アンドレ・シャステル 『ルネサンスの危機』 小島久和 訳

「自然現象を識別し、分類し、説明するためには莫大な知的エネルギーが必要とされたが、十六世紀の知識人はけっして概念や解釈の枠組に事欠くことはなかった。知識には無秩序が目立ったが、これは関連の体系の欠如によるのではなく、その多様性によっているのである。実際、諸関連の絶え間ないこの混乱は図像的表現によって多くのものが明晰に提示されるようになったという現象と並行していたのであって、この図像的表現のおかげで多くの動植物は初めて形態による目録に組み込まれたのである。」
(アンドレ・シャステル 『ルネサンスの危機』 より)


アンドレ・シャステル 
『ルネサンスの危機 
一五二〇―一六〇〇年』 
小島久和 訳


平凡社
1999年3月15日 初版第1刷発行
307p カラー図版32p
A5判 角背紙装上製本 カバー
定価4,500円(税別)
装丁: 戸田ツトム+岡孝治



本書「凡例」より:

「本書は André Chastel, La Crise de la Renaissance, Editions d'Art Albert Skira S.A., Genève, 1968 の全訳である。」


図版124点(うちカラー34点)。


シャステル ルネサンスの危機 01


帯文:

「後期ルネサンスの
錯綜を極める
文化の相貌を
斬新な視点、
華麗な修辞、
選りすぐりの
図像構成をもって
鮮やかに
甦らせる
碩学の珠玉作。
図版総数一二四点。

「ルネサンスは
難解だ……」
――ミシュレ」



目次:

情熱と顕示欲
……………………1 描かれたファサード

第一部 イメージと言語
 十六世紀の生の意識
  肖像画
 視覚と聴覚
……………………2 書物の図像表現
 工匠と哲学者と記憶術
 ルネサンスと宗教改革
  キリスト教図像学の復興

第二部 南北の分離と交流
 北方と南方
  ロマニスムとフランドル様式(マニエラ・フラミンガ)
 版画による革命
 ……………………3 グロテスク模様の詩法
 様式の力――継承者たち
  戦慄 La terribilirà
  魅惑 La venustà
 装飾の優位
 ……………………4 装飾の精神と寄木細工
 修辞的様式
  大連作

第三部 自然哲学と象徴的思考
 宇宙(コスモス)と建築物
 ……………………5 洞窟と自然
 生あるものの驚異
  ディアナとウェヌス
 冷ややかな美のエロス

第四部 祝祭、宮廷芸術、そして驚異
 祝祭装飾と仮装
 ……………………6 有機的な形態
 理想都市とユートピア
  建築と空間
 邸宅と王侯
 王侯と道化
  冷ややかさとパトス
 国際様式

訳者あとがき
解題 (高山宏)

図版目録
人名索引



シャステル ルネサンスの危機 02



◆本書より◆


「情熱と顕示欲」より:

「これらのさまざまな指摘は、たった一つの視点、「ルネサンスの危機」に要約されうる。この概念は近い過去に成就された数多くの事柄を前提にしてはいるが、悲劇的な選択と予期せぬ進展によって引き裂かれた現在の侵略的な時代感覚も加味している。さまざまな成果を拠りどころにして、天才たちが出現し、習慣が変化し、宮廷様式が形を明らかにし、文学は自らの規範を獲得または獲得する途上にあり、いたるところで技術的発展が見られた。しかし世の変遷はあらゆる分野で早く進み、人々は要領を得ない諸問題に絶えず反応するよう求められた。この種の豊饒であると同時に危険な状況で、いくつかの道徳的様式がより明白な形を採り始めた。それらを一度に取り出して、いささか強引ではあるが新時代の特徴とすることには一理ある。一つの特徴は公私を問わず多くの美徳を犠牲にした「顕示欲」(ostentation)の抑えがたい発現であり、もう一つは個人的レヴェルでの「情熱的」(passionnel)要求の氾濫である。「顕示欲」と「情熱」は合理的精神や個人的尊厳の感情――これらは十五世紀の局面を画してきたものではあるにせよ、十六世紀を特徴づけるには不十分であった――とは明らかに異なる一つの行動原理の二つの面のようなものである。」

