る
第二章 ホムサは、お話を作るのが大すき
第三章 フィリフヨンカの大冒険(だいぼうけん)
第四章 スナフキンと五つの音色(ねいろ)
第五章 ヘムレンさんは自分がきらい
第六章 魔法(まほう)の水晶玉(すいしょうだま)
第七章 なんでも、わすれるのだ
第八章 電気を食べる、ちびちび虫(むし)
第九章 たまねぎまげのミムラねえさん
第十章 ご先祖さまは冬眠中(とうみんちゅう)
第十一章 さびしい心は、おしゃべりになる
第十二章 ちびちび虫は、むくむくむく
第十三章 フィリフヨンカのさかな料理
第十四章 ムーミンパパに、木の上の家を
第十五章 ちびちび虫、うなる
第十六章 ムーミンからの手紙はどこだ
第十七章 大パーティーの準備
第十八章 シーツの上を「冒険号(ぼうけんごう)」は走る
第十九章 スクルッタおじさんはねむるのだ
第二十章 ヘムレンさん、海へのりだす
第二十一章 ムーミン一家のヨットが見えた

解説 (鈴木徹郎)



ヤンソン ムーミン谷の十一月2


◆本書より◆


「雨がふりだしました。スナフキンのみどり色のぼうしにも、ぼうしとおそろいの、みどり色のレインコートにも、雨がおちてきました。さらさら、しとしとと、雨の音が、あたりいちめんにひろがっていきました。
 森にかくれて、すっかりひとりぼっちになってしまったスナフキンは、なんともいえない、なごやかな気持ちになりました。」

「冬もまぢかな、ひっそりした秋のひとときは、寒々として、いやなときだと思ったら大まちがいです。せっせと、せいいっぱい冬じたくのたくわえをして、安心なところにしまいこむときなのですからね。自分の持ちものを、できるだけ身ぢかに、ぴったりひきよせるのは、なんとたのしいことでしょう。自分のぬくもりや、自分の考えをまとめて、心のおく深くほりさげたあなに、たくわえるのです。その安心なあなに、たいせつなものや、とうといものや、自分自身までを、そっとしまっておくのです。
 やがて、きびしい寒さや、たけりくるうあらしや、長い暗やみが、思いっきりおそってくるでしょう。あらしは、あちこちのかべを手さぐりして、はいりこむ入り口を見つけようと、必死になるでしょう。
 でも、どこもみんなふさがっていて、中では、とっくに、こんなときを見こしていた人が、ぽかぽかあたたかにして、ひとり、ゆったりと、くすくすわらっているのです。
 秋になると、旅に出るものと、のこるものとにわかれます。いつだって、そうでした。めいめいの、すきずきでいいのです。」

「あたし、もう、フィリフヨンカになっているのなんて、いやになっちゃったわ。なにかほかのものになろうっと……と、彼女は思いました。
 いのるような気持ちでしたし、それに、なきたいようなみじめな気もしていました。だって、フィリフヨンカに生まれたいじょう、いつまでたってもフィリフヨンカにきまっているし、ほかのものになろうたって、それはむりというものですもの。」

「ヘムレンさんは、ねむい目をこすりこすり、やっと目がさめました。目がさめきってみると、自分は、やっぱり、いつもの自分です。ちっともかわっていません。
 ああ、いやだなあ。もう、ぼくは自分がいやになった。なにか、ぼくの知らない、ちがったものになりたいなあ。
 ヘムレンさんは、ゆうべ、ベッドにはいったときよりも、もっとうんざりしていました。」

「その人は、(中略)とてもわすれんぼうでした。ある秋の、朝まだ暗いころのことです。目がさめてみると、その人は、自分の名まえをわすれていました。
 人の名まえをわすれると、ちょっと、ゆううつになりますが、自分の名まえをわすれることができるのは、とてもすばらしいことです。
 この人は、朝がきたから、ねどこからおきださなければならないなんて思いません。一日じゅう、じっとねどこにねていると、とりとめもなく、いろいろな絵やら、考えやらが、頭の中にうかんでは、きえていくのです。なにがうかぼうと、きえようと、わしゃかまわないよ、と思っているのです。
 ときどき、うとうととねむったかと思うと、また目がさめます。それでも、さっぱり、自分がだれなのかわかりません。なんの苦労もない、かって気ままな、痛快(つうかい)な一日です。」

「ホムサは、本を読むのはふなれでした。」
「本に書いてあるのは、海のずっと底のほうの、深いところでくらしている、電波虫(でんぱむし)だの、生きのこりの、ちびちび虫(むし)のことです。」
「ちびちび虫のなかには、仲間の虫に似ていない、とてもかわった種類の虫がいました。その虫は、はじめは夜光虫みたいなすがたをしていましたが、そのうちに、だんだん、どんな虫にも似ていない虫になっていきました。とても小さな虫だったことにはまちがいなくて、おびえると、ますます小さくなるのです。」

「ミムラねえさんが、森の中から、ひょっこりあらわれました。森をまっしぐらに、つきぬけてきたのです。とてもじょうきげんです。(わたし、ミムラに生まれて、ほんとうによかったわ。頭のてっぺんから足のつま先まで、とてもいい気持ちだもの)」

「「みんな、おるすよ。ひとことも、人にことわりなしに、るすにしているのよ。でも、玄関(げんかん)にかぎがかかっていなかったのだけは、まあ、よろこばなくちゃ」
 「あの人たち、かぎなんて、かけたことないわよ」
 と、ミムラねえさんはいいました。」

「なにがすてきだといったって、たのしくすごすことぐらいすてきなことは、ほかにないし、また、わけないこともないんです。ミムラねえさんは、だれかと出会って、すぐあとで、その人のことをわすれたからといって、ちっとも気にしませんでした。その人たちといっしょになって、なにかをしようともしませんでした。みんなのことも、みんなのいざこざも、人ごとと思って、ただ、びっくりして見ているだけでした。」

