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Quentin Bell 『Virginia Woolf: A Biography』

「But the pressures on Virginia did not relax: she thought people were laughing at her; she was the cause of everyone's troubles; she felt overwhelmed with a sense of guilt for which she should be punished.」
(Quentin Bell 『Virginia Woolk: A Biography』 より)


Quentin Bell 
『Virginia Woolf:
A Biography』


A Harvest/HBJ Book, Harcourt Brace Jovanovich, New York, 1972
xxii, 216pp + vi, 314pp, 16pp of plates, 20.2x13.6cm, paperback
Printed in the United States of America



著者クェンティン・ベルはヴァージニア・ウルフの甥。二巻本として刊行されたものを合本したペーパーバックです。
本文中図版(デッサン)2点、別丁図版(モノクロ)34点。


bell - virginia woolf a biography 01


bell - virginia woolf a biography 02


Contents:

Volume I
 Foreword
 Family Tree
 One: 1882
 Two: 1882-1895
 Three: 1895-1897
 Four: 1897-1904
 Five: 1904-1906
 Six: 1906-1908
 Seven: 1908-1909
 Eight: 1909
 Nine: 1910-June 1912
 Appendix A: Chronology
 Appendix B: Report on Teaching at Morley College
 Appendix C: Virginia Woolf and the Authors of *Euphrosyne*
 Appendix D: Clive Bell and the Writing of *The Voyage OUt*
 Appendix E: The Dreadnought Hoax

Volume II
 One: 1912-1915
 Two: 1915-1918
 Three: November 1918-December 1922
 Four: 1923-1925
 Five: June 1925-December 1928
 Six: 1929-1931
 Seven: 1932-1934
 Eight: 1934-1936
 Nine: November 1936-September 1939
 Ten: 1939-1941
 Appendix A: Chronology
 Appendix B: *Fantasy upon a Gentleman...*
 Appendix C: Virginia Woolf and Julian Bell
 A Note on Sources and References
 References
 A Short Bibliography
 Index



bell - virginia woolf a biography 03



◆本書より◆


「Volume I」より:

「Like any other earthly paradise it was menaced. From the outset, Virginia's life was threatened by madness, death and disaster. Whether there was, in those early years, any seed of madness within her, if those "purple rages" were the symptom of some psychic malady, we do not know; neither probably did she; but madness walked the streets.」

(脅威にさらされるのは地上の楽園の常である。そもそもの始めから、ヴァージニアの人生は狂気、死、不幸に脅かされていた。幼少期から彼女の内面に狂気の種が蒔かれていたのか、彼女の激情が心の病の徴候だったのか、われわれにはわからないし、彼女自身にもわからなかったであろう。しかし狂気はすぐそこで手招きしていた。)


「Volume II」より:

「When did the laughter end and the darkness begin? It is hard to say. She finished *Between the Acts* on 23 November, and the ending of a novel was always a period of danger for her; but throughout December she seems to have been happy enough.」
「From the middle of January Leonard was very anxious about her; but there is no entry in his diary relating to her health until 18 March, when he writes: "V.n.w." [Virginia not well]. Six days later, on 24 March, she wrote to John Lehmann to say that she did not want *Between the Acts* to be published. By that time it was clear to Leonard that her situation had become critical.
 It was a symptom of Virginia's madness that she could not admit that she was mentally ill; to force this knowledge upon her was, in itself, dangerous. But by 26 March Leonard had become convinced that the risk must be taken and that she must be persuaded to see a doctor.」


(よろこびの日々から暗鬱の日々への移行がいつだったのかは確定しがたい。11月23日に『幕間』を完成したが、小説を書き終えると彼女は(批評家に酷評されるのを恐れて)精神的に危い状態になるのが常だった。しかし12月いっぱいは好調に見えた。
1月も半ばを過ぎた頃からレナード(ヴァージニアの夫)は彼女の健康を危惧していたが、日記で言及されるのは3月18日になってからで、3月24日にはヴァージニアはジョン・レーマン(ウルフ夫妻とホガース・プレスを経営)に『幕間』を出版したくないと手紙を書いている。彼女が危機的状況にあることは明白だった。
 自分が精神的に病んでいると認めることができないのがヴァージニアの狂気の徴候だったが、認めるように強いるのも危険だった。しかし3月26日にレナードはリスクを冒してでも彼女を医者に連れて行こうと決心する。)

