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横井也有 『鶉衣』 (堀切実 校注)

横井也有 著/堀切実 校注 
『鶉衣』 (上)


岩波文庫 黄215-1 
2011年2月16日第1刷発行/2012年4月16日第2刷発行
408p 文庫判 カバー 定価1,020円+税
カバー: 中野達彦
カバー図版: 横井也有自画像并句


横井也有 著/堀切実 校注 
『鶉衣』 (下)


岩波文庫 黄215-2 2011年6月16日第1刷発行
413p 文庫判 カバー 定価940+税
カバー: 中野達彦
カバー図版: 狸達磨図并句



横井也有(よこい・やゆう)の俳文集。『鶉衣』は、岩波文庫の旧版を持っていたのですが、新しく詳細な注が付された本書が出たので、買おうと思って忘れていたので、今回、「honto」の文庫本ポイント10倍セールで購入してみました。上・下二冊で2,000円は高いような気もしますが、これは活字も大きいし、語句の出典とかも出ているので有り難いです。


鶉衣1


カバーそで文:

「高雅にして軽妙―芭蕉と好対照をなす俳文の名手、也有(1702-83)珠玉の文集。和漢の古典と里謡に精通し、修辞的技巧を凝らしながら、機智に富んだ温かなまなざしを身の回りの器物や動植物に注ぐ。上巻には前編・後編の103篇を収める。」

「「俗」の中に「雅」を見いだす、「遊文派」とも言うべき俳文の一潮流を確立した也有。尾張藩の重臣を勤め上げ、自由でささやかな隠遁生活―その日常の驚き、老いの感慨、訪れる友に請われた序跋文、旅行記など、続編・拾遺の119篇を収める。」



鶉衣2


本書より:

「蔵人伝(くらうどがでん)

天に信天翁(あほうどり)あり、地にはあすならふといふ木あれば、人にも此(この)おのこありて、かの世にむかしよりいひわたれる、
 世の中にねたほどらくはなきものをしらであほうが起(おき)てはたらく
とよめる歌の、これが返しとはなくて、
 はたらかで起(おき)て居る身の気楽(きらく)さよ寝てもあほうは物思ふ世に
とよめりけるを、何がしの大将は大きに此(この)歌におどろきて、「物ぐさの蔵人(くらうど)」と召されけるより、世には「なまかは」の蔵人」ともよぶ事になむ。されば此(この)うたの心は、その蔵人ならでしりがたし。たゞ蔵人もしらずしてやよみけむ。
 寝てや楽(らく)起(おき)てや安き雪の竹

一(蔵人伝) この一篇、『平家物語』や『源平盛衰記』に出る「物かはの蔵人(くらんど)」の話を下地にして、これをもじっている。(略)
四(世の中に) 『譬喩尽(たとえづくし)』(松葉軒東井編)に「世の中に寝るほど楽(らく)は無き物を知らぬ田分(たわけ)が起て働く 一休和尚生死ヲ悟ラ令ム」。巷間の俗歌。
(略)
七(なまかは) 「なまかは」はなまける、の意。
(略)
一〇(寝てや楽) ずっしりと雪の重みのかかった竹は、いったい寝ている方が楽なのだろうか、それともやはり起きている方が楽なのだろうか、の意。気楽に起きている人と同じように、起きている方が楽なのだろうよ、と暗に示唆している。」



石川淳 『江戸文学掌記』 所収 「横井也有」 より:

「末の世の俳諧師にとつて、庵をやぶつて千里の旅をゆけば、すぐそれが方の外にあそぶといふあまいことにはならない。たふれ伏すさきは萩の原か、いや、おそらく泥の中である。ばくちと俳諧師には宿を貸さぬといふ咄は上田秋成も書いてゐる。ときに雑俳の点者じつは三笠附の胴元と化けてみせたとすれば、旅まはりの俳諧師にもとんだ芸があつた。他にかくし芸のない風来坊は、後の伊那谷の井月のやうに、いづれどこかの田圃にのめつてくたばる仕儀になる。俳諧はかならずしもきれいごとではすまないものである。居ながらの俳諧師はそこまで落ちようにも落ちられつこない。半掃庵の風雅はあくまでも士大夫の遊戯であつた。ただこの遊戯において、也有は当世の秩序の裏側に幽人の身を寄せるべき巌窟をきづくことにつとめてゐる。句も歌も、俳文も漢詩文も、画から琵琶まで道具に事は欠かない。句はいただけないと評するのは後世のさかしらである。当人の知つたことか。雑俳が川柳でも、口を衝いて出るすべての句は巌窟に吹きつける小石に似る。もつとも評判のよい鶉衣の文章は、なんのことはない、ことばといふ道具にみがきをかける操作をつづけてよく飽きもせぬ苦心のほどを見せられるだけではないか。さういつても、みがかれたことばの光は消えない。「あけくれの自由」にまかせて、手づくりの巌窟の工事ははかどる。文章を生かしているのはここぞ方外の世界の礎といふ労働のはげしい気合である。」


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分野: パタフィジック。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

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