「きょうも、また、十一月の一日がしずかにくれていきました。ミムラねえさんは、羽ぶとんの中にもぐりこみました。足をのばすと、こつんとつま先がぶつかったので、つま先をまげて、あんかをはさみました。
 おもては雨でした。一、二時間たてば、ちょうどいいかげんにおなかがすいて、フィリフヨンカのお料理が、おいしく食べられるでしょう。おしゃべりしたい気も出てくるでしょう。いまは、ぬくぬくと、なにもかもわすれて、あったかにしていればいいんです。ミムラねえさんには、いま、すっぽりとからだをくるんでいる、大きなやわらかいふとんだけが、この世の中のすべてでした。ほかのことは、みんな関係のない、よその世界のことでした。ミムラねえさんは、ゆめなんて見ません。ねむたくなればねむり、おきたほうがいいときにはおきる、それがミムラねえさんなのです。」

「ホムサ・トフトは、屋根うらべやにねそべって、本を読んでいました。」
「その虫は、ひとりぼっちだったんだろうな、と、トフトは思いました。みんなと、顔もすがたも似ていなかったので、家族の人がかまってくれなかったんだ。だから、うちを出ていってしまったんだ。いま、いったいどこにいるのだろう。」

「たき火は、もうとっくにきえていました。でも、スナフキンは、寒さなんて感じませんでした。ちょっとかわったことのできる方法を知っているからです。しごくかんたんなやりかたですが、自分の体温がひえないようにできるのです。横になって、ちぢこまって、できるだけ体温がにげないようにして、じっとしたまま、ゆめを見よう、見ようと思えばいいのです。
 霧につつまれると、谷はすみずみまで、しんとしずかになりました。」

「「かぎなんて、かけっこないよ。ムーミンたちは、そんなことをするもんか」
 と、スナフキンはいいました。」

「ホムサは、髪(かみ)の毛をたらして、顔をかくしました。はずかしかったんです。そして、だまっていました。」
「なにか、いいことばはないかしら、やさしいことばをかけてやりたいけれど、と、フィリフヨンカは、ことばにつまってしまって、いろいろと考えました。ああ、もっと、小さい子のことをよく知っていて、子どもずきだったらよかったんだけど、と思いました。」

「ホムサが帰るとき、スナフキンは、うしろからさけびました。
 「あんまり、おおげさに考えすぎないようにしろよ。なんでも、大きくしすぎちゃ、だめだぜ」」

「「あした、お台所で、みんなでパーティーをするの。あなた、知らないの?」
 「まあ、そうなの。それはニュースだわ」
 と、フィリフヨンカは、大声をあげました。
 「とてもいいニュースだわ。知らないものどうしが、漂流(ひょうりゅう)して陸にうちあげられたり、大雨や大風で、とじこめられたりしたときには、みんな、そういうパーティーをするのよ――そして、パーティーのさいちゅうに、ふっと、ろうそくをけすのよ。すると、もういちど火をつけたときには、みんなの心がしっくりとけあって、ひとりの人みたいになっているの」
 ミムラねえさんは感心したように、まじまじと、フィリフヨンカの顔をながめました。
 「あなた、ときどき、びっくりしてしまうような、いいことをいうわね」
 と、ミムラねえさんがいいました。
 「それは、わるくないわね。そして、それから、ひとりずつきえていって、おしまいには、ぽっかり、あなのあいたようなへやに、ねこだけのこって、からだをぺろぺろなめるのね」
 フィリフヨンカは、ぶるっと身ぶるいしました。」
 「もう、お湯がわいているんじゃないの?」
 と、フィリフヨンカはいいました。
 「ねこなんて、ここにはいないわよ」
 「あんなのわけなく作っちゃうわよ」
 と、ミムラねえさんは、にやりとわらいました。
 「空想して、ねこがいるわ、と思えばいいのよ。そしたら、もう、あんたにも、ほんとにねこがいるのよ」
 ミムラねえさんは、お湯のなべを火からおろして、ひじでドアをあけました。
 「おやすみなさい」
 と、ミムラねえさんはいいました。」

「みんなのしているパーティーの話はホムサ・トフトの耳にもはいっていました。(中略)ホムサは、ちっともはしゃぐ気持ちにはなれませんでした。
 それよりも、なぜ、日曜日のお昼ごはんのとき、あんなにひどくはらがたったのか、ひとりきりで、とっくり考えてみたい気がしていました。まるっきり、いつもの自分とちがう自分が、自分の中からとびだしてきたなんて、ほんとに、そらおそろしいことでした。それは、自分の知らない人みたいな自分でした。」

「ホムサは、本のおしまいのほうを手あたりばったりにひらいて、ぼそぼそと、低い声で読みはじめました。」
「「いまここで、復元してみようとしている、その動物の体形が、生理学的な観点からの、元来の草食動物の特徴(とくちょう)をのこしつつ、同時に、周囲の環境(かんきょう)にたいして、いわば攻撃的(こうげきてき)な体形に、たえず変化していったということは、まったく異例な事態であった。
 肉食動物が進化するときに、一般に生(しょう)ずる変化、たとえば注意力が鋭敏(えいびん)になるとか、すばしっこくなるとか、力が強くなるとか、そのほか狩猟本能(しゅりょうほんのう)に関係あるような、いろいろな変化は、すこしもおきなかった。歯もするどくないし、つめも、はえたときのままだし、視力もぼんやりしていた。
 それにひきかえ、からだのほうは、おどろくほどかさばり、大きくなっていった。ずばりいうなら、一千年ものあいだ、岩のさけめやら、ほらあなの中で、ぼんやりくらしてきた、その連中としては、すっかりとまどったにちがいないほど、大きくなったのだ。」

