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稲垣足穂/たむらしげる 『一千一秒物語』

文: 稲垣足穂
絵: たむらしげる 
『一千一秒物語』


リブロポート 
1994年4月12日 第1刷発行
63p 
19.5×24cm 
角背紙装上製本 カバー 
定価2,060円(本体2,000円)
企画・デザイン: 羽鳥一希



これはどういう本かというと、タルホの「一千一秒物語」全篇と、たむらしげるによるイラスト作品(見開き)が交互に掲載されている本です。

カラー図版30ページ(イラスト19点)。


たむらしげる 一千一秒物語 01


目次:
 
月から出た人
星をひろった話
投石事件
流星と格闘した話
ハーモニカを盗まれた話
ある夜倉庫のかげで聞いた話
月とシガレット
お月様とけんかした話
A MEMORY
A PUZZLE
A CHILDREN'S SONG
月光鬼語
ある晩の出来事
IT'S NOTHING ELSE
SOMETHING BLACK
黒猫のしっぽを切った話
突きとばされた話
はねとばされた話
押し出された話
キスした人
霧にだまされた話
ポケットの中の月
なげいて帰った者
雨を射ち止めた話
月光密造者
箒星を獲りに行った話
星を食べた話
AN INCIDENT IN THE CONCERT
TOUR DU CHAT-NOIR
星? 花火?
ガス燈とつかみ合いをした話
自分を落してしまった話
星でパンをこしらえた話
星におそわれた話
はたして月へ行けたか?
水道へ突き落された話
月をあげる人
THE MOONMAN
ココアのいたずら
電燈の下をへんなものが通った話
月のサーカス
THE MOONRIDERS
煙突から投げこまれた話
A TWILIGHT EPISODE
黒猫を射ち落した話
コーモリの家
散歩前
THE BLACK COMET CLUB
友だちがお月様に変った話
見てきたようなことを云う人
AN INCIDENT AT A STREET CORNER
A HOLD UP
銀河からの手紙
THE WEDDING CEREMONY
自分によく似た人
真夜中の訪問者
ニュウヨークから帰ってきた人の話
月の客人
どうして酔よりさめたか?
A ROC ON A PAVEMENT
黒い箱
月夜のプロージット
赤鉛筆の由来
土星が三つ出来た話
お月様をたべた話
お月様が三角になった話
星と無頼漢
はたしてビールびんの中に箒星がはいっていたか?
どうして彼は喫煙家になったか?
A MOONSHINE



たむらしげる 一千一秒物語 02


たむらしげる 一千一秒物語 03




















































































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たむらしげる 『ファンタスマゴリア』

たむらしげる 
『ファンタスマゴリア
PHANTASMAGORIA』


架空社
1989年3月25日 初刷
1989年5月25日 2刷
119p
22.4×29.6cm
並装 カバー
定価3,069円(本体2,980円)
装幀: 岡本一宣デザイン事務所

栞(4p):
「たむらしげる」について(椎名誠)/「ファンタスマゴリア」について(たむらしげる)/BOOK LIST 1989. 4



栞文「「ファンタスマゴリア」について」より:

「絵というものは、その描かれた世界の時間と空間の一部を写し取ることで成立します。もしその描かれた絵が本当にある世界の絵であれば、その絵の外側にも風景が続いているはずです。だから絵の外側にもう一枚キャンバスを立てて続きの絵を描き、さらに一枚、と次々描き足していくと、その絵は一個の巨大な球体となり、それを遠くから眺めると小さな惑星ができているはずです。そんな風にして出来たのが、この作品集「ファンタスマゴリア」の最初のページに描かれたプラネットの絵です。絵やストーリーを個々の独立したものとしてでなく、ひとつの世界として考えられればと思うのです。考えてみれば、ぼくらが疑いもなく現実と思っているこの地球も、もしかしたら誰かの空想によってつくられた世界かもしれません。」


たむらしげる ファンタスマゴリア 01


内容:

