ロード・ダンセイニ 『最後の夢の物語』 (中野善夫ほか訳/河出文庫)

「「世界はもうすっかり科学的なものになっているのですよ」
 「それが問題なのです。それを正すのがあなたではありませんか」」

(ロード・ダンセイニ 「名誉会員」 より)


ロード・ダンセイニ 
『最後の夢の物語』
 
中野善夫・安野玲・吉村満美子 訳
河出文庫 タ-1-4

河出書房新社 2006年3月10日初版印刷/同20日発行
616p 「収録作品」1p
文庫判 並装 カバー
定価1,200円+税
ロゴ・表紙デザイン: 粟津潔
フォーマット: 佐々木曉
カバーデザイン・彩色: 坂野弘美
カバー装画: シドニー・H・シーム



本書「訳者あとがき」より:

「本書には、Fifty-One Tales (一九一五年)および The Man Who Ate the Phoenix (一九四九年)収録の全作品、くわえて In the Land of Time And Other Fantasy Tales (二〇〇四年)で始めて単行本に収録された作品の中から幻想的な味わい、あるいは不思議な味わいのある作品を二篇収録した(発表年は一九四七年と一九五二年)。」


ダンセイニ 最後の夢の物語


カバー裏文:

「不死鳥を食べて幽霊や妖精を見る不思議な力が備わった男の顛末を描いた中篇「不死鳥を食べた男」を表題作とする本邦初紹介の短篇集に、稲垣足穂に絶大な影響を与えた、日常の中に神話的世界が混ざり合うコント集『五十一話集』を初の完全版で合わせて収録。
ロード・ダンセイニの幻想短篇集成全四巻、遂に完結!」



目次:

I 五十一話集
 あいびきの約束
 カロン
 パンの死
 ギゼーのスフィンクス
 めんどり
 風と霧
 筏づくり
 鳶職人
 連れの客
 〈死〉とオデュッセウス
 〈死〉とオレンジ
 花の祈り
 〈時〉と職人
 小さな町
 草だに生いぬ野
 蛆と天使
 歌もたぬ国
 最新のもの
 煽動政治家と娼婦
 巨大な罌粟
 薔薇
 金の耳飾りの男
 カルナ=ヴートラ王の夢
 嵐
 ひとちがい
 兎と亀の駆けくらべの真相
 不滅なる無比の者たち
 教訓的小話
 歌は還りて
 街角に春が
 敵がスルーンラーナを訪いし事の次第
 勝ち目のないゲーム
 ピカデリーを掘る
 劫火のあと
 都
 〈死〉の糧
 哀しき神像
 テーベのスフィンクス(マサチューセッツ州にて)
 報い
 リーフィグリーン街の災い
 霧
 畑づくり
 ロブスター・サラダ
 流浪者たちの帰還
 〈自然〉と〈時〉
 くろうたどりの歌
 使者
 背の高い三人の息子
 駆け引き
 成れの果て
 パンの墓碑
 詩人、地球とことばを交わす

II 不死鳥を食べた男
不死鳥を食べた男
林檎の木
皆の仕事が知られた町で
薔薇の迂回路
老人の話
いかにして鋳掛け屋はスカヴァンガーに到ったか
オパール鏃
スルタンの愛妾
カーシュのスルタンの血統
警官の予言
森を吹く風
虎の毛皮
ジュプキンス氏との邂逅
悪夢
マルガー夫人
選択
ローズ・ティベッツ
当世の白雪姫
帰還
狂った幽霊
理由
無視
リリー・ボスタムの調査
第三惑星における生命の可能性
オールド・エマ
如何にしてアブドゥル・ディンが正義を救ったか
最初の番犬
チェス・プレイヤーと金融業者ともう一人
名誉会員
実験
金鳳花の中を下って
悪魔の感謝
晩餐後のスピーチ
言葉ではいい表わせないもの
ポセイドン
九死に一生
犬の情熱
記憶違い
四十年後
鉄の扉
大スクープ

III その他の物語
妖精助け
忘れ得ぬ恋

訳者あとがき (中野善夫)




◆本書より◆


「都」より:

「「あの都にはなにか恐ろしいことが降りかかる運命にちがいない。詩人や芸術家は虫の知らせでこっそり逃げ出したんだ。ふつうの者には虫の知らせなんぞないのだろうさ」」


「帰還」より:

