西郷信綱 『日本古代文学史 改稿版』 (岩波全書)

「むろんそれをたんに外からの影響と片づけるのは浅薄である。人間は必要なかぎりにおいて影響をうけるのであり、外からのものはたえず内からのものに媒介されて作用する。」
(西郷信綱 『日本古代文学史 改稿版』 より)


西郷信綱 
『日本古代文学史 改稿版』

岩波全書 149

岩波書店 1963年4月10日第1刷発行/1980年12月15日第17刷発行
303p 索引15p はしがき・目次ix 
B6判 並装 カバー 
定価1,400円



本書「はしがき」より:

「この「改稿版」は、旧著に手を入れたいわゆる修正版ではなく、新規に書きかえたものである。そして当然ここに旧著は放棄される。それも、勉強したところほど変貌し、怠けた部分がいささか旧態をとどめる仕儀になった。今後、勉強をせいぜい自分に課するほかない。」


西郷信綱 日本古代文学史


カバーそで文:

「古代人は、近・現代文学に最も縁の深い小説というものをまだ知らなかった。小説を可能にする歴史の前提が、古代人の生活には欠けていたのである。つまり近代人は神話を失うことによって小説を知り、古代人は小説を知らぬことにおいて神話を知っていたわけだ。文学史において叙事詩、神話、抒情詩、劇、小説等の諸形態が全円的に一斉に成長し開花するというかたちをとらずに、あるものは早く、あるものはおそく出現し、また時期によりあるものは向上し、あるものは下降するというすすみ方になるのは、社会発展の蔵するこうした矛盾をぬきにしては考えられない。文学の諸形態がそれぞれ異なる時期に発生するその過程と意味、また相互のつながりや対抗関係を一貫的に認識すること、古代文学史を個々の作品のよせ集めとしてではなく、全体として認識すること、本書の中核的な意図はここにある。」


目次:


     古典とは何か
     古代文学の特殊性
     文学形態の意味
     時代区分
第一章 神話と叙事詩の時代
 一 前史
     一つの仮説
     仮面の問題
     成年式・季節祭
     魔術の意味
 二 英雄時代
     英雄と豊饒霊
     英雄時代とは何か
     久米歌
     英雄時代の類型
     その終焉
 三 古事記
     内乱と王権
     天武朝
     神話と祭式
     天の岩屋戸、スサノオノミコト
     天孫降臨、大嘗祭
     大国主命
     神代とは何か
     神武天皇
     倭建命
     雄略、仁徳天皇
     聖婚と歌
 四 日本紀、祝詞、風土記
     記紀の比較
     祈年祭祝詞
     大祓
     国引き
     歌垣
 五 記紀歌謡
     詩と音楽と踊り
     八千矛の神の歌
     歌謡、饗宴、祭式
第二章 抒情詩の時代
 一 抒情詩の発生
     記紀歌謡から万葉へ
     抒情詩の母胎
     叙事詩と抒情詩
 二 万葉集
     舒明、天智、天武天皇
     初期万葉の特色
     柿本人麿
     宮廷詩人
     詩法の変化
     山上憶良
     貧の観念
     憶良と旅人の対立
     山辺赤人
     大伴家持
     家持と万葉集
     東歌、防人歌
     万葉における歌謡の位置
 三 大陸文化と日本文化―懐風藻から古今集まで
     大陸文化の意味
     文明と野蛮
     大陸文化と叙事詩・抒情詩
     漢詩文の全盛
     仮名文字の発明
     六歌仙時代
     古今集の特色
     やまとうたの成立
 四 短歌の来歴
     日本古代詩の音型
     短歌と片歌
     長歌の挫折
     短歌の超群
第三章 物語文学の時代
 一 散文の成立
     古代世界の危機
     貴族と官僚
     余計者としての知識人
     浄土教
     詩と散文
     都市
     古今集序
     土佐日記と貫之
 二 初期の物語
     神話と物語
     竹取物語
     歌と物語
     伊勢物語
     好き者
     平中物語
 三 女房社会
     物語文学の特殊性
     摂関制
     後宮
     受領の娘
     女の歴史
     女と文学
 四 女流日記
     かげろふ日記
     紫式部日記
     和泉式部日記
 五 枕草子
     清少納言と「をかし」
     枕草子の形式
     その美意識
     自然観
 六 宇津保物語
     長篇の成立
     三春高基
     政治の発見
     落窪物語
 七 源氏物語
     「私」としての宮廷生活
     光源氏と藤壺
     継母と息子の関係
     雨夜の品定め
     空蝉、夕顔、末摘花
     紫上、女三宮
     浮舟
     紫式部の散文精神
 八 末期の物語
     堤中納言物語
     更級日記の作者
     栄華物語
     大鏡
 九 歌謡
     神楽歌と大嘗祭
     催馬楽
     詩と音楽の分離
     風俗歌
     民間芸能者
     梁塵秘抄
 十 説話文学
     説話と説経
     今昔物語の世界
     盗賊、受領、武士
     和漢混淆文
 十一 王朝和歌
     曽根好忠
     和泉式部
     西行
     俊成
     定家
参考書目
年表
索引




◆本書より◆


「序」より:

「よく古典の永遠性(引用者注: 「永遠性」に傍点)ということがいわれる。が、それのしかける陥穽におちこんではなるまい。かりにある作がずっとよまれつづけてきたにせよ、享受の中味は時代で変ってきているはずで、またそれはこれからさき必ず変って行くだろう。しかも、どう変っていくかを目測できない。われわれの現にありがたがっている作がよまれなくなることだってないとはいえず、思いがけぬ作が浮びあがってくることもありうる。戦前戦後をふりかえってみても、その間あるものが死に、あるものがよみがえってきたのを見とどけることができる。われわれじしん、この絶え間ない変化のなかにいるのであって、自己の位置を絶対化することは自己を凍結させることになりかねない。(中略)何をどのように古典として設定するか、つまりその選択と解釈は、かくして時代によって変容をうける。われわれはもう宣長と同じようには『古事記』や『源氏物語』をよまぬだろうし、真淵や子規と同じように『万葉集』をよむこともしないだろう。研究がすすみ新事実を知ったためだけでない。それもむろんある。が、それのみと考えるのは学者の思いあがりで、いっそう根本的には時代の文学経験や文学概念が、宣長や子規などの時代と異なる性質のものになっているためである。」









































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

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難破した人々の為に。

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