「権力は奢侈を求めた。体制的であろうと反体制的であろうと、恒常的であろうと一時的であろうと(中略)、権力は驚きや楽しみのために誇示されるときに当時の人々の目にとってその決定的な重要性を帯びたのだ。

「「顕示欲」という先ほど言及した最初の特色と、「情熱」というこの全般的な影響力とを関連づけることで、どうしてルネサンスが歴史や伝記といった優越した形式にではなく、演劇(イギリス)、オペラ(イタリア)、祝祭(すべての国)に最終的な開花を見ることになったのかをより容易に理解できるようになる。」



「冷ややかな美のエロス」より:

「この時代に純潔さは重きをなしていなかった。むしろきわめて快楽主義的な調子が主流となり、ロンサールのそれをはじめとする「猥歌集」(livrets de folastrie)やアレティーノの好色文学、あらゆる種類の猥雑な劇作品、ラブレーの巨人的猥談などが巷間を賑わした。これに匹敵するものは美術にも見られ、ジューリオ・ロマーノはマルカントーニオとともにこの分野でも有名であった。ほとんどいたるところで表現されたあけすけな活気は十六世紀を代表するような作品にも、時には最も深刻な作品の中にも露骨に、羞恥心も困惑もなしに刻み込まれていた。猥雑と好色はむしろある種の率直さとともに享受されていたのであり、これに対してキリスト教的良識が絶え間なく挙げた非難の声も効果はなかったのである。下品という概念は十六世紀にはなく、上流階級でもこれは同じだった。だがだからといって低俗で野卑な表現にばかり目を向けるべきではない。厳格な人々からの非難があったとはいえ、『エプタメロン』の快活な著者であり、同時に『船』で神秘的な昂揚を描いた詩人でもあるマルグリット・ド・ナヴァールのように感動的な例も存在したのだから。知識人階級に広まった愛の教説は、肉体的な生の原動力が精神の高次の生の原理と根源的には異なっていないことを認めていた。多くの著作が肉体と精神に共通するこの生の息吹を明らかにすることに費やされていた――ウェヌスとは自然のエネルギーの神格である以上それはすでに宇宙的な力の象徴であり、これを理解することなしにいかにして至高の成就や神性に到達できるというのか。(中略)結局のところ、聖書の「雅歌」――宗教改革派にとってその官能的な側面は抑制されるべきものと映っていた――を受容していた人々にとってすら、すでに触れたようにアビラの聖テレサの神秘的かつ官能的な言葉は十分に眩惑的なものだったのである。聖愛を語る言葉と俗愛を語る言葉の境界は混乱したままで、どのようにも逆転しえた。十六世紀において格別に重要な位置を占めた裸体のイメージについても自然志向と象徴的思考はたえず浸透し合っており、衣服のないことが、時にはそれこそ信仰や真理ないし純潔の美徳にふさわしいとされ、時にはつまるところ欲望でしか説明されえないような淫蕩または単なる美を表すものとされるといったふうであった。そうした中で創作のあらゆる源泉が枯渇したと思われた一五五〇年代に、二つの同時に起こった変革がフォンテーヌブロー派の様式を新たな繊細さの方に向かわせたのである。一つはイタリアから取り入れた寓意的な肖像画の大成功であり、もう一つはマニエリスム的美の予想外の変化の現れで、これはディアナ女神にその象徴を見出すことになる冷ややかな美のエロス像に込められていた。」




こちらもご参照ください:

アンドレ・シャステル 『グロテスクの系譜 ― 装飾空間論』 水澤峻 訳




















































































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E・R・クルツィウス 『ヨーロッパ文学とラテン中世』 南大路振一・岸本通夫・中村善也 訳

「衰亡と没落の時代もまた、われわれの共感に訴えるという神聖な権利をもつ。」
(ヤーコブ・ブルクハルト)


E・R・クルツィウス 
『ヨーロッパ文学とラテン中世』 

南大路振一・岸本通夫・中村善也 訳

みすず書房
1971年11月30日 第1刷発行
1991年3月5日 第8刷発行
xii 927p
菊判 丸背クロス装上製本
本体カバー 貼函
定価14,420円(本体14,000円)