「わたしはほんとうに遠いところから、この芝生を再び眼にするために、ここに建つこの古い屋敷を眼にするために帰って来たのです。迂回するようにドアへと向かうと、ドアに嵌め込まれたガラスが虚ろにわたしを見返していました。その後ろには鎧戸があって、しっかりと鍵がかかっていました。そこにいる犬がわたしのほうを見ました。玄関の前に置いてある樽の中で腹ばいになって入口を護っていた犬が、不意にわたしを見て吠えたのです。それでも、屋敷の中からは何の音も聞こえず動きも感じ取れません。長い旅の終わりが近づいてきていることが判りました。ここの二階の部屋への通路にある楢材の羽目板には、奇妙な古(いにしえ)の王の彫刻があって、年月に黒ずみ、かつてわたしの子供部屋だった部屋へと通じる廊下を端から端まで暗くしていました。そのとき、この装飾が彫り込まれている楢材がわたしの旅の終着点だと知りました。屋敷に入ると、犬がまた吠えました。
 眼前は何もかもまっ暗でしたが、そこによく知っている階段がありました。明かりは必要ありませんでした。その階段の一段一段、曲がり具合も知り尽くしています。それぞれの段の板が軋んでたてる音の響きの違いまでも。わたしは階段を一気に上がりました。あの犬は今や長い震えるような声で吠えていました。二階へ上がると、暗い古い廊下がありました。変な顔をした古の首があって、わたしを見つめていて、長い旅がはじまってから初めて受けた歓迎のように思えました。犬の吠える声がますます大きくなって、とうとう屋敷の人を起こしてしまったようです。遠くで足音がするのが聞こえてきました。その足音はわたしのほうへと向かって来ていました。」
「少し離れたところのドアが開きました。足音が近づいてきます。蝋燭を手に持った女の人が廊下を歩いてきます。ゆっくりと、不安そうに辺りを見回しんがら。ちょうどそのとき、村の古い教会の塔から、真夜中の鐘の音色が霧の中を越えて聞こえてきました。その瞬間、百年が終わったんだという感じがしました。」











































































































































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ロード・ダンセイニ 『時と神々の物語』 (中野善夫ほか訳/河出文庫)

「熱気でむせ返る赤道近くの低地では、お化けのような蘭が風に揺れ、鼠ほどの大きさの甲虫が天幕のロープにとまり、夜になると蛍が小さな流れ星のように空を切って飛び回っている。この低地を発(た)った旅人たちは、仙人掌(サボテン)の森を三日間歩き続け、ついには大羚羊(れいよう)が棲む開けた平野にいたった。」
(ロード・ダンセイニ 「ブウォナ・クブラの最後の夢」 より)


ロード・ダンセイニ 
『時と神々の物語』
 
中野善夫・中村融・安野玲・吉村満美子 訳
河出文庫 タ-1-3

河出書房新社 2005年9月10日初版印刷/同20日発行
565p 「収録作品」1p
文庫判 並装 カバー
定価850円+税
デザイン: 粟津潔
カバーフォーマット: 佐々木曉
カバーデザイン・彩色: 坂野弘美
装画: シドニー・H・シーム



本書「訳者あとがき」より:

「河出文庫のダンセイニ短篇集第三弾である本書は、The Gods of Pegana (一九〇五年)と Time and the Gods (一九〇六年)、そして Tales of Three Hemisphere (一九一九年)の全作品、および生前単行本未収録だった短篇十一篇を収録している。また、(中略)原書に収められていたシドニー・H・シームの挿し絵も全点収録した。」


挿絵(モノクロ)18点。


ダンセイニ 時と神々の物語


カバー裏文:

「神々とは〈運命〉と〈偶然〉の賽(さい)ころ勝負の勝者のためマーナ=ユード=スーシャーイが造った戯れであり、世界はマーナの目覚めとともに消える幻に過ぎない。美しくも残酷な異境の神話を描いた極北のファンタジー・続篇『時と神々』完訳をおさめた初の完全版。
他に『三半球物語』等を収めた、ダンセイニ幻想短篇集成第三弾。」



目次:

I ペガーナの神々
ペガーナの神々
鼓手スカールのこと
天地創造のこと
神々の〈ゲーム〉のこと
神々の詠唱
キブ、あるいは〈ありとしある世界の命の送り手〉の御言葉
シシュ、あるいは〈時間の群をあやつる破壊者〉について
スリッド、あるいは〈海に御霊を宿す者〉の御言葉
ムング、あるいは〈ペガーナと縁のあいだの死の長〉の御業
神官の詠唱
リンパン=トゥング、あるいは〈喜びと歌人の神〉の御言葉
ヨハルネス=ラハーイ、あるいは〈ひとひらの夢と幻の神〉のこと
進行の神ルーン、および千万の地神のこと
地神の叛乱
終わりを見つめる目のドロザンドのこと
沙漠の目
神でも獣でもないもののこと
預言者ヨナス
預言者ユグ
預言者アルヒレス=ホテップ
預言者カボック
海辺でユーン=イラーラにふりかかった災いのこと、および〈日没の塔〉建立のこと
神々がシディスを亡ぼされた次第について
インバウンがアラデックの地で一柱を除くすべての神々に仕える大預言者となった次第について
インバウンがゾドラクに見えた次第について
ペガーナ
インバウンの独白
インバウンが王に死のことを語った次第について
ウードのこと