「ホムサは、暗いおもてへ出てくると、お勝手口の階段にじっと立って、待っていました。(中略)あの動物は、なりをしずめていました。でも、ホムサは、動物が、じっと、自分のほうを見ている気がしました。
 ホムサ・トフトは、そっとよんでみました。
 「ちびちび虫……電気虫、原生動物……」」
「トフトは、こわいよりも心配になりました。ちびちび虫が、自分かってに、どんなことをやらかすやら不安でした。いま、そいつはとても大きくなったし、おこっているし、おまけに、大きくなったり、おこったりすることに、すこしもなれていないのです。おっかなびっくり、ホムサは、一歩前に出ました。そのとたんに、動物がさっと一歩うしろにさがったのが、感じでわかりました。
 「おまえね、どっかへいっちまわなくても、いいんだよ」
 と、トフトは、わけを話してやりました。
 「ちょっとだけ、ここからはなれてくれれば、いいんだ」
 トフトは、しばふの上をすすんでいきました。すると、動物は、わきへよけました。なんだかわけのわからない、ぶかっこうなかげがうごいていきます。」
「(大きくなりすぎちまったんだ)
 と、トフトは思いました。
 (あんまり大きくなりすぎて、ひとりでうまくやっていくことができないんだ)」

「やっと、おじさんは、どうしたらいいのかわかったのです。一足とびに冬をとびこして、うんと大またで、四月の中にふみこめばいいんです。
 ちっとも、こまることなんてないのだ。まるっきりないのだ。気持ちよくねむれるあなぐらを見つけて、ねむってしまうことだ。そのあいだに、世の中は世の中で、かってにどんどん日がたっていけばいいのだ。そうして目がさめたときには、もうなにもかも、ちゃんと、そうでなければいけないようになっているはずだ。」































































































冨原眞弓 編・訳 『トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白』 (ちくま文庫)

「このところ憂鬱(メランコリック)な気分だと書いていたわね。でも、セシリア、それはふつうよ、ぜんぜん心配する必要なし。(中略)だからね、憂鬱になったら、坐って考えるのよ、ふう、これはなんでもない、どうしようもない、そういうものなのだから、と。」
(トーベ・ヤンソン 「クララからの手紙」 より)


冨原眞弓 編・訳 
『トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白』
 
ちくま文庫 や-29-3

筑摩書房 2012年3月10日第1刷発行
286p 付記1p
文庫判 並装 カバー
定価880円+税
装幀: 安野光雅
カバーデザイン・彩色: 祖父江慎
装画: トーベ・ヤンソン



本書「解説」より:

「本書は(中略)、既刊の短篇集四巻(「トーベ・ヤンソン・コレクション」)から編んだ傑作選(アンソロジー)である。文庫への再録にあたって必要な改訳をほどこした。「幻想の旅」「孤独の矜持」「過去への視線」「怖るべき芸術家」の四つの主題(モティーフ)を設定し、ゆるやかな統一感をもたせて配列した。」


ヤンソン 黒と白


カバー裏文:

「ムーミン作家トーベ・ヤンソンは、じつは子供のこだわりと大人のユーモアやペーソスがない交ぜになった味わい深い小説やエッセイの作者でもある。多くの名作短篇のなかから、明るく楽しい作品を編んだ「トーベ・ヤンソン短篇集」に対し、本書はいわばそのダークサイド。シニカルでいて愛に溢れた独特の作品群は、気むずかしく気位が高い老人のよう。まさにヤンソンの本領が発揮された一冊。」



目次:

◆幻想の旅
砂をおろす
第二の男
発破
ハワイ、ヒロからの物語
夏の子ども

◆孤独の矜持
灰色の繻子(サテン)
クララからの手紙
八月に
機関車

◆過去への視線
ルゥベルト
花の子ども
記憶を借りる女
八〇歳の誕生日

◆怖るべき芸術家

主役
連載漫画家
黒と白――エドワード・ゴーリーにささぐ

解説 黒と白、あるいは、眼のまえにある多義性 (冨原眞弓)




◆本書より◆


「ハワイ、ヒロからの物語」より:

「一生懸命だがいささか的はずれな人間に、わたしは昔から弱かった。」


「夏の子ども」より:

「はなから、バッケンのだれもがこの子を気に食わないのは、はっきりしていた。一一歳の陰気な痩せっぽちで、どことなく飢えている。こういう子は、保護者的な思いやりを自然にいだかせるものだが、そうはならなかった。この子が人を見る、あるいはむしろ観察する、独特の眼つきのせいもあったろう。疑りぶかく見すかすような視線で、およそ子どもらしくなかった。そして、とくと観察したあと、あのませた口ぶりで言葉を発する。じっさい、この子がひねくりだすものときたら!」

「少年は罪悪感をかきたてる名手だ。しばしば、あの気苦労にあふれる妙に大人びたまなざしでみつめられるだけで、自分のやらかした過ちをひとつ残らず思いだしてしまう。
 ある日、エリスが世の惨状についていつも以上に深刻な訓戒を垂れている最中、ハンナがぴしゃりとさえぎった。「あなた、死ぬだの辛いだのって話がほんとに好きね」
 エリスは大まじめで答える。「しかたないよ。ほかにだれも気にかけないんだもの」
 一瞬、ハンナはわけのわからぬ衝動に駆られ、少年をぎゅっとだきしめたくなった。が、その厳粛なまなざしに思いとどまった。あとになって考えた。あの子につらく当たってはいけない、態度を改めようと。しかし改まらなかった。」

「おまけにエリスは、ガラクタをみつけてくるという刮目(かつもく)すべき才能に恵まれていた。」



「灰色の繻子」より:

「マンダはほとんど口をきかない。挨拶のときもほほ笑まない。(中略)ふつうの人は習慣から出会ったときに笑みをかわす。自分が挨拶する相手が好きか嫌いかはべつで、ともかくほほ笑むのが自然なのだ。おまけに彼女は人びとの眼をまっすぐ見ないで、相手の足もとの床に視線をうつす。
 マンダの寡黙さと沈着さ、文句なしの熟練と色彩感覚、それに彼女を匿(かくま)うガラスの壁のせいで、彼女は孤絶した世界におかれた。この世界の外に生きる人びとは、マンダに名状しがたく不気味な怖れをいだく。(中略)毎朝、マンダは裁縫工房にやって来て、外套と襟巻(彼女は頭をすっぽり布で覆う)を脱ぎ、低い声で挨拶をする。彼女が現われると沈黙がおとずれる。」
「ガラス壁の背後に坐っているあいだ、マンダはなにも考えない。刺繍をするのは好きだ。」
「当時、マンダはいっさい夢をみなかった。周囲でうごめく人びとのことなど、知りもせず気にもならなかった。穏やかな夜は大いなる休息と安堵をもたらし、無上の歓びを与えたので、もはや昼間は必要なくなり、自分の殻に閉じこもり、ひたすら刺繍をした。」



「クララからの手紙」より:

「なんであれ、欲しいもの欲しくないものがあれば、大声でどなるとか、周囲に活をいれる迫力ある言葉を吐くとか、できればちょっと怖がらせるとか、そういうのをやってみたら?」

「夜になると記憶が過去へ過去へと遡って、どんな些細な細部も容赦せず、あれこれと責めさいなむ。勇気がなかった、選択を誤った、要領が悪かった、配慮を欠いた、犯罪的なまでに不注意だったとか。かけた迷惑、やらかした失策、とりかえしのつかない戯言(たわごと)の数々。しかも、本人以外はだれもがとうの昔に忘れてはてたことばかり! 一日の終わりに、とつぜん記憶が後ろ向きに冴えわたってしまうなんて。ずいぶんひどい話よねえ?!」

「自分の頭ごしに会話が飛びかうのに堪えられる? 気のきいた相槌を考えているうちに、すでにべつの話題になっている、なんてことは? (中略)だいたい、興味をもっているっていえる?」

「このところ憂鬱(メランコリック)な気分だと書いていたわね。でも、セシリア、それはふつうよ、ぜんぜん心配する必要なし。(中略)だからね、憂鬱になったら、坐って考えるのよ、ふう、これはなんでもない、どうしようもない、そういうものなのだから、と。じゃない?」



「機関車」より:

「わたしは皇帝だ。生と死を思いのままに采配する。学校をすべて閉鎖し、人民に子どもを生むことを禁じる。」

「住居はとても静かだ。ときおり、夕方の紅茶を飲んでいるときに、自分は存在していないのではないか、そもそも一度たりとも存在したことがないのではないか、という奇妙な感慨をいだく。」
「人間味が感じられない、顔がみえない、と咎められたものだ。じつに幾度となく。だが、なぜわたしの顔をみる必要がある? 連中がわたしになにを期待しているのかは知らない。いずれにせよ、そんな権利はないはずだ。」

「家には、当然だが、人を呼ばない。」

「〈かれ〉はこの機関を愛する。その力を、その完璧さを、その至高の無関心を愛する。人びとが自分の内面を喋ってぶちまけ、いわゆる欲動とやらを剥きだしにするとき、〈かれ〉は相手といかなる関係にも巻きこまれぬように配慮する。」

「他人の手を握るのは好かない。だいたい〈手を貸す〉という表現は不愉快だ。なぜそんな必要がある?」

「旅人とは、ひっきりなしに世界を駆けまわっているひとではなく、思考のなかで、夢のなかで、自室のなかで旅をするひとをさす。」



「ルゥベルト」より:

「画学校にルゥベルトという名の学友がいた。ルゥベルトは背が高く痩せており、考えこんでいるのか疲れているのか、大きな頭をいつも心もちかしげている。口数はきわめて少なく、見たところクラスにただひとりの友だちもいない。
 ルゥベルトはおそろしくゆっくりと絵を描く。油絵はいつまでたっても完成しない。白い絵具で画布を塗りつぶし、最初から描きはじめ、また塗りつぶすこともめずらしくない。」

「ある日、わたしはルゥベルトから一通の手紙をうけとった。手紙はわたしのイーゼルにおかれていた。敬称の「あなた」が使われている。」
「 あなたに恨みはありません。むしろ逆です。わたしの誠意を信じてください。――ですが、お伝えせねばなりません。もっぱら個人にかかわる諸般の事情ゆえに、あなたとの交友を終結せざるをえないと感じていることを。」
「なんのことやら理解できず、手紙を読んで不安になった。(中略)いや、むしろ不愉快になった。そもそも彼と話したことがあったか? ほとんどない。」
「ほどなくして、ルゥベルトが絵画クラスの全員に手紙を書き、どの手紙も丁重きわまる交友の断念宣言で結ばれていたことが判明した。(中略)もともと存在しもしない関係から身を退くなんて変だとは思ったが、口には出さなかった。すべては変わりなくつづいた、まったくなんの変わりもなく。」

「戦後、画学校の仲間に出くわし、(中略)わたしはルゥベルトの近況を尋ねた。いま彼がどこにいるか知っているかと。
 「だれも知らないよ。いなくなってしまった。国境を越えたんだ」」



「花の子ども」より:

「ソファに深く身を沈めて、ほほ笑みながら眼をなかば閉じ、彼女を窮地に見棄てた不可解な人生に乾杯をする。」

「たまに友人たちと会っても、距離のある秘密めいた感じがして、足どりも心もとなく、めったに口をきかない。彼らは心配してヘレンをよこし、理由を尋ねる。フローラは彼女に伝言を託す。自分はしあわせで、彼らの配慮には感じいるが、こんなに手の焼ける〈花の子ども〉に頓着するには及ばないと。彼女を囲む世界はいよいよ穏やかな霧に包まれていく。ここで一時間、あそこで数時間、こんなふうに眠るのは造作もない。夕暮れも朝も夜も時間の厳密な法則にしたがわない。だから、なにかを待つ必要もない。
 フローラ・フォーゲルソングは黒貂の毛皮をソファにひろげ、青のロングドレスを身にまとい、姿のみえない客たちをもてなし、自分の半生を語ってみせる。」



「八〇歳の誕生日」より:

「ケケはいう。「あんたのお祖母さんは樹しか描かないよな、じっさい。それもいつも同じ公園の樹だ。」」

「「あの人はな、六〇年代には酷評されたんだが、自分のスタイルを守りぬいたんだ。」」
「「当時はインフォーマリズムが流行でね、みんなが右にならえだった(中略)。怖かったので、時流を追った。どうにか折り合いをつけたのもいるが、自分らしさを失って立ち直れなかったのもいる。でも、あんたのお祖母さんは自分のスタイルを守り、だれもいなくなっても、ひとり踏んばった。勇気がある。いや、頑固というべきかな」
 わたしは遠慮がちにいった。「自分の流儀でしか仕事ができなかったせいかも」
 「なるほどね」とケケ。」

「わたしが入っていくと、ヴィルヘルムが家に来る途中で見た花咲くウワミズザクラの話をしている。「あれをどうしたもんかな」と。
 「咲くがままにしておけよ」とケケ。「(中略)そうじゃないかね。花は咲くにまかせ、ただうっとり眺めるもの。これがひとつの生きかた。それをどうにかしようってのは違う生きかただ。そうなると話はややこしくなるね」」



「狼」より:

「「わたしは」と彼女は慎重にいう。ちょっとした狼狽(パニック)がしだいに募る。「けっこう年はとっていますが、じつは子どもやら動物やらって、あまりよくは知らないんです」
 彼が描くつもりの動物の世界について尋ねたり、手さぐりにせよ捉える可能性があったなら、彼女にもなにかあたらしくて重要なものを発見できるだろうに。ふたりとも同じものを追求していた、というのも考えられぬことではない。ほの暗く、荒々しく、人見知りをするなにか。いまは失われた幼いころの居心地のよさ――なんというか――そんなものか。」

「狼たちのたえざる徘徊は彼女をぞっとさせた。時間をおきざりにする徘徊。狼たちは鉄格子にそって小走りに往復する。くる週もくる週も。くる年もくる年も。もしも人間を憎んでいるとしたら、と彼女は考える。さぞや巨大な憎悪だろう。」



「連載漫画家」より:

「「あいつは切手を集めてるんだ。ボートの図柄のものだけだが。楽器の切手だけってやつの話も聞いたことがある。蒐集家ってのは妙だな。わたしなら苔に興味をもつな。」」



こちらもご参照ください:
エドワード・ゴーリー 編 『憑かれた鏡』
































































































































冨原眞弓 編・訳 『トーベ・ヤンソン短篇集』 (ちくま文庫)

「そもそも道なんかつくる必要があるだろうか。あってもなくても、行きたいところには行けるのだ!」
(トーベ・ヤンソン 「夏について」 より)


冨原眞弓 編・訳 
『トーベ・ヤンソン短篇集』
 
ちくま文庫 や-29-1

筑摩書房 2005年7月10日第1刷発行/2006年4月10日第2刷発行
286p 付記1p
文庫判 並装 カバー
定価880円+税
装幀: 安野光雅
カバーデザイン・彩色: 祖父江慎
装画: トーベ・ヤンソン



本書「解説」より:

「本書は既刊の短篇集四巻から編んだ傑作選(アンソロジー)である。文庫への再録にあたって、必要に応じた改訳をおこなった。「子ども時代」「創作」「奇妙な体験」「旅」「老いと死の予感」という五つの主題(モティーフ)を設定し、ゆるやかな統一感をもたせて配列した。」


本書付記より:

「この短篇集は、〈トーベ・ヤンソン・コレクション〉(全8冊、筑摩書房)からセレクトした、ちくま文庫のオリジナル編集です。」


ヤンソン 短篇集


カバー裏文:

「トーベ・ヤンソンにはムーミン作家として以外の、魅力的なもう一つの顔がある。「ああ、あの作品はここから生まれたのか」と思わず読者を納得させる、子供のこだわりと大人のユーモアやペーソスがない交ぜになった味わい深い作品群。多岐にわたる短篇の中から、その特徴を示す際立った作品を選んで一冊に編み、ヤンソンの世界の奥行きと背景を伝えるベスト・セレクション。」


目次:

◆子ども時代
夏について
往復書簡
カリン、わが友

◆創作


愛の物語
自然のなかの芸術
リス


◆奇妙な体験

ショッピング
植物園

◆旅
汽車の旅
見知らぬ街
時間の感覚
リヴィエラへの旅
軽い手荷物の旅

◆老いと死の予感
聴く女
事前警告


解説 虚構と現実のはざまで (冨原眞弓)




◆本書より◆


「夏について」より:

「道をつくることにした。(中略)道はずいぶん曲がりくねってしまった。(中略)道はせますぎたうえ、ぐるりと円をかいてしまったらしい。ほとんどはじめとおなじ場所にもどってきた。こういうこともある。だけど、そもそも道なんかつくる必要があるだろうか。あってもなくても、行きたいところには行けるのだ!」

「屋根裏に秘密の小部屋をつくった。(中略)部屋ができたとき、台所から灯油ランプをもちこみ、暗くなってから灯をともした。(中略)おとなたちが屋根裏の階段をあがってきて、こういうことをしてはいけない、小屋ごとぜんぶ燃えてしまうから、という。ランプがあるふりをしてあそびなさい、どんな子どももおもちゃの家をつくるとそうするものだ、とも。これには頭にきた。わたしは「どんな子ども」なんかじゃない。わたしはわたしであって、このわたしが家をつくったのだ。ランプつきの。そんなわけで、わたしは小部屋をあとにした。」