PLANET
 PLANET
 モービー・ディック
 クリスタル・シティー
 歩く家
 サンタ・ロボット/オーロラ号/サンタクロース村
 U・バルサ博士/ドラゴン山/ドラゴンの滝/ドラゴン
 キノコ村
 地底世界入口/ハリー・ゴビア・シリー探険隊
 虹の谷絵具工場
 グランド・ブリッジ
 ホトホト・サーカス団
 ギザギザ海/モヤモヤ海/フープ博士
 ノイズ21号
 ネプチューン・シティー
 ドラキュラ城/架空社社長のS・マエノ氏/ゆでだこ海/ドクロ島/シャリコン大砲/海賊船シャリコン・デビル号/ノコギリザメ/鳥
 ジュラ島
 デジタル・ゾーン
 チーズ火山/チーズ工場/ゴールデン・グレート・スーパー・デラックス特急/ヴォルカノ駅
 ヴォルカノ港
 クフ港/コンガラガッタ川のハラペコワニ/メチャクジャングル
 ピラミッド・アパート
 カクタス・シティー
 カクタス・エアライン
 カヌー
 月
 ノースポール・シティー
 スケート場
 角砂糖の木/王宮/コズミック・カフェ/プロペラ百貨店/サイコロン
 コーギーズ・ベーカリー
 プラネタリウム/アルタイルの酒場
 ムーンシャイン・ビレッジ
 クッキー・タウン/プリズマ・エクスプレス/トラガリー・タウン
 エンジン・ヒコーキ
 グラッシー・オーシャン
 歩くビル
 水晶山脈
 サイクリング
 クジラの跳躍
 人工の月
 銀河ステーション
 水晶島
 リカーショップ
 スチームボート
 シャドウ・タウン
 インデアン
 ウォーター・ピープル/賢人の山/ジプシー
 地上を走る船
 電球
 砂の巨人/砂くい鳥/ゴーストタウン/ガイコツ自動車/ジュラ島
 辺境ホテル
 火男
 時の砂漠
 鉄橋
 シューティングスターヒル

PLANETARIUM
 Picture Books
  〔「サンタのおもちゃ工場」 1984 リブロポート より〕
  〔「クッキー・サーカス」 1982 文化出版局 より〕
  〔「ありとすいか」 1984 リブロポート より〕
  〔「うちゅうスケート」 1983 リブロポート より〕
  〔「ゆきだるま」 七尾純・文 「よいこのポピー」 全家研 より〕
 Star Collection
  Violinist/Moon Walk/Boy and Dog/Letter
  Rat
  Star Light/Saturn/Christmas Tree/-25°C
  Night Driver
 Pantomime
  Saturn
  Star/Whale/Moon
 Moonlight Gallery
  Face
  Rhinoceros
 Picture Diary
  January/Stove
  February/Gloves
  March/Fine Weather
  April/Upright Piano
  May/Cycle
  June/Tomato
  July/Window
  August/Peppermint Soda
  September/Word Processor
  October/Music Box
  November/Television
  December/Playing Cards
 Robot's Dream
  Snowfall
  Voyage
  Doughnuts Car
  Airplane
  Musician
 Traveller
  Star Maker
  The Engine Stalls
  Ring
  Star Collector
  Flying Machine
  Stratosphere
  Mr. Robot
  Star Climbing
 Composition
  Brick Works
  Saturn
  Light House
 Telescope View
  地球への贈り物 A GIFT TO THE EARTH
 Comic Works
  an Antique Moon 第1話 夜間飛行
  an Antique Moon 第2話 アルタイルの酒場
  an Antique Moon 第3話 輝く海
  Le Voyage Imaginaire
 Giant's Toys
  Searchlight
  Bottle
  Ball Man
 Metaphysical Memory
  Antique Moon

PRIMITIVE
 Miniture Print
  Starting Station
  Black Bird
  Light Trap
  Asteroid
 Moving Picture
 Midget Book
  よるのさんぽ
 Alchol Comics
  アルコール男爵の靴
  アルコール男爵と水男(ウォーターマン)
 Digital Scribble
  Prisonor
  Frog
  Drunker Man/Santa Claus/Reindeer/Stove & Dog/Acorn/Happy Dog
  Force
  Dinosaur
  The Sun/Bat/Witch/Sloth/Black Bee/Night Crocodile



たむらしげる ファンタスマゴリア 02



そういうわけで第一部「PLANET」はたむらしげるワールドへのトラベルガイドです。
第二部「PLANETARIUM」はたむらしげる作品の見本市。
以上はオールカラー。第三部「PRIMITIVE」はモノクロ作品です。



◆本書より◆


「ムーンシャイン・ビレッジ

この村には無数のウィスキーの密造所がある。
この密造所から空気中に発散する
高密度のアルコールのため、村の風景は
奇妙にゆがんでいる。風の無い日には電柱が歩きだす。
2年間この村に住むと、確実にアル中になるという。」



