島尾伸三 『星の棲む島』

「今の私は、こう祈るしかありません。
 「地獄へ落ちる私を捨てて、救うべき人に手を差しのべて下さい」」

(島尾伸三 『星の棲む島』 より)


島尾伸三 
『星の棲む島』


岩波書店 
1998年3月16日 第1刷発行
252p 
18.6×13.4cm 
丸背紙装上製本 カバー 
定価2,000円+税
装画・挿画・題字: 逆柱いみり



奄美大島での少年時代を綴った、『月の家族』続編。
逆柱いみり氏によるフルページ挿画13点&カット。


島尾伸三 星の棲む島 01


帯文:

「アメリカが輝いていた奄美、
禁断の果実があふれた、
悪ガキの楽園だった。」



帯裏:

「「人(星)はいつの時代も残酷で、子ども(小さな星)も同じです。子どもが可愛いなんていうおとなは神経が麻痺しているにちがいありません。私は殺してやりたいと思った先生がいっぱいいました。でも、子どもの時にかなり復讐を済ませてあるので、そんなこと、どーでもよくなっているのです。私が殺したいと思ったのは先生ではなくて、意地悪で欲張りが主導権を持つ、社会の仕組みだったのかもしれません」(あとがきより)」


カバーそで文:

「アメリカの配給物資が溢れ、
手つかずの自然に囲まれ、
戦争の惨禍が生々しかった頃の奄美。
子どもたちは禁断の果実を貪っていた。
シンゾ少年は、「死の棘」に満ちた家庭を飛び出し、
アメリカ人伝道師の教えに背き、
放火、こそ泥、ノゾキ、打ち壊しのやりたい放題。
少年少女群像を描いた書き下ろし回想短篇集。」



島尾伸三 星の棲む島 02


目次:

第一話 ヤマトッチュに分類されて
第二話 自由児ケーン
第三話 長寿のヒーシャ
第四話 ヤギ刈り
第五話 叫ぶ合唱隊
第六話 ナイスジャガなー
第七話 ガッパイ、ガッパイ、ガッパイ
第八話 今どき、そんなシマグチする人は、おらんヨー
第九話 音痴なミュージック・サイレン
第十話 クレパスとクレヨンと
第十一話 燃えろ! 燃えろ!
第十二話 ミルク飲み人形
第十三話 不発弾処理
あとがき――星の棲む島



島尾伸三 星の棲む島 04



◆本書より◆


「首から下げる飾りのように、鎖のついた親指ほどの小さなメダルにマリアや聖人たちを刻んだのが「メダイ」です。数珠のようで、それよりも珠の数が多くてマリアの祈りを繰り返す時に使う「ロザリオ」。おばあさんたちは「コンタツ」と言っていました。長崎の信者が迫害を避けるために顔を隠してミサに出掛けたのが起源だという女性が被る薄いレースの「ベール」は、日本のカトリックが生んだ美しい習慣だということです。
 グレゴリオ聖歌や中世ヨーロッパで生まれたラテン語の歌がたくさん載っている『カトリック聖歌集』といった、祈りに必要な一揃いの入ったミサ袋を腕にかけ、太ってゆっくり大股でしっかりとした足どりで歩く、マリアおばさんはシャー(下)に住んでいました。
 彼女は勇敢にも、戦争の時代にも同じ恰好でミサへ出掛けるのを止めなかったのだそうで、ミサへ行く途中の道で待ち伏せしていた警官に突き飛ばされたり、憲兵にマリアの像が刻まれてたメダイを引きちぎられたり、女としての辱めを受けそうになったり、住まいを荒らされ家を壊されたりまでしたけれど、信仰を捨てずに、教会へ通い続けたということでした。
 それをナジェの誰もが知っていて、憧れと尊敬の的でした。しかも、彼女は、尊敬されると尊敬され続けるために費やす努力でおかしくなってしまう人がほとんどなのに、変わらぬ態度でした。聖女になろうとしない聖女だと思います。その戦争の時代にカトリック教会の経営していた女子高校は取り上げられ、その経緯は知りませんが、戦後五十年経った今も返還されないままです。そして、神父たちは追放されたのです。」
「まるで天草の隠れキリシタンのような十年だったようで、その日本政府の野蛮な行いの話は、空襲やナジェに設置されたアメリカ合衆国軍政府の話に、サンドイッチされて登場するのでした。」
「聖女になろうとしない聖女は、私の記憶の中のナジェの町に沢山います。一本の足が曲がっている小さな体格の修道女テレジア、口を開いたことがないのではないかと思われる貧しい服装の一人暮らしのおばさん、学校給食をブタの餌にするために肥樽(こえだる)に運ぶおばさん……と、次々に思いだせます。見守る人もなく彼女たちはとっくに死んでしまっていて、輝く星くずの一つになっているのかもしれません。」

「シマは、アメリカ合衆国という国の人から、殺されたり、救われたり、大切にされたりと、どう考えてよいのか分からない扱いを受けていたのです。あるいは、国という大袈裟な規模で考えるから、そんな具合にまとまりのつかないことになるので、シマのフッシュ(おじいさん)や、アンマ(おばあさん)のように、世界が個人的なつながりだけでできていると考えるなら、そんな矛盾は生じないのかもしれません。」



島尾伸三 星の棲む島 03


「ケーン」は兄と二人きりで暮らしている自由人だ。シンゾも自分勝手な両親の元を離れて妹のマーヤと二人きりで暮したいと思う。






















































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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