『アンソール版画展』 (2001年)

「彼の線は、つねに洗練されているが、過剰であることもあれば、逆に簡素であることもある。情報の伝達力という点では十分でないこともあるが、感情はつねに横溢している。だから「正確な線」はアンソールにとって、憎むべきものである。
 「正確な線には、崇高な感情を喚起する力がありません。どんな犠牲も深遠な調和もなしに生み出せるからです。まさに天才とは相容れないものであって、情熱、不安、争い、苦しみ、歓喜といった美しく偉大な感情をいっさい表わすこともできなければ、決然たる風情ももっていません。そんな線の勝利など馬鹿げたことです。それは、浅薄で狭隘な精神の持主に支持されているにすぎず、実に女々しいものなのです」。」

(パトリック・フロリゾーヌ 「アンソールの版画における技法と色彩」 より)


『アンソール版画展』
James Ensor, graveur


制作: コギト/発行: マンゴスティン 2001年
174p 
25×20cm 角背紙装上製本
監修: 福満葉子
翻訳: 福満葉子/ジュリアン・ジュノー
編集: 永山多貴子/江尻潔/曽根広美
デザイン: 笠原香苗


東京ステーションギャラリー
2001年7月11日―8月12日
足利市立美術館
2001年8月18日―10月8日
茨城県つくば美術館
2001年10月20日―11月18日
郡山市立美術館
2001年11月23日―12月24日



ジェームズ・アンソール版画展図録、ハードカバー、2001年。
出品作図版(モノクロ/カラー)175点。
参考図版(モノクロ/カラー)多数。


アンソール版画展(2001)1


内容:

Avant-propos (Les Organisateurs)
ごあいさつ (主催者)

アンソールの版画における技法と色彩 (パトリック・フロリゾーヌ)
アンソール芸術の特質 (舟木力英)

