『安西冬衛全集  第七巻  日記 一』

「余は人事について生涯苦汁をなめねばならぬ運命なるが如し。」
(安西冬衞)


『安西冬衞全集 
第七卷 
日記 一』


宝文館出版
昭和54年12月20日 第1刷発行
412p 口絵(モノクロ)1葉
A5判 丸背紙装上製本 貼函
定価3,800円
装釘: 濱田濱雄

月報 4 (10p):
杉山平一「安西冬衛とカーブ」/伊藤賢三「「黒い河」をめぐって/資料…安西冬衛手製スクラップブックより/編集室から/図版9点



本書「後記」より:

「本巻には昭和三年(一九二八)六月七日より同十九年(一九四四)十二月三十一日までの日記を収めた。」
「安西家の示唆により削除した本文は同字数を×印とした。また判読不能の文字は□印とした。」



新字・旧かな。


安西冬衛全集


目次:

日記 一
 昭和三年(一九二八)
 昭和四年(一九二九)
 昭和六年(一九三一)
 昭和七年(一九三二)
 昭和八年(一九三三)
 昭和九年(一九三四)
 昭和十年(一九三五)
 昭和十一年(一九三六)
 昭和十二年(一九三七)
 昭和十三年(一九三八)
 昭和十四年(一九三九)
 昭和十五年(一九四〇)
 昭和十六年(一九四一)
 昭和十七年(一九四二)
 昭和十八年(一九四三)
 昭和十九年(一九四四)

後記 (山田野理夫)




◆本書より◆


「昭和四年」より:

「三月十一日(月)晴 風激シク砂塵甚シ
詩神へ「私が若し生れ代るならば」の返事。「羊歯の葉となるでせう(業が劫になつて)」」



「昭和八年」より:

「四月五日(水)くもり 夕方から細雨」
「この日タピオカと沃度丁幾、蟹の眼球のことなどを少し書く。半成。サルバアドル・ダリと自転車と楕率から何か纏めたいと考へたがまとまらず。」
「なんといふ唇をしてゐる。沃度丁幾にでくはした(鉢合せした)タピオカのプデイングそつくりのざまぢやあないか。蟹の眼球をこわさずに(そんなら)己は入つていつてやる。洗濯屋。不潔な商(あきなひ)。すりへらしたシヤボンのやうな面(つら)。こすりすぎて眉毛がない。
三角定木や羊蘭。馬の尾。
棒砂糖のなかのアパートメント。カロリイたちが住んでゐる。シヨツプガール。青い掃除人夫。
君はダマスクへゆけ僕はボハラへゆこう。
しぼり出しからニユーニユーとでてくる白猫。
音楽が消えて沼が浮ぶ。食器たちが召使の品定めをする。パウダーシユガーは這いまはつて蝶になる。甲冑が一整に身震する。
カルタゴのホテルで「リノリユームに棕梠脂をやつて置いて下さいましな」
シカゴ大博覧会に出品された仏陀
ソンコア銀行の信用状で赤い石油
塹壕外科学
時」

「八月四日(金)晴 風あつて涼し」
「余は人事について生涯苦汁をなめねばならぬ運命なるが如し。」










































































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ジュール・ヴェルヌ 『月世界へ行く』 江口清 訳 (創元推理文庫)

「ミシェル・アルダンは、熱狂してさけんだ。
 「ああ! なんという偉大な町が、これらの山の環の中につくられたのだ! しずかな町、平和な隠れ場所、それらはすべて人類の悲惨なものの外にある! すべての人間嫌い、すべての人類の敵、社会生活に嫌悪を感じたすべての者が、しずかに、孤立して、そこに生きているのだ!」」

(ジュール・ヴェルヌ 『月世界へ行く』 より)


ジュール・ヴェルヌ 
『月世界へ行く』 
江口清 訳
 
創元推理文庫 606-1

東京創元社
1964年10月23日 初版
1991年6月28日 19版
255p
文庫判 並装 カバー
定価430円(本体417円)
カバーデザイン: 小倉敏夫



Jule Verne: Autour de la lune, 1869


ヴェルヌ 月世界へ行く


カバー文:

「186X年、アメリカ人とフランス人の乗員を乗せた月ロケットがバルチモアから発射され、97時間の歴史的な大飛行が開始された。しかし、ロケットの行く手には流星の衝突や酸素の欠乏、軌道の修正といった予想外の事態が待ちかまえていた……! 19世紀の科学の粋を集めた本書は、その驚くべき予見と巧みなプロットによって、今日、一層輝きを増している。SF史上不朽の名作である。」


「186X年2人のアメリカ人と1人のフランス人を乗せた月ロケットがバルチモアから発射され、97時間の歴史的な大旅行を開始した。しかし、一路、月に向けて地球の引力圏を脱出したロケットの行く手には、流星の衝突や酸素の欠乏、あるいは軌道の修正等、予想外の事態が待ち受けていた。ロケットは無事、月に着陸するだろうか? また、地球に帰還できるだろうか? 19世紀の科学の粋と数世紀にわたる月観測の成果をふまえた本書は、その驚くべき予見と巧みなプロットによって、宇宙時代の今日、ますます声価を高めるSF史上不朽の古典である。」


目次:

