若桑みどり 『イメージの歴史』 (ちくま学芸文庫)

「科学(客観性と実証性にもとづく知)の名のもとに、黒人や女性の生物学的劣性が「証明」されてきた事実を見るならば、そのような科学的客観性そのものの信憑性を疑ってかかる必要が生まれる。」
(若桑みどり 『イメージの歴史』 より)


若桑みどり 
『イメージの歴史』 

ちくま学芸文庫 ワ-4-4

筑摩書房 
2012年3月10日 第1刷発行
434p 索引vi 
文庫判 並装 カバー 
定価1,500円+税
装幀: 安野光雅
カバーデザイン: 間村俊一
カバー写真: アルテミジア・ジェンティレスキ「ユーディットとその侍女」


「本書は2000年3月20日、放送大学教育振興会より刊行された。」



長らく入手困難だった2000年度放送大学講義テキスト『イメージの歴史』ですが、本書では、従来の「美術史」が「植民地主義」的な、「白人男性」中心の視点に立った非常に偏ったものであったこと、また、「パラダイム」(各時代に固有の思考の枠組)の変化によって、現在、歴史を全く違った角度(マイノリティの視点)から見ることが可能になったこと、そしてたとえば「公共彫刻」のようないわゆる芸術作品のなかにも、特定のイデオロギーによって方向付けられたものがたくさんあることが論じられています。


若桑みどり イメージの歴史


カバー裏文:

「有名芸術家の名作はもとより、版画や挿絵、広告や記念碑に至るまで、美術作品が、何のために、どのように描かれてきたか――それが「イメージの歴史」だ。ここではさまざまな学問領域を自由に往来し、ポスト・コロニアル的かつジェンダー的な視線で従来の美術史を書き換える。絵画と社会のかかわりや画像の解釈方法などの理論を踏まえ、さらに西欧文化が繰り返し描いてきたイメージにメスを入れ、その精神的・社会的な背景を明らかにする。レイプを描き続けたのはなぜか、新しい政治形態はどのような画像を生んだか――人間の想像力に新たな光を当てる美術史の誕生。」


目次:

まえがき

序――「イメージの歴史」とは
 1 広範な対象
 2 超域的な方法
 3 ポスト・コロニアルの見方
 4 ジェンダーの見方
 5 まとめ

理論編
1――新しい美術史の理論
 1 文化史と社会史のかかわり
 2 イメージの歴史と社会のかかわり
2――イメージ生産の目的
 1 呪い
 2 不可視のものの喚起
 3 表現されたものの権威化・栄光化と永続性
 4 歴史意識の増幅
 5 他者の創出
 6 欲望の喚起または昇華
 7 社会批判
3――イメージ解釈の方法 図像のコード
 1 表象の語法――象徴(Symbol)の諸形式
 2 定型図像のレパートリー――「図像学」
 3 イコノグラフィーの喪失――危機の時代と現代
4――イメージ解釈の方法 表現様式
 1 様式――ものの見方と表し方
 2 総合的な解釈

実践編
5――カノン(正典)の成立 古代社会のイメージと心性
 1 ギリシャ人の社会と政治・文化
 2 カノンとしてのアテナ
 3 カノンとしてのヘラクレス
 4 レイプのカノン
 5 他者の征服
6――中世西欧のイコン 聖母像
 1 もう一つのカノン――肉の否定
 2 エバの身体の特殊性
 3 差別の哲学的起源――二元論
 4 月経と血の呪い
 5 聖母の身体の特権化
 6 第二のエバ
7――ギリシャの復活 ルネサンスの公共彫刻
 1 第一、第二のダヴィデ
 2 女英雄ユーディット――共和国の表象
 3 第三、第四のダヴィデ
 4 ヘラクレスの変貌――メドゥーザの退治
8――女性英雄をめぐる問題
 1 ユーディットとは誰か
 2 「女の力」
 3 教会のなかのユーディット――美徳の寓意と聖母の予型
 4 政治的表象としてのユーディット
 5 男殺しの女
 6 女性画家が描いたユーディット
9――フランス革命と公共彫刻
 1 フランス共和国の表徴――シンボルの形成
 2 マリアンヌ
 3 男性の表象ヘラクレス
10――フランス革命と民衆
 1 民衆と漫画
 2 フランス一九世紀の動乱と民衆の画家ドーミエ
 3 植民地戦争批判の漫画
11――自由の女神 アメリカのイメージ
 1 自由の女神
 2 図像の形成
 3 アメリカの発見と初期の「アメリカ」イメージ
 4 アテナの贈与――西欧の勝利
 5 女性によって表象される国家
12――一九世紀ナショナリズムと植民地への視線
 1 国家的シンボルの大量生産
 2 権力と古代――権威のシンボルとしての古代収集
 3 イギリスとフランスの官展の二極的傾向
 4 アカデミーの古代主題――ギリシャ神話
 5 人類学と身体差別
 6 オリエンタリズム――植民地への視線
 7 有色人へのまなざし
 8 支配の正当化の端的な例――植民地博物館
 9 植民地博物館のデザイン
13――ファシズムのプロパガンダと古代のカノン
 1 第二次世界大戦と全体主義のプロパガンダ
 2 ファシズムの美学――ドイツの場合
 3 ファシズムの美学――イタリアの場合
 4 まとめ
14――二〇世紀の日本 東京の公共彫刻
 1 王様は裸だ
 2 東京都庁の公共彫刻
 3 都庁以外の東京二十三区内の裸体女性像
 4 女性姿態の分類
 5 まとめ

主要参考文献(邦文)
索引




◆本書より◆


「ポスト・コロニアルの時代、つまり今の時代は画期的に新しい時代であり、人類が古代以来伝承してきた歴史の見方、世界の見方に徹底的な変更を迫られる時代である。西欧は中心性を喪失した。したがって、それを支えていた「周縁」も理論上は存在しない。かつての宗主国とかつての植民地は、それぞれの過去を新しく再編された地球の地図の上で自己批判し、再解釈し始めている。そのときにかつての植民地国の知識人たちが重要な役割を果たすことになった。アラビア系のパレスティナ人であるエドワード・サイードは、(中略)「対位法的思考」の枠組みを提案している。それは一言で言えば、物事には相反する二面があるということを理解すること、多様な見方を統合するというよりは互いに響かせあうことが重要だという考えである。」

「実際、すべての時代、すべての社会において、その文化は単一ではなかった、という文化史観にたつことが必要である。多くの場合、既存の文化史、美術史は、その時代の「支配的な」「主流」を記述してきた。しかし、どの社会においても、その為政者や、正統的だとされている宗教や学問とは異なった、周縁の、あるいは下辺の、あるいは表に出ない裏の文化の層をもっている。」


















































































































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難破した人々の為に。

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