カタログ (構成/章・作品解説: 福満葉子)
 I 自画像
  1 自画像 (1886)
  2 1960年の自画像 (1888)
  3 骸骨になった私 (1889)
  4 私を悩ませる悪魔たち (1895)
 II 肖像・静物
  5 スウェーデンの植物学者フリーゼ (1886)
  6 エルネスト・ルソー (1887)
  7 眠る女 (1887)
  8 死せる父 (1888)
  9 奇妙な昆虫たち (1888)
  10 奇妙な昆虫たち (1888)
  11 奇妙な肖像 (1888)
  12 エクトール・ドニの肖像 (1890)
  13 イペルダムのフリドランとグラガパンザ (1895)
  14 胸像 (1887)
  15 頭蓋骨と仮面 (1888)
  16 燭台と花瓶 (1888)
 III 風景・海景・街路・建築物
  17 果樹園 (1886)
  18 マリアケルクの眺望 (1887)
  19 マリアケルクの眺望 (1887) カラー
  20 マリアケルク小景 (1887)
  21 マリアケルク小景 (1887)
  22 マリアケルク小景(第2作) (1900)
  23 アカシア (1888)
  24 オーステンドの森のはずれ (1888)
  25 ニューポートの眺望 (1888)
  26 狩人 (1888)
  27 木立 (1888)
  28 フランデレン地方の農場 (1888)
  29 森はずれの突風 (1888)
  30 フルーネンダールの小道 (1888)
  31 苫屋 (1888)
  32 マリアケルクの小さな家 (1888)
  33 墓地の星空 (1888)
  34 フルーネンダールの森 (1888)
  35 レフィンヘの農場 (1889)
  36 オーステンドの森の橋 (1889)
  37 オーステンドの森の橋 (1889) カラー
  38 嵐 (1889)
  39 マリアケルクの風車 (1889)
  40 風車の下の村祭り (1889)
  41 ポプラ木立のある沼 (1889)
  42 田舎の橋 (1889)
  43 スリケンスの風車 (1891)
  44 防波堤 (1887)
  45 オーステンド港の眺望 (1888)
  46 オーステンド港の眺望 (1888) カラー
  47 オーステンド東部の眺望 (1888)
  48 漁船 (1888)
  49 漁船 (1888) カラー
  50 オーステンドのドック (1888)
  51 オーステンドのドック (1888) カラー
  52 陸揚げされた小舟 (1888)
  53 蒸気船 (1889)
  54 小舟 (1894)
  55 小舟 (1894) カラー
  56 ラ・パンヌの海岸 (1904)
  57 ブリュッセルのボン・スクール通り (1887)
  58 アンスパック大通りの家 (1888)
  59 街灯 (1888)
  60 オーステンドのファン・イーセヘム大通り (1889)
  61 オーステンドのフランデレン通りの音楽隊 (1890)
  62 オーステンドの屋根 (1903)
  63 壁に映る影 (1933)
  64 地下納骨堂 (1888)
  65 アウデナルドの市庁舎 (1888)
 IV 宗教主題
  66 マグダラのマリア (1887)
  67 辱めを受けるキリスト (1886)
  68 辱めを受けるキリスト (1886) カラー
  69 嵐を鎮めるキリスト (1886)
  70 舟の上のキリスト (1898)
  71 鞭打ち (1886)
  72 羊飼いの礼拝 (1888)
  73 キリストの誘惑 (1888)
  74 貢の銭 (1888)
  75 貢の銭 (1888) カラー
  76 キリスト、魚を増やし給う (1891)
  77 キリスト、魚を増やし給う (1891) カラー
  78 キリストを冥府に導く悪魔ズィッツとイアノックス (1895)
  79 悪魔に苦しめられるキリスト (1895)
  80 キリストと物乞いたち (1895)
  81 キリストの冥府下り (1895)
  82 キリストのブリュッセル入城 (1898)
 V 幻想とグロテスク
  83 ダリウス王の使を検査するイストンとプファマトゥス (1886)
  84 大聖堂 (1886) カラー
  85 大聖堂 (1886) カラー
  86 大聖堂(第2作) (1896)
  87 百鬼夜行 (1886)
  88 立小便 (1887)
  89 幽霊の取り憑いた家具 (1888)
  90 キマイラ (1888)
  91 キマイラ (1888) カラー
  92 天使と大天使たちを懲らしめる悪魔たち (1888)
  93 天使と大天使たちを懲らしめる悪魔たち (1888) カラー
  94 奇妙なとしぶの占拠 (1888)
  95 恐ろしい射手 (1888)
  96 大災厄 (1888)
  97 大災厄 (1888) カラー
  98 象のいたずら (1888)
  99 象のいたずら (1888) カラー
  100 突風の中の魔法使い (1888)
  101 奇妙な音楽家たち (1888)
  102 暗殺 (1888)
  103 皮剥ぎ (1888)
  104 幻影 (1889)
  105 奇妙な舞踏会 (1889)
  106 殺戮の天使 (1889)
  107 火刑 (1893)
  108 暖を取ろうとする骸骨たち (1895)
  109 暖を取ろうとする骸骨たち (1895) カラー
  110 怒れる仮面 (1895)
  111 怒れる仮面 (1895) カラー
  112 人間の群れを狩り出す死 (1896)
  113 ペスト王 (1895)
  114 ペスト王 (1895) カラー
  115 ホップ・フロッグの復讐 (1898)
  116 王妃パリサティス (1899)
  117 王妃パリサティス (1899) カラー
  118 当惑した仮面 (1904)
  119 レディ・ゴディヴァ (1933)
  120 『七つの大罪』 淫欲 (1988)
  121 『七つの大罪』 淫欲 (1988) カラー
  122 『七つの大罪』 怠惰 (1902) 
  123 『七つの大罪』 怠惰 (1902) カラー
  124 『七つの大罪』 憤怒 (1904)
  125 『七つの大罪』 憤怒 (1904) カラー
  126 『七つの大罪』 傲慢 (1904)
  127 『七つの大罪』 傲慢 (1904) カラー
  128 『七つの大罪』 貪欲 (1904)
  129 『七つの大罪』 貪欲 (1904) カラー
  130 『七つの大罪』 大食 (1904)
  131 『七つの大罪』 大食 (1904) カラー
  132 『七つの大罪』 嫉妬 (1904)
  133 『七つの大罪』 嫉妬 (1904) カラー
  134 死によって支配されている七つの大罪 (1904)
  135 死によって支配されている七つの大罪 (1904) カラー
 VI 諷刺・風俗・歴史など
  136 憲兵たち (1888)
  137 憲兵たち (1888) カラー
  138 純理派の食糧供給(第1作) (1889)
  139 純理派の食糧提供(第2作) (1889) 
  140 19世紀のベルギー (1889)
  141 善き裁判官たち (1894)
  142 悪しき医者たち (1895)
  143 好色な年寄りたち (1895) カラー
  144 上も下もいたるところペストだらけ (1904)
  145 愛の園 (1888) カラー
  146 愛の園 (1888) カラー
  147 公園の集い (1891)
  148 スケートをする人々 (1889)
  149 ならず者デジールとリソレの喧嘩 (1888)
  150 暖を取る病気の浮浪者 (1895)
  151 屎尿掃除夫 (1896)
  152 諍い (1896)
  153 ごろつきたち (1896)
  154 オーステンドの漁師 (1900)
  155 オーステンドの漁師 (1900) カラー
  156 賭博師たち (1895)
  157 オーステンドの海水浴場 (1898)
  158 ヒステルの行列 (1934)
  159 ローマ軍の凱旋式 (1890-91)
  160 ローマ軍の凱旋式 (1890-91) カラー
  161 黄金の拍車の戦い (1895)
  162 ナポレオンの別れ (1896)
  163 エルネスト・ルソーのためのメニュー (1896)
  164 シャルル・ヴォスのための献立表 (1896)
  165 シャルル・ヴォスのための献立表 (1896) カラー
  166 悪魔と風車 (1934)
 VII リトグラフ
  167 仮面の決闘 (1921) カラー
  168 ワルツ (1921) カラー
  169 仮面利 (1922)
  170 鼻 (1923) カラー
  171 光の勝利 (1927) カラー
  172 版画集 『キリストの生涯』 (1921刊行) カラー
   口絵
   受胎告知
   東方三博士の礼拝 (1913)
   ベツレヘムの幼児虐殺 (1913)
   エジプトへの逃避 
   聖家族
   キリストの割礼 (1919)
   キリストの洗礼
   キリストと律法学者
   貢の銭 (1920)
   子どもたちを祝福するキリスト
   悪魔憑きから悪魔を祓うキリスト
   嵐を鎮めるキリスト
   奇跡の漁り
   海の上を歩くキリスト
   キリストのエルサレム入城
   最後の晩餐
   ユダの接吻
   嘲弄されるキリスト
   キリストと批評家たち
   鞭打ち
   十字架を担うキリスト (1917) 
   キリスト昇架 (1913)
   キリストとふたりの盗人
   十字架降下
   ゴルゴタの丘からの帰還
   悲しみの聖母
   死せるキリストと天使たち
   キリストの昇天
   聖霊降臨 (1919?)
   聖母被昇天
   天使たちに祝福される聖母マリア (1913)
  175 版画集 『愛の調べ』 (1929刊行) カラー
   ブリュトンヌ (1911)
   グロニュレ 
   ミアミア 
   女乞食
   フィフルラン
   楽士たち (1911)
   長鼻のピチュイトン (1910?)
   コリロプシス (1911)
   エリオ (1911)
   ミュルミュラミス (1912)
   グリマセ、クラコ=シガレ、ガルグイイ、カフルス、パナシェ、サンソネ、スムフェル (1918?)
   ポポフィーグ/ジェルミナ (1912)
   ピュエリラとポレン (1912)
   楽士たち II 
   花火
   貝殻たち
   リュミニスム、キュビスム、版画 (1912)
   樅、ニュルンベルクの家、ラケット (1911)
   悪魔、おもちゃの兵隊、人形 (1912)
   シンバル奏者 (1917)
  174 「サロン・デ・サン」における個展のためのポスター (1898) カラー
  175 オーステンドのカーニヴァルのためのポスター (1931) カラー

