Frankenstein - The Lynd Ward Illustrated Edition

Mary Shelly and Lynd Ward
FRANKENSTEIN
The Lynd Ward Illustrated Edition

An unabridged republication of the work originally titled Frankenstein, or The Modern Prometheus by Mary Shelley, With Engravings on Wood by Lynd Ward, published by Harrison Smith and Robert Haas, New York, 1934
Dover Publications, Inc., Mineola, New York, 2009
ix, 259pp, 23.5x15.5cm, paperback

 
アメリカの木版画家リンド・ウォード(1905-1985、木版画だけで構成された「文字のない小説(graphic novel)」の代表作『狂人の太鼓』が国書刊行会から出版されています)が挿絵をつけた、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』。本作に関しては、まだ十代だった作者メアリー・シェリーが本作を書くきっかけになった出来事についてもすでに伝説化しているし、本もいろんな形で出回っており、ジェイムズ・ホエールによる映画化(1931年)を通しておなじみになったボリス・カーロフ演じる主人公のイメージはアイコンとしてそこらじゅうにばらまかれているので、詳述する必要もないほど人口に膾炙しているわけですが、リンド・ウォードのフランケンシュタインのモンスターはホエールの映画とはだいぶイメージがちがって、ダイナミックに苦悩し煩悶する巨人として描かれています。メアリー・シェリーが本書を書く際にヒントになったのは「ゴーレム」伝説でしょうが、ゴーレムの系譜には二通りあると思います。ひとつは、人間の役に立つ一方で人間にとっての脅威でもあるようなゴーレムの子孫としてのチャペックやアシモフのロボットですが、このような、チャペックはともかくアシモフのようなおめでたい人間中心主義とは別の系譜として、たとえばフィリップ・K・ディックのSFで(そしてディック原作の映画「ブレードランナー」で)自分が「アンドロイド(レプリカント)」であると気付く痛ましい場面に象徴されるような、むしろ人間中心主義を無効にする系譜、グノーシス主義的系譜の上にフランケンシュタインは存在するように思います。それはつまり、神とその被造物としての人間の関係を、人間(科学者)と人造人間の関係に重ね合わせるときの、人間の位置のずらし方の違いですが、人間にとってあくまで他者であるロボットとどうやって(ロボットを人間のために利用しつつ)仲良くやっていくかという発想の仕方と、人間の存在そのものが畸形のモンスターであるという認識との間の違いは決定的です。
 
 
frankenstein ward 1
 
 
ちなみに、本書の副題は「現代のプロメテウス」となっていますが、本書刊行後、著者メアリーの夫であるロマン派詩人P・B・シェリーは長篇詩劇「縛められたプロメテウス」に取り掛かっています。「現代のプロメテウス」という表現は、ギリシア神話のプロメテウスのように人間を造り出そうとしたフランケンシュタイン博士のことを指しているのでしょうが、読者であるわたしとしては、生きながらハラワタをハゲタカに食われる無限の責苦を課せられたプロメテウスを、博士が造り出したモンスターの苦悶に重ね合わせます。わたしにとっては醜いモンスターの方こそカルチャー・ヒーローだからです。
 
 
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本書は定価 $12.95 のところ、今ならアマゾンで508円で買えます。かなり大判の上質な紙にリンド・ウォードの挿絵が全点復刻されて、しかも誤訳の心配のない原文で、文庫本より安いこのお値段、まさにお買い得。送料はアマゾンが負担。
  
 
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劇画的表現。
 

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フルページ挿絵15点、小さな挿絵(カット)49点。巻頭に著者の序文(1817年)。第三者による解説や註釈のたぐいは付いていません。
 
 
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Lynd Ward's illustrations for Frankenstein (John Lauritsen)
http://paganpressbooks.com/jpl/LYNDWARD.HTM
 

 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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リンド・ウォード  『狂人の太鼓』

リンド・ウォード 『狂人の太鼓』

国書刊行会 2001年10月10日初版第1刷 定価2,000円+税
ノンブルなし(262p) 20.5×15cm 丸背紙装上製本 カバー 定価2,000円+税
栞: リンド・ウォード 狂人の太鼓について (「リンド・ウォードの最高傑作」牧眞司)
Lynd Ward - Mad Man's Drum, 1930



リンド・ウォード Lynd Ward (1905-1985) はアメリカのイラストレーターで、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』の挿絵でおなじみ(角川文庫版にその一部が掲載されている)。本書は1930年刊行。木版画の連続だけでストーリーを読者に読み取らせることを目的とした、文字のない小説(グラフィック・ノヴェル graphic novel)で、同様の作品はベルギーのフランス・マセレール Frans Masereel (1889-1972) やドイツのオットー・ニュッケル Otto Nückel (1888-1955) らによって1920年代から1930年代にかけて作られた。それらは総じてアール・デコ/表現主義的傾向にあるが、ほぼ同時期にシュルレアリストのマックス・エルンストが作成したコラージュ・ロマンも、そうした流れと無関係ではないと思われる。不安定な時代相にふさわしく暗鬱で絶望的な内容のものが多い。その多くは洋書ペーパーバックで入手可能。

本書では、植民地の原住民を殺して奪い取った呪われた太鼓にまつわる運命的な物語が展開されています。


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帯文:

「文字のない小説
奴隷商人がアフリカから持ち帰った太鼓は何をもたらしたのか。書物に埋もれた生活を送る男を次々に見舞う恐るべき死と災厄。グロテスクな想像力にあふれた120枚の木版画で綴る運命奇譚。」



カバーそで文:

「奴隷商人の父親がアフリカから持ち帰った太鼓は、一家に何をもたらしたのか。父の教えを守り、書物に埋もれた学究生活を続ける男とその家族を次々に見舞う恐るべき死と災厄。グロテスクな想像力にあふれた120枚の木版画で語られるこの「小説」には、文字が一切存在しない。読者は絵を1枚ずつ丹念に読み解くことによって、<知>に憑かれた主人公に下された過酷な運命を、ひとつひとつ辿っていくことになる。強烈な明暗対比と鋭い描線で読書界に衝撃を与えた特異な天才画家ウォードの<文字のない小説>。」


帯裏:

「聴け、太鼓の響きを
リンド・ウォード!その名の魔術的響き。祈りにも似た営為から産みだされた文字のない小説の圧倒的迫力は、まことに類例のないものである。言葉という限界を取り払った故に成ったこの豊で饒舌な物語の前では、我々はただ黙し、驚嘆し、瞠目するしかない。そして条理も愛も美も越えて、彼方から渉ってくるものにただ耳を澄ますのだ。聴け。存在の際から立ち昇る狂人の太鼓の響きを。
―西崎憲」



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集中線を効果的に使用したダイナミックな表現。

 
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ムンクを思わせる構図。


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まんが家を志す人には特に参考になると思います。最近のまんがは文字が多すぎるからです。















































プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー

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