アドルフォ・ビオイ=カサーレス 『モレルの発明』 (清水徹+牛島信明 訳)

「私は子供のころ、本の挿絵のなかからいろいろなものを発見するという遊びをよくしたものだった。絵をじっと見つめていると、いろいろなものが次から次へとかぎりなく現われてくるのだ。」
(ビオイ=カサーレス 『モレルの発明』 より)


アドルフォ・ビオイ=カサーレス 
『モレルの発明』 
清水徹+牛島信明 訳

叢書アンデスの風

書肆 風の薔薇
初版第1刷
1990年9月20日印刷
1990年9月30日発行
197p 著者/訳者について1p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価1,545円(本体1,500円)
装幀: 丸岡一志

Adolfo Bioy Casares : La invención de Morel, 1940



ビオイかサーレス モレルの発明


帯文:

「イマージュの愛
二つの太陽、
二つの月が輝く
絶海の孤島での
《機械》、
《他者性》、
《愛》を
巡る
謎と冒険。」



帯背:

「独身者の《機械》」


カバー文:

「故国ベネズエラでの政治的迫害をのがれて絶海の孤島に辿り着いた《私》は、ある日、無人島のはずのこの島で、一団の奇妙な男女に出会う。《私》はフォスティーヌと呼ばれる若い女に魅かれるが、彼女は《私》に不思議な無関心を示し、《私》を完全に無視する。やがて《私》は彼らのリーダー、モレルの発明した《機械》の秘密を………そして《私》は自らをひとつの…………………………………………………。」


カバーそで文:

「現代アルゼンチンの洗練された小説家にして、
あのボルヘスの親密な友人=共作者でもある著者が、
SF的冒険推理小説的結構を借りつつ、
現実とイマージュ、現実とフィクションとを巡る形而上的思考を
一篇の恋物語のうちに封印した。
ボルヘスに《完璧な小説》と讃えられ、欧米各国語に翻訳されて大きな反響を呼び、
またアラン・レネ/ロブ=グリエの『去年マリエンバートで』の霊感源ともなった、
現代ラテンアメリカ文学の最高傑作のひとつに数えられる驚くべき作品。



内容:

序文 (ホルヘ・ルイス・ボルヘス)

モレルの発明

訳者解説 (清水徹)




◆本書より◆


「おとといの夜、煌々と明りのついていたあの部屋で何を考えていたか、いまになって思い出した。あの闖入者たちは何者なのか、私と連中とはどういう関係にあるのかを考えていたのである。
 いくつかの説明ができそうだった。
 私は噂に聞くあの疫病にかかったのかも知れない。そのため妄想のなかで、あの連中や音楽やフォスティーヌをつくり出してしまった。肉体の面でも恐ろしい病魔に蝕まれていて、もしかしたらこのまま死ぬ運命にあるのかもしれないのに、いまも書いたように頭のほうがおかしくなっているので、それに気づかないだけなのだ。
 また、低地の腐臭に満ちた空気と不充分な食物のため、私が人の眼に映らない存在になってしまったという可能性もある。闖入者たちには私は眼に入らなかった(中略)。反論、――私は、小鳥、とかげ、ねずみ、蚊にとっては見えない存在ではない。
 こんなことを思いついた(中略)、――連中は、われわれとは異なる生物、つまり他の星から来た人類で、眼は見るためのものではなく、耳は聞くためのものではないのかもしれぬ。連中が正確なフランス語を話していたことを思い出し、そこから空想をさらにたくましうした。フランス語は彼我の世界に共通する言語ではあるが、それぞれ相異なる目的を担わされているのかもしれぬ、と。
 さて四つ目の仮説だが、これはどうしても夢の話をしたいという気違いじみた欲望が生んだものである。昨夜、私はこんな夢を見た。――
 私は精神病院にいた。長時間にわたる医者の診察を受けたあとで(それとも裁判だったか?)家族がそこへ連れて来たのだった。モレルが院長だった。ときには、島にいるんだという意識があったが、精神病院にいると信じているときもあった。またある瞬間など、私がその病院の院長だった。」
「第五の仮説。――闖入者たちは仲間同士である死者の一団で、この私のほうは、ダンテやスウェーデンボルグさながらに冥府をさまよう者、さもなければ連中とは階級を異にし、変容段階もちがうひとりの死者ではないのか。この島はそうした死者たちの住む煉獄ないしは天国なのだろう(中略)。
 なぜ小説家が幽霊を恨めしそうなものとして描きだすのか、いまそれがわかった。死者は生者のあいだに存在しつづける。(中略)私は自分が眼に見えない存在だと思うと怖くなった(中略)。すぐそばにいるフォスティーヌが、じつは他の惑星の住人なのかもしれぬと思うと怖くなった(中略)。しかし私は死んでいるのだから、だれも私をつかまえることはできない(中略)。こんな恐ろしい結末を考えるのは、希望がさんざん踏みにじられたからに他ならぬ。
 こうして想いをめぐらしていること自体が、やがてまぎれもない幸福感をもたらした。私は、自分と闖入者たちとの関係を、たがいに異次元に属する人間同士の関係だと見なして、それを証明するものをいくつも積み重ねてみた。何かとんでもない災厄がこの島に襲いかかり、そこに住む死者たち(私とそしてこの島の生きもの)はそれを自覚できないでいる、そのあとで連中がここに侵入してきたということだってありえよう。
 私が死んでいるとしたら! そう考えるとわくわくした。」

























































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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