「On the morning of Friday 28 March, a bright, clear, cold day, Virginia went as usual to her studio room in the garden. There she wrote two letters, one for Leonard, one for Vanessa - the two people she loved best. In both letters she explained that she was hearing voices, believed that she could never recover; she could not go on and spoil Leonard's life for him. Then she went back into the house and wrote again to Leonard:

Dearest,
 I feel certain I am going mad again. I feel we can't go through another of those terrible times. And I shan't recover this time. I begin to hear voices, and I can't concentrate. So I am doing what seems the best thing to do. You have given me the greatest possible happiness. You have been in every way all that anyone could be. I don't think two people could have been happier till this terrible disease came. I can't fight any longer. I know that I am spoiling your life, that without me you could work. And you will I know. You see I can't even write this properly. I can't read. What I want to say is I owe all the happiness of my life to you. You have been entirely patient with me and incredibly good. I want to say that - everybody knows it. If anybody could have saved me it would have been you. Everything has gone from me but the certainty of your goodness. I can't go on spoiling your life any longer.
 I don't thik two people could have been happier than we have been.
                         V.

 She put this on the sitting-room mantlepiece and, at about 11.30, slipped out, taking her walking-stick with her and making her way across the water-meadows to the river. Leonard believed that she might already have made one attempt to drown herself; if so she had learnt by her failure and was determined to make sure of it now. Leaving her stick on the bank she forced a large stone into the pocket of her coat. Then she went to her death, "the one experience," as she had said to Vita, "I shall never describe."」


(3月28日金曜日の晴れ渡った寒い朝、ヴァージニアはいつものように庭の執筆小屋に行くと、最愛の二人――レナードとヴァネッサ(ヴァージニアの姉・著者の母)に宛てて二通の手紙を書いて、幻聴があること、回復の見込みがないこと、これ以上レナードに犠牲を強いるわけにはいかないことを説き、母屋に戻って再びレナードに宛てて書いた:

最愛の人、
わたしはまた頭がおかしくなりつつあります。今度という今度はひどい状況を乗りきることができないでしょう。幻聴がして集中できません。なので最善策を講じることにします。あなたはわたしに可能なかぎりの幸福を与えてくれました。あなたに落ち度はありません。こんなひどい病になるまでは二人はこれ以上ないほど幸せでした。もう闘えません。わたしがいるとあなたの人生をだめにしてしまいます。まともに読み書きもできない状態です。わたしが幸福な人生を送れたのはあなたのおかげです。あなたは忍耐強くわたしによくしてくれました。それは明らかです。わたしを救えたのはあなただけでした。わたしにはあなたの親切以外何も残されていません。これ以上あなたに犠牲を強いるわけにはいかないのです。
二人はこれ以上ないほど幸せだったと思います。

この手紙を居間の暖炉の上に置くと、11時30分頃、彼女は家を抜け出し、散歩用の杖を手に湿地をよぎって川へ向った。レナードは彼女が以前にも入水を試みたことがあるのではないかと思っていたが、だとしたら今度はもう失敗しないはずだ。岸に杖を置いてコートのポケットに大きな石をねじ込んで、みずからの死――かつてヴィタに言ったように「わたしが決して描写することがないであろう体験」(ヴィタはヴィクトリア・サックヴィル=ウェスト。引用は1926年11月23日のヴァージニアの日記から)――へと歩んで行った。)



































































































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橋口稔 『ブルームズベリー・グループ』 (中公新書)

「この人たちを結びつけていたのは、まず第一に友情であり、さらに同性愛を含む恋愛感情であり、夫婦関係であり、親戚関係であった。」
「クェンティン・ベルの本は、ブルームズベリー・グループが文学運動のためのものなどではなくて、一つの私的なグループであったことを、はっきり証言していた。」

(橋口稔 『ブルームズベリー・グループ』 より)


