文: 斎藤文一/写真: 武田康男 『空の色と光の図鑑』

「じつは虹については距離は問題にならない。というのは、光っている相手は空間のどこかきまった距離にある(中略)のではなく、観測者の眼から見て、きまった視線方向にある“すべての水滴”が、そろって同じ方向に向けて光を出しているのである。」
(斎藤文一 『空の色と光の図鑑』 より)


文: 斎藤文一 
写真: 武田康男 
『空の色と光の図鑑』


草思社 
1995年10月11日 第1刷発行
1997年5月20日 第6刷発行
180p 索引2p 参考文献1p
A5判 丸背紙装上製本 カバー
定価2,900円+税
装丁: 吉冨浩



図版(カラー)多数。


空の色と光の図鑑 01


帯文:

「虹や稲妻やオーロラなど
空を彩る不思議な色と光の現象(大気光学現象)を
美しい写真で解説した初めての図鑑。
虹、稲妻、オーロラ、青空、薄明、火映、光茫、グリーン・フラッシュ、
光冠、ブロッケンの妖怪、彩雲、幻日、太陽柱、ダイヤモンド・ダストなど
41項目、写真99枚。」



カバーそで文:

「空は美しく、不思議である

 空には私たちの心をひきつけてやまないものがある。大空の美しさは格別なもので、地上のほかのなにをもってしても比べることができないほどだし、そこに多くの不思議も秘めている。その素材は空気と水蒸気と太陽の光だけだというのに、空はその表情を微妙に変え、また劇的にその光と色を変えるのである。空はなぜあのように青いのか。また空はなぜあのように赤くなるのか。そして空は、美しい虹や蜃気楼の舞台でもあるが、こういうものも一つとして同じものがない。そういう微妙な違いの背後で、科学的にいったいどういうことが起こっているのだろうか。本書は、そういう空の美しさや多くの「なぜ」について、新しい知識や解釈を含めて、一般の読者のために解説したものである。(斎藤文一/まえがきより)」



目次:

まえがき (斎藤/武田)

1 空はなぜさまざまな色をあらわすのか
 青空
 【基礎知識 1】 空気分子による光の散乱(レイリー散乱)
 朝の薄明(東の空)
 【コラム 1】 人麿が見た「かぎろひ」とは何か
 薄明(西の空)と地球影
 夕の薄明(西の空)
 火山噴火後の朝焼けと夕焼け
 雲の色
 【基礎知識 2】 水滴や塵などの粒子による光の散乱
 朝焼け雲と夕焼け雲
 さまざまな霧の色
 火映
 【観測ガイド 1】 (武田)

2 太陽の光はどのように変わるのか
 朝日と夕日
 光芒(放射状の光線)
 山影
 日の入り
 つぶれた形の太陽
 【基礎知識 3】 大気差とは何か
 ワイングラス型の太陽
 【コラム 2】 日本列島でいちばん初日の出が早いのはどこか
 グリーン・フラッシュ
 【観測ガイド 2】 (武田)

3 さまざまな蜃気楼はどのようにしてできるのか
 下に映る蜃気楼(上冷下暖の蜃気楼)
 【基礎知識 4】 蜃気楼とはどういうものか 1 「上冷下暖」の場合
 上にのびる蜃気楼(上暖下冷の蜃気楼)
 【基礎知識 5】 蜃気楼とはどういうものか 2 「上暖下冷」とファタ・モルガナ
 浮島現象と二つの太陽
 【コラム 3】 「狐火」とはどういうものか
 【観測ガイド 3】 (武田)

4 虹はなぜあのような形と色をあらわすのか
 主虹
 副虹
 【基礎知識 6】 水滴の中で光はどのように進むのか
 過剰虹
 【コラム 4】 虹はかつて竜や蛇だと信じられていた
 時雨虹
 いろいろな虹
 【コラム 5】 「白虹(はっこう)日を貫く」とはどういうことか
 【観測ガイド 4】 (武田)