たむらしげる ファンタスマゴリア 03




























































































































たむらしげる 『サイレントヴィジョン』

「ひとつ、ひとつの巻き貝の中に海があり、宇宙がある。わしらは宇宙規模の、とてつもなく巨大な巻き貝の中を歩いているのだよ」
(たむらしげる 「貝の宇宙」 より)


たむらしげる 
『サイレントヴィジョン』
Silent Vision


河出書房新社 
1994年7月15日 初版印刷
1994年7月25日 初版発行 
ページ表記なし(32p)
25×19cm 
角背紙装上製本 カバー
定価1,500円(本体1,456円)
装幀: 岡本一宣デザイン事務所



オールカラー絵本。
本書は基本的に右頁に文章、左頁にそれに対応する絵が掲載されているのですが、一部、文章が絵と切り離されて前後のエピソードの余白に小さい文字で印刷されていたり、最終エピソードに至っては絵も文字も小さく奥付欄の上に直前のエピソードの文章と共に付け足しのように収録されているなど、おそらく製本上の都合で32頁に収めるための処置なのでしょうが、たいへん問題があります。ことに本書全体の構成が、最初のエピソードで目覚めた主人公の「博士」が最後のエピソードで再び眠りに就き、そしてまた最初に戻るというループ状をなしているので、その二つのエピソードの活字や絵のサイズが異なってしまうのはどうかと思います。


たむらしげる サイレントヴィジョン 01


内容:

石の海
進化の卵
不思議の森
壊れた月
レンズ
電球
月に向かって
海の家
星の種
紫の線
駱駝ホテル
プロペラ都市
土星レース
音の結晶
貝の宇宙
楽園の夢
都市の晶出
冬の熊
凍る波




◆本書より◆


「石の海」より:

「まず最初に闇がありました。」
「どこか遠くから誰かの声が聞こえました。「夜が明ける。眼をさます時だ」」



気がつくと博士はボートを漕いでいました。


「博士はいつからボートを漕いでいるのか思い出すことができません。「わしがこのボートで出発したのは、ずいぶん昔のような気がする。それにしても、一体わしはどこに向かっているんだろう?」」


最初に闇があって、声(言葉=ロゴス)が聞こえたのだとしたら、それは天地創造であります。博士は生物の進化というボートを漕いでいるのでありましょう。
夜明け前の海は不安定なので、急に石化してしまいます。たむらしげる作品ではお馴染みのストップモーションのように静止したクジラの跳躍があって、ガラスの球体と化した波のしぶきを口の中に入れてみると、


「「なつかしい味だな。でも、そのなつかしさがどこからくるのか思い出すことがでいない。そうか、わしはそれを探しているんだ」」


石化した海とは、生命の源である海への回帰を拒まれた人類の状況を詩的に表現したものに他ならないです。人類はこのまま進化しつづけるしか道はないのでしょうか。


「進化の卵」より:

「ある朝、町の広場に巨大な卵が落ちていました。」


個体発生は系統発生を繰り返すと言いますが、「進化の卵」の中では生命の進化が高速度で繰り返されているようです。進化した卵の中の生物たちは戦争を始め、やがて絶滅してしまいました。


「不思議の森」より:

「「わしはな、あるものを疑問をもたず、あるがままに見とる。それがほんとの知恵ってもんだ。そうだろ?」」


そこに入るとすべてが疑問に思えてくるという不思議の森の入り口近くで出会った農夫はそう言いますが、しかし博士は博士なので不思議を解明しないわけにはいかないです。森に入った博士の体は疑問符になってしまいました。


「月に向かって」より:

「「飛行のコツは、雑念を追い払い、心の中を軽くすることじゃ」」
「「イノセントじゃ。胎児の姿勢をとって時を待て。考えてはいけない」」



そう博士はいいますが、先ほどの農夫が疑問を持たずにあるがままに進化を受け入れているのに対して、博士はどうやら進化を拒否している、というか、限りなく退化に近い形で進化しようとしているのではないでしょうか。博士は発明家なのでいろんなものを発明しますが、動物化した自動車とか(『スモール・プラネット』所収「水晶狩り」参照)、飲むと体が軽くなって宙に浮く「万能飛行薬」(同書所収「気海」参照)など、地に足のついた人々のひんしゅくを買いそうな発明ばかりです。
ついでに言うと、本書「石の海」のエピソードには、石化(固体化)した海はやがて気体化するとあるので、空は海のメタファーであるといってよいです(それゆえ『フープ博士の月への旅』では、月へ到達するために海を渡っていくのであります)。


「冬の熊」より:

「熊は黒い目を博士に向け、少し悲しそうに博士の目を見ました。「私は君の…」熊がしゃべりかけた時、ゼンマイが完全にゆるみ、巨大な熊の体が安定を失い、ぐらりと傾いてゆっくり地面に倒れました。倒れると同時に巨大な熊は吹き消すように消え、その倒れた場所に小さなゼンマイ仕掛けの熊が落ちていました。博士は熊を拾い上げ、右手で撫でてみました。熊の毛は所々がはげてぼろぼろでしたが奇妙ななつかしさを感じます。すると、急に目に涙があふれ出て、博士は熊をぎゅっと抱きしめました。「わしの熊だ。昔、わしが遊んだ熊だった」」


「凍る波」より:

「「うー、冷えるな! 早く家へ帰ろう…」」
「海は強い風で荒れ狂い、巨大な波のしぶきが空中に舞い上がったとたんに凍り付いて結晶となり、パチパチと博士の顔に当たります。」

「博士は凍った海の上を、滑らないように注意深く歩き、丘のように盛り上がった波の上に登りました。」

「「やあ、街の人間が凍りつき、マネキンのように静止しているぞ。そして、鳥が羽を広げたまま宙に浮いている。そうか。寒さで時間が止まったのだ」」

「博士が眠ると世界は完全に静止しました。」



たむらしげる サイレントヴィジョン 02


「貝の宇宙」より:

「「こ、これはアンモナイト! 巨大なアンモナイトの化石だ」博士は巨大な化石に近づき耳を澄ましました。「波の音が聞こえる」「私は化石ではない。私の中に海があり、私は限りなく成長する」するといきなり、砂漠が水で満たされ博士は古代の海の底にいました。」

「「ひとつ、ひとつの巻き貝の中に海があり、宇宙がある。わしらは宇宙規模の、とてつもなく巨大な巻き貝の中を歩いているのだよ」」










































































































たむらしげる 『スター ヘッド』

「「ヒトデだ」
「こいつ
昔は
星だったんだ」」

(たむらしげる 『スター ヘッド』 より)


たむらしげる 
『スター ヘッド 
STAR HEAD』


架空社
1992年11月 初刷
37p
35×26cm
角背紙装(背クロス)上製本
定価2,000円(本体1,942円)



大判のオールカラー・コミックスです。


たむらしげる スターヘッド 01


内容:

1. Hard landing
2. North pole city
3. Workshop
4. Accident
5. Slide down
6. Dead drunk
7. Living house
8. Midnight visitor
9. Wander building
10. Bad trip
11. Voyage
12. Pirates
13. In the stomach
14. Break prison
15. Repair
16. Go home
17. Crystal forest
18. Starlight spirit



たむらしがる スターヘッド 02



◆あらすじ◆


「私は星である
決められた軌道を
数十億年旅している

ある時
軌道すれすれに
小さな惑星が見えた」

「「軌道から
はずれるのは

規則
違反だが」

「その時の

気紛れで

まばゆく光る

流星となって

地上に

落ちた」



そこでサンタクロースに出会ったスターヘッドはクリスマスの準備の手伝いをさせられ、プレゼントを配り終えた帰りに道に迷った二人は古代都市のようなところへ出ます。そこで酒場のふりをしていた「歩く家」にだまされた二人は高級酒を飲みまくり、お金を払えずこき使われるハメに。


「「波が
キラキラ
している」

「ヒトデだ」

「こいつ
昔は
星だったんだ」

「とろで諸君!

私は
この海を渡り
たいと思う

うまい
具合に
巨大
キノコも
生えて
いるので

キノコを
伐って
イカダを
作ろう」」



しかし海賊の大砲にやられて海に放り出され、巨大ワニに飲み込まれてしまうのでした。
一行の運命やいかに。






































































































たむらしげる 『水晶狩り』 (カワデ・パーソナル・コミックス)

「きょう
世界が終る」

(たむらしげる 「世界の終り」 より)


たむらしげる 
『水晶狩り』
カワデ・パーソナル・コミックス 5 

河出書房新社
1986年2月20日 初版印刷
1986年2月27日 初版発行
130p
A5判 並装 カバー
定価850円
装丁・題字: 久住昌之



すきなまんが家はたむらしげるとますむらひろしです。
そういうわけで、たむらしげる第三コミックス集。巻頭カラー(別丁)8ページ、二色刷8ページ。


たむらしげる 水晶狩り 01


目次 (初出誌):