「往復書簡」より:

「ヤンソンさん
 とても長い時がたちました。五か月と九日になりますが、返事をくださいませんね。
 わたしの手紙はとどいたのでしょうか。」
「あなたの足元に坐って学びたい。
 旅をするためにお金を貯めています。」

「ヤンソンさん
 ずいぶん長い旅なのですね。
 あなたが旅にでてからもう六か月以上になります。
 もうそろそろ帰ってこられるでしょうか。」

「ヤンソンさん
 いつか手紙を書いてくださったとき、フィンランドは夏で、
 あなたはあのさびしい島でくらしていました。
 その島にはめったに郵便がとどかないということでした。
 わたしの手紙はいちどきに何通もうけとったということですか。
 ボートが島をとおりすぎて、近よってこないのは、とても気分がいい、
 とあなたはいいます。
 でも、いまフィンランドは冬になろうとしています。」

「ええ、そうですね、たくさんの年をかさねる必要はない、
 物語を書きはじめればいい、書かなくてはならないから
 書くのです。知っていること、感じていること、または
 憧れているもの、自分の夢について、
 そして知られていないものについて。ああ、
 大好きなヤンソンさん。ほかの人のことを気にしない、
 どう思っているのか、わかってくれているのかなんて気にしない。
 そうすれば語っているあいだ、ただ物語と自分自身だけが問題になる。
 それでこそ、ほんとうの意味で孤独になれるのですね。」
「聞いてください、ヤンソンさん、
 いつあなたに会いにいっていいかを教えてください。
 お金をためました。」

「ヤンソンさん
 すばらしい手紙をありがとうございました。」
「作家の書いた本のなかでこそ作家と出会うべきだ、
 というのはすてきな考えです。」
「元気で、長生きしてください。」



「カリン、わが友」より:

「いまわたしはひとつの考えにとりつかれている。イエスさまとユダのことだ。イエスさまはユダが自分をうらぎることをちゃんと知っていた。ユダがなにをするかは前もって決められていて、神さまが決めた以上、ほかのことをするわけにはいかなかったはずだ。そのあとでユダが首をつって世界一の極悪人になることも決まっていた。そう、わたしはいいたい、それじゃあんまりだと。それからこうも考えた。あんなにおそろしい思いをして、あんなにつらい良心の苦しみをあじわったのだから、ユダはゆるされたのかもしれないと。ぎりぎりの瞬間に悔いあらためる者は、神さまとイエスさまからゆるされるという話だから。」




































































































































トーベ・ヤンソン 『ムーミン谷の冬』 (山室静 訳/講談社文庫)

「この世界には、夏や秋や春にはくらす場所をもたないものが、いろいろといるのよ。みんな、とっても内気で、すこしかわりものなの。ある種の夜のけものとか、ほかの人たちとはうまくつきあっていけない人とか、だれもそんなものがいるなんて、思いもしない生きものとかね。その人たちは、一年じゅう、どこかにこっそりとかくれているの。そうして、あたりがひっそりとして、なにもかもが雪にうずまり、夜が長くなって、たいていのものが冬のねむりにおちたときになると、やっとでてくるのよ」
(ヤンソン 『ムーミン谷の冬』 より)


トーベ・ヤンソン 
『ムーミン谷の冬』 山室静 訳

講談社文庫 や-16-5

講談社 1979年11月15日第1刷発行/2007年1月10日第43刷発行
184p 文庫判 並装 カバー
定価371円+税
デザイン: 菊地信義
カバー装丁: 辻村益朗
カバー絵・さし絵: ヤンソン
Tove Jansson : Trollvinter, 1957



「おしゃまさん」や「氷姫」、「はい虫のサロメちゃん」などたいへん魅力的なキャラクターも登場するので、わたしはムーミンシリーズでは本書がいちばんすきです。


ヤンソン ムーミン谷の冬1


カバー裏文:

「まっ白な雪にとざされたムーミン谷。パパとママといっしょに冬眠にはいったのに、どうしたわけか春がこないうちにたった一人眠りからさめてしまったムーミントロール。はじめて知る冬の世界で彼のすばらしい冒険がはじまった……。冬のムーミン谷を舞台にヤンソンがつづるファンタジー童話の傑作。」


目次:

地図 冬のムーミン谷

第一章 雪にうずまった家
第二章 水あび小屋のふしぎ
第三章 大きな白うま
第四章 おかしな人たち
第五章 あたらしいお客たち
第六章 春がきた

解説 (山室静)



ヤンソン ムーミン谷の冬2



◆本書より◆

「(さあ、どうしたらいいかな)
 ムーミントロールは、しばらくそこにたちどまって、考えこみました。だれもかれもがねむっていて、目をさましているのは自分ひとりだけだとしたら、まったくきみがわるいことです。」

「(世界じゅうがねむっているんだ。おきて、ねむれないでいるのは、ぼくひとりらしいぞ。きっとぼくは、くる日もくる日も、今週もつぎの週も、さまよいにさまよって、自分でもこんな雪のかたまりになってしまうんだ――だれにも知られないで)」

「「わたし、北風の国のオーロラ(北極光)のことを考えてたのよ。あれがほんとにあるのか、あるように見えるだけなのか、あんた知ってる?
 ものごとってものは、みんな、とてもあいまいなものよ。まさにそのことが、わたしを安心させるんだけれどもね」
 おしゃまさんはそういうと、また雪の中にひっくりかえって、空を見あげました。」