橋口稔 
『ブルームズベリー・グループ 
ヴァネッサ、
ヴァージニア姉妹と
エリートたち』

中公新書 916

中央公論社 
1989年3月15日 印刷
1989年3月25日 発行
iv 192p  
新書判 並装 ビニールカバー 
定価520円
装幀: 白井晟一



本文中図版(モノクロ)多数。


橋口稔 ブルームズベリーグループ 01


帯文:

「木曜深夜の集いが織りなす、今世紀初頭、ロンドンの知的青春」


目次:

プロローグ

第一章 レズリー・スティーヴンの死
 父親の否定的自意識
 二つの三角関係
 神経症の系譜
 ゴードン・スクエア四六番地
 木曜日の集い

第二章 ヴァネッサの結婚
 世俗的な血
 G・E・ムアの影
 新たな悲劇と結婚と
 第二章の始まり

第三章 後期印象派展
 フィッツロイ・スクエアの空気
 ドレッドノート号悪戯事件
 ロジャー・フライの試み
 それぞれを待つテスト
 ヴァネッサとロジャーの愛

第四章 ヴァージニアの結婚
 リットン・ストレイチーの「精神的革命」
 メイナード・ケインズの異質性
 レナード・ウルフの休暇
 ヴァージニアの招待状

第五章 良心的徴兵忌避
 ヴァージニアの心の病い
 徴兵への異議
 ケインズの大蔵省入り
 ヴァネッサとダンカンの恋愛

第六章 平和の帰結
 それぞれの活躍
 ストレイチーの野心と方法
 ケインズの人物描写
 フライとクライヴの美学
 ダンカンとヴァネッサの絵画
 レナード・ウルフの政治学
 『ダロウェイ夫人』の意識の流れ
 『燈台へ』――原家族への帰還

エピローグ

人物ノート
あとがき
主要参考文献



橋口稔 ブルームズベリーグループ 02



◆本書より◆


「プロローグ」より:

「ブルームズベリーというのは、ロンドンの中心部にある地区の一つである。シティーと呼ばれる、いまは金融の中心となっている旧市部の少し西にある。このブルームズベリー地区には、大英博物館もあれば、ロンドン大学もある。
 ここは、一八世紀の後半から一九世紀にかけて、住宅地として開発された地域である。」
「ブルームズベリー・グループというのは、二〇世紀の初頭に、ゴードン・スクエアを初めとして、この地区に住んで生活した、知識人たちの集まりである。それは、何か運動をするためにつくられたグループではなかった。自然発生的に生れた集まりであって、友情や愛情によって、少しずつグループを形づくるようになったものである。だいたい同じ年頃の、同じ階級、同じ階層の人たちの集まりであって、その特徴は、一言で言うならば、ある共通の生き方をしようとしたところにあったと言えよう。共通のものの考え方や感じ方をしたところに、グループをグループたらしめるものがあったということになる。」
「このグループのメンバーが属していた階級は、イギリスの上流階級である、ジェントリー階級であった。(中略)かれらは、エリートだったのである。」
「かれらは、文学や、美術や、学問の世界で、それぞれにすぐれた仕事をした。その業績は分野を異にしていたが、共通していたのは、かれらの生き方の基本になっていた、ものの見方であり、感じ方であった。
 かれらの生き方がどういうものであったかを簡単に説明することはむずかしいが、強いて手短かに言えば、自分たち自身の感情や思考を大切にして、それを頼りに、世間の批判を恐れずに、あくまで自分たちがよいと考える生き方をしようとした、というふうに言えよう。」
「既成の観念にとらわれずに、ものごとに対して、理性的に、ある場合には懐疑的に、またある場合にはシニカルに対応した。」
「ブルームズベリー・グループの人たちは、一方では俗物的なヴィクトリアニズムに反発して新しい生き方を摸索したけれども、他方でヴィクトリア朝よりも昔の時代の古い生き方に固執しようとする面も持っていた。ロンドンのブルームズベリーを一つの生活の場にしながら、後には田舎に住むことのほうを選んだのもそのためである。一八世紀に強い関心を寄せたのも、その表われである。
 かれらは自分たちを、エリートの中の少数派として、特殊な存在であると考えていた。かれらは、時代の趨勢が悪くなりつつあるという意識を持っていた。かれらが、グループの外の人たちからはとかく嫌われがちであったのも、このことと関係しているであろう。」



