モーリス・メーテルリンク 『花の知恵』 高尾歩 訳 (プラネタリー・クラシクス)

モーリス・メーテルリンク 
『花の知恵』 
高尾歩 訳

プラネタリー・クラシクス

工作舎
1992年7月20日 第1刷
1994年8月10日 第2刷
140p 口絵(カラー)4p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価1,545円(本体1,500円)
エディトリアル・デザイン: 西山孝司・森山百合香



本書「訳者あとがき」より:

「この作家は闇に生命を与えた、と声高にメーテルリンクを絶賛するアルトーによれば、メーテルリンクの作品においては問題はつねに、われわれの思考にどこまでも付随している具体的な肉体的快楽(サンシュアリテ)の原子を伴って喚起され、われわれがそれを体験しているような印象を与えながら観念の状態から現実の状態へと苦もなく移行する。『花の知恵』でも、まず著者の抱く花の理念が語られてその後に観察が始められるが、その背後に、闇を認識する人間の知性が人間の感覚器官の不備を訴えながらも頼り得る感覚を希求するとき、闇のなかの微光としての花の存在に気づく、という図式があることも明かされている。」
「なお、本書(原題 L'Intelligence des Fleurs)は、本来、「花の知性」と訳すべきと思うが、出版社の強い意向で日本語版を『花の知恵』とした。」



Maurice Maeterlinck: L'Intelligence des fleurs, 1907/1912
カラー図版4点、モノクロ図版20点。「図版・資料提供=荒俣宏」


メーテルリンク 花の知恵 01


帯文:

「『青い鳥』の作家
メーテルリンクが綴る
忍耐の
博物誌
カエデのプロペラ、ミモザの戦慄(おのの)き
セキショウモの悲劇、セージの愛の罠
ランの複雑な仕掛け……
花の図20余点収録」



帯裏:

「花の天才・花の発明
(以下、本書より抜粋)
●リヴィエラ地方の古い石塀などによく見かけられるヒオセリス、タンポポによく似たこの小さな植物は、同時に二種類の種子を宿す。ひとつは実から簡単に外れ、風まかせに運ばれやすいように翼を備えている。もうひとつは翼をもたず、花の房のなかに閉じこめられていて、花の房が萎むときになってはじめて解き放たれる仕組みになっている。(IX 炯眼より)
●花には、人間の忍耐強さ、粘り強さ、自尊心があるらしい。人間と同様の微妙に異なる多様な知性をもち、人間とほとんど同じ希望と理想をもつらしい。花は、人間と同様、最後にようやく助けの手を差し伸べてくれる超然たる大きな力に対して闘っているのである。(XIX 想像力より)
●賢いランは、自分のまわりを動き回る生命を観察してきた。蜜蜂が貪欲で忙しない大群を作ること、陽のあたる時間になると数知れぬ群れをなして出かけてゆくこと、そして、ほころんだ花の入り口で香りが接吻のように心揺さぶりさえすれば、婚礼の天幕の下に用意された御馳走に大挙して押しかけるものであることを、ランは知っているのである。(XXII 細工より)」



カバー裏文:

「モーリス・ポリドール・マリ・ベルナール・メーテルリンクは、1862年8月29日ベルギーの河港都市、商工業がさかんなガンに生まれた。ガン大学法学部に学び弁護士への道が開かれるが、法廷に立つよりも文学の道を選びパリへ渡る。詩集『温室』、戯曲『マレーヌ姫』『闖入者』『ペレアスとメリザンド』などで19世紀末の文壇に踊り出る。
世界的に知られる『青い鳥』は1906年の作。
やがていくつかの戯曲が世界の大都市で上演されるようになる。1911年にはノーベル文学賞を受けるが、この遠因となったのが『蜜蜂の生活』だったといわれる。園芸好きの父の影響か、ニースの〈蜜蜂荘〉を理想的な庭と家としてこよなく愛した。蜜蜂、白蟻、蟻を描いた昆虫三部作とともに『花の知恵』は、ナチュラリスト、メーテルリンクの存在を照らしだす美しい科学エッセイである。」



目次:

花の知恵
I 植物
II 運命
III 種子
IV 果実
V 根
VI ダンス
VII 浮遊
VIII 火劇
IX 炯眼
X 婚礼
XI 花
XII 発明
XIII 天才
XIV 機械
XV ラン
XVI 昆虫
XVII 受粉
XVIII 改良
XIX 想像力
XX 単純化
XXI 蜜腺
XXII 細工
XXIII 適応
XXIV 一般知性
XXV 自然
XXVI 幸福
XXVII 地球霊
XXVIII 洞窟
XXIX 意志
XXX 精神

香り

挿図出典一覧
訳者あとがき
著者・訳者紹介



メーテルリンク 花の知恵 02



◆本書より◆


「本書では、植物学者なら誰でも知っている事柄ばかりを、あらためていくつか取り上げてみたいと思う。何か新しい発見をしたわけではない。ただ初歩的な観察の記録をお目にかけるまでである。植物が知性のあるところを見せてい例を片端から取り上げて、つぶさに検討してゆこうというつもりなどもちろんない。そうした例は数えきれぬほどあり、絶えず見受けられるからだ。とくに花においてはそうである。花には、光の方へ、精神の方へ向かおうとする植物の生命の努力が結集されているのである。
 不器用な、あるいは不運な植物や花はあるとしても、知恵と創意工夫に全く欠けた植物などひとつとしてありはしない。植物はみな、力を尽くして本分を全うしようとしている。自分たちが体現している存在形態を無数にふやして地球の表面を侵略し、征服してやろうという壮大な野心があるのだ。しかし、定めによって地面に繋がれているゆえ、この目的を果たすためには動物の繁殖に較べてはるかに大きな困難を克服してゆかねばならない。かくして大多数の植物が策をろうし、謀をめぐらせ、装置を仕掛け、罠を張るといった手段に訴えているわけだが、その手段は、力学、弾道学、飛行技術、あるいは昆虫観察などにおいて、しばしば人間の発明や知識に先行するものであった。」

「花々の小さな発明、花々の採るさまざまな方法を子細に検討してゆくと、工作機械の展示会が思い出される。工作機械の展示会というのは、人間の機械工学的才能が遺憾なく発揮されて、夢中にならずにはいられぬものだ。とはいえ、人間の機械工学がまだごく浅い日を数えるにすぎないのに対し、花の機械装置は何千年来機能してきている。この地上に花が出現したとき、まわりには花が模倣し得る手本など何もなかった。花は、一切を、自分自身の奥底から引き出してこなければならなかったのである。」





こちらもご参照下さい:

モーリス・メーテルリンク 『ガラス蜘蛛』 高尾歩 訳


































































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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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