5 なぜ太陽や月のまわりに光の輪や暈があらわれるのか
 光環(光冠、コロナ)
 【基礎知識 7】 粒子による光の回折と「ビショップの環」
 光輪(グローリー)
 ブロッケンの妖怪
 【コラム 8】 ゲーテはブロッケン山で何を見たか
 暈(ハロ)
 【基礎知識 8】 氷の結晶のなかで光はどのように進むか
 幻日
 環天頂アーク
 太陽柱
 彩雲
 ダイヤモンド・ダスト
 【観測ガイド 5】 (武田)

6 さまざまな稲妻はどのようにつくられるか
 落雷
 【基礎知識 8】 雷の電気はどうしてできるか
 空を走る稲妻
 【コラム 8】 「セント・エルモの火」とはどういうものか
 幕電
 【コラム 9】 「火の玉」とはどういうものか
 【コラム 10】 「地震発光」とは何か
 【観測ガイド 6】 (武田)

7 オーロラや大気光はどのように光るのか
 縞状のオーロラ
 カーテン状や帯状のオーロラ
 コロナ状とその他のオーロラ
 【基礎知識 10】 オーロラはどうしてできるか
 低緯度オーロラ
 大気光
 黄道光
 【基礎知識 11】 大気光とはどういうものか
 【観測ガイド 7】 (武田)

付章 夜空の色や光のスカイ・ショウを楽しもう
 太陽コロナ/太陽プロミネンス
 皆既日食時の空の色
 満月/皆既月食/地球照と惑星
 星の見え方(カノープス)
 星の色/天の川
 流星/人工衛星
 光害
 薄明と夜景と星

索引
参考文献



空の色と光の図鑑 02



◆本書より◆


「主虹」より:

「虹は、空中に浮かんでいる多くの雨粒(水滴)に太陽光があたり、その内部で屈折と反射をすることによって生じる。虹の出る方向は、太陽を背にして、ちょうどその反対方向(対日点という)を中心に半径約42°のもの(「主虹」という)と約51°のもの(「副虹」という)とがある。」

「いま空中に浮かんでいる水滴に太陽光があたっているとしよう。太陽光線はさまざまな角度で水滴の中に入って屈折し、内面で一回反射したあと出ていく。主虹の場合、この出ていく方向も当然さまざまであるが、われわれが対日点とよぶ方向に対して42°という方向の光は、他の方向の光よりもとくに集中していることが証明されている。そして、42°の方向にある空中のすべての水滴からの光が寄せ集まって一つの主虹をつくるのである。つまり虹は空間のどこかに位置がきまった1個の物体が出す光ではなく、空中に広く分布している無数の水滴の出す光を見ているのである。」



空の色と光の図鑑 03






































































































































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奥本大三郎 『虫の宇宙誌』

奥本大三郎 
『虫の宇宙誌』


青土社 
昭和56年6月8日 第1刷発行
昭和57年3月15日 第6刷発行
350p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価1,900円



本書「あとがき」より:

「第一部に収めた文章は、「ヒストリア・アニマリウム」と題して、雑誌「ユリイカ」の一九八〇年一月号から一年間連載したものに、今回新たに約一五〇枚の書きおろしを加えたものである。それに第二部として次のニ篇を収録した。
「ボン・グウ 鴎外の田楽豆腐」 (「季刊現代文学」十一号 昭和四十九年五月発行)
「ネルヴァルの詩の中の蝶と蛾」 (「カイエ」 一九八〇年一―二月号)
後者には今回大幅な加筆と若干の訂正をしたことをお断りしておく。」



本文中図版(モノクロ)多数。


奥本大三郎 虫の宇宙誌 01


帯文:

「読売文学賞受賞
大自然の中で展開される昆虫たちの生のドラマを観察し、忘れ去られた自然への愛惜と、虫の見方を通しての東西文明論など、創見に満ちたナチュラリストの昆虫博物誌。」



奥本大三郎 虫の宇宙誌 02


見返し。奥村定一画「四国土佐に於けるトンボの民俗」より。


奥本大三郎 虫の宇宙誌 03


目次:


めでたい虫
芋虫、毛虫、挟んで捨てろ
雌と雄とそのあいだ
昆虫図鑑の文体について(一)
昆虫図鑑の文体について(二)
サラマオのモンシロチョウ
象牙の箸と杉の割箸
ヴェルサイユのジェラニウム
マイ ハート リープス アップ
飛龍虫の説
蝉涼し
聴ケドモ聞エズ
ベルグマンの奇蹟
想い出の虫たち
防虫剤について
空想の庭園


ボン・グウ 鴎外の「田楽豆腐」
ネルヴァルの詩の中の蝶と蛾

あとがき



奥本大三郎 虫の宇宙誌 04


「19世紀初めの昆虫採集」。



◆本書より◆


「昆虫図鑑の文体について(一)」より:

「もう一度ここで、同じ蝶の解説を例にとって、二つの図鑑(引用者注: 平山修次郎『原色千種昆蟲圖譜』三省堂。昭和八年/横山光夫『原色日本蝶類圖鑑』保育社・昭和二十九年)の文体を比べてみたい。

   ジャカウアゲハ(ヤマヂヨラウ)(雌)
   Papilio alcinous Klug
   雄ハ黒色、尾端ノ総毛ハ紅色、麝香様香気ヲ発ス。山地、平地ニ普通。幼蟲ハががいも、うまのすずくさ、あをつづら等ヲ食ス。本州、四国、九州、朝鮮、琉球、台湾ニ産ス。
                            27-6-1932 東京井之頭産
                       (琉球、台湾ノモノハ亜種ヲ異ニス。)

  Byasa alcinous KLUG 1836 じやこうあげは――やまじょろう――(原型) その名のように雄は芳香を放ち、雌の翅色は灰褐色、後翅の半月紋は雌雄共に赤・橙の2種の系統があって、見るからに南国情緒豊かな蝶である。
  長い尾状突起を振りながら、そよかぜにのって緩慢に、樹間や路傍の花上を舞う姿は「山女郎」の名のごとく、絵のような美しさである。(……)蛹は「お菊虫」と呼ばれ、後手に縛された姿にも似て「口紅」に似た赤い斑点さえもひとしお可憐である。(……)

 こうして並べてみると、後の方の横山氏の文章からは、優しさ、暖かさといったものがたちのぼって来るような気配がある。そこには一種の擬人化があり、美的な価値判断が交えられている。横山氏は蝶の美しさをあからさまに口にするのである。個人的な想い出がいつの場合にも喉元まで出かかっているようなところもある。
 それに対し平山図譜の方は簡潔で一見素気無い文章でありながら、そうかと言ってただの古い学術論文の文体でもない。それとは実は本質的に違うもの、敢えていえば山中峯太郎の小説の中にでもありそうな軍令のように、颯爽としたリズムと、イメージを喚起する力をもった文である。様式的な短い文章の背後に、あたかも椛島勝一のペン画の中の、風をはらんだ白い帆のように、少年の夢があふれんばかりになって待機しているのである。」



「昆虫図鑑の文体について(二)」より:

「さて川副・若林図鑑(引用者注: 川副昭人・若林守男共著『原色日本蝶類図鑑』全改訂新版、1976年)のジャコウアゲハの項から〈生態〉の部分を引用すればそれは次のようなものである。前回に引いた過去の二つの図鑑の同じ項の解説と比べていただきたい。

 〈生態〉本州中部以北の地域では年2回、4月下旬より出現する。南西部地域では3回と推定されるが詳細は不明。南西諸島では周年発生している。成虫はゆるやかに飛び、ヤマツツジ、ウツギ、ノアザミ、トベラなどの花で吸蜜する。南西諸島を除いて越冬態は蛹で、食草から離れた人家の軒下、納屋・塀・石垣、桔梗や下草に蛹化していることが多い。