滅びの鳥と〈終わり〉

II 時と神々
序文
時と神々
海の到来
曉の伝説
人間の復讐
神々が睡ったとき
存在しない王
カイの洞窟
探索の悲哀
ヤーニスの人々
神々の名誉のために
夜と朝
高利貸し
ムリディーン
神々の秘密
南風
時の国で
世界を哀れんだサルニダク
神々の冗談
預言者の夢
王の旅

III 三半球物語
ブウォナ・クブラの最後の夢
オットフォードの郵便屋
ブゥブ・アヒィラの祈り
東の国と西の国
小競り合い
神はいかにしてミャオル・キ・ニンの仇討ちをしたか
神の贈り物
エメラルドの袋
茶色の古外套
神秘の書
驚異の都市
われわれの知る野原の彼方
 版元の覚え書き
 第一話 ヤン川を下る長閑な日々
 第二話 〈見過ごし通り〉のとある店
 第三話 ペルドンダリスの復讐者
 
IV その他の物語
谷間の幽霊
サテュロスたちが踊る野原
秋のクリケット
もらい手のない〈国の種〉がヴァルハラから持ち去られた事の次第
電離層の幽霊
おかしいのはどこ?
古い廊下にいる幽霊
白鳥の王子
ペリプル師への啓示
誓ってほんとうの話だとも
夜も森で

訳者あとがき (中野善夫)




◆本書より◆


「預言者の夢」より:

「私はアルデロンの谷にある神々の罌粟の原で睡(ねむ)っていた。夜、月が低く空にかかっている頃に神々が集まってきて話し合う処である。私が夢見たものは、〈秘密〉であった。
 〈運命〉と〈偶然〉が興じていた〈ゲーム〉が終わった。すべてが終わった。希望も涙も、後悔も悲哀も、人間が涙を流したことも、覚えてもいないようなことも、王国も小さな庭も、海も世界も月も太陽も。残っているものは何もなく、色や音もなかった。
 そのとき、〈運命〉が〈偶然〉に云った。「我らの古い〈ゲーム〉をもう一度始めようではないか」ふたたび、彼らは勝負を始めた。それまで何度も繰り返されてきたときのように、神々を駒に使って。だから、それまでに起きたことは何もかもふたたび繰り返されるだろう。同じ国の同じ川岸で、同じ春の日に陽光が不意にまぶしく輝き、同じ水仙の花がふたたび開き、同じ幼児がそれを摘むだろう。その間に流れた一兆年の歳月を惜しむこともない。昔馴染みの顔がまた姿を見せ、慣れ親しんだ溜まり場はまだ失われない。あなたと私は夏の日の午後、太陽が天頂と海の間に立つ頃に、以前よく出逢った庭でいま一度巡りあうだろう。」



「王の旅」より:

「羊や牛の番をしながら、キスネブはよく夢を見ていました。他の者が眠っているときに、キスネブはふらふらと歩いて人々が入ろうとはしない森の縁まで行くことがよくありました。フルンの国の長老たちは、キスネブが夢を見ているときつく叱りましたが、それでも、キスネブはまだ他の男たちと同じような人間で、仲間たちとの付き合いがありました。が、とうとう、これから私がお話ししようとしている日がやって来たのです。(中略)キスネブと私は家畜の群れの近くに坐っていて、彼はフルンの国の端で暗い森が海と出会うところを長いこと見つめていました。」
「キスネブは他の者と一緒に四人の王子たちのいる市場に来ませんでした。独りで野原を渡って森の縁に行ったのでした。
 翌朝、キスネブに不思議なことが起きました。朝、野原からやって来たキスネブに会った私は、羊飼い仲間の叫び声で挨拶をしました。私たちはそうやって互いに呼び合うのです。しかし、彼は応えませんでした。それで、私は立ち止まってキスネブに話しかけました。それでも彼は一言も答えなかったので、私は腹を立てて彼を置いて立ち去りました。」
「私たちは、こう云いました。『キスネブは狂っている』そしてキスネブの邪魔をするものはおりませんでした。」
「キスネブは毎晩森の縁の野原にただ独り坐っていました。
 そんなふうに、キスネブは何日もの間、誰にも話しかけず、誰かが無理やり話をさせようとすると、神々が遠い黄昏と海の彼方から森へやってきて坐る時間に、毎晩神々の声を聴いているのだと云いました。だから、もう人間とは話をしないのだと。」















































































































ロード・ダンセイニ 『夢見る人の物語』 (中野善夫ほか訳/河出文庫)

