ジャネット・A・カプラン 『レメディオス・バロ 予期せぬさすらい』 (中野恵津子 訳)

「すべてを包含するビジョンを得たいというバロの究極の願いは、神秘主義思想と科学を芸術に結びつけることにあった。」
(ジャネット・A・カプラン 『レメディオス・バロ』 より)


ジャネット・A・カプラン 
『レメディオス・バロ
― 予期せぬさすらい』
中野恵津子 訳


リブロポート 1992年1月16日発行
263p 索引2p 
B5判 角背クロス装上製本 カバー 
定価8,755円(本体8,500円)
造本・装幀: 東幸見



レメディオス・バロ評伝。
Janet A. Kaplan "Unexpected Journeys: The Art and Life of Remedios Varo" (1988)。

図版222点(うちカラー49点)。


レメディオスバロ 予期せぬさすらい1


帯文:

「挑戦という名の織物
この女性アーティストたちにとって
生きかたが作品であり
作品が生きかただ。
[作品と生涯]」



ちなみに、女性アーティスト・シリーズの他の巻は:

アイリーン・グレイ――建築家/デザイナー (ピーター・アダム著/小池一子訳)
フリーダ・カーロ――痛みの絵筆 (マルタ・ザモーラ著/北代美知子訳)
タマラ・ド・レンピツカ――激情のデッサン (キゼット・ド・レンピツカ・フォックスホールほか著/村上能成訳)


レメディオスバロ 予期せぬさすらい2


目次:


1 少女時代
2 シュルレアリスムへ向かって――パリとバルセロナ
3 シュルレアリストの中で――パリとマルセーユ
4 亡命した芸術家――メキシコとヴェネズエラ
5 芸術家とその観衆
6 隠喩としての旅
7 変容
8 追想
あとがき――レメディオス・バロを求めて

注記
展覧会
文献資料
索引



レメディオスバロ 予期せぬさすらい4



◆本書より◆


「序」より:

「レメディオス・バロは魔法を信じていた。迷信深く、自然に波長を合わせて暮していたバロは、物事を左右し、支配する、自己を超越した神秘的な力があると考えた。そして、人生にも芸術にも、こうした見方で取り組んだ。」

「自己形成の初期を内戦前スペインの前衛芸術家の中で、次いでフランスのシュルレアリストの中で過ごしたバロは、夢、錬金術、占星術、神秘主義思想、魔術、オカルト、科学に目を向け、自分の主題や技巧の新しい試みのために、絵画や文学から幅広くインスピレーションを引き出した。物事の営みを知りたいと思い、そのわけを知りたがった。そして自分で仮説を立て、絵の中でそれを探求した。もしも見本作品を刺繍する女学生が世界をつくったら、どうなるだろう? 貸し部屋の家具が、前の住人のイメージをずっともち続けていたら、どうなるだろう? チョッキをボートにして川に浮かせることができたら? 緑の葉の代わりに光合成の化学式が出てくる植物があったとしたら? それぞれの仮定が新しい発見、自然の発見、自己の発見につながった。スペインで育った女の視点と、ラテンアメリカ特有の超現実的傾向をもって、バロは世界を探求しながらそれに代わる別な世界を創りだしていった。」



レメディオスバロ 予期せぬさすらい3


「4 亡命した芸術家」より:

「こうしたエネルギーや想念の発露にとって重要だったのが、リオノーラ・カリントンとの友情だ。それは、カリントンとは特別な感受性を共有しているという信念に基づいた、熱烈な友情だった。ふたりはほとんど毎日のように顔を合わせ、自分の見た夢、強迫観念、胸の奥にしまい込んだ秘密(「レメディオスがリオノーラ以外には誰にも打明けなかった秘密」)を話し合った。」
「ともに、インスピレーションを強く感じ、超自然現象や魔術の力を信じる人間だったバロとカリントンは、気がつくと、自分の生活や仕事に糧を与えるように親密に付き合うようになっていた。スペインの病院に入院していたカリントンと、フランスで留置されていたバロには、深い信頼に基づいた強固な絆があった。それは、ほかの人には理解してもらえない痛みと絶望であることを、ふたりは知っていた。バロは自分を、他人には理解できない変人だと思い、説明する必要のない魂の友としてカリントンを求めた。彼女なら、上面だけの論理でバロの不安を解釈しようとしたり、常識でバロの見方を傷つけることもなかった。カリントンも、この冷淡な世界でついに親友を見つけたという気持だった。」



レメディオスバロ 予期せぬさすらい5


「6 隠喩としての旅」より:

「バロ自身が精神医学に助けを求めたかどうかは不明である。(中略)しかし、実際のバロは多くの不安を抱えた心配症の女として知られていた。「私はどうしようもなく迷信深くて……近所に出かける時でさえ、まるで誰かに追いかけられているように、できるだけ早く家に戻って閉じこもってしまう」。」

「女学生のバロは神秘的なものに憧れ、ヒンズー教の行者に手紙を書いたり、不思議な植物を集めたりした。そうしたエネルギーは、大人になってから(まだ心理的不安から抜けだせないでいた)別な精神的探求へと向けられ、神秘主義の教義を研究し、形而上学の本を読みあさった。そのうち、精神的自我の発展を通じてその意味や安定を探求することが、強迫観念のように作品を支配するようになった。バロは、西洋、非西洋を問わず、広く神話や錬金術伝説を題材とするとともに、ユング、G・I・グルジェフ、P・D・ウスペンスキー、ヘレナ・ブラバツキー、マイスター・エックハルト、スーフィズム、聖杯伝説、聖幾何学、錬金術、易経にも興味をもち、そのひとつひとつが、自己解明と意識変革へ続く道だと考えた。「子供の頃に身につけたものは一方的に教え込まれたもの、自分で克服すべきもの」と語り、幼少時に教育されたカトリックの教義を拒否したバロは、自己探求の源泉となるこれらの主題を追い続け、作中人物にも同じような探求をさせた。」

「すべてを包含するビジョンを得たいというバロの究極の願いは、神秘主義思想と科学を芸術に結びつけることにあった。柔軟な探求心をもって取り組めば、このうちのどれをとっても膨大な可能性を秘めた創造的プロセスになるはずだ。「探求者」兼「神秘主義者」兼「科学者」を自認するバロではあったが、やはり彼女は何よりもまず芸術家であり、科学と精神と芸術を結合する登場人物を描く時には、その役柄として芸術家を振り当てた。」



「8 追想」より:

「バロは将来に不安を覚える一方、現在の成功もだんだん重荷に感じるようになっていた。人目につくことを好まなかったにもかかわらず、公的な役割を果さざるを得ないことが多くなった。完成までに時間がかかるのに、彼女の絵を欲しがる顧客が殺到していた。しかし、バロと親しかった人たちは、それぞれ申し合わせたように、彼女の心配症は何度も再発したけれど、自分の命を絶つようなことはしないはずだと自信ありげに語っている。落ち込んでいるという電話をもらったひとりであるギュンテル・ゲルソでさえ、死亡証明書に記載されバロの夫が確認しているとおり、バロは心臓発作で死んだと信じて疑わない。」


レメディオスバロ 予期せぬさすらい6



WikiArt - Remedios Varo:
http://www.wikiart.org/en/remedios-varo/mode/all-paintings












































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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