本書「例言」より:

「本書は Ernst Robert Curtius (1886―1956)の最後の著作、Europäische Literatur und lateinisches Mittelalter. Bern (Francke) 2 1954 を全訳したものである。原著の初版は1948年であるが、この第2版において改訂されて以来、現在の第7版(1969)にいたるまで内容に変更はない。」


横組。


クルツィウス ヨーロッパ文学とラテン中世 01


本体カバー裏文:

「これは、ヨーロッパ文学について今世紀に書かれたおそらく最も重要な書物であり、今後、ヨーロッパ文学または文化を語るとき、つねに念頭におかるべき書物である。
 ヨーロッパとはたんに地理的名称をいうのではなく、固有の伝統を有するひとつの「意味統一体」である。クルツィウスは歴史研究の根底をなすひとつの学問的技術たる文献学を駆使することにより、この事実を見事に証明する。西洋文化のもつ空間的時間的統一性をあらたな方法によって照らし出す試みにおいて、ひとつの立脚点となるのは、ウェルギリウスとダンテのあいだに横たわる十三の世紀の教養語たる「ラテン語の世界」である。もうひとつはギリシア、ローマから十六、七世紀に至るあいだの諸文学、すなわちヨーロッパ文学である。かかる楕円構造よりなる広大な文学空間を、著者は細心に精査しつつ、各テキストのなかに文学的伝統の連続性を探りあてる。
 「文学」という言葉の出自、「古典的著作家」の概念の歴史、「マニリスムス」と定義される反古典主義的諸潮流、そして「トポス論」などの諸テーマについて、歴史的な詳述がなされ、読者はおのずとヨーロッパ文学の全体考察へと導かれる。
 「文学の現象学」を志向する厳密な方法論にもとづきながら、これはまたその背後に現代西洋文化にたいする危機意識をもった文明批判の書物である。ナチの神話と暴力による「尺度と価値」の崩壊、それにひきつづく不毛な「荒地」としての現代的情況。これに対抗して、本書は遠く中世を根拠地にとりながら、あらたな人文主義の旗のもとに知的迂回戦を展開している。デラシネの時代にあって、文学的伝統の根元を歴史的に証明した本書が、ゲーテ賞を得たことはきわめて当然のことといえよう。」



クルツィウス ヨーロッパ文学とラテン中世 02


目次:

指導原理
再版への序
初版への序から

第1章 ヨーロッパ文学
第2章 ラテン中世
 1. ダンテと古代詩人たち
 2. 古代世界と近代世界
 3. 中世
 4. ラテン中世
 5. ロマーニア
第3章 文学と教育
 1. 自由学科
 2. 中世における artes 観
 3. 文法
 4. アングロ・サクソンとカロリング朝の学問
 5. 教材用の著作家
 6. 大学
 7. 箴言(命題)と範例
第4章 修辞学
 1. 修辞学の評価
 2. 古代における修辞学
 3. 古代修辞学の体系
 4. ローマの古代末期
 5. ヒエロニムス
 6. アウグスティヌス
 7. カシオドルスとイシドルス
 8. ars dictaminis
 9. コルヴァイのヴィーバルトとソールズベリーのヨハネス(ジョン)
 10. 修辞学・絵画・音楽
第5章 トポスとトポス論
 1. 弔慰のトポス
 2. 歴史的トポスとトポス論
 3. 装われた謙遜
 4. 導入のトポス
 5. 結尾のトポス
 6. 自然への呼びかけ
 7. 逆立ちした世界
 8. 少年と老人
 9. 老婦人と少女
第6章 女神「自然」
 1. オウィディウスからクラウディアヌスへ
 2. ベルナルドゥス・シルウェストリス
 3. 男色(ソドミー)
 4. アラヌス・アブ・インスリス
 5. エロスとモラル
 6. 『バラ物語』
第7章 隠喩法
 1. 舟航にかんする隠喩
 2. 擬人の隠喩
 3. 食物にかんする隠喩
 4. 身体にかんする隠喩
 5. 芝居の隠喩
第8章 文学と修辞学
 1. 古代の詩学
 2. 詩文(韻文)と散文
 3. 中世の文体体系
 4. 中世詩文における法廷弁論・政治弁論・頌詞
 5. 表現不能をあらわすトポス
 6. 凌駕のトポス
 7. 同時代人への賛辞
第9章 英雄と支配者
 1. 英雄の本質
 2. ホメロスの英雄たち
 3. ウェルギリウス
 4. 古代末期と中世
 5. 支配者の賛美
 6. 武芸と学問
 7. 魂の貴族
 8. 美
第10章 理想的景観
 1. 異国ふうの動物相と植物相
 2. ギリシアの詩文
 3. ウェルギリウス
 4. 自然描写にたいする修辞学的契機
 5. 杜
 6. 悦楽境
 7. 叙事的景観
第11章 詩と哲学
 1. ホメロスと寓意(アレゴリー)
 2. 詩作品と哲学
 3. 異教的古代末期の哲学
 4. 哲学とキリスト教
第12章 詩と神学
 1. ダンテとジョヴァンニ・デル・ヴィルジリオ
 2. アルベルティーノ・ムッサト
 3. ダンテの自己解釈
 4. ペトラルカとボッカッチョ
第13章 詩神ムーサイ
第14章 古典主義
 1. ジャンルと文筆家一覧
 2. 「古い者たち」と「新しい者たち」
 3. 教会における正典(カノン)形成
 4. 中世の正典(カノン)
 5. 近代の正典(カノン)形成
第15章 マニリスムス
 1. 古典主義とマニリスムス
 2. 修辞学とマニリスムス
 3. 形式的マニリスムス
 4. 要説
 5. エピグラムとポアント様式
 6. バルタサル・グラシアン
第16章 象徴としての書物
 1. 比喩にかんするゲーテの論
 2. ギリシア
 3. ローマ
 4. 聖書
 5. 中世初期
 6. 中世盛期
 7. 自然という書物
 8. ダンテ
 9. シェイクスピア
 10. 西と東
第17章 ダンテ
 1. 古典作家としてのダンテ
 2. ダンテとラテン語・ラテン文学
 3. 『神曲』と文学的ジャンル
 4. 『神曲』における範例的人物
 5. 『神曲』の人物構成
 6. 神話と予言
 7. ダンテと中世
第18章 エピローグ
 1. 回顧
 2. 俗語(自国語)文学のはじまり
 3. 精神と形式
 4. 連続性
 5. 模倣と創造

余論
 I. 中世における誤解された古代
 II. 敬虔の定句と謙遜
 III. 隠喩としての文法的=修辞学的用語
 IV. 中世文学における諧謔と厳粛(1―6)
 V. 古代末期の文芸学(1―3)
 VI. 古キリスト教ならびに中世の文芸学(1―8)
 VII. 中世詩人の存在形式
 VIII. 詩人の聖なる狂気
 IX. 永遠化としての文学
 X. 娯楽としての文学
 XI. 文学とスコラ哲学
 XII. 詩人の誇り
 XIII. 文体理想としての簡潔さ
 XIV. 思考形式としての語源
 XV. 数にもとづく構成
 XVI. 数にかんする箴言
 XVII. 中世における著作家の名乗り
 XVIII. いわゆる「騎士の徳体系」
 XIX. 隠喩としての猿
 XX. スペインの文化的「遅滞」
 XXI. 造形者としての神
 XXII. 17世紀のスペイン文学における神学的芸術理論
 XXIII. カルデロンの美術理論と自由学科
 XXIV. モンテスキュー、オウィディウス、ウェルギリウス
 XXV. ディドロとホラティウス

文献についての注意
訳者あとがき――「解題」をかねて
人名索引
事項索引



クルツィウス ヨーロッパ文学とラテン中世 03



◆本書より◆


「逆立ちした世界」より:

