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レメディオス・バロ 『夢魔のレシピ』 (野中雅代 訳)

「筆を続けるに先立って、もし私の手紙にご理解いただけない言葉がありましたら、私の綴り字は、不幸なことに、現在流布している辞書が認めるものとはまったく違っているので、その言葉を辞書で探されるのは無駄だと申し上げておきたいと思います。残念なことですが!」
(レメディオス・バロ 「ある科学者への手紙」 より)


レメディオス・バロ 
『夢魔のレシピ
― 眠れぬ夜のための断片集』
野中雅代 訳


工作舎 1999年5月20日第1刷/2003年9月30日第2刷
212p(うち別丁図版32p) 著者・訳者紹介1p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,500円+税
エディトリアル・デザイン: 宮城安総+小泉まどか



レメディオス・バロ文集。本文中図版(モノクロ)多数。
「イメージの実験室――バロ自身によるバロ展」のセクションは、32点の作品図版(モノクロ)と画家自身によるコメントからなっています。


レメディオスバロ 夢魔のレシピ1


帯文:

「「レメディオス・バロ展」
開催記念出版
エロス

戯れ
●バロ自身による自作品解説30点
●夢のレシピ
●魔女のテクスト
●バロのアルバム
シュルレアリスム
芸術」



帯裏:

「【バロへのオマージュ】

女性性さえも、ここでは象形文字による戯れ、
鳥の目の中の輝き
――アンドレ・ブルトン――」



カバーそで文:

「電光石火のごとき幻像を
彼女はゆっくりと描く
現れるものは元型の影
レメディオスは創造するのではない。
想起するのだ。
Octavio Paz
オクタビオ・パス」



目次:

1 夢のレシピ
 エロティックな夢をかきたてるレシピ
 アドバイスとレシピ
 悪夢と不眠症とベッドの下の砂地獄を追い払うレシピとアドバイス
 夢の記述 1~10
 自動記述 テクスト1~3
 プロジェクト覚書 1~3

2 魔女のテクスト
 ホモ・ローダンス
 ある科学者への手紙
 「家庭内の物の相互依存とそれが日常生活に与える影響の観察者たち」のグループを支持する者の苦悩
 ある魂への手紙
 ガードナー氏への手紙
 劇の草案
 愛人トロムプソン夫人は偶然に、ケントの領土に浸透する巨大な湿気の水源を発見する
 カルシド・マルティン・デ・ビルボア騎士

3 イメージの実験室――バロ自身によるバロ展
 啓示または時計職人
 隠者
 笛を吹くひと
 中身泥棒
 トレーラーハウス
 感応
 発見
 ベロナを編む人
 三つの運命
 ご婦人方の幸福に
 曲芸師または大道芸人
 ハーモニー
 婦人服の仕立屋
 放浪者
 イグナシオ・チャベス医師の肖像
 簡潔でありなさい
 世界の創造または小宇宙
 予期せぬ訪問
 ロコモシオン・カピラール
 人物
 遭遇
 遭遇
 アナロゴ山に登る(※)
 精神分析医の診療を終えた女
 擬態
 三部作(塔へ向かう/地球のマントを刺繍して/逃亡)
 突然変異した地質学者の発見
 反抗する植物
 召命
 無重力現象

4 地球の想い出――バロのアルバム
 インタビュー
 スペインの女友達への手紙
 哲学者ゴンザレスと歴史家デ・ラ・ガルサへの手紙
 母への手紙 1、2
 知らないひとへの手紙

5 メキシコの魔法の庭――バロとキャリントン (野中雅代)



レメディオスバロ 夢魔のレシピ2



◆本書より◆


「夢の記述」より:

「私はあるホテルの洗面所で金髪の小猫を洗っている。でもそれが猫かどうかはっきりしなくて、レオノーラかもしれない、だぶだぶでそろそろ洗ったほうがいいコートを着ているから(訳注)。少し石鹸水で湿らせて猫を洗い続けるが、私は動揺し戸惑っている、誰を洗っているのかわからないから。」
「訳注: レオノーラ・キャリントンである。キャリントンは通常余り身なりに頓着しない。」



「ガードナー氏への手紙」より:

「個人的には、私には特殊な能力が備わっているのではなく、因果関係を素早く見抜く能力があると思います。それは日常の論理の限界を越えた関係のことです。また長年の実験の結果、私は家庭での小さな太陽系を自由に統御できるようになりました。物が相互に依存し合っていること、また惨事を避けるために物を特定のやりかたで配置する必要性があること、物がぶつかり合わないような事実を誘導するために、突然配置を変えなければならないことなどがわかってきました。たとえば、私の皮製の大きな肘掛け椅子を天体の中心に撰ぶとすると、その近く東から西に五〇センチ離れたところに、木のテーブル(素朴な大工のベンチで、職人の手仕事の強い思い入れの籠ったもの)を置きます。椅子の後二・五メートルの位置に鰐の頭蓋骨を置きます。椅子の左で、他の物との間に、偽造ダイヤを嵌め込んだパイプを置き、右側三メートルの位置にありふれた緑色の陶器の水差しを置きます。これで私が思うままに動かせる太陽系(そのすべてにわたって細部を言及しようとは思いません。途方もなく長いものになってしまうでしょうから)が出来上がります。どんな結果が生じるか予想しながら、太陽系を動かせます。時には、私の定まった配置を横切る予想外の流星の早い軌道に誘発されて、計算外の事件が起こることもありますが。流星とは他ならぬ私の猫なのですが、徐々に私はこの不確定要素を意のままに操作できるようになりました。今では猫に特別に羊のミルクを餌に与えると、軌道にほとんど影響を与えないことがわかってきたのです。
 もちろん私の友人たちもまた、それぞれの家にふさわしいやり方で、苦心して小さな太陽系を形作ろうとしています。そして私たちはそれらすべての間に一つの相互関係を作りあげました。」