冬のコンサート (「SFマンガ大全集」)
夜の徘徊者 (「ガロ」)
水晶狩り (「ガロ」)
 水晶狩り 1
 水晶狩り 2 
 水晶狩り 3
 水晶狩り 4
FROM ANOTHER PLANET (新構成)
THE CUBIC WORLD (「ガロ」)
森の生活 (「ガロ」)
カクタス・カントリー (「ガロ」)
ネプチューン・シティ (「ガロ」)
クジラの跳躍 (「大コラム」)
世界の終り (「ガロ」)

解説 水晶狩り人・たむらしげる (難波弘之)



たむらしげる 水晶狩り 03



◆本書より◆


「クジラの跳躍」より:

「トビウオを見つけ

素手で

捕える」

「凍りついたように
宙に浮く
トビウオの群れ」

「彼は
その夜、夢を見た

昔住んでいた
街の夢

すると

海は

そのなつかしい
夢の都市を作り出し

やがて建物は
思い思いに歩き始める」

「あと四時間で

全身が現われる

「クジラの
眼……」

俺達が
見えるのだろうか?」



「世界の終り」より:

「「これが
最後だ」

すると、

亡霊どもが
いっせいに飛び出して、

くちぐちに
わめきちらした

きょう

世界が終る」



たむらしげる 水晶狩り 04



◆感想◆


「冬のコンサート」は、楽団員たちが年に一度集まって海底の国へ行って巨大な送信器をかねたコンサート・ホールで演奏する話です。
「夜の徘徊者」は、亡霊たちがたぶん年に一度集まって空を飛んで生者たちをおどかしに行く話です。
この二篇は海と空、おもてなし(音楽)とおびやかしという対照がきわだっています。
「水晶狩り」は、老人と孫が残飯をエネルギーにして走る豚の内臓が移植された自動車「シンディー」に乗って日時計山に水晶狩りに行く話です。この自動車はフープ博士の発明にかかるもので燃料費がほとんどかからないため世界中に広まったものの、最近は「浮浪車」が増えて路上で寝たりゴミをあさったり野良犬を襲って食べたりするのでやっかいです。「浮浪車」とは「持主に捨てられた車。又は犬のような生活を嫌い自らドロップアウトした車」のことですが、これは『フープ博士の月への旅』で、「月人達はいったい何処から来たのか? 私は思う。恐らく彼等の祖先は、地上から誤って、あるいは自ら進んで落下して異境の地に移住んだ船乗りなのだ」とあったのと呼応しています。
「FROM ANOTHER PLANET」は、「1982年秋、私家版の銅版画集として製作したもので、漫画や絵本にすることのできない、あぶくのようなイメージをひろい集めたものです。今回、新たにこの8枚の絵にストーリーをつけてみました。」とあります。
「THE CUBIC WORLD」は、四角くなった地球儀と本物の丸い地球が入れ替わってしまう話です。
「森の生活」は絵柄がちがう(「フープ博士の月への旅」に近い)ので初期作品なのではないでしょうか。
「カクタス・カントリー」は西部劇です。
「ネプチューン・シティ」は夜になると海が町を支配する話です。J・G・バラードの短篇にもそういうのがありました。バラードといえば「結晶世界」です。そういう意味でも本書収録作品の影響源になっているのではないでしょうか。そういえば本書をしめくくる「世界の終り」はバラードふうの世界終末傍観まんがです。この「世界の終り」は『スモール・プラネット』所収「夢の岸辺」の続編といってよいですが、これとそのひとつ前の「クジラの跳躍」は、離人症感覚をひんやりとしたノスタルジアでつつみこんだ、たいへんすばらしい作品だと思います。
その「クジラの跳躍」は、『スモール・プラネット』所収「ガラスの海」の続編といってよいです。「永遠にお互いを見ることのできない、交わることもできない二つの世界が、同じ時間軸に沿って、同じ空間を使用して存在するという(中略)アイデア」(難波弘之による解説より)を扱ったものです。クジラのジャンプというこの世界では一瞬の出来事が、もう一つの世界では一日がかりの出来事です。
本作にはレムの『ソラリス』を連想させるエピソードが出てきます。

本書巻末には「カワデ・パーソナル・コミックス」の広告が掲載されています。やまだ紫『空におちる』、蛭子能収『サラリーマン危機一発』、鴨沢祐仁『クシー君の夜の散歩』、丸尾末広『パラノイア・スター』ときて本書、「続刊」はひさうちみちお、根本敬ほか、とあります。80年代です。


たむらしげる 水晶狩り 02






































































































































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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