「中世には「ウェルギリウスの不可能事 adynata」が知られている。恋人に去られた牧人は、たとえ自然の全秩序が逆立ちしても、それを喜んで承知する。「いまや狼がすすんで羊の群をさけ、カシワの木に黄金色のリンゴがなり、フクロウが白鳥と歌をきそい、牧人ティテュルスがオルペウスになるがよい‥‥」(Ecl. 『牧歌』VIII 53ff.)。テオドゥルフ(Poetae I 490, XXVII)はカール大帝の宮廷にいる群小詩人を嘲って、「もしカラスがこのような歌をひびかせ、オウムが詩神ムーサイを真似るなら、白鳥はなにをすればよいのか‥‥」と述べている。いまや、なにが起こるか知れたものではない。「事物の秩序は逆になった。オルペウスが羊の番をするだろう。そしてティテュルスが宮廷の歓楽にひたるのだ。」ティテュルスとオルペウスとの役柄の交換というモティーフは、テオドゥルフの念頭にウェルギリウスがあったことを暗示する。」
「このようにカロリング朝の文学ではウェルギリウスの「不可能事の連鎖」が影響力をもっており、テオドゥルフにおいては世相描写に織りまぜられる。しかしすべてウェルギリウスの枠内にとどまっている。(中略)12世紀になるとオウィディウスとローマの諷刺詩人たちがウェルギリウスと並んだ。ゆたかに発展した文化生活はあたらしい自意識を生みだす。人びとは大規模の時代批判をあえて試みる。教会の堕落(中略)、僧侶階級の堕落(中略)、さらに農民層も槍玉にあげられる。古代の「不可能事」の枠組は時代批判と慨世に役立つ。こうして impossibilia の連鎖から次第に「逆立ちした世界」というトポスが形成される。」
「「逆立ちした世界」は錯乱した魂の薄明のなかでは、戦慄の表現ともなる。テオフィル・ド・ヴィオ(1626年没)による一つの詩がそれであり、1920年代の《シュルレアリスム》はこれに近親感をおぼえた――

 Ce ruisseau remonte en sa source;
 Un boeuf gravit sur un clocvher;
 Le sang coule de ce rocher;
 Un aspic s'accouple d'une ourse,
 Sur le haut d'une vieille tour
 Un serpernt deschire un vautour;
 Le feu brusle dedans la glace;
 Le soleil est devenu noir;
 Je voy la lune qui va cheoir;
 Cet arbre est sorty de sa place.
 [その小川は源へと遡る。
 牛が鐘楼へよじ登る。
 この岩からは血が流れる。
 蝮が牝熊とつるんでいる。
 古びた塔の頂きでは
 蛇が禿鷹を引き裂いている。
 氷の中で火が燃える。
 太陽は真黒になった。
 月が空から落ちかかっているではないか。
 この枝は根元(もと)から抜けてしまった。]

グリンメルスハウゼン(中略)は、17歳のとき逆立ちした世界を描いた「一葉の銅版画」をみたと述べている――「そうだ、私はその模様をしっかりと脳裏に刻みつけたので、それを夢にまで見たほどだった。すなわち、牡牛が屠殺人を殺し、獣が狩人を斃し、魚が漁夫を食べ、ロバが人間に乗り、俗人が僧に説教し、馬が騎士を走らせ、貧者が金持に施し、農夫が戦い、兵士が耕す光景が浮かぶのだった」。」



「第15章 マニリスムス」より:

「マニリスムスという語が美術史の時代名称として適切に選ばれているか、また、どの程度までその語が正当であるかということは、ここでは論ずるわけにいかない。われわれにこの語の借用が許されるのは、それが文芸学の術語の欠陥をうずめるのに適しているからである。この目的のためには、われわれは勿論この語からあらゆる美術史的な内容を取りさり、さらにその意味を次のように拡げなければならない。すなわち、マニリスムスという語のあらわすものは、古典主義に対立するすべての文学的傾向――それが古典主義前であろうと古典主義後であろうと、或は、なんらか一つの古典主義と時代を同じくしようと、およそ古典主義に対立するすべての文学的傾向の公分母にすぎない、というように。この意味ではマニリスムスはヨーロッパ文学の一つの恒数である。それはすべての時代の古典主義にたいする補充現象である。われわれは古典主義―ロマン主義という対(つい)概念が、ひじょうに限定された有効範囲しかもたぬことを既にみてきた。「古典主義とマニリスムス」という対極性は、概念的な道具としてははるかに有用であって、容易に見すごされる関連性を解明しうる。われわれがマニリスムスと呼ぼうとするものの多くは、今日「バロック」と称せられる。しかし「バロック」という語とともに非常に多くの混乱がひき起こされたのであるから、その語は排除したほうがよい。「バロック」に較べて歴史的連想が僅小であるという理由からいっても、マニリスムスという語のほうが優先して然るべきである。」













































































