「テーブルの下では、だれかがしずかにふえをふきはじめました。
 「あの子は、はずかしがりやなんです。だから、テーブルの下でふいているんだわ」
 こう、おしゃまさんはいいました。
 「だけど、顔くらい見せたっていいのにねえ。なぜ見せないの」
 と、ムーミントロールはききました。
 「みんな、とてもはずかしがりやなもので、とうとう自分を見えなくしちゃったのよ。とても小さいとんがりねずみが、八ぴきも、わたしといっしょに、この家でくらしてるんだけどさ」
 と、おしゃまさんは答えました。
 「ここは、うちの水あび小屋だぜ」
 と、ムーミントロールはいいました。
 おしゃまさんは、まじめくさった顔をしていいました。
 「あんたのいうとおりかもしれないけれど、それがまちがいかもしれなくてよ。そりゃ、夏には、なるほどこの小屋は、あんたのパパのものでしょうさ。でも、冬にはこのおしゃまのものですからね」」

「「雪って、つめたいと思うでしょ。だけど、雪小屋をこしらえて住むと、ずいぶんあったかいのよ。雪って、白いと思うでしょ。ところが、ときにはピンク色に見えるし、また青い色になるときもあるわ。どんなものよりやわらかいかと思うと、石よりもかたくなるしさ。なにもかも、たしかじゃないのね」
 さかなスープのさらが、用心ぶかく空中をすべってきて、ムーミントロールのまえで、テーブルにのっかりました。
 「あんたのなかよしのとんがりねずみたちは、どこで空をとぶことをならったの」
 と、彼はききました。
 「いや、なにもかもききただそうとするもんじゃなくてよ。あの子たちのほうでは、ひみつをまもりたいのかもしれないものね。とんがりねずみのことなんか、気にかけないこと。雪のこともね」
 おしゃまさんは、こう答えました。」

「「あんたたちはいったい、あんまりいろんなものをもちすぎてるのよ。思い出の中のものや、ゆめで見るものまでさ」」

「「この世界には、夏や秋や春にはくらす場所をもたないものが、いろいろといるのよ。みんな、とっても内気で、すこしかわりものなの。ある種の夜のけものとか、ほかの人たちとはうまくつきあっていけない人とか、だれもそんなものがいるなんて、思いもしない生きものとかね。その人たちは、一年じゅう、どこかにこっそりとかくれているの。そうして、あたりがひっそりとして、なにもかもが雪にうずまり、夜が長くなって、たいていのものが冬のねむりにおちたときになると、やっとでてくるのよ」
 「あんたは、そういう人たちのことを、よく知ってるの」
 と、ムーミントロールはききました。
 「すこしはね。たとえば、流しの下の住人なんか、とてもよく知ってるわ。だけど、あの人は、だれにも知られないでくらしたいと、こうねがっているんだもの、あんたを紹介(しょうかい)するわけにはいかないのよ」
 こう、おしゃまさんは答えました。」

「氷姫は、かれたあしのそばにたっていました。せなかをまるめて、雪の上にかがみこんでいます。
 「あれ、りすくんだわ。あの人、家にはいるのをわすれてしまったのね」
 と、おしゃまさんがいいました。
 氷姫は、そのうつくしい顔をりすにむけて、彼の耳のうしろを、やたらにくすぐりました。りすは、まるでまほうにかけられたみたいに、姫のつめたい青い色にすんだ目の中を、じいっと見かえしました。氷姫はにっこりわらって、さらにさきへすすみました。
 しかし、ばかな子りすは、すっかりからだがしびれてしまって、四本の手足を空にあげたまま、そこにころがりました。
 「これじゃ、あんまりだわ」
 おしゃまさんは、おこったようにいって、ぼうしを耳の上までひきさげると、ドアをあけました。たちまちまっ白い雪けむりが、うずをまいて、へやの中にとびこんできました。おしゃまさんはぱっと外へとびだしていったかと思うと、たちまちはしりもどってきて、りすをテーブルの上におきました。
 目に見えないとんがりねずみたちは、お湯をもってとびだしてきて、あたためたタオルでりすをくるみました。しかし、りすはその小さい手足を、かなしくこわばらせたまま、空につっぱっているだけです。ひげ一本うごかしません。
 「りすはもうすっかり死んでるわよ」
 と、ちびのミイは平気でいいました。
 「すくなくとも彼は、死ぬまえにうつくしいものを見たのだ」
 ムーミントロールは、声をふるわせて、こういいました。」

「ムーミントロールは、それでもあきらめずに、質問をくりかえしました。
 とうとうママは返事をしました――なんでもおぼえている、母親としてのふかい記憶のそこから。」

「おしゃまさんが、そのしずかな青い目で、ムーミントロールを見つめました。けれども、ほんとうにムーミントロールを見たのかどうか、よくわかりません。おしゃまさんは、ムーミンたちがうちの中で、ぬくぬくとねむっているあいだに、毎年、ちゃんとうごいていく冬の世界を、のぞきこんでいるのでした。」

「モランはまっすぐに、かがり火のところへいきました。そして、ひとこともいわずに、そのまん中へ、のっそりとすわりこんだのです。
 ジューッと、すさまじい音がして、火の山全体が、湯げにつつまれてしまいました。それが晴れたかと思うと、もうのこり火は、なくなっていました。大きな、灰色のモランが、湯げをもうもうとたてているばかりでした。
 ムーミントロールは、海岸へおりていくと、おしゃまさんをつかまえてさけびました。
 「どうなるだろう。モランが、お日さまをけしてしまったよ」
 「しっかりしなさい」
 と、おしゃまさんはいいました。
 「あの人は、火をけしにきたんじゃないの。かわいそうに、あたたまりにきたのよ。でも、あたたかいものは、なんでも、あの女の人がその上にすわると、きえてしまうの。いまは、またきっと、しょげかえっているわ」」
「山にはもうだれもいません。みんな、かえっていってしまったのです。モランは、また、こおった海の上へすべりおりて、くらやみの中へきえていきました。きたときとおなじように、ひとりさびしく、さっていったのです。」

