ボルヘス/ビオイ=カサーレス 『天国・地獄百科』 牛島・内田・斎藤 訳

「地獄がわからない人は、自分自身の心もわからない。」
(ボルヘス/ビオイ=カサーレス 『天国・地獄百科』 より)


ホルヘ・ルイス・ボルヘス
アドルフォ・ビオイ=カサーレス
『天国・地獄百科』

牛島信明・内田吉彦・斎藤博士 訳
「アンデスの風」叢書

発行: 書肆 風の薔薇
発売: 星雲社
1982年11月30日 初版第1刷発行
177p 「同じ著者によって」2p
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,000円



訳者による「あとがき」より:

「翻訳には底本として、Jorge Luis Borges, Adolfo Bioy Casares, Libro del cielo y del infierno, Editorial Sur, Buenos Aires, 1960 を用いた。」


ボルヘス 天国地獄百科


カバー裏文:

「《『古エッダ』に於る戦死者の楽園たるオーディンの楽園では、戦死した兵士たちが毎朝武装し、戦い、死んではまた蘇る。それから蜜酒に酔いしれ、不死身の猪の肉を食べるのである。冥想的な天国、官能的な天国、人間の形をした天国ならいくつも知られているが、好戦的な天国、すなわち戦闘がその快楽であるような天国は他にはない》。一方、《コーランにはこう書かれている。「汝らは一人とて地獄に堕ちぬ者なし。神がそう定め給うたものなり」。註釈者の説明によれば、事実、あらゆる回教徒は地獄に堕ちるが、大罪を犯さなかった者にとっては、地獄は爽やかで心地よいものであるという》。
 好戦的な天国もあり、爽やかな地獄もあるとすれば、天国とはそして地獄とは一体何なのか? 人間の宗教感情と共に古いこの問いに答えるべく、アルゼンチンの二人の国際的作家が編んだ、古今東西の文学者・哲学者・宗教家等々の珠玉のアンソロジー。天国に憧れ、地獄を恐れる(?)全ての読書人に贈る世紀の奇書。」



目次:

プロローグ
無償の愛を求めて (テイラー)
ソネット (作者不詳)
ある聖女の祈り (アッタール)
天国の誘惑 (ショー)
ある勇者の天国 (バニヤン)
ある兵士いわく (リーリエンクローン)
天国に優るもの (ラム)
わが天国 (ウナムーノ)
天国に入る勇士 (『ロランの歌』より)
好戦的な天国 (ボルヘス、インヘニエロス)
最悪のもの (バンドヴィーユ神父)
もっともな罰 (ビオイ=カサーレス)
教会教理 (『カトリック神学大事典』)
特権をもつ者 (予言者の口承)
永遠の幸福 (ラッセル)
神秘なる対応 (スウェデンボルイ)
罪への道 (ユゴー)
男から女へ (ブラウニング)
息子の居場所 (テニスン)
父親の居場所 (ジェノヴァの諺)
アダムによるイヴの墓碑銘 (トウェイン)
地獄のような後悔 (ケベード)
魔王の告白 (ミルトン)
地獄の船 (『会話と読書のための辞典』)
堕地獄者のメッセージ (スウェデンボルイ)
聖職者は敬うべきもの (『善き蓮の掟』)
放蕩者に対する懲らしめ (セルウス男爵夫人)
人間はみずからの永遠を選びとる (スウェデンボルイ)
証拠 (コールリッジ)
黄金の中庸 (デ・レオー)
第四の天国 (ウルピウス)
死の幻覚 (ソームズ)
究極的復帰 (ホープ)
天国の若さと老化 (シャトーブリアン)
最後の休息地 (ガルシア・マソ)
からすと天国 (カフカ)
地獄 (デ・ラ・セルナ)
救世主の約束 (ロモンド)
回教の地獄 (『千夜一夜物語』)
迷妄の連鎖 (プーサン)
恐怖の解釈 (ユゴー)
五人の使者 (『提婆達多経』)
待つ人 (ユング)
地獄の姿 (スウェデンボルイ)
破滅的な地獄 (スウェデンボルイ)
我と我が身に似せて (デ・コロフォン)
人生の逆転 (シュタイナー)
ルビーの線 (アシン・パラシオス)
天国と地獄の位置 (ウェザーヘッド)
球形の未来 (アイアランド)
地獄の中心 (ムレーナ)
証人 (マンデヴィル卿)
二つの来世の失敗 (バトラー)
地獄 (ピニェラ)
城壁の反対側 (ギボン)
地獄の鏡 (ジュアンドー)
象徴としての地獄 (デイヴィッド=ニール)
呪われた者の思いあがり (ジュアンドー)
闖入者 (ニューマン)
苦労多き楽園 (ウェザーヘッド)
天国に抗して (スティーヴンソン)
人間のなせる業 (ジュアンドー)
情深い注釈者 (ヒューズ)
すべては予見されていた (ヒューズ)
馬は神のように支配する (ヒューズ)
死後 (デュ・リエル)
エデンの園の範囲 (ブロワ)
憂鬱な人 (『哲学的思索傍註』)
灼熱の天使 (アル・ヤマニ)
タンタロス (フブダ)
幻影の炎 (ボルヘス、インヘニエロス)
期待されるもの (ド・サシ)
特別な火 (フェリクス)
天国と地獄と世界について (バトラー)
天国または地獄の選択 (モリス)
巨大な蜘蛛 (ドストエフスキー)
デイドロ、ダンテを批判する (ディドロ)
地獄のカタログ (カントゥ)
天国と地獄に関する報告 (オカンポ)
アルメニオスの子、エル (プラトーン)
審判のあと (『使徒ヨハネの黙示録』)
天国のカタログ (カントゥ)
天国のニ様態 (ハックスリー)
正確なる位置 (聖アウグスティヌス)
休息所 (ハックスリー)
語源 (デュ・ボスク)
天が下に (ジッリ)
天国 (ヴォルテール)
地獄と天国と (ボルヘス)
拡張解釈 (フェヒナー)
寛容なる天国 (ハイネ)
回教徒の天国 (ギボン)
具体的な天国 (『コーラン』)
約束 (『アタルヴァ・ヴェーダ』)
三つの天 (『アタルヴァ・ヴェーダ』)
エジプトの天 (モレ)
すべてが頼りげなく見える偽の天国 (チュー・チャン・チュン)
天国の物資 (デュボスク)
白い天国 (『千夜一夜物語』)
天国における富者 (スウェデンボルイ)
栄養あふれる天国 (『アタルヴァ・ヴェーダ』)
適応 (フロスト)
ユダヤ人の天国 (『タルムード』)
肉の復活 (アクィナス)
天国での邂逅 (トウェイン)
形よりなる世界 (プロチノス)
河 (バニヤン)
地獄・天国そして現世 (ショー)
歌う悪魔 (オカンポ)
安息日 (ソルダーノ)
鳥の時間 (デ・マルキエル)
天上の時間と地上の時間とは関連性を持たず (セール)
天国の時間と地上の時間とは関連性を持たず (『宗門移住百科』)
福者の著しき誤解 (クーンミュンク)
福者たちと親子関係 (ボズウェル)
合一の至福 (バートン)
見捨てられた人々が天国に行くと (スウェデンボルイ)
地獄 (ヴォルテール)
地獄と永遠の罰の性質について (聖アウグスティヌス)
熊たちの天国 (ハイネ)
王党派 (ブロワ)
さかしま (ブロワ)
創案者 (ミル)
天国からの帰還 (パッチ)
変える勿れ (サンタヤナ)
インデイオ・ベラクーラ族の他界 (『宗教・道徳百科事典』)
呪文による救済 (デ・リパルダ)
星辰は魂である (プリンチャード)
栄光のかなた (コッホ)
ただひとりの住人 (L・デ・C)
完全への道 (偽スウェデンボルイ)
中国人による天部の四神 (ワーナー)
私の天職 (デ・サルドゥンビデ)
ファクシミリ (ザレスキー)
天使のようなさすらい人 (シレージウス)