「第五章 良心的徴兵忌避」より:

「ヴァージニアにおいて、躁の状態と鬱の状態が循環的に訪れたことは、容易に見てとれる。躁の状態にある時、ヴァージニアの想像力はきわめて豊かに、素早く働いた。恵まれた知性も十二分に生かされたのである。一方、鬱の状態になると、不眠に陥り、幻想に悩まされ、食欲がまったくなくなるだけでなく、食べることに対して強い抵抗感を持ち、自殺の衝動に駆られた。」

「ブルームズベリー・グループの人たちはみな、この戦争に反対し、徴兵制に反対して徴兵を忌避した。国家といえども個人に対して戦うことを強制する権利を持たないという考え方が、徴兵に対する反対の基本にあったことは変らないであろうが、その反対の仕方には、少しずつ微妙な違いがあった。」
「ブルームズベリー・グループの内部では、良心的徴兵忌避をしない人のほうが非難されていたが、当然のことながら外から見る眼はまったく違っていた。ブルームズベリー・グループの評判を悪くした最大のものが、この良心的徴兵忌避であったろう。それは、高い身分に伴う義務(ノブレス・オブリージ)をことさら回避するものと受け取られたかも知れない。しかし、グループの人たちは、他人の思惑など気にしていなかった。むしろ、自分たちがエリートの中の異端であることに、ひそかな誇りを感じていたろう。
 ずっと後にE・M・フォースターが書いた「自分の国を裏切るか、自分の友人を裏切るか、どちらかを選ばねばならないとしたら、国を裏切る勇気を持ちたいと思う」という言葉もまた、同じような背景の中において考えるべきものであろう。国のためよりも友人のために生きるのに勇気を必要とするのは、ナショナリズムが時として凶器となって人を傷つけることがあるからである。ブルームズベリー・グループの人たちは、その勇気を持とうとしたのであり、その勇気を持てることに自己陶酔を感じることもあったかも知れない。」



「エピローグ」より:

「一九四一年三月になると、ヴァージニアの心の危険な状態は、レナードにもよくわかった。それは、ヴァージニア自身にもわかっていた。
 三月二八日の金曜日は、よく晴れた日であったという。ヴァージニアは、レナードと、ヴァネッサに宛てて、遺書を書いた。
 レナードに宛てた遺書には、こう書かれていた。

 「最愛の人、
 また頭がおかしくなるのは確かのように思えます。あの恐ろしい経験をもう一度することには、とても耐えられそうにありません。それに今度は治らないでしょう。人の声が聞こえだしていて、集中できません。ですから、わたしは一番よいと思われることをするつもりです。あなたは、可能なかぎり最大の幸福を与えてくれました。あらゆる点で、誰にもできぬことをすべてして下さいました。二人の人間が、わたしたち以上に幸福であり得たとは思いません、この恐ろしい病気さえ起らなければ。わたしはもう戦えません。あなたの生活を駄目にしてしまっているのが、わたしには分っています。わたしさえいなければ、あなたは仕事ができるのが、わたしには分っています。そしてあなたが仕事をなさるのも、わたしには分っています。この手紙さえ、わたしはきちんと書けないのですよ。読むこともできません。わたしが言いたいのは、わたしの生涯の幸福はすべてあなたのおかげだということです。わたしに対してまったく辛抱づよく、信じられぬほどやさしくして下さいました。このことを言っておきたいのです。誰もが知っていることですが。わたしを救ってくれる人がいたとしたら、それはあなただけでした。いまのわたしには、確かなものは、あなたのやさしさしか何もなくなってしまいました。もうこれ以上あなたの生活を駄目にするわけにはいきません。
 二人の人間がわたしたち以上に幸福であり得たとは、わたしは思いません。
 V」

 昼前にヴァージニアは、ステッキを手に、散歩に出るようにして家を出た。サセックスの丘陵の間を流れるウーズ川までは、歩いて十数分の距離である。
 ステッキは、ロドメルの隣りの村であるサウスイーズの橋の近くの川べりに残されていた。この辺りのウーズ川の流れは、水量も豊かで速い。
 ヴァージニアの遺体が見つかるには、三週間ほどかかった。」













































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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