坂本満 『ファブリ世界名画集 78 ティントレット』

坂本満 
『ファブリ世界名画集 78 
ティントレット』


平凡社 1973
本文7p 図版(カラー)16p
35.5×26.8cm
並装
定価400円



ファブリ ティントレット 01


内容:

ティントレット――反宗教改革期の矛盾と情熱の表現者 (坂本満)
図版解説 

I 奴隷を救う聖マルコの奇蹟
II―III 聖ゲオルギウスと悪竜
IV スザンナの水浴び
V 聖マルコの遺骸の発見
VI キリストの昇天(部分)
VII ピエタ
VIII ピラトの前のキリスト
IX キリストの降誕(部分)
X―XI キリストの磔刑(部分)
XII 聖パウロの回心
XIII マルタとマリアの家のキリスト
XIV 嬰児たちの虐殺(部分)
XV ウェヌスとウルカヌス
XVI 最後の晩餐(部分)
XVII(表紙) 聖ゲオルギウスと悪竜(部分)




◆本書より◆


ファブリ ティントレット 02


「ピエタ (1563、カンヴァス、108×170cm) ミラノ、ブレラ美術館」


ファブリ ティントレット 03


「嬰児たちの虐殺 (部分、1583―87、カンヴァス、422×546cm) ヴェネツィア、サン・ロッコ同信組合」





こちらもご参照下さい:

『ティントレット画集』 (ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ 5)








































































辻佐保子 『ファブリ世界名画集 64 ウッチェロ』

辻佐保子 
『ファブリ世界名画集 64 
ウッチェロ』


平凡社 1972
本文7p 図版(カラー)16p
35.5×26.8cm 並装
定価400円



ファブリ ウッチェロ 01


内容:

パオロ・ウッチェロ――錬金術師の秘法のごとく「甘美なる遠近法」を追い求めた画家 (辻佐保子)
図版解説

I ジョン・ホークウッド騎馬像
II―III 聖母の誕生
IV 聖ステファヌスの論争
V 大洪水(部分)
VI 嘆きの聖母と福音書記者ヨハネ(部分)
VII 天使(部分)
VIII 聖ゲオルギウスと龍 
IX 青年像
X―XI 修道生活の諸場面
XII サン・ロマノの戦闘(部分)
XIII サン・ロマノの戦闘
XIV 狩(部分)
XV 女性像
XVI 聖餅冒涜の奇蹟(第1話)
XVII(表紙) 聖餅冒涜の奇蹟(第5話)




◆本書より◆


ファブリ ウッチェロ 02


「聖母の誕生 (1445ころ、302×361cm)プラート、ドゥオーモ」


「図版解説」より:

「カペラ・デル・アスンタ右壁上段フレスコ(中央部)。フィレンツェのドゥオーモの大時計の頭部(1443)と様式上の類似が認められ、ロンギ、カルリ、ベルティらの学者は近年この壁画作者(プラートの画家)をウッチェロと判定。P・ヘネシーはシノピアの構成がウッチェロのそれと異なると反論している。室内の細部描写や左端の女性のポーズも異質な個性を示す。」


ファブリ ウッチェロ 03


「女性像 (39×26cm) ニューヨーク、メトロポリタン美術館」


「図版解説」より:

「ボストン美術館にもう1点、これよりやや年少の少女を描いた類似の横顔婦人像がある。カステロの〈降誕〉の画家による女性肖像と共に、リオネロ・ヴェントゥーリ、カルリらがこの肖像をウッチェロに帰しているが確証はまったくない。」


































