「「あの人は人間に対して罪をおかしただけだよ。ぼくらがあれこれいう筋合いのことじゃない」
 「いたわってあげましょうよ」」

(ロード・ダンセイニ 「潮が満ちては引く場所で」 より)


ロード・ダンセイニ 
『夢見る人の物語』
 
中野善夫・中村融・安野玲・吉村満美子 訳
河出文庫 タ-1-2

河出書房新社 2004年8月10日初版印刷/同20日発行
368p 文庫判 並装 カバー
定価850円+税
デザイン: 粟津潔
カバーフォーマット: 佐々木曉
カバーデザイン・彩色: 坂野弘美
装画: シドニー・H・シーム



本書「訳者あとがき」より:

「河出文庫のダンセイニ短篇集第二弾である本書は、The Sword of Welleran (一九〇八年)と A Dreamer's Tales (一九一〇年)の全作品を収録している。既訳のあるものも新たに訳した。また、(中略)原書に収められていたシドニー・H・シームの挿し絵も全点収録した。」


挿絵(モノクロ)19点。


ダンセイニ 夢見る人の物語


カバー裏文:

「現代ファンタジーの源流ロード・ダンセイニの幻想短篇集成、第二弾。大地と同じほど歳を重ね、星々を姉妹とするバブルクンド。海の伝説と化し、若者を魅了するポルタニーズ。謎めいた響きの名を持つ数々の都市が驚異をもたらし、世界の涯では、夢見るものだけが垣間見ることのできる、妖精、英雄、盗賊の物語が繰り広げられる。全二十八篇収録。」


目次:

I ウェレランの剣
ウェレランの剣
バブルクンドの崩壊
妖精族のむすめ
追い剥ぎ
黄昏の光のなかで
幽霊
渦巻き
ハリケーン
サクノスを除いては破るあたわざる堅砦
都市の王
椿(つばき)姫の運命
乾いた地で

II 夢見る人の物語
序文
海を臨むポルターニーズ
ブラグダロス
アンデルスプラッツの狂気
潮が満ちては引く場所で
ベスムーラ
ヤン川を下る長閑(のどか)な日々
剣と偶像
無為の都
ハシッシュの男
哀れなビル
乞食の一団
カルカソンヌ
ザッカラスにて
野原
投票日
不幸な肉体

訳者あとがき (中野善夫)




◆本書より◆


「バブルクンドの崩壊」より:

「そうこうするうち話をする旅人の上に夜の帳(とばり)はおごそかに冷たくおりて、わたしたちは毛布にくるまりバブルクンドの姉や妹である星々に見守られて砂の上に横になった。夜どおし沙漠はさまざまなことを低い声でささやくように語ったが、なにを語っているのかわたしにはわからなかった。ただ、砂にはわかっていて、身をもたげて身もだえてからまた身を低くした。風にもわかっていた。そうして夜が更けてゆくにつれ、砂と風は神聖な沙漠を侵したわたしたちの足跡に気がついて、混ぜかえして掻き消した。そのうち風はやみ砂は安らいだ。やがてまたしても風が立ち砂が舞った。これが幾度もくりかえされた。そのあいだ沙漠はずっとわたしたちにはわかりもせぬことをささやきつづけた。」

「バブルクンドではルビー売りはルビーの歌をうたい、サファイア売りはサファイアの歌をうたいますが、どの宝石にもそれぞれ歌がございましてね、宝石売りはその歌であきなう品を告げ知らせることになっております。
 ところが正午にはこうした喧噪(けんそう)もみな途絶え、市場の宝石売りは木陰を見つけて横たわり、王侯貴族は涼しい場所を求めて宮殿にもどり、ぎらつく大気のなかでバブルクンドはまったき静寂(しじま)につつまれるのでございます。けれども夕刻が迫って涼しくなり、王の楽人のひとりが故郷の夢から覚めて竪琴かなにかの弦に指を走らせますと、その調べとともに、〈歌の島々〉にそびえる山々の峡谷に立つ風の記憶などが呼び起こされたりもいたします。」



「妖精族のむすめ」より:

「少女はまた、通りを人々がのんびり悠々と歩いている様子を眺めた。目には見えないが、彼らの間を縫うように大昔の幽霊たちが彷徨(さまよ)っていて、生きた人間には聞えない声で過ぎ去りしことについてお互いにひそひそと語り合っている。そして東へと通じるあらゆる道の先に、また家々のどんなに細い切れ目からでも、あの壮大な沼地の風景をかいま見ることができた。」

