巌谷国士/桑原弘明 『スコープ少年の不思議な旅』

「だれもがどこかで見たことがあると感じる。懐かしい。切ない。なにか自分の源にまでつれもどされてしまいそうな、心をしめつける光景。」
(巌谷國士 『スコープ少年の不思議な旅』 より)


文: 巌谷國士
作品: 桑原弘明
『スコープ少年の不思議な旅』


パロル舎 
2005年12月1日 第1刷発行
2006年9月20日 第2刷発行
96p 
14.6×14.6cm 
角背紙装上製本 カバー 
定価1,700円+税



栗原弘明氏が製作した「スコープ」の数々を、巌谷國士氏の文章と共に紹介する、小さくて真四角な本です。アマゾンでバーゲンブックが本体680円で売られていたので購入してみました。
「スコープ」を作った桑原氏、そしてそれを見る「わたしたち」が「スコープ少年」であり、「スコープ」を覗くことによって「スコープ」のなかに入りこみ、前回紹介したボルヘスの本に引用されていたグザヴィエ・ド・メーストルの室内旅行記のタイトル「わが部屋をめぐる旅(Voyage autour de ma chambre)」そのままに、極小の室内宇宙を旅することになるのであります。
そして「スコープ」=胡桃の中の世界こそが、本質的に住所不定無職の「少年」たちの故郷であるといってよいです。


巌谷国士 スコープ少年の不思議な旅 01


帯文:

「掌にのる珠玉のスコープオブジェ
スコープ少年とは誰だろう?
誰しも目の前にスコープがあれば、
つい覗きこんでみたくなる。」



巌谷国士 スコープ少年の不思議な旅 04


帯裏:

「スコープをめぐる幻想旅行譚
白昼夢
フェルメール
セロ弾きのゴーシュ

scope
黒い男
窓辺
雨音
玉虫厨子
子供の部屋
深みの中へ
微かな記憶
窓辺の午後
秘かな中庭Ⅰ
秘かな中庭Ⅱ
中庭

ピラネージ
ねじれた記憶
現れよ
惑星
天使卵
ノスタルジア
月の光
夜のとばり」



巌谷国士 スコープ少年の不思議な旅 02


内容:

スコープ少年の……

部屋
 白昼夢
 フェルメール
 セロ弾きのゴーシュ
 鏡
 scope


 黒い男
 窓辺
 雨音
 玉虫厨子


 子供の部屋
 深みの中へ
 微かな記憶
 窓辺の午後


 秘かな中庭Ⅰ
 秘かな中庭Ⅱ
 中庭
 滝
 ピラネージ

ふたたび部屋
 ねじれた記憶
 現れよ
 惑星
 天使卵


 ノスタルジア
 月の光
 夜のとばり

……不思議な旅



巌谷国士 スコープ少年の不思議な旅 03



◆本書より◆


「外側は四角い、堅固な合金でつくられたその小さな箱を手にのせたとき、想像したよりも重く、なにかの予感が芽ばえる。私たちはそれだけですでに、不思議な旅へとさそわれている。
 その箱からは細い筒が出ていて、先端のレンズを覗くと、はじめはなにも見えない。箱の側面にある小さな円い穴に懐中電灯をあてたとき、はじめてくっきりと、またぼんやりと、部屋や庭の光景が見えてくる。
 懐中電灯の光を強めたり弱めたり、また別の穴にあてたりすると、おなじ光景がさまざまに変化しはじめる。
 私たちがほんとうに驚くのはそのときである。部屋や庭に置かれた机や泉水のような物たちが、光をうけて輝き、また影をおとす。
 窓の外では空が、朝、昼、夜と移りかわる。私たちはここではじめて、その光景がただの映像ではないことに気づくのだ。
 小さな箱のなかには、本物のオブジェたちがいる! 机も椅子も燭台も壺も、樹木も泉水も洞窟も滝も、すべてが極小のオブジェとしてそこに在るのだと知ったとき、私たちは一瞬のめまいにおそわれてしまう。
 それらはしかも、小さなままに見えるのではない。視野いっぱいに大きく見える。というよりも、私たちのほうが、ちょうど不思議の国のアリスのように、何十分の一にも小さくなったように感じられる。」



巌谷国士 スコープ少年の不思議な旅 05










































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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