著者名索引
訳者あとがき




◆本書より◆


「魔王(サタン)の告白
――ジョン・ミルトン『失楽園』(一六七四)
私がいくら飛翔しても行きつくところは必ず地獄。私が地獄なのだから。」


「地獄・天国そして現世
――バーナード・ショー『人と超人』(一九〇三)
地獄は非現実の祖国であり、幸福の探求者の祖国である。地獄は現実を愛する人々の祖国である天国を逃亡してきた者にとっての避難所であるし、また現実の奴隷の祖国である現世を逃亡してきた者にとっての避難所でもある。」


「球形の未来
――I・A・アイアランド『神秘主義早わかり』(一九〇四)
最後の審判の日、福者たちに天国の門が開かれるであろう。福者たちは転がりながらその門を入ってくるであろう。なぜなら最も完全な姿、つまり球となって復活しているであろうから。オリゲネスがそう教えている。」


「安息日
――カルメロ・ソルダーノ『模範的休日のレポート』(一九〇八)
天国のはずれで旅人が、一本の木にたくさんの白い鳥がむらがっているのを見た。いずれも皆何となく物悲しそうな様子をしている。「あの鳥たちは一体何者なのだろう」。旅人が尋ねてみた。「見捨てられた人々の魂なのです」との答えであった。「日曜日には地獄を抜け出る許可を得ているのです」。」


「地獄の鏡
――マルセル・ジュアンドー『道徳的価値についての代数学』(一九三五)
地獄がわからない人は、自分自身の心もわからない。」


「人間のなせる業(わざ)
――マルセル・ジュアンドー『道徳的価値についての代数学』
地獄とは神のなせる業(わざ)ではなく、人間のなせる業である。」


「地獄
――ビルヒリオ・ピニェラ『ぞっとするような話』(一九五六)
こどもの頃は、地獄は両親の口に上る悪魔の名前にしかすぎない。その後、この観念は複雑になり、思春期のいつ果てるともわからない夜など、わが身を焦がす炎――あの妄想の炎!――を掻き消そうと思い煩いながら、寝床で悶々と過すのである。それから、われわれの顔が悪魔のそれにだんだんと似はじめ、鏡を見ないようになると、地獄は精神的な恐怖に変わり、その苦悶から逃れるためにわれわれは地獄について書き始めるのである。すでに老境に入ると、地獄はもっと身近なものになるため、われわれはそれを必要悪と認め、その苦しみを味わう不安をさらけ出したりさえする。さらにそのあと(いままさにわれわれはその火炎の中におり)、身を焼かれながら、もしやこれに慣れることができぬものかと考え始めたりする。千年後、神妙な顔をした悪魔がまだ苦しいかとわれわれに訊く。苦しみよりも慣れてしまったことの方がはるかに大きいとわれわれは答える。ついに地獄を後にしてもよい日がやってくるのだが、われわれは懸命になってその申し出を断わるのである。慣れ親しんだ習慣をだれが捨てたりするであろうか?」




挟み込みの「アンデスの風叢書 内容見本」には、桑名一博、篠田一士、清水徹、鼓直、辻邦生、筒井康隆、中井英夫、中村真一郎、吉増剛造の推薦文が掲載されています。


中井英夫による推薦文:

「炎の塔 中井英夫

 ひところ義兄がしきりにアンデス高原を訪れるので訊いてみると、その地方の植物分布から推して、いまとは違った緯度にあった古赤道について調べているという。
 突拍子もないユニークな発想、となると、これはもうラテンアメリカ文学の独壇場で、時間も空間もたちまちきらびやかな衣装を纏って激しいリズムを奏で、傍ら人間と世界についての省察にかけては、いまこの文学に及ぶものはないほどに、かしこ、赫奕(かくやく)と炎の塔はそびえ立つ。
 いちはやくその魅力を紹介してきた編集者、刊行者諸氏の新しい企画は、名のとおりアンデス高原のさわやかな風をもたらすだろう。」











































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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