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モルナール 『リリオム』 飯島正 訳

「お前は知らなかった。人間はわすれられてしまったとき、はじめて死ぬんだということをな。」
(モルナール 「リリオム」 より)


モルナール 
『リリオム』
飯島正 訳

中公文庫 C-17


中央公論社
昭和51年11月25日 印刷
昭和51年12月10日 発行
157p 
文庫判 並装 カバー 
定価240円
カバー写真: 奈良原一高



Molnar Ferenc: Liliom, 1909
「リリオム あるならず者の生と死 場末の伝説 七場」。
ロジャース/ハマースタインのブロードウェイ・ミュージカル『回転木馬』の原作です。


モルナール リリオム


カバー裏文:

「人を愛しながらも邪険にしかできない回転木馬の客引き、ならず者リリオムの愛と死を通して、人生の機微を感動的に描くハンガリー戯曲の世界的名作。日本でも築地小劇場以来、数限りなく上演されてきた原作の決定的な新訳である。」


カバーそで著者紹介文:

「一八七八年、ハンガリーの首都ブダペシュトのユダヤ系医師の家に生まれる。ジュネーヴの大学で法律を学び、ブダペシュトに戻って新聞記者となる。気のきいた短編を書きまくり、フランスのヴォードヴィル喜劇多数を翻訳。一九〇一年に長編小説『飢えた都会』を発表、児童文学の傑作で日本にも紹介された『パール街の少年たち』を書く。戯曲は一九〇二年の『ドクトルさん』、一九〇九年の『リリオム』以来、『近衛兵』『白鳥』『赤い粉砕機』『お人好しの仙女』などを続々発表、国際的な評価を得る。ナチス・ドイツの圧迫により一九四〇年、アメリカに亡命、一九五二年、ニューヨークで客死した。」


公園の回転木馬の呼び込みをしているリリオムは、心優しい正直者だが、不器用で、適切な感情表現ができず、雇い主に暴言を吐いて仕事をクビになってしまう。「女中」として働いているユリと知り合い、結婚するが、自分のふがいなさにいら立ち、ユリにも暴力を振るうようになる。やがて生まれてくる子どものためにもお金を稼がなければならないが、門番の仕事の口があっても、依怙地なリリオムは、自分は門番ではないから門番の仕事はできないと断わってしまうありさまで、とうとう悪い仲間に唆されて、強盗殺人に加担することに。が、金を奪おうとして逆にピストルを突きつけられ、警察に捕まりそうになったリリオムは、持っていたナイフで自殺してしまった。
だが、死んだらそれで終りではなかった。死後の世界の警察に取り調べられたリリオムは、十六年のあいだ浄めの火に焼かれた後、一日だけ地上に戻って、自分の子どものために何か「本当にうつくしい、本当に立派な行為」をするよう言い渡される。
再婚もせずに貧しい暮らしをしている妻と娘の元を訪れたリリオムは、しかし、どうしていいかわからず、つい娘を叩いてしまう。



◆本書より◆


マリ たしかに悪党よ、彼。
ユリ こうなることになってるのよ。
マリ あんたと一緒にベンチにすわっていたとき……私見てたわ……あのときはやさしかった。
ユリ やさしかった。
マリ このごろ乱暴になったの?
ユリ 乱暴になったわ。あすこですわっていたときはやさしかった。いまでもやさしくなるときもあるのよ。とてもやさしく、ひるすぎ、ここまで手回しオルガンがきこえてくるわ。さびしくなるのね。そんなときやさしいわ。
マリ なんかいう?
ユリ なんにもいわない。ただとてもかわいいの、やさしいの。すごくおおきな目をするの。じっと私を見つめて。
マリ あんたの目を見るの?
ユリ 目のわきかな、むしろ。私もまともに見つめられないの。彼、自分が働かないのを苦にしてるから。それで月曜日にわたしをぶつのよ。
マリ 自分が働かないから? 自分が働かないからぶつなんて、最低じゃない?
ユリ イライラしてるのよ。
マリ 痛い?
ユリ いいえ。(間)」

第一の男 さあ、きなさい。お前はこのつぐないをしなければならない。私たちは神の国の刑事なのだ。(中略)人生はこんなに楽におわるものじゃないのだ。いまでもみんなお前の名を知っている。顔だってちゃんとおぼえている。いつなにをいったかも知っている。どこへなにを置いたかもな。お前の目つきがどんなか、声がどんなか、握手がどんなしかたかも知っている。どんな足音を立てたかもな。その人間をおぼえてるひとがいるかぎり、ちゃんと始末をつけなくてはならないことがたくさんあるものだ。なあ、お前は知らなかった。人間はわすれられてしまったとき、はじめて死ぬんだということをな。」





こちらもご参照ください:

森鴎外 訳 『諸国物語 (上)』 (ちくま文庫)
















































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分野: パタフィジック。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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