序章

1 午後十時二十分より十時四十七分
2 最初の三十分
3 落ちつく場所
4 代数学をちょっぴり
5 空間の冷却
6 質疑応答
7 陶酔の瞬間
8 七万八千百十四リューにおいて
9 方向急転の結果
10 月の観察者たち
11 空想と現実
12 山岳学の詳述
13 月世界の風景
14 三百五十四時三十分の夜
15 双曲線か抛物線か
16 南半球
17 ティコ
18 重大な問題
19 不可能にたいして闘う
20 「サスクハンナ号」の水深測量
21 J・T・マストンを呼ぶ
22 救助作業
23 大団円

訳者あとがき




◆本書より◆


「広い大陸をさまよっていた視線は、次にはさらに広大な海に引きよせられて行った。それらの海は、その構造や位置や様子が地球の海を思い出させるだけでなく、地球上の海のように月の球体のひじょうに大きい部分を占めている。しかしその場所を占めているのは液体ではなくて、旅行者たちがやがてその性質を明らかにしたいと思っている平原なのである。
 天文学者たちがこれらのいわゆる海に、いくらか奇妙な名前をつけたということは認めなければならない。そして、科学は現在までそれらの名を大事にしてきたのである。ミシェル・アルダンが、この月世界図を、スキュデリー嬢やシラノ・ド・ベルジュラックによって作られた《愛情地図》にくらべてみたのは、理由のあることなのである。
 「ただし」と、彼はつけ加えた。「これはもう十七世紀のような感情の地図ではない。男性的な部分と女性的な部分の二つにはっきり分かれた生活の地図なのだ。女性は右の、男性は左の半球さ!」
 このミシェルの言葉は、二人の散文的な友人の肩をすくませるものだった。バービケーンとニコールは、月の地図をこの空想的な友とはまったく別の見地から見ていた。しかしこの空想的な友も、少しは正しかったのだる。それは読者がよろしく判断するであろうが。
 この左の半球には、人間の理性がしばしば溺れに行く「雲の海」がひろがっているのである。そこから遠くないところに、生活の苦労のあとを示している「雨の海」があらわれている。その近くには「嵐の海」が横たわっている。そこでは、人間が多くの場合打ち勝つことのできない情熱にたいして、たえず闘っているのである。それから、失望と裏切りと不実と地上の悲惨さの連続に疲れ果てて、その生涯の終わりに人間の見いだすものは何か? 大きな「不機嫌の海」である。それは「露の湾」の幾粒かの滴ではほとんどやわらげられはしないのである! 雲、雨、嵐、不機嫌、人間の一生にはこれ以外のものがあるだろうか? この四つの言葉のうちに人間の一生が要約されているのではないだろうか?
 「女性にささげられた」右の半球には、女の生活のあらゆる事件を含む、意味深い名の小さい海がある。それは、若い娘がのぞき込んでいる「静けさの海」であり、笑いを投げかけている未来を映している「夢の湖」である。愛情の波が立ち、愛のそよ風の吹く「甘美の海」なのである! 「豊饒の海」「危機の海」そしておそらくとても小さい「気うつの海」ついには、あらゆるかりそめの熱情を、無益な夢を、そして、満されない願望を呑み込む「静寂の海」となり、さらにその波は静かに「死の湖」に注ぐのである!
 なんという異様な名の連続なのだ! 二つの半球に奇妙に分けられ、男と女のようにたがいに結びつけられて空間を運ばれて行く、この生命をもつ球体を形づくっている月! 昔の天文学者たちの空想を、こういうように解釈したミシェルは間違っていたのだろうか?」


「ティコ山の環状の峰々と旅行者たちをへだてる距離はあまり大きくはなかったので、山々のこまかい点の主なものをいくつか書き取ることができた。ティコ山の堀を作っている盛り土の、内側や外側の勾配の波の上に、山々はもたれかかり、大きなテラスの集まりのように、重なり合っていた。西の山々は東のものよりも、三、四百フィートは高いように思われた。地球上のどんな陣営の配置の組織も、この自然の要塞には比較できなかった。このように、まるい穴の底に建設されたなら、絶対に近づくことはできないであろう。
 近づくことができない上に、絵のような起伏の多い土地の上に美しくひろがっているのである! じっさい自然は、この火口の底を平坦でなにもないままにはしておかなかった。この火口は特別の山岳誌をもっていたのであり、それはその火口を一つの別世界とするような、山国の組織なのだった。月の建築物の中でも傑作のものを受け入れるように、巧まずして配置された、円錐丘や中央の丘や土地の注目すべき変化などを、旅行者たちははっきりと見分けることができた。あちらには寺院の場所が浮かびあがる、こちらには公会場の用地、ここには宮殿の基礎、そこには砦(とりで)の高台が。それらのすべてを、千五百フィートの中央の山が見下ろしていた。広大なフィールドであった、古代ローマなら、十個もはいったであろう!
 ミシェル・アルダンは、熱狂してさけんだ。
 「ああ! なんという偉大な町が、これらの山の環の中につくられたのだ! しずかな町、平和な隠れ場所、それらはすべて人類の悲惨なものの外にある! すべての人間嫌い、すべての人類の敵、社会生活に嫌悪を感じたすべての者が、しずかに、孤立して、そこに生きているのだ!」」






























































































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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