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吉田健一 『英国に就て』

吉田健一 『英國に就て』

筑摩書房 昭和49(1974)年5月30日第1刷発行
261p 四六判 角背バクラム装上製本 貼函 定価1,600円
正字・正仮名



英文学者・吉田健一の英国エッセイ集。


英国に就て1


目次:

象徴
英国昨今
英国紀行
英国の文化の流れ
英国の形
ヴィクトリア風
英国の絵
*
英国の四季
英国の景色
英国再検討
英国の落ち着きといふこと
シェイクスピア
英国人に就て
常識
英国のクラブ
英国の飲み屋
ロンドン
ロンドンの公園廻り
*
英国点描
感想
旅の印象
マンチエスタア漫歩
チエスタア
日光浴
対日感情
国民性
飲んで食べた思ひ出
食べものと飲みもの
*
英国の料理
英国人の食べもの
パンとバタ
英国のビイル
お茶の時間

後記



英国に就て2


収録内容のうち、「英国の四季」「英国再検討」「英国の落ち着きといふこと」「シェイクスピア」「英国人に就て」「常識」「英国のクラブ」「ロンドンの公園めぐり」「英国点描」「感想」「旅の印象」「マンチェスタア漫歩」「チェスタア」「日光浴」「対日感情」「国民性」「飲んで食べた思ひ出」「食べものと飲みもの」「英国の料理」「英国人の食べもの」「パンとバタ」「英国のビイル」「お茶の時間」の二十三篇は、既に単行本『英語と英国と英国人』に収録されていたエッセイの再録、「英国の景色」は単行本『日本に就て』からの再録であり、本書で初めて単行本化されたのは残りの九篇のみ。昭和55年8月に刊行された集英社版『吉田健一著作集』では、この九篇だけが、『英國に就て』の表題のもとに、長篇小説『埋れ木』・長篇評論『覺書』とともに第二十三巻に収録されている。


英国に就て3


本書より:

「英国といふのは不思議な国で何かのことでどこまで無関心でゐられるだらうと思つてゐると或る時期になつて俄かに態度を改めてそれを実行に移す。例へば十六世紀辺りから十九世紀の前半まで家畜の品種の改良に力を入れたりする反面、英国での動物虐待には目を蔽はせるものがあつてさうして動物を虐待するのが大衆が愛好する公認の見せものの一つにさへなつてゐた。それが十九世紀になつて動物は保護すべきものといふ方向に英国人の考へ方が変り、これが急速に立法その他の措置が取られる結果になつて今では英国のやうに動物が完全な形で保護されてゐる国は先づないと言へる。曾て奴隷貿易が大きな収入になつてゐた英国が奴隷制度の廃止を決定したのみならず、その海軍力を行使して世界的にこの貿易を絶滅したのも別な例である。又最近ではロンドンで軽油以外の燃料の使用を禁止することでロンドン名物の霧がなくなつた。
福祉国家といふのもこの国民性といふのか何といふのか解らないものの顕著な例でこの制度に就て日本でも色々と聞かされはしてもその眼目は恐らくマルクス経済学とは違つた意味で階級制度の打破にあり、事実これは福祉国家の実現によつて打破された。(中略)言はば英国は人間以外の動物といふ比較的に善良な生物の救済に先づ成功し、次に人間といふ箸にも棒にも掛からない凶悪な動物の存在を安定させるのに世界に魁をして一つの手を打つたといふことになるだらうか。今の所はさう見える。」




吉田健一 『英国に就て』

ちくま文庫/筑摩書房 1994年9月21日第1刷発行/同年10月30日第2刷発行
280p 文庫判 並装 カバー 定価620円
カバー写真: "Picturesque Great Britain" (1926) より
解説: 「きわめつきの英国論」(小野寺健)
新字・新仮名



そしてこれはその文庫版。収録内容は前記単行本と同じ。小野寺健氏による解説を付す。


英国に就て 文庫


カバー裏文:

「故吉田健一氏とイギリスとの縁はきわめて深く、少年時代青春時代と彼地で教育をうけている。それ故に氏のイギリス文化全般に対する理解と造詣は群を抜いたものであった。氏がイギリスを語るとき、それは過度な誇張もなくまた矮小化もない。イギリス人と社会の奥深さをこれ程豊かな理解力をもって論じたエッセイは少ないだろう。」


本書「パンとバタ」より:

「英語でパンとバタと言えば、「ごく普通な」とか、「日常的な」とかいう意味になることが多い。しかしパンとバタを稼ぐというのは、生きていく為に働くことで、ただパンだけでなくてバタまでつけたところは、さすがは食いしん坊の英国人だという感じがする。
そう言えばカアライルの「フランス革命」には、革命が起こって国王というものがなくなってもまだ食べものがないので、パリの市民が怒ってパンとパンにつけるものを、と叫ぶ場面がある。そこの所は出典が明らかにされていないから本当にそう叫んだのかも知れないが、或いはここはカアライルの想像、或いは歴史家にも許される或る程度の脚色ではないかと思われる節がある。というのはカアライルはスコットランド人だったので、スコットランドがマアマレイドの本場であることがすぐ頭に浮ぶ。
マアマレイドというのは、日本ではオレンジの皮で作った少しばかり苦いジャム、または占領時代以後は、オレンジの皮で作ってあるのに苦味もなくてただ甘いジャムの名前になっていて、アメリカ製のマアマレイドを買っても、甘い他に別にどうということはない。しかし本もののマアマレイドは、そんなものではないのである。
まず色が違って、濃い茶色が光線の加減で金色に見える。そしてはっきりオレンジの皮の味がして苦くて、これをパンとバタ、ことにトオストにバタを塗った上につけて食べると、その他に欲しいと思うのは、丁度いい具合に入れたリプトンの紅茶くらいなものである。それでこういう大したものをスコットランド人に独占させておく手はないから、朝の食事やお茶の時にトオストにバタとマアマレイドを食べる習慣は全国全土に拡がり、それでもその本場がスコットランドであることはその後も変らないからその儲けがあり、スコットランド人がそれで文句を言うことがあるとも思えない。」




















































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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