Technique et couleur dans l'oeuvre graphique de James Ensor (Patrick Florizoone)
略年譜
技法解説
参考文献



アンソール版画展(2001)4



◆本書より◆


アンソール版画展(2001)2


「私は26歳でした。すでに《ランプ掃除の少年》《牡蠣を食う女》《ブルジョワのサロン》《化粧する子どもたち》、海景、仮面、肖像を描いていました。素描の〈キリストの栄光、あるいは光の感受性〉も、オーステンドの人々も描いておりました。
 でも、何かが足りませんでした。
 後世に生き残りたい、という考えが私に取り憑いて離れなかったのです。油絵の画材は、劣化しやすいことが気がかりでした。油絵の脆弱さが心配でなりませんでした。それに悪しき修復や、質の悪い複製の問題もあります。
 そう、私は未来の人類に、作品をとおして語り続けたかったのです。生き残りたい、と思った時に思い当たったのが、丈夫な銅板や変質しにくいインク、複製が容易なことや、同じものを複数生み出す忠実な刷りでした。私が表現手段としてエッチングを始めたのは、そういう訳があったのです。
 1886年、私は、豊かな光に溢れた海の景色を銅板に刻みました。金褐色の大雲の下を美しい線が快く踊り、変更や修正など全く必要ありません。私はすっかり嬉しくなり、この喜びを表現するために大聖堂や私の勝利やおかしな悪魔たちや意地悪な仮面たちを銅板に刻んでゆきました。版画の女神のおかげで、色彩ともゆったりとした気持ちで向き合うことができるようになりました。そして、みずみずしさと純粋さを取り戻した色彩は、再び私の心を捉えるようになったのです。

オーステンドにて、1934年11月
ジェイムズ・アンソール」



アンソール版画展(2001)3


「33 墓地の星空

サルファチントとは、暖めた版の上に硫黄をのせて燃やし、銅版を直接腐蝕して独特のマティエールを得る版画技法。腐蝕の調整が難しいため、予期しない結果が生じることも多い。この作品も、もともとは滑稽な人物を描いた作品だったが、腐蝕が強すぎて版全体に夜空の星のような斑点が生じてしまった。しかしアンソールはこの失敗を逆に利用し、ドライポイントで墓石を加筆して幻想的な星空のしたの墓地風景に変貌させたのである。」



アンソール版画展(2001)5






























































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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