種村季弘 『東海道書遊五十三次』

「つまりは情熱本位の遠近法。早い話が、自分の好きなものは見るが、嫌いなものは見ない。」
(種村季弘 『東海道書遊五十三次』 より)


種村季弘 
『東海道書遊五十三次』


朝日新聞社 
2001年12月1日 第1刷発行
2006年3月20日 第2刷発行
294p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,000円+税
装丁: 菊地信義
カバー図版: 菱川師宣「東海道分間図絵」



本書「あとがき」より:

「静岡新聞連載時は字数に制限があったので単行本化の際に大幅に加筆した。補遺としてさらに不足分を補ったので、新聞連載時の原形とはかなり面目を異にする結果になった。
 これとは別に、旅や紀行文に多少とも関係のある近年の文章、それも主に書評文を別立てに「東は東、西は西」としてまとめた。」



種村季弘 東海道書遊五十三次


帯文:

「祝! 東海道生誕400年。
在原業平『伊勢物語』から武田百合子『富士日記』まで、街道筋にちなむ書物五十三冊を独自の視点で厳選・紹介する紀行文コレクション―当代きっての博覧強記が道案内をつとめ、知的スリルに溢れる書物漫遊の旅!」



帯背:

「稀代の書物
漫遊記!」



帯裏:

「東海道を本の上で歩くとなると、まず思い当たるのは十返舎一九『東海道中膝栗毛』だ。しかしこれをまともに取り上げたのでは月並みもいいところだろう。そこで……まず右の『東海道中膝栗毛』だけは扱わないことに決めた。
次に第二の制約は、取り上げる本はだれでも容易に入手できる刊本に限ること。……そこで結果として普段着でふらりと東海道に遊びに出かける気分の書遊=書物漫遊の道中になったと思う。
(「あとがき」より)」



目次 (初出):

東海道書遊五十三次 (静岡新聞 2000年7月2日~2001年6月24日 「道しるべ」として連載されたものを改題・加筆)
 一 大泉黒石 『弥次郎兵衛喜多八』 (江戸)
 二 岡本かの子 『東海道五十三次』 (東海道)
 三 岡本一平 『手製の人間』 (東海道)
 四 岡本綺堂 『半七捕物帖』 (小田原)
 五 牧野信一 『熱海線私語』 (小田原)
 六 坂口安吾 『明治開化・安吾捕物帖』 (小田原)
 七 竹原春泉画 『絵本百物語―桃山人夜話』 (真鶴)
 八 三遊亭円朝 『名人長二』 (湯河原)
 九 三遊亭円朝 『熱海土産温泉利書』 (熱海)
 十 泉鏡花 『わか紫』 (熱海)
 十一 川田剛 『熱海鉱泉記』 (熱海)
 十二 都賀庭鐘 『古今奇談 英草紙』 (熱海)
 十三 作者不詳 『天明水滸伝』 (東海道)
 十四 川路聖謨 『長崎日記・下田日記』 (東海道・下田)
 十五 山本鐵眉 『東海遊侠傳』 (清水)
 十六 野沢広行 『黒船陣中日記』 (清水)
 十七 森枳園 『遊相医話』 (大磯)
 十八 森末新 『将軍と町医』 (相州)
    補遺: 医者と役者
 十九 金関丈夫 『木馬と石牛』 (富士山)
 二十 小山一成 『富士の人穴草子』 (富士山)
 二十一 武田百合子 『富士日記』 (富士山)
 二十二 深沢七郎 『妖木犬山椒』 (富士山)
     補遺: 八の宮について
 二十三 神沢杜口 『翁草』 (富士山)
 二十四 藤野順 『偽勅使事件』 (伊豆松崎)
 二十五 子母沢寛 『游侠奇談』 (甲州黒駒村)
 二十六 長谷川伸 『相楽総三とその同志』 (東海道)
 二十七 内田百閒 『第三阿房列車』 (興津)
 二十八 内田百閒 『東海道刈谷駅』 (刈谷)
 二十九 森島中良 『拍掌奇談凩草紙』 (鳴海)
 三十 森島中良 『琉球談』(興津)
    補遺: 富士の砂のこと
 三十一 在原業平 『伊勢物語』 (八橋)
 三十二 貝原益軒 『壬申紀行』 (東海道)
 三十三 勝小吉 『夢酔独言』 (東海道)
 三十四 古今亭志ん生 『びんぼう自慢』 (東海道)
 三十五 柳田國男 『東国古道記』 (東海道)
 三十六 松崎天民 『汽車乗お玉』 (東海道)
 三十七 雨雪軒谷水 『駿州府中 阿倍川の流』 (静岡)
 三十八 三田村鳶魚 『泥坊づくし』 (金谷)
 三十九 滝沢馬琴 『羇旅漫録』 (静岡)
     補遺: 奴の小万考
 四十 河村北溟 『断食絶食実験譚』 (東海道)
 四十一 土御門泰邦 『東行紀行』 (東海道)
 四十二 大田南畝 『改元紀行』 (東海道)
 四十三 鶯亭金升 『明治のおもかげ』 (東海道)
 四十四 川原崎次郎 『平賀源内と相良凧』 (相良)
 四十五 小宮水心 『古今名家随筆大観』 (東海道)
 四十六 佐藤健一 『和算家の旅日記』 (東海道)
 四十七 堀田六林 『蓬左狂者伝』 (熱田宮)
 四十八 松井柱陰 『実話 近世神仙物語』 (名古屋)
 四十九 西沢一風 『女大名丹前能』 (東海道)
 五十 司馬江漢 『江漢西游日記』 (東海道)
 五十一 司馬江漢 『無言道人筆記』 (金川)
 五十二 富山道治 『竹斎』 (東海道)
 五十三 浅井了意 『東海道名所記』 (東海道)

