別冊幻想文学 『中井英夫スペシャル I』 (改訂版)

「ぼくはあなたのおっしゃったようにちょっとかわいがっていただくという発想はとても持てないですね。むしろ手袋をたたきつけるという発想でしか向かえないものがありますね。」
(中井英夫 対談「怪奇と幻想の周辺」 より)


別冊幻想文学 
『中井英夫スペシャル I 
反世界の手帖』


幻想文学出版局 
1986年6月15日初版
1993年2月15日改訂版
240p
A5判 並装 
定価1,700円(本体1,650円)
編集人: 東雅夫
表紙デザイン: 建石修志



巻頭グラビア16p、本文中図版(モノクロ)多数。


中井英夫スペシャルI 01


中井英夫スペシャル I 反世界の手帖 目次:

少年とカメレオンの話 (中井英夫/画: 建石修志)
不思議の町のハネギウス (文: 中井英夫/写真・構成: 編集部)
 猫と少女
 踏切と死
 花と地蔵と抜け道
 店と人々
 法王庁にて

【幻の初期作品復刻】
燕の記憶 (緑川弓雄)

第十四次「新思潮」について (渡辺一考)

【インタビュー】
「燕の記憶」の頃――生い立ちを語る

【対談】
怪奇と幻想の周辺 (半村良/中井英夫)
『虚無への供物』にはじまる (笠井潔/竹本健治)

【エッセイ】
中井さんのこと (澁澤龍彦)
私と中井英夫氏 (椿実)
作家の後姿 (春日井健)
『虚無への供物』の世界 (泡坂妻夫)
かつて黒峠にて (須永朝彦)
十年目の薔薇 (山尾悠子)
「おゝ、厳格なる数学よ」とその後 (建石修志)

【評論】
黒鳥幻想 (金子博)
〈不条理〉への供物 (川村湊)
少年たちの時間旅行 (川崎賢子)
『とらんぷ譚』論 (倉阪鬼一郎)
黒衣の使者・中井英夫 (斎藤慎爾)
月蝕領測地図 (大橋喜之)
虚無への贅言 (加藤幹也)

【ブックガイド&リスト】
中井英夫主要著作ガイド (小林孝夫・倉阪鬼一郎 編)
中井英夫全著作目録&書評選 (幻想文学編集部 編)
 珍重すべき“壮大な愚挙” (都筑道夫)
 華麗な反推理小説 (権田萬治)
 脱生活の快感 (まつもとつるを)
 中井英夫の負記号の宇宙感覚 (種村季弘)
 優美な室内楽の追憶 (種村季弘)
 超越する“反世界”の魔――泉鏡花賞受賞の中井英夫氏に聞く (抄)
 さらば、われらが黒鳥の日々 (加藤郁乎)
 汚辱と悲しみにあふれた闘い (田中美代子)
 幻想の闇の中の聖痕 (磯田光一)
 エピキュールの園の人形芝居 (奥野健男)
 譚(はなし)の名手の高揚と抑制と (出口裕弘)
 数少ない語り手としての資質 (鷲巣繁男)
 秘教的な時間の揺成 (堂本正樹)
 整然とした迷宮世界 (松田修)
 狂気と俘囚への憧れ (伊東守男)
 「流刑の時空」の隔差 (由良君美)
 贅沢としての「言語地獄」 (高田宏)
 菊から菊へ (椿実)
 幻想作家の永遠の不幸の相 (高橋慎哉)
 “界隈”の光茫をつくる名人 (松岡正剛)
 青春の妖しい情念世界を描く (佐々木国広)
 主旋律は死・狂気 (市村繁幸)
 反地上性・美の継承・人外境 (佐藤通雅)



中井英夫スペシャルI 02



◆本書より◆


「「燕の記憶」の頃――生い立ちを語る」より:

「そういうふうに、血筋としてはまあ良いものを享けてるはずなんですけども、私めは、小学生の頃から変なことばっかり考えててね、たとえば地理ってのが分かんない。(中略)どこそこは物資の集散地で、人口がいくらなんて覚える必要あるかと。だから後にコンピュータが好きになったのもそれなんです。そんなこと全部コンピュータがやってくれりゃいいって。あれがまた足し算しか出来ないでしょう。引き算も足し算の裏返しでやっちゃう、掛け算はもとより。それがまた嬉しくって、ワケも分からずに出来たばかりのコンピュータ学院に通ったりしましたけれど。」


「怪奇と幻想の周辺」より:

中井 (中略)ぼくはもう一つ、仲間が少ないというのは、つまりみんな器用すぎて、推理小説でもSFでも何でも書けちゃう。それは一面で結構だと思いますけど、ただその場合、本気で“向こう”を信じてないんだなということ。どうも半村さんとか赤江瀑さんなんていう方は本気で“向こう”を信じてるというか、向こう側の非現実世界にむしろできたら行きたいんだというような感じがあるでしょう。それはどうなんですか。
半村 そうですね。まったくおっしゃるとおりなんですけど、(中略)そういうおっしゃり方とても苦手なんですよね。(中略)中井さんがおっしゃるように、向こう側を信じてるか、「はい、そうなんです。信じてます」って、とっても言いづらいんですね。こいつ気ちがいじゃないかと思われやしないかという……。
中井 (中略)三島由紀夫なんていう人は完全に向こう側を信じてた人ですよね。そういう人の持ってた、もうちょっと本気な推進力がないといけないんじゃないかという気がする。それがもう少しこの世界をおもしろくするゆえんで、器用さにまかせて書くということもいいでしょうけども、やはり読者にとっては……。」

半村 (中略)ただ、わたしはとっても発想法というか、人間のこしらえ方が、自分を芸人的にこしらえちゃったものですからね。ですから何をおっしゃられても、まずかわいがっていただくという姿勢ができちゃってるものですからね。」
中井 (中略)ぼくはあなたのおっしゃったようにちょっとかわいがっていただくという発想はとても持てないですね。むしろ手袋をたたきつけるという発想でしか向かえないものがありますね。」



「『虚無への供物』にはじまる」より:

竹本 (中略)あるときお酒をだいぶ召しあがってね、縁側に出て、そのままツツツと庭を横切って玄関のアーチの所に咲いてる薔薇とお喋りをはじめたそうです(笑)。そのうち急に“痛いッ”と仰って“お前は私に棘を刺すのかい”って。こんなこと話すと叱られるかな。
笠井 いいじゃないですか、美しい。」



泡坂妻夫「『虚無への供物』の世界」より:

「中井英夫はポウが書きたかったこと――幻想の世界を現実のものとして描き出そうとして発見した技術を使い、現実を幻想のものとして描くという放れ業を演じたのだ。反世界を突き付けられた読者は、もう、醒めるわけにはゆかない。
 私は『幻影城』の編集長に紹介され、何度か中井さんとお会いして奇術など演じたことがあるが、その表情はいつもあまり楽しそうではない。中井さんを本当に満足させるのは、本物の魔法使いしかいないからだ。」




中井英夫スペシャルI 04

建石修志「落下するアリスもしくは五時の行進」(1973年)。




































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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