島尾伸三 『中国茶読本』 (コロナ・ブックス)

「中国二大淡水湖の一つである洞庭湖に君山という島があります。君山は昔は洞庭山と呼ばれていました。洞庭山は仙人や仙女が住む島で、大きな不思議な宮殿があり、そこでは仙女の奏でる音楽が一年中響いていて、ときどき外にもその音がこぼれて聞こえたのだそうです。
 ここで採れる美味しいお茶が「君山銀針」です。」

(島尾伸三 『中国茶読本』 より)


島尾伸三 
『中国茶読本』
 
コロナブックス 10

平凡社
1996年5月20日 初版第1刷発行
126p
B5変形判(16.6×21.7cm)
並装 カバー
定価1,553円(税別)
装丁・レイアウト 桜井久+鈴木香代子+和田光弘
表紙イラスト: 瀬戸照
写真: 島尾伸三・潮田登久子/平凡社写真部



著者のお父さんは作家の島尾敏雄であります。
本文中図版(カラー/モノクロ)多数であります。


島尾伸三 中国茶読本 01


目次:

お茶との出会い

飲茶清談

六大分類
 茶葉のいろいろ
 お茶の名前は、謎解きゲーム
 茶摘みと季節

烏龍茶
 贅沢な烏龍茶
 風流な待ち時間
 烏龍茶は青茶といいます
 烏龍茶のいろいろ
 鉄観音
 鉄観音の名前の由来
 お茶道楽は、一に暇、二にお金
 スワトーへ
 工夫茶
 工夫茶をいれてみる

緑茶
 中国緑茶
 中国人も緑茶を飲んでる
 茅山青峰――静岡新茶のように
 葉巻の香りの流溪茶
 桂峰81――とっておきのお茶
 四絶――四つの絶品
 緑茶の楽しみ方
 ふた付きのカップで飲む
 粗茶は茶壷で飲む
 ふたのない桃の急須
 ガラスコップで茶を愛でる

白茶・黄茶
 うぶ毛の生えたお茶
 二人だけで飲んでいます
 三つの白茶
 仙人の住む島で採れる君山銀針
 蒙頂茶――若返りのお茶

紅茶
 英国式と中国式
 腐った烏龍茶
 中国アメリカ茶貿易
 英徳紅茶
 工夫紅茶
 煙でいぶしたお茶
 父のロシアン・ティー
 ペニンシュラで紅茶を

黒茶
 普洱茶は奥が深い
 緊圧茶と散茶
 丸くて固い緊圧茶
 黒茶のいろいろ
 ワインのように寝かせて
 普洱茶は痩せる?
 エスニックな酥油茶
 香りと味の謎
 醇――ちょうどいい

花茶・薬茶
 花の香りを楽しむお茶
 花と美人とジャスミン
 むせぶジャスミンの香り
 虎丘名物ジャスミン茶
 薬茶
 減肥茶――みるみる痩せるお茶
 五花茶――五つの花のお茶
 凉茶――熱くなりやすい人に
 花茶・薬茶のいろいろ

茶具
 茶具文物館
 私の集めたお宝茶具

茶楼
 飲茶物語
 香港の茶楼は家族のたまり場
 点心何でも
 点心のいろいろ
 茶楼はチンピラの館
 アヘンを吸うな
 茶博士
 仙人茶館
 茶楼の石になったおとうさん

飲茶雑話
 お茶にまつわる13の小話
 神農
 お茶とお酒の関係
 お茶自慢
 よい香りのするお寺
 茶宴でお茶に酔う
 羽が生えて空を飛べる?
 地獄のお茶
 詩に讃えられたお茶の効用
 婚礼とお茶
 黒社会の茶碗陣
 お茶を食べる人たち
 烤茶
 天下第一の水
 九龍城からの眺め
 中国茶を買いにいく
 中国茶分類表
 中国茶の歴史
 参考文献



島尾伸三 中国茶読本 04



◆本書より◆


「風流な待ち時間」より:

「昔のお茶は磚茶の状態で運搬、販売されていましたので、買ってきたお茶を砕くことから始めます。
 七輪に火をおこし、お湯を沸かしている間に、お茶の固まりを碼船(薬研(やげん))で砕き、茶臼で粉にしてから、茶具を席に並べ、おもむろにお茶をたて始めるのです。
 電気ポットはもちろん、魔法瓶も無かった、私の子供の頃の奄美大島では、お祖母さんに連れられて親戚の家を訪問すると、お茶を出すのに、薪や炭に火をおこすところから始めるのです。」
「その間、お客は、じっと待っているのですが、家に伯母さんが一人しかいなかったりすると、台所のほうから火をおこす様子や、井戸水を汲み上げる様子が音となって聞こえて来るのです。」
「あの、のんびりした時間の使い方は、定職も無くブラブラしている今の自分の暮らしから比べても、とても贅沢だったなアと、羨ましく思い出すのです。
 今の私たちは、そんなに手間をかけてお茶をいれる暮らしの流れの中にはいませんが、とっておきの烏龍茶をいれる時、あの、風流な待ち時間の、待ち遠しさの心持ちが、フッとよみがえるような気がします。」



コラム「壁の悪霊」:

「中国ではお茶のお湯は、壁ぎわで沸かすのがマナーのようにいわれていますが、多少腑に落ちないところがあります。それは、壁の中には、悪霊や悪い鬼が蠢いていると、迷信深い人々には信じられているからです。部屋の中でも、外を歩く時でも、壁にもたれ掛かったり触って歩くと、壁の中の悪霊にとりつかれるというのです。壁ぎわでお湯を沸かすと、そこに鬼が飛び込んで来るのではないかと私は心配するのです。しかし、火をおこすと、成仏できぬ霊や、鬼や、動物の下等霊が集まってきて、煙を食べ、お腹いっぱいになると、どこかへ消えて行くので悪霊払いになってかえってよいということでした。また、お茶のような芳しい香りの立ち昇るところには、仙人や神仏が集まって来るのだそうで、私の心配は間違っていたことになります。」


「父のロシアン・ティー」より:

「東欧やソ連の文学が好きだった私の父は、紅茶にいちごジャムを入れて、甘ったるくして飲むロシア式が好きでした。大粒のいちごがそのまま入っていたブルガリア産のいちごジャムを入れると、カップの底に残ったいちごは、甘さが抜けて、小さな小さな種をかみつぶすのが楽しみでした。
 来日する度に夕食に誘ってくれる亡き父のガールフレンド、イリーナさんは、蜂蜜をこってりと入れた紅茶を、美味しそうに飲むのです。(中略)イリーナさんの話によると、昔のようにアルコールを燃料にしたサモワールで、ゆっくり沸かしたお湯で飲む紅茶はとても美味しいのだそうです。」



島尾伸三 中国茶読本 02


島尾伸三 中国茶読本 03



























































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー

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