粟津則雄 訳 『ランボオ全作品集』 

「尼僧ルイズ・ヴァナン・ド・ヴォランゲムに、――北国の海に向いた彼女の青い尼僧帽。――難破した人々のため。」
(アルチュール・ランボオ 「祈念」 より)


粟津則雄 訳 
『ランボオ全作品集』 


思潮社 
1965年2月1日 初版第1刷発行
1966年7月1日 第2刷発行
572p 
A5判 丸背紙装上製本 貼函 
定価1,800円
装幀: 駒井哲郎



本書「あとがき」より:

「ぼくが、はじめてランボオの詩に触れたのは、ほぼ、彼がフランス語の詩を書き始めた年頃であり、ちょうど今、ランボオが死んだ年齢になる。思えば奇怪な話だが、ぼくは未だに、ランボオというこの激越な嵐の渦中にあると言ってよい。おそらくこの嵐はおさまることはあるまいが、ぼくの精神の形成に決定的な影響を与えたこの詩人の作品を訳し終って、何はともかく、ほっとした思いだ。
 装幀は、敬愛する駒井哲郎氏の手になる。表紙に使ったのは、ぼくの好きな、駒井さんの銅版画である。」



本書は、新版も出ていると思いますが、これは旧版です。駒井哲郎の装幀がよいです。粟津則雄の訳文は、小林秀雄の先行訳を、かなり意識したものになっています。


ランボオ全作品集 01


文字は金箔押し。


ランボオ全作品集 02


ランボオ全作品集 03


目次:

初期散文
 〔太陽はまだあつく燃えていた……〕
 ルイ十一世にあてたシャルル・ドルレアンの書簡
 僧衣のしたの心

初期韻文詩
 孤児たちのお年玉
 感覚
 太陽と肉体
 オフェリヤ
 首吊りどもの舞踏会
 タルチュフ懲罰
 鍛冶屋
 〔一七九二年と九三年の戦死者たちよ〕
 音楽につれて
 水から出るヴィナス
 最初の夜
 ニナの返答
 びっくりした子供たち
 小説
 悪
 皇帝の怒り
 冬を夢みて
 谷間に眠る男
 みどり亭で
 いたずら好きな女
 ザールブルックの大勝利
 戸棚
 わが放浪
 烏たち
 坐りこんだやつら
 牧神の頭
 税関吏たち
 夕の祈祷
 パリの軍歌
 おれのかわいい恋人たち
 しゃがみこんで
 七歳の詩人たち
 教会の貧民たち
 盗まれた心臓
 パリのどんちゃん騒ぎ
 ジャンヌ・マリーの手
 看護修道尼
 母音
 〔星はおまえの耳のただなかで……〕
 〔正しき人〕
 花について詩人に語られたこと
 最初の聖体拝受
 しらみを探す女たち
 酔いどれ船

山羊の屁男爵の手紙
 山羊の屁男爵の手紙

後期韻文詩
 涙
 カシスの河
 渇の喜劇
 朝のよき想い
 忍耐の祭 1五月の軍旗/2一番高い塔の歌/3永遠/4黄金時代
 若い夫婦
 ブリュッセル
 〔彼女はエジプトの舞姫か〕
 飢餓の祭
 〔おれの心よ、いったい何だ……〕
 〔波羅門僧のごとく……〕
 ミシェルとクリスチーヌ
 恥
 記憶
 〔おお季節よ……〕
 〔狼は木かげで……〕

愛の沙漠
 愛の沙漠

福音書による散文
 〔サマリヤでは〕
 〔ガリラヤの軽やかな心惹く空気〕
 〔ベテスダ〕

地獄の季節
 〔おれの思い出が本当なら〕
 賤しい血
 地獄の夜
 錯乱Ⅰ (愚かなるむすめ)
 錯乱Ⅱ (言葉の錬金術)
 不可能
 閃光
 朝
 別れ

イリュミナシヨン
 大洪水のあと
 少年の日
 コント
 客寄せ道化
 古代
 美しい存在
 生活
 出発
 王権
 ある理性に
 陶酔の午前
 断章
 労働者
 橋
 町
 轍
 町々
 放浪者
 町々
 眠られぬ夜々
 神秘
 あけぼの
 花々
 卑俗な夜曲
 海景
 冬の祭
 苦悩
 首都の景
 野蛮人
 大売出し
 妖精
 戦
 若い日々
 半島
 さまざまな舞台面
 歴史の暮方
 ボトム
 H
 運動
 祈念
 民主主義
 守護神