「彼はダマスコを流れるアバナとパルパルという川の話をした。メアリー・ジェインはそんな名前の川があると聞いてうれしくなった。」

「小さきものは一目散に走り、出口を見つけるとランプに照らされた通りに走り出た。
 たそがれどきに生まれた人間には、北か東に向かう道ならどの道でもまっしぐらに駆け抜けていく小さきものを見ることができたかもしれない。その生きものはランプの光のもとでは姿を消し、光のないところに来ると頭上に鬼火を戴いた姿で再び現れるのだ。」
「ロンドンの猫は一匹残らずたそがれどきに生まれたものだから、その生きものが走り抜けるとおびえたような鳴き声を上げた。」



「潮が満ちては引く場所で」より:

「最後の人間がいなくなって数日が過ぎたころ、ロンドンに小鳥たちが舞いおりました。歌が得意なあらゆる種類の小鳥です。わたしに気づいた小鳥たちはそろって小首をかしげて様子をうかがっていましたが、そのうち少し離れたところに飛んでいってさえずりあいました。
 「あの人は人間に対して罪をおかしただけだよ。ぼくらがあれこれいう筋合いのことじゃない」
 「いたわってあげましょうよ」
 小鳥たちはそばまでちょんちょん跳ねてくるとうたいはじめました。」



































































































































ロード・ダンセイニ 『世界の涯の物語』 (中野善夫ほか訳/河出文庫)

「ともに来たれ、賢明なるがゆえにロンドンに倦怠を感じている紳士淑女の方々よ。
ともに来たれ。
わたしたちの知る世界の何もかもにうんざりしている者よ。
ここに数々の新たな世界があるのだから。」

(ロード・ダンセイニ 『驚異の書』「序文」 より)


ロード・ダンセイニ 
『世界の涯の物語』 

中野善夫・中村融・安野玲・吉村満美子 訳
河出文庫 タ-1-1

河出書房新社 2004年5月10日初版印刷/同20日発行
373p 文庫判 並装 カバー
定価893円(本体850円)
デザイン/カバーフォーマット: 粟津潔
カバーデザイン: 坂野弘美
装画: シドニー・H・シーム
Lord Dunsany : The Book of Wonder (1912) & Tales of Wonder (1916)



本書「訳者あとがき」より:

「ダンセイニが幻想的な作品を発表するようになったのは一九〇五年の The Gods of Pegana (『ペガーナの神々』)が最初である。このとき、挿し絵を描いたのがシドニー・H・シーム(Sidney H. Sime 一八六七―一九四二年)である。その後もシームはダンセイニの本に挿し絵を描き、なかには挿し絵が先にあって、それを見たダンセイニが想像力を喚起されて作品を書いたものもあるという。そういう切っても切れない関係にあるダンセイニとシームであるから、本書にもオリジナル短篇集に掲載されたシームの挿し絵をすべて収録した。」


挿絵(モノクロ)16点。


ダンセイニ 世界の涯の物語


カバー裏文:

「現代ファンタジーの源流であり、いまなお魔法のきらめきを失わない特別の作家ダンセイニの初期幻想短篇集二冊を完全収録。盗賊サンゴブリンドに下された過酷な運命。〈絶無の都〉へいたると予言された子供の旅。老人から買った魔法の窓が見せたもの。水夫が偶然知った海の秘密……。神話的な物語に、ユーモアに満ちたほら話が織りまぜられた珠玉の三十三篇。」


目次:

I 驚異の書
 序文
 ケンタウロスの花嫁
 宝石屋サンゴブリンド、並びに彼を見舞った凶運にまつわる悲惨な物語
 スフィンクスの館
 三人の文士に降りかかった有り得べき冒険
 偶像崇拝者ポンボの身の程知らずな願い
 ボンバシャーナの戦利品
 ミス・カビッジと伝説(ロマンス)の国のドラゴン
 女王の涙をもとめて
 ギベリン族の宝蔵
 ナス氏とノール族の知恵比べ
 彼はいかにして予言の告げたごとく〈絶無の都〉へいったのか
 トーマス・シャップ氏の戴冠式
 チュー・ブとシーミッシュ
 驚異の窓
 エピローグ

II 驚異の物語
 序文
 ロンドンの話
 食卓の十三人
 マリントン・ムーアの都
 なぜ牛乳屋(ミルクマン)は夜明けに気づいたときに戦慄(おのの)き震えたのか
 黒衣の邪(よこしま)な老婆
 強情な目をした鳥
 老門番の話
 ロマの掠奪
 海の秘密
 アリが煤色の地(ブラック・カントリー)を訪れた顛末
 不幸交換商会
 陸と海の物語
 赤道の話
 九死に一生
 望楼
 こうしてプラッシュ・グーは〈誰も行こうとしない国〉にやってきた
 チェスの達人になった三人の水夫の話
 流浪者クラブ
 三つの悪魔のジョーク

訳者あとがき (中野善夫)
ロード・ダンセイニ著作リスト




◆本書より◆



「ケンタウロスの花嫁」より:

「しかし、人の血のなかには潮(うしお)がある。そう、太古より変わらぬ潮路(しおじ)がある。それはどうやら黄昏に通じていると見え、名も知れぬ島々から海が流木を運んでくるように、どれほど遠くの土地からでも美しいものにまつわる風聞を運んでくるのだ。人の血をおとなうこの大潮は、その血脈の神話的な領域から、伝説から、古きものから生まれでる。それは人を森へと、丘へといざなう。そして、人は太古の歌を耳にする。だからこそ、世界の涯(はて)の人里離れた山脈ではぐくまれたシェパラルクの伝説の血が、はかない黄昏だけが知っていて蝙蝠(こうもり)だけが託される風聞にかきたてられたのかもしれぬ。なんといっても、ケンタウロスは人よりもなお伝説に近いのだ。」


「老門番の話」より:

「この男の名前はジェラルド・ジョーンズであり、長いことロンドンから出たことがないということだった。だが、たった一度だけ、子供の頃に北の荒野を旅したことがあるという。あまりにも昔のことなのでどうやって旅したのかは思い出せないが、ともかく彼は(中略)その荒野を一人で歩いたことがあるのだそうだ。目の前に広がるのは御柳擬(ぎょりゅうもど)きとヒース、それに羊歯(しだ)ばかりであった。ただ、遙か彼方の夕日近く、わずかに見える丘のあたりに、小さくおぼろげに人里らしきものが見えていた。日が暮れるにつれ霧があたりに立ちこめ丘をすっかり覆ってしまったが、男は荒野を歩き続けた。やがて彼は谷間にたどり着いた。荒野の中程に口を開けた小さな谷で、両崖が驚くほど切り立っている。腹ばいになり、(中略)谷間をのぞき込むと、遙か谷底の方に一軒の小屋と庭園があるのが見えた。その庭園の、一面に背丈より高い立葵(たちあおい)の茂るなか、一人の老婆が木製の椅子に腰掛け、黄昏のなか歌をうたっている。その歌は男の心をとらえ、のちにロンドンに戻ってからも記憶にとどまりつづけた。そして、その歌がよみがえるとき、彼はいつも黄昏に思いを馳せた――ロンドンの街ではお目にかかれないようなやつだ――荒野をのんびりと吹き抜けるやわらかな風や、せわしなく飛び回る蜂の羽音が再び彼の耳に響き、街の喧騒から解放されるのだ。」
「のちに彼はもう一度北の荒野へ赴き、あの小さな谷間を見つけたのだが、庭園に老婆の姿はなく、あの歌をうたうものは誰もいなかった。そして二十年前の夏の宵に聞いた、日々記憶から薄れつつあるあの老婆のうたう歌への哀惜の念が男の頭を悩ませたせいか、(中略)早くに老け込んでしまった。そしてついに物思いが哀惜の念しか生み出さず、年とともに仕事のむなしさを受け入れられるようになると、まじない師の意見を仰ぐ決心をした。さっそく彼はまじない師のもとに赴き、自分の悩みを、特にかつて聞いたあの歌のことについて打ち明けたのだ。「そして」と男はいった。「世界中のどこに行ってもあの歌を聞くことができないのです」
 「無論、世界中のどこでも無理であろう」まじない師は答えた。「だが、世界の涯を越せばたやすく耳にすることができるはずじゃ」そして男に向かって、どうやら汝は時の流れに毒されておるようだから、世界の涯で一日過ごしてはどうかとすすめた。」
































































































ロード・ダンセイニ 『短篇集 妖精族のむすめ』 (荒俣宏 編訳/ちくま文庫)

「なにね、またひとつ世界が終わっただけのことさ」
(ロード・ダンセイニ 「歌の復活」 より)


ロード・ダンセイニ 
『短篇集 妖精族のむすめ』 
荒俣宏 編訳

ちくま文庫 た-4-1

筑摩書房 1987年7月28日第1刷発行
370p 文庫判 並装 カバー
定価580円
装幀: 安野光雅
カバー装画: S.H. Sime (「The Sword of Welleran」より)
挿画: S・H・シーム

「この作品集は、『ダンセイニ幻想小説集』(一九七二年六月二五日、創土社刊)と『ペガーナの神々』(一九七五年三月三〇日、創土社刊)を元に再編集したものである。」



挿画(モノクロ)11点。


ダンセイニ 妖精族のむすめ


帯文:

「野獣に変身する神、突然発狂する都市――華麗な幻想的短篇傑作集。」


カバー裏文:

「ダンセイニの幻想小説が描き出す世界は、永遠が瞬時よりはかなく過ぎ去り、神々が野獣に変身し、瀕死の魂が神秘というオアシスを求めてさまよい、繁栄をきわめた都市は突然発狂する。華麗で倦怠感に充ちた虹色の幻想世界へと誘う、短篇小説20余編を収める。S・H・シームの神秘的な挿画を付す。」


目次:

妖精族のむすめ
サクノスを除いては破るあたわぬ堅砦
ケンタウロスの花嫁 (山田修 訳)
老門番の話
女王の涙をもとめて
サルニダクの慈悲 (野村芳夫 訳)
三人の文士にふりかかった有り得べき冒険
バブルクンドの崩壊 (佐藤正明 訳)
アンデルスプラッツの狂気
海を望む峰ポルターニイズ
ベツムーラ (鏡明 訳)
ギベリンの宝蔵 (佐藤正明 訳)
宝石屋サンゴブリンドの平穏ならざる物語とかれにくだされた運命 (佐藤正明 訳)
かれはいかにして予言の告げたごとく有り得べからざる都市に至ったか (山田修 訳)
赤道の話
オットフォードの郵便夫
エメラルドの袋
追剥
ヴェレランの剣 (佐藤正明 訳)
カルカッソンヌ (山田修 訳)
五十一話集
 約束
 カロン
 牧神(パン)の死
 ギゼーのスフィンクス
 めんどり
 風と霧
 いかだを作る人
 職人
 客
 死とオデュセウス
 死とオレンジ
 花の祈り
 〈時〉と商人
 小さな市
 草の生えない草原
 蛆虫と天使
 歌のない国
 最新のもの
 デマゴーグとドゥミ=モンド
 大きなケシの花
 薔薇
 金の耳飾りをつけた人
 カルナ=ヴートラ王の夢
 嵐
 勘ちがい
 ウサギとカメの競走に関する驚くべき真相
 不滅者
 教訓的な小話
 歌の復活
 街角の春
 敵はいかにしてトルーンラーナを訪れたか
 負け試合
 ピカデリーを掘り取る
 火災のあと
 市(まち)
 死の食物
 さみしい偶像
 テーベのスフィンクス(マサチュセッツ)
 報酬
 葉緑(はみどり)の街に起こったできごと
 あぜを掘る人
 エビのサラダ
 亡命者の帰還
 自然と時
 くろうたどり(ブラックバード)の歌
 使者たち
 背の高い三人の息子
 和解
 風景
 牧神(パン)の墓
 詩人と大地の対話

解説 この世のかなたの物語 (荒俣宏)



ダンセイニ 妖精族のむすめ2



◆本書より◆


今回は、「五十一話集」収録作より、本書所収の荒俣宏訳と、河出文庫版ダンセイニ短篇集『最後の夢の物語』所収の安野玲訳、およびダンセイニによる原文(「Fifty-One Tales」)を並べて引用しておきたく存じます。


「大きなケシの花」より:

「かれはいった、「ケシが大きく育ちすぎて、神々や妖精を殺してしまった。その香りが世界じゅうを窒息させ、また世界がもっていた美のちからを、根からすっかり吸いあげてしまった」そこでわたしは、どうしてその詩人が、古謡(ふるうた)などとたわむれながら、このなつかしい丘にすわっているのか、そのわけを訊いてみた。
 かれは応えた、「なぜならば、横笛の調べはケシの成長をおさえるからね。笛の音がなければ、ケシはもっと早く成長したろう。それにな、わしの一族が丘で横笛を吹かなくなってしまえば、多くの人が地上に迷い、どのみちすがたを消してしまうか、あるいは恐ろしい結末に遭うかするにきまっている。だからわしたちは、あのアガメムノンの手間を省いたと思っているよ」



「巨大な罌粟」(安野玲 訳)より:

「詩人はいった。「罌粟がぐんぐん大きくなって、神々や妖精たちを殺(あや)めている。これの香りは世界の息を詰まらせ、根は世界から美の力を吸いつくす」そこで、どうしてこの懐かしい丘の上にいて古い曲を笛で吹いているのか、わたしは詩人に訊いてみた。
 すると詩人は答えた。「この曲は罌粟には毒なのだ。この曲がなければ、こいつはもっと早く大きくなる。わが輩(ともがら)がそこかしこの丘の上で笛を吹くのをやめれば、人間は世界じゅうをさまよいあるいて迷子になり、あるいは恐ろしい最期を迎えるだろう。アガメムノンを救ってやったのもわれらだったと思っているよ」」



「The Giant Poppy」より:

「He said: "The poppy has grown apace and is killing gods and fairies. Its fumes are suffocating the world, and its roots drain it of its beautiful strength." And I asked him why he sat on the hills I knew, playing an olden tune.
 And he answered: "Because the tune is bad for the poppy, which would otherwise grow more swiftly; and because if the brotherhood of which I am one were to cease to pipe on the hills men would stray over the world and be lost or come to terrible ends. We think we have saved Agamemnon."」