 スキのない文章である。無駄な要素は一切なく、必要事項、たとえば吸蜜する花の名(中略)、蛹化の場所が明示されている。しかしこの図鑑を通読すれば、著者にとって蝶の飛び方には二種類しかない事が解る。一つは「ゆるやか」で、その反対は「敏速」である。もはやジャコウアゲハは横山図鑑におけるように「長い尾状突起を振りながら、そよかぜにのって緩慢に、樹間や路傍の花上を舞う」ことがない(同じくギフチョウは「散りゆく花びらのように」飛ばないし、クロアゲハは「好んで小暗い木立の中を徘徊」することがない。常に「ゆるやか」か「敏速」かいずれかであるというのは、つまり蝶の飛び方を単に二つのカテゴリー、+(プラス)か-(マイナス)に分類しているわけで、いわば描写することを放棄したことになるであろう)。
 ジャコウアゲハの「ヤマジョロウ」などという別称も省略されており、一般に蝶の名称に関する著者等の関心は薄いかのように見える。」
「かくて虫いじりは学問になった。情緒的な要素は排除された。というよりはこの図鑑にはもとからそれがない。」
「川副・若林図鑑は秀れた研究書であり、日本の「蝶類学」のレヴェルの高さを示す、世界一流の図鑑である。
 しかし、少年の枕頭の書では、もはやない。机に坐って一所懸命に読むべき本であり、その解説文は、科学的な記述である。内に情熱を秘めた“乾燥度の高い”文章でないのは無論だが、少年の夢を誘うようなエピソードなど含まれていないし、自然に暗誦してしまうような箇所もない。標本室から少年達は追い払われたのである。さあこれでこそ白衣を着て大人の研究者だけで、論議することが出来るというものだ。ついでに感傷的なことばかり云う素人も入室を禁止しましょう。顕微鏡ものぞかない奴には発言権はないのだ。蝶をぼんやり眺めて愉しんでいるような虫屋なんぞ、標本と図鑑の「絵合わせ」をしているに過ぎないのだ……。
 そういう気配がこの図鑑の解説からはひしひしと伝わって来る。」



奥本大三郎 虫の宇宙誌 05


巨大ヒラタクワガタ。









































































奥本大三郎 『捕虫網の円光』 (中公文庫)

奥本大三郎 
『捕虫網の円光
― 標本商ル・ムールトとその時代』 

中公文庫 お-55-2

中央公論社 
1997年7月3日 印刷
1997年7月18日 発行
391p(うちカラー図版31p) 
文庫判 並装 カバー 
定価1,000円+税
カバー写真: モルフォ・メネラウス/ル・ムールト肖像


「本書は『捕虫網の円光 標本商ル・ムールト伝』(一九九三年三月 平凡社刊)を加筆・再編集したものです。」



奥本大三郎 補虫網の円光 01


帯文:

「モルフォ、アグリアス…昆虫採集に全てを捧げた偉大なる標本商の生涯
著者秘蔵の昆虫標本をカラーで収録
今月の新刊」



カバー裏文:

「十九世紀中葉から今世紀初頭の博物学の黄金期はまた、昆虫蒐集が最も盛行した時代であった――。昆虫の宝庫・南米での採集活動に全てを賭け、標本商として不動の名声を手にしたル・ムールトの生涯を辿り、彼とその時代に新たな光を当てた、著者渾身の評伝。著者所蔵の標本をカラーで多数収録。」


目次:

奥本コレクションから (カラー図版)

序 最晩年の肖像
一 ブルターニュの石頭
 初めての捕虫網
 車輪の下
二 南米との出会い
 大西洋の船旅
 首都カイエンヌ
 モルフォチョウを採る
 モルフォの囮採集
三 採集人になる
 蒐集家と採集人
 オサムシの首飾り
 北アフリカ
四 二度目のギアナ
 ポストの交換
 夜間採集
 日常のなかの危険
 珍獣アメリカ人
 料理人サンボの犯罪
 熱病
 カイエンヌの道化師(アルルカン)
 トロピカル・ラヴ
五 パリの学生生活
 植民地から本国へ
 ル・ムールトという名前
六 モルフォ大作戦
 鉄の鎖をつけた男たち
 イグアナ料理
 長生きする虫
 オオキバウスバカミキリ
 雌雄型(ギナンドロモルフ)の正しいつくり方
 モルフォの暴落――「エウゲニアの教訓」
 標本横流し事件
七 昆虫界半世紀の蝶瞰図
 パリに店を開く
 標本商の黄金時代
 採集人から銀行家に
 偉大な採集家たち
 復讐の女神たち
 展覧会とザイツの図譜