ジュティストのアルバム
 百合
 閉じた唇
 艶なるうたげ
 〔私は三等の客車にいた……〕
 〔私はたぶん春よりも……〕
 〔人類は、進歩という……〕
 馬鹿話
 老近衛兵
 戒厳令?
 箒
 亡命
 呪われた小天使
 〔陳列窓の燃える眼に……〕
 〔枕頭の書……〕
 陰欝なる活写
 馬鹿なおいぼれの追憶
 追憶
 〔砲弾をひろいあげた……〕

乱行詩篇
 〔遠い昔のけものたちは……〕
 〔おれたちの尻の出来は……〕
 〔紫なでしこの花のように……〕

ラテン語詩篇
 〔学生の夢〕
 天使と子供
 ヘラクレスとアケロースのたたかい
 ジュギュルタ
 ナザレのイエス

訳註
ランボオ素描
あとがき



ランボオ全作品集 04



小林秀雄訳『地獄の季節』より:

「俺は正義に対して武装した。
 俺は逃げた。ああ、魔女よ、悲惨よ、憎しみよ、俺の宝が託されたのは貴様(きさま)らだ。
 俺はとうとう人間の望みという望みを、俺の精神の裡(うち)に、悶絶(もんぜつ)させてしまったのだ。あらゆる歓(よろこ)びを絞殺するために、その上で猛獣のように情け容赦もなく躍り上ったのだ。」



粟津則雄訳:

「おれは義に対して武装した。
 おれは逃げだした。魔女たちよ! 貧窮よ! 憎しみよ! おまえたちだぞ、おれが宝をあずけたのは!
 人間くさい希望など、おれの精神のなかから、ことごとく消してしまうことができた。よろこびの息の根をとめるために、おれは、ありとあらゆるよろこびのうえで、野獣のように音もなくはねた。」



小林秀雄訳『地獄の季節』「地獄の夜」より:

「――さて、俺一人の身を考えてみても、先ずこの世には未練はない。仕合せな事には、俺はもう苦しまないで済むのだ。ただ、俺の生活というものが、優しい愚行のつながりであった事を悲しむ。
 まあいい、思いつく限りの仮面はかぶってやる。
 明らかに、俺たちはこの世にはいない。何の音も聞えて来ない。俺の触感は消えた。ああ、俺の城館、俺のサックスと柳の林。夕を重ね、朝を重ね、夜は明けて、昼が来て、……ああ、俺は疲れた。
 怒りのために俺の地獄が、驕(おご)りのために俺の地獄が、――さては愛撫の地獄が、俺には要(い)ったのかも知れない。地獄の合奏。
 疲れた果てはのたれ死だ。いよいよ墓場か、この身は蛆虫(うじむし)どもにくれてやる。」



粟津則雄訳:

「――では、おれのことを考えよう。こんなことで別段この世がなつかしくなるわけではない。幸いおれは、もうこれ以上苦しむことはない。おれの昔の生活は、楽しい気ちがい沙汰にすぎなかった、そいつがなんとも残念だ。
 構うものか! 思いつく限りのしかめっ面をしてやろう。
 確かに、おれたちはこの世の外にいる。もはや物音ひとつしない。おれの触覚は消えた。ああ! おれの城館、おれのザクセン、おれの柳の林。夕を重ね、朝を重ね、夜を重ね、昼を重ね……おれは疲れた!
 怒りのために地獄に堕ち、傲りのために地獄に堕ちる。これがおれの定めなのか――それにまた怠惰の地獄、まるで地獄の合奏だ。
 おれは疲れて死にそうだ。墓穴だ、蛆虫になめられながら死んでゆく、身の毛もよだついやらしさだ!」



小林秀雄訳『地獄の季節』「別れ」より:

「まだまだ前夜だ。流れ入る生気とまことの温情とは、すべて受けよう。暁が来たら俺たちは、燃え上る忍辱(にんにく)の鎧を着て、光りかがやく街々に入ろう。」


粟津則雄訳:

「ところで、今は前夜だ。流れ入るすべての生気と真の情愛を受け入れよう。あけぼのとともに、おれたちは、燃えあがる忍耐で武装して、輝く町へ入ってゆくだろう。」





















































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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