「薔薇」より:

「この世からロンドンがあとかたもなく消えてなくなったあと、敗北したはずの原野が、終戦とともに帰還する亡命者のように復活するとき、花たちが何か美しいものをそこに見つけて、昔のことをすっかりと思い返してくれればいいがな、とわたしは願う。なぜなら、わたしたちはこのあさぐろい古都を、もはやすこしも愛していないから。」


「薔薇」(安野玲 訳)より:

「願わくは、ロンドンがあとかたもなく消え去って、追いやられていた野山が、戦いすんで流浪の民がもどるようにもどってくるとき、あそこを思い出すよすがとなる美しいものがなにか残っていますように。人間はあの薄汚れた古い都のことを、少しは愛おしいと思っているのだから。」


「Roses」より:

「I hope that when London is clean passed away and the defeated fields come back again, like an exiled people returning after a war, they may find some beautiful thing to remind them of it all; because we have loved a little that swart old city.」


「歌の復活」より:

「「これはいったい何なのです?」わたしは、神々のあいだでハミングしている者にそう訊ねかけた。
 「なにね、またひとつ世界が終わっただけのことさ」と、かれは応えた、「そして白鳥たちが、歌の賜(たま)わりものを神々に返しにやってきたのさ」」



「歌は還りて」(安野玲 訳)より:

「「これはなんなのです?」神々のうちでもやさしげなおひとりにわたしは尋ねた。
 「世界がひとつ終わっただけのこと」その神はそういわれた。「そして、白鳥たちが神々に歌の贈りものを返しにきたのだよ」」



「The Return of Song」より:

「"What is it?" I said to one that was humble among the gods.
  "Only a world has ended," he said to me, "and the swans are coming back to the gods returning the gift of song."」



「葉緑の街に起こったできごと」より:

「長く家に籠っていると、よく肝臓をやられるというけれど、そうしたことはもしかしたら気持の問題なのかもしれない。しかし、雨の日になると、彼女の魂はかならず深い奈落に落ちてしまうから、それが原因になって、そうした愉快で不思議な生きものたちがほんとうに地獄の近くまで上ってくると彼女が考えても、それはものごとの道理には反しないようだ。それにもうひとつ、とりたてて善い目的があるわけでもないのに煙草なんか喫ったのがいけなくて、彼女は、あのモレスヒル街とそこに住む口ごもりがちな老人のことを、知らずに心の内で創りあげてしまっていた。」


「リーフィグリーン街の災い」より:

「そう、もしかしたら家に長く閉じこもっているのが肝臓によくない影響をおよぼすのかもしれないし、そういうことは魂の問題なのかもしれないが、雨降りの日というと地獄の底のあの愉快な生きものどもが見えてしまうほどに彼女の心が深く沈むのはまちがいのないところで、それに、煙草を吸ってみてもなんのよいこともなく、かくして彼女はモウルズヒル街ともぐもぐしゃべる老主人のことを思い出したというわけだった。」


「The Trouble in Leafy Green Street」より:

「Now it may be that long confinement to the house affects adversely the liver, or these things may be of the soul, but certain it is that on a rainy day her spirits so far descended that those cheerful creatures came within sight of the Pit, and, having tried cigarettes to no good end, she bethought her of Moleshill Street and the mumbling man.」


「くろうたどりの歌」より:

「そのとき、杖にすがった漂泊(さすらい)の老人が通りかかったので、くろうたどりは話をやめて飛んでいってしまった。詩人はその老人に、くろうたどりのすばらしい物語を話した。
 「それは新しい歌だったのかね?」と、老いたさすらい人がいった。
 「いいえ、ちっとも。遠い昔に神さまが創ったものですよ。わたしがまだ若かったころは、くろうたどりたちがみんなでいつも歌っていた歌ですよ。そしてその歌は、たしかにそのころ新しかったのです」」



「くろうたどりの歌」(安野玲 訳)より:

「そのとき老いた旅人が杖にすがって通りかかり、くろうたどりは飛び去った。詩人は老人にくろうたどりの奇跡の物語を話して聞かせた。
 「その歌ができたてだとおっしゃるか?」と旅人はいった。「とんでもない。そりゃうんと昔に神さまがおつくりになったのだ。わしの若いころにはどんなくろうたどりでも歌っておったよ。その当時はできたてだったがのう」」



「The Song of the Blackbird」より:

「And an old wanderer walking with a stick came by and the blackbird flew away, and the poet told the old man the blackbird's wonderful story.
 "That song new?" said the wanderer. "Not a bit of it. God made it years ago. All the blackbirds used to sing it when I was young. It was new then."」



















































































































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー

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