文庫版へのあとがき



奥本大三郎 補虫網の円光 02



◆本書より◆


「空を飛ぶ姿が、半マイルも離れた遠方から見えるほどきらびやかな蝶が、南米にいる。
 青い鏡のように、あるいは磨かれた金属で作られたもののように、光を反射して輝く、このモルフォという蝶を、ペルーの山奥で初めて見たスペインの征服者(コンキスタドレス)たちは、「我ら黄金境(エル・ドラド)にあり」の観を深くして、勇み立ったに違いない。 蝶だけではない、この地では、鳥も甲虫も、金属光沢に輝いているのである。
 前世紀の末から今世紀の初めにかけて、フランス領ギアナにあって、この蝶をはじめ、南米産の美麗な、珍奇な、あるいは巨大な昆虫を大量に採集して世界に広めたのは、ウージェーヌ・ル・ムールト Eugene Le Moult という人物である。世界有数の標本商、コレクターとして、大きな存在であったこの人物を中心に、私は虫と虫の蒐集にまつわることどもを書きたいと思う。」


「二十歳のウージェーヌは、ある著名な蒐集家の採集人になった。その人は甲虫を主に蒐めていて、中でもオサムシにとくに熱中していた。いわゆる「オサ屋」である。
 そもそも昆虫を蒐めたり飼ったりしている人を虫屋という。その虫屋を分類すると――以下は日本での話であるが――その八割は蝶屋だろうと思う。あとの二割の中の、その八割を占めるのが甲虫屋で、蝉、蜻蛉、蜂、蛾、バッタ、カゲロウをやる人は残りに過ぎない。
 甲虫屋がまたカミキリ屋、オサ屋、クワガタ屋等に分かれる。その三業種が一番多く、コガネムシ屋はぐっと少ない。(中略)前記以外の甲虫、すなわちゾウムシ、タマムシ、ハンミョウ等をやる人は雑甲虫屋とよばれたりする。」

「オオキバウスバカキリは甲虫のうちでも初期の飛行機製作者たちがもっとも興味をもち、参考にしたものであるという。
 ブレリオ、ラタン、そしてヘリコプターの発明を試みたM・エマンジャンらがル・ムールトの標本店に甲虫を買いに来た。彼らがル・ムールトに語ったところによると、一般に信じられているのとは違って、飛行機は鳥の飛行をモデルとして設計されたのではなく、昆虫をモデルとしたのだそうである。昆虫の中でも甲虫と、バッタやキリギリスのような直翅目のものが、主として研究材料になったという。」

「標本商も採集人も、日本ではあまりよく言われないけれど、見方によっては、第一線の博物学者は、本当はこの人々なのだとも言えるのである。」

「ヨーロッパの博物学、蒐集の黄金時代はじつは十九世紀なのであろうと思われる。二十世紀初頭の現象はその残光にすぎない。(中略)ロスチャイルド家の歴史を書いたフレデリック・モートンがいみじくも言っているように、「二十世紀は他人(ひと)の楽しみを邪魔する時代」なのであるとつくづく思う。」

「ル・ムールトも、どうやら地元フランスの学者らからは、あまりよく言われなかったらしい。」

「自殺直前のチャールズ・ロスチャイルドが、彼に手紙を書いて蝶をとり寄せたことを思い出す。多くの有名無名の蒐集家たちにとって、彼は宝物蔵の番人であり、魔術師であった。虫によって心を慰められ、勇気づけられ、あるいは楽しい時間をさらに楽しくするのに、彼が力を貸したことだけは、誰が何と言おうと、確かなことなのである。」




こちらもご参照下さい:

『井上究一郎文集Ⅰ』


本書より:

「ところで、ル・ムールトを紹介するのに、ここに絶好の文章がある。フランス文学者井上究一郎氏の『忘れられたページ』(筑摩書房)所収「捕虫網(ほちゅうもう)の円光」である。すなわち、私のこれから書こうとするものの題名は、丸善の雑誌「学鐙」に掲載されたときから何度も読み直して忘れられぬこの文章から、お借りしたものである。」































































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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