「劇の草案」より:

「ミラグラ夫人は暗闇を恐れている。暗闇のどこからか熱い手がにゅっと伸びて、彼女の踝(くるぶし)を掴んでその場に釘付けにする。そのあいだに破壊的な火が踝から彼女の体に燃え拡がり、彼女は灰の山になっていくだろう。さらに悪いことには彼女は自分の恐怖をひとに隠さなければならないことだ。他人にその恐怖を告白すれば、同時に自分が有罪で、処罰されるのを恐れていると告白することになるだろう。」


「イメージの実験室」より:

「隠者 1955年 
これは隠者です。彼は私たちの時間と空間を越えたところにいます。彼の体は上向きと下向きの二つの三角形で構成されていますが、それにより頂点に六個の星が出来ます。それは古代の秘教の教義で時間と空間のシンボルなのです。彼の開いた胸の内には、調和(ハーモニー)を象徴する陰陽のサインがあります。これはすべてのなかで最も美しいシンボル(少なくとも私にはそう思えます)です。というのはそれは円のなかに封じこめられていて均衡・心の平静を意味するようになっているからです。」

「感応 1955年
この婦人の猫はテーブルに飛び上がって、上にある物を台無しにしますが、(私のような猫好きの人間は)辛抱しなければなりません。猫を愛撫すると非常に多くの火花が飛んで、巨大で非常に複雑な電気的からくりが形成されます。火花と電流が彼女の頭に届くとすぐに、髪にパーマがかかります。」

「ハーモニー 1956年
これは一等賞をとった作品です。この人物はすべてを結びつける目に見えない糸を見つけようとしています。だから、金属の糸で作った五線に、最も単純な物から数学の公式を書いた紙片まで、それ自体で、多くのものを意味するのですが、あらゆる物を配置しているのです。いったん彼が様々な物を配置すると、五線譜を支える音部記号から風が吹いて、音楽が流れ出ます。その音楽は調和的であるだけでなく客観的でもあって、言い換えれば、もし彼が意図すれば、五線のまわりのすべての物を動かせるのです。壁から現れる人物は――彼を助けるのですが――偶然(すべての発見にはつきものの要素です)を表していますが、それは客観的偶然です。私は「客観的」という言葉で、それが私たちの世界の外にあるもの、つまり私たちの世界を越えたものだと示唆したいのです。それは私たちの世界である現象の世界よりは、むしろ原因・根拠の世界とつながっているのです。」

「三部作 
1 塔へ向かう 1960年
少女たちは蜜蜂の巣のような家を出て仕事に向かいます。彼女たちが逃亡できないように、鳥たちが注意深く監視しています。彼女たちは催眠術にかけられたように見え、編み棒をハンドル代わりに使っています。前方の少女だけがこの催眠術に抵抗しています。
2 地球のマントを刺繍して 1961年
この少女たちは偉大な師の命令通りに、地球のマント、海、山々、生物を刺繍しています。しかしひとりの少女が策略を刺繍して、そこでは彼女が恋人と一緒にいるのが見えます。
3 逃亡 1961年
その策略のおかげで、少女はやっとのことで恋人と逃亡できて、特殊な乗り物で、砂漠を越えて洞窟に向かいます。」

「突然変異した地質学者の発見 1961年
原子爆弾で根こそぎにされた風景に、ひとりの地質学者が――彼は放射能で突然変異したのですが――巨大な花を調査しています。地質学者は非常に興味深い実験装置を運んでいます。」

「無重力現象 1963年
地球が地軸と引力の中心からはずれてしまい、この天文学者は仰天して、左足を一方の空間に、右足を別の空間に置きながら、均衡を保とうとしています。」




「メキシコの魔法の庭」(野中雅代)より:

「バロとキャリントンは夢と現実の境界のないぼんやりとした領域を信じていた。」

「二人の異なった才能を持つ女性芸術家が、異国の地メキシコで深い友情で結ばれて創造活動をしたのは画期的な歴史の偶然だった。閃きのキャリントンに対して、バロは職人芸的な確かな技術があり、分析的で観察力に優れていた。バロック的感覚で大胆に素材を混ぜ合わせるキャリントンに対して、バロは注意深く分類しながら、科学と詩を絶妙のユーモア感覚で結合させた。お互いがお互いを必要としていた。共に想像力に溢れていても二人の資質は違っていた。」

「バロとキャリントンの創造活動は、「精神探求性」を帯びていた。メキシコで二人は、普通の人間には隠されている「別の現実・真実」探求の実験を始めた。それはシュルレアリストに特有の、遊びでもあり真面目な創造作業でもあった。まず彼女たちは霊的能力に長けていなければならなかった。」



本書より、オクタビオ・パスによるオマージュ:

「メキシコには二人の素晴らしい芸術家がいる。二人の魔法にかけられた魔女(魔術師)たち。美術派閥や、党の賞賛や非難には耳を貸さず。……社会のモラルにも値段にも無感覚で、別の領域に魅入られた者の特権ともいえる最高の風にのって、レオノーラ・キャリントンとレメディオス・バロは私たちの都市を横切っていく。どこへ行くのか? 創造力と情熱が二人を呼ぶところへ……彼女たちは誰の手本にもならない。自分のヴィジョンに忠実である……真性の画家は創造することによって、自分自身から解脱する。その行為は市場(しじょう)と市場(マーケット)の算術のモラルを拒絶する」





































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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