アンリ・ダヴァンソン 『トゥルバドゥール』 新倉俊一 訳 (筑摩叢書)

アンリ・ダヴァンソン 
『トゥルバドゥール
― 幻想の愛』 
新倉俊一 訳
 
筑摩叢書 198 

筑摩書房 
1972年12月20日 初版第1刷発行
1985年5月30日 初版第3刷発行
286p 口絵(モノクロ)16p 
目次3p 文献・註・索引xxix 
巻末折込地図1葉
四六判 並装 カバー
定価1,600円
装幀: 原弘



本書「訳者あとがき」より:

「本書は Henri davenson, Les troubadours, Coll. 《Le Temps qui court》, 23, Ed. du Seuil 1961 の翻訳である。但し、訳稿完成後の一九七一年秋に、本名の Henri-Irenee Marrou の名で改訂増補版が出たので、著者の諒承のもとに、改訂増補された部分については、校正の段階で必要な手直しをほどこしてある。」


口絵図版32点、巻末地図3点。


ダヴァンソン トゥルバドゥール


目次:

告白
〔「言葉のロマンチックな意味で……〕
ジョングルールとトゥルバドゥール
十二世紀のルネサンス
この封建の世紀……
宮廷風の生活
トゥルバドゥールの詩
〔読者へのすすめ〕
トゥルバドゥールの音楽
愛、この十二世紀の発明
アラブ仮説
アンダルシヤの「ザジャル」からアキテーヌの「ヴェルスス」へ
「起源」に関する謎
トゥルバドゥールとカタール派
宮廷風恋愛
トゥルバドゥールとキリスト教
この愛の挫折
トゥルバドゥールの影響

訳者あとがき

参考文献
原註・出典指示
解説索引

口絵
地図




◆本書より◆


「始めるに当って、正規の概念を蔑ろにした言葉の使い方を、注意深く避けることにしたい。「トゥルバドゥール」 troubadour と「ジョングルール」 jongleur の両者を区別することを知らねばならぬ。厳密な意味では(中略)、前者と後者の関係は対照的であって、作者と演奏家のそれであった。すなわち、トゥルバドゥールとは、作者、作曲家であり、一方ジョングルールは、作者が《trobar, trouver》〔作詞作曲する〕したものを演じるのである。旅廻りの、しばしば貧窮の芸人という紋切り型のイメージが、まだしも当てはまるのはジョングルール――joglar, joglador――のほうである。「メネストレル」 ménestrel (このような概念範疇では、この語は本来的に北フランスに属する)について言えば、これは宮廷ないし領主に侍って「奉仕」 ministerium する、安定した任務を得たジョングルールのことである。歌手としての才能は、ジョングルール(及びジョングルレス〔女芸人〕)が行使した、多種多様の職務の一つに過ぎなかった。ラテン語無言劇(ミーム)の直系の後継者たる彼らは、何でもござれの語り手、おそらく楽士でもあったろうが、同時に香具師、曲芸師、離れ業や力業の使い手、人形使い、芸を覚えた動物使い(中略)でもあった。それはローマの原型と同じく、善男善女から、先ずは公教会関係者から貶められ、辱しめられた職業――各身分に固有の罪過を列挙するに当り、皇帝や王侯から始めて、貴族、騎士等々と、階層秩序を順に下っていった告誡聴問僧の手引書によって判断する限り、これは最下級の職業であった。」
「おそらく、二つの概念の間にあった境界線は、越えることのできないものではなかった。シェイクスピア一座以来、我々は多くの俳優が、彼等の役割と劇作家としての役割を兼ねてきたのを見ているからだ。同様に、ジョングルールの何人かは、詩的創造の分野における才能に恵まれていたため、トゥルバドゥールの中に――それも時には最も高名なものの中に数えられたのであった。(中略)その逆に、トゥルバドゥールが、時には、自ら自作の詩を歌う羽目になったこともあるが、これは、諷刺詩の言い分を信ずるならば、必ずしも余り成功したわけではなかった。」





こちらもご参照下さい:

『フランス中世文学集 1 信仰と愛と』 新倉・神沢・天沢 訳





























































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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