ルイージ・マレルバ 『皇帝のバラ』 千種堅 訳

ルイージ・マレルバ 
『皇帝のバラ』
千種堅 訳


出帆社 
1976年5月10日 初版発行
209p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価980円



本書「訳者あとがき」より:

「物語の舞台は中国最初の皇帝チェ・フワン=ティ Che Huang-ti の時代とされている。(中略) Che Huang-ti の Che を省いてみると、Huang-ti つまり黄帝の名が浮かんでくる。」
「ところで物語の内容だが、皇帝のために不老不死の方法を発見できなかった魔術師、皇帝が臣下に向かって雨を降らそうと約束しながら、それが実現されなかったために、その責任を取らされる”季節の大臣”、彗星の観測に失敗した天文学者、へまな大道芸人など、高級官僚から下司の庶民にいたるまで無残にも打ち首にされる例は枚挙にいとまない。その象徴となるのが書名ともなっている「皇帝のバラ」であろう。宮殿の庭に咲くこのバラは皇帝の生命力と権力のシンボルであり、臣下の血を注がれることによって途方もなく大きく成長する。そして、ここに、政治とか権力の次元を越えて、ひとつの体制、一個の力というものが、個人を、力なきものをいかに食いものにするかというマレルバの訴えがうかがわれる。」



Luigi Malerba: Le Rose Imperiali, 1975


マレルバ 皇帝のバラ


帯文:

「海の水の青色で絵を描こうとして発狂する大臣、巨大なふいごの起こす風の仕切りで都市を建設した建築家、手のひらひとつ分皇帝の布告を無視して旅するあまのじゃくな商人……。他方、永遠の観念にとりつかれると思えば、わけもない悲哀にうちふさいで産褥の女の乳房に二週間もくらいつく皇帝……。古代中国を舞台に18の掌篇にちりばめられた皇帝と臣民たちの面妖な対位の風景のなか、見るも小気味よく、聞くも無残、いとも軽快に首が刎ねられ、首が転がる。そして、流れた血が皇帝のバラを真紅に花開かせる――。超現実的で、アレゴリックで、奇妙に生々しく、不思議な幻覚を強いる、苛酷な現代の寓話。カフカ、ボルヘスに衝迫して全世界を驚かせた鬼才マレルバの野心作!」


帯背:

「カフカ、ボルヘスの世界を凌ぐ!?
ルイージ・マレルバ著 千種堅訳
鬼才が描く苛酷な現代の寓話!!」



帯裏:

「訳者あとがきより
 凄惨な物語を読み終った読者は、この残酷と暴力が為政者の恣意ではなく、実は政治体制を支える規範であり、法律ですらあることを知って、血なまぐさい描写も及ばないショックを覚える。そして話は実は古代中国のことなどではなく、ほかでもないわれわれを取りかこむいまの現実のことであり、「権力」のバラは大多数の庶民の血を吸って成長しているのだと読者が実感し、おののいたとき、マレルバの意図と手法は成功したといってよい。その結果はみごとに成功しているのである。」



目次:

第一話 皇帝の眠り
第二話 息づかいの芸人
第三話 迷言君主
第四話 たとえの文章家
第五話 季節の大臣
第六話 風の建築家
第七話 大道魔術師
第八話 地図にない王国
第九話 眠る天文学者
第十話 ごきぶり学者
第十一話 地図から盗まれた山
第十二話 詩作競争
第十三話 あまのじゃくな皮商人
第十四話 水の大臣
第十五話 百姓詩人
第十六話 壺と魔術師
第十七話 ふたりの退職役人
第十八話 皇帝の哀しみ

訳者あとがき




◆本書より◆


「息づかいの芸人」より:

「カオ=ツウ帝は、たった一日で四百七十人の文士たちを打ち首にしたチェ・フワン=ティの例にならって、いま帝国全土の騒乱の種となったしゃぼん玉芸の最後の代表者たちを殺そうと考えた。
 宮殿には大晩餐会を開くという口実で、最も有名な息づかいの芸人たちが集められた。ところが、またまた芸人たちは、この機会を逃すまいとばかりに、つかみあいを始め、宴席を一大修羅場に変えてしまった。憲兵は彼らを大衆から遠ざけ、その夜のうちに宮殿の地下室で、二百六十人の息づかいの芸人の首がはねられた。(その血は皇帝の庭園の赤いバラの肥料として使われ、その年、バラはかつてない大きさに達したのである)。
 その後、皇帝はしゃぼん玉芸について語るものはすべて殺さるべきこと、人の前にせよ、自分ひとりでにせよ、しゃぼん玉をあえて作ろうとしたものはすべて、その場で打ち首にされるべきことを命じた。息づかいの家は憲兵によって捜索され、石鹸、管、糊、絵具が押収された。
 この虐殺を逃れ得たわずかな息づかいの芸人たちは田舎へと散って行き、ある者は勇敢にもこの禁じられた芸を披露し、非合法のはかない作品を作りつづけた。荒っぽい弾圧のあと、このデリケートな息づかいの芸はこれら名もない芸人たちの手で、失われた威光をとどめることになったらしい。」

































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Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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