東は東、西は西
 田村隆一 (「まるごとの人―追悼・田村隆一」を改題/「一冊の本」 朝日新聞社 1998年10月号)
 田村隆一 未完詩集について (『帰ってきた旅人』 朝日新聞社 1998年刊 所収)
 織田作之助、またはいくつもの戦後 (『夫婦善哉』 講談社文芸文庫 1999年刊 解説)
 野坂昭如、あるいは敗者の話体 (『野坂昭如コレクション1』 国書刊行会 2000年刊 解説)
 東回りで来た老子 (「i feel」 紀伊国屋書店 2000年夏号)
 ユーモリストの本 (『二十一世紀に希望を持つための読書案内』 筑摩書房 2000年刊 所収)
 怖くない怪談 (「Poetica」 小沢書店 第6号 1992年)
 器物としての東京 (『鬼海弘雄写真集』 小学館 1999年 所収)
 ワープロ体験記 (「本とコンピュータ」 トランスアート 2000年冬号)
 明るい図書館・暗い書斎 (「図書館の学校」 図書館流通センター 2000年9月号)

あとがき




◆本書より◆


「岡本かの子の『東海道五十三次』は、日本画家の女主人公が風俗史学者の夫とともに二十年に及ぶ半生のあいだ東海道を何度か往来する物語である。」
「夫の説明では、「この東海道には東海道人種とも名付くべき面白い人間が沢山いる」のだという。」
「その一人が作楽井(さくらい)さん。(中略)三十四歳のとき、商用でふと東海道に足を踏み入れてから病みつきになった。」
「その作楽井さんがいうには、「東海道というところは(中略)、うっかり嵌り込んだら抜けられませんぜ」。
 岡本かの子の小説には、食道楽にしろ金魚飼育にしろ、何かこれといった情熱に取りつかれて現実生活を捨てて顧みなくなる偏執的狂的人物がしばしば登場する。」
「ちなみに(中略)夫なる人物が持ち歩いている地図は、現代の旅行にふつう使われている大本営地図ではない。菱川師宣作の「東海道分間(ぶんま)図絵」である。」
「客観的な空間を描いてある地図ではなくて、自分の情熱の対象(中略)のありかが強調されている図である。そういうものばかりが強調されるあまり、残りの現実の地理情報はなおざりにされるか、いっそ眼中になくなってしまう。そこで夫なる人は(中略)こんなこともいう。
 「昔の人は必要から直接に発明したから、こんな便利で面白いものが出来たんですね。つまり観念的な理屈に義理立てしなかったから……」
「つまりは情熱本位の遠近法。早い話が、自分の好きなものは見るが、嫌いなものは見ない。いや、見えない。
これを徹底させると、現実生活の遠近法は消えて、自分の関心事、つまり情熱ばかりが異様に強調された、秘密の間道ばかりで構成されたような作楽井式「東海道分間図絵」ができ上がる。ということは、この人の東海道地図は「観念的な理屈に義理立てして」おらず、彼自身の「必要から直接に発明」したものということになる。
 視野が狭いといえば、そういえないこともない。しかしそういう論理そのものが、世間並みの普遍妥当な理屈に義理立てしなければ生きていけない近代人の観点からいうことで、その種の窮屈な理屈への義理立てをさらりと捨て、情熱本意の自家製東海道に乗り出した作楽井さんのような人には通用しない。」






















































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

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