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澤正宏 『西脇順三郎のモダニズム―「ギリシア的抒情詩」全篇を読む』

澤正宏 
『西脇順三郎のモダニズム
―「ギリシア的抒情詩」全篇を読む』


双文社出版 2002年9月10日印刷/同21日発行
188p A5判 丸背紙装上製本 カバー 定価2,800円+税
装画: 滑川秀和
装丁: 黒田正人



著者は1946年生まれ。西脇順三郎の詩集『Ambarvalia』所収の、「ギリシア的抒情詩」(昭和8年作)にまとめられた詩11篇と序詩「コリコスの歌」計12篇について、冒頭に詩集収録形と初出形を掲げ、西脇本人の自作解説その他の資料を参照しつつ、学術的に解読しています。そして詩的にもたいへんいきとどいた鑑賞であると思います。適宜参考図版も掲載されています。たいへん便利な本でもあるので、座右に置いておくとよいと思いました。


西脇順三郎のモダニズム1


表紙絵は滑川秀和という人の「美しき旅」という作品で、「かつて慶応大学文学部在学中に西脇順三郎に教えを受けた方」であり、著者と親交のある人だそうです。


西脇順三郎のモダニズム2


目次:

はじめに

第一章 コリコスの歌
第二章 天気
第三章 カプリの牧人
第四章 雨
第五章 菫
第六章 太陽
第七章 手
第八章 眼
第九章 皿
第十章 栗の葉
第十一章 ガラス杯
第十二章 カリマコスの頭とVoyage Pittoresque

あとがき

初出一覧
人名・書名・雑誌名索引



本書「はじめに」より:

「西脇順三郎の詩集『Ambarvalia』は、大正末年から昭和初年代にかけて盛んであった日本のモダニズム詩の、一つの到達点を示しているが、難解な表現が多いために、収められている詩篇一つ一つの、書き手の意図にそった読みや解釈の研究はまだ充分になされているとはいえない。この書でも充分な読みはできないが、制作期の最も遅い、実際には昭和八年頃に執筆された詩篇を選び出し、それらについての読みを試みてみたい。」

本書「あとがき」より:

「近代の抒情詩とは異質な、抒情が理知で統御されようとしている十一篇の詩篇を現代詩として読むこと、言い換えれば、「ギリシア的抒情詩」をモダニズムの手法の解明に主眼をおいて読むこと、この自覚がまず本書の原点であり、出発点にあった。
(中略)
モダニズムの詩の方法を具体的に明らかにし、読みの揺れ幅を極力少なくするためには、比較文化、比較文学などの研究方法を援用し、作者の表現にむけられた意図を考慮することをベースに置くことにした。」



西脇順三郎のモダニズム3


「ルドヴィシの玉座」


「眼

白い波が頭へとびかゝつてくる七月に
南方の奇麗な町をすぎる。
静かな庭が旅人のために眠つてゐる。
薔薇に砂に水
薔薇に霞む心
石に刻まれた髪
石に刻まれた音
石に刻まれた眼は永遠に開く。」



本書より:

「最終行の解釈の問題だが、大河原忠蔵は、「西脇順三郎は、これは石に刻まれた目だから、永遠に、まばたきすることがないという意味だと説明した」と、直接作者から聞いた「読み」を紹介している。」
「最終行は、眼は永遠の世界にむかって開いていると解釈するのではなく、眼は閉じる(まばたきする)ことのないままで開き続けていると解釈した方が、作者の意図にそうのである。」



西脇順三郎のモダニズム5


「杯「DIONYSOS SAILING」(エクセキアス作)」


「皿

黄色い菫が咲く頃の昔、
海豚は天にも海にも頭をもたげ、
尖つた船に花が飾られ
ディオニソスは夢みつゝ航海する
模様のある皿の中で顔を洗つて
寶石商人と一緒に地中海を渡つた
その少年の名は忘れられた。
麗(ウララカ)な忘却の朝。」



本書より:

「この詩については、既に、安部宙之介が、作者から直接聞き出したことをもとに読解を試みている。(中略)「初めに皿の絵のことを書き、つづいて空想の物語りを書いてある。『皿の中で顔を洗う』という言葉が、蝶番のように絵と物語りの二つの世界を結びつけ、そして、終りの一行が、古代ギリシャの麗かな素晴しい朝をあこがれる焦点となって結ばれている」と解している。」
「この絵をみたとき、作者はこの絵の由来を記しているギリシア神話を思い出したと考えられる。(中略)この神話は、海賊たちが金儲けのため少年を捕えてきて、船で海に乗りだすのだが、突然、船は動かなくなり、船上に葡萄樹が生え、房のついた葡萄の蔓はマストにからみつき、驚いて海に飛び込んだ海賊たちは海豚(いるか)に変身させられてしまうという内容である。この少年が実は酒神バッコスでも知られているギリシアのディオニュソス神だった。」




本書は、ヤフオクで500円、送料込だと660円で出ていたので買ってみました。が、なかに10ページ程、ピンク色のペンで傍線がくっきりと引かれていました。
他人が引いた傍線つきの文章というのは、何と読みにくいものなのでしょうか。



































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