「ムーミントロールは、目がくらむ思いでした。彼は、心の中で思いました。
 (生きものってものは、なんてさまざまなんだろう)と。」

「サロメちゃんは、もっとらっぱの音楽がききたいと、たえず、ねがっていたのです。ざんねんなことに、ヘムレンさんはとても大きいし、いつでもいそがしいので、そのことには気がつきません。サロメちゃんが、どんなにはしっていっても、スキーをはいたヘムレンさんは、きまって、ぐんぐんさきにすべっていってしまいます。」
「二度か三度、小さいサロメちゃんは、自分が、どれほどヘムレンさんを尊敬しているか、いいあらわそうとしました。けれども、サロメちゃんがあんまり気がよわくて、おどおどしていたものですから、ろくすっぽヘムレンさんは、耳もかさなかったのです。」
「ある晩、はい虫のサロメちゃんは、海泡石(かいほうせき)のトロッコの中で、目をさましました。サロメちゃんは、このトロッコのうしろの出入口で、くらしていたのです。そこは、あまりねごこちのいい場所ではありません。なにしろ、(中略)ムーミン家の人たちが長いあいだにひろいあつめた、びょうだの、安全ピンだのが、いれてあったからです。はにかみやの小さいサロメちゃんには、それをどけてしまう元気はありません。」

「はい虫のサロメちゃんは、ねどこで目をさましたまま、くらやみの中をにらんで、つぶやきました。
 「あの人たち、ヘムレンさんとらっぱを、追いだそうとしてるんだわ。あの人を、谷におとしてしまおうと考えてるんだわ」」
「ちょこちょこばしりのサロメちゃんは、ひと晩じゅう目をさましていて、あれこれと考えました。サロメちゃんの小さな頭は、そんなむずかしい考えごとには、なれていません。
 ですから、朝がやってきたときには、もうどうにもたまらなくなって、ねむってしまいました。(中略)ねすごしてしまったのです。それなのに、だれひとりサロメちゃんがいないことには、気がつかなかったのでした。」

「ちょこちょこばしりのサロメちゃんは、なにかにおくれてしまったようなおそろしい感じで、目をさましました。そのとき、ヘムレンさんのことを思いだしました。
 サロメちゃんは、たんすからとびおりました。――まず、いすの上へ、それから、ゆかの上へ。へやはからっぽでした。」
「ちょこちょこばしりのサロメちゃんは、窓へよじのぼると、なみだでのどをつまらせながら、ころげるように、雪のトンネルをはしりぬけました。」

「「ちょこちょこばしりのサロメちゃんが、ふぶきの中へきえてしまったのよ」
 おしゃまさんが、しんけんな顔をしていいました。」
「ムーミントロールは、すがたの見えないとんがりねずみにむかってお礼をいってから、またききました。
 「だけど、サロメちゃんは、外へでたことがないじゃないの」
 「どうしてでたのか、おいらにも、ぜんぜんわからんのだ。おまけに、あらしがやむまでは、どうにもならんときてる。どこかで、雪にうずもれてるんじゃないかな」
 こういったのは、年よりのホムサでした。
 「じゃあ、ヘムレンさんは?」
 と、ムーミントロールは、いそいでききました。
 「あの人は、とにもかくにも、さがしにいったね」
 おしゃまさんは、こういってから、ちょっとばかりにやにやしながら、つけくわえました。」
「「安心しなさいよ。わたしたちだって、ヘムレンさんをすきになりかけているのかもしれないわよ」」

「ヘムレンさんが、こまかいことには気がつかず、自分がまわりの人たちにどう思われているか、とんと感じなかったということは、ほんとかもしれません。」

「彼は、地面に鼻をくっつけるようにして、ゆっくりとふぶきの中をすすみました。それは、小さいサロメちゃんのにおいが、すこしでもどこかにのこっていないかと、さがしだそうとしていたからです。
 とちゅうでヘムレンさんは、じぶんのイグルーの中をのぞいてみました。そこには、あのちょこちょこばしりさんのにおいがただよっていました。きゅっと、彼のむねを、あついものがしめつけました。
 (そうだ、あのちびさんは、ここへぼくをたずねてきたっけ。あれはいったい、なぜだったのかな)
 はっきりとではありませんが、ヘムレンさんは、きゅうに思いだしました。――ちょこちょこばしりのサロメちゃんが、なにか自分に話そうとしたけれど、気おくれして、いわないでしまったことを。
 ふぶきの中を歩きつづけながら、ヘムレンさんは、いろんなことを考えました。スキーの丘でまっているサロメちゃん……自分のあとを追ってくるサロメちゃん……らっぱに鼻をくっつけているサロメちゃん……。
 さいごに、ヘムレンさんは、
 (ぼくはどうも、あの子にやさしくなかったぞ)
 と考えて、どきっとしました。
 でもヘムレンさんは、くよくよなんかしません。ヘルムという動物は、めったなことでは、くよくよなんかしないのです。けれど、それだけ、小さいサロメちゃんを見つけることには、いよいよ熱心になりました。」

「もう春がきたのです。しかし、彼の考えていたのとは、まるっきりちがっていました。
 彼は考えていたのです――春というものは、よそよそしい、いじのわるい世界から、自分をすくいだしてくれるものだと。ところが、いまそこにきているのは、彼が自分で手にいれて、自分のものにしたあたらしい経験の、ごく自然なつづきだったではありませんか。」

「おしゃまさんは、(中略)かたをすくめていいました。
 「どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして、自分ひとりで、それをのりこえるんだわ」」



ヤンソン ムーミン谷の冬3



こちらもご参照ください:
エドワード・ゴーリー 『まったき動物園』





























































































































































































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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