東野芳明 『マルセル・デュシャン』

東野芳明 
『マルセル・デュシャン』


美術出版社 
1977年1月20日 初版
1981年11月20日 4版
466p 
A5判 角背紙装上製本 カバー 
定価4,900円
装幀: 石岡瑛子



東野芳明(とうの・よしあき)によるマルセル・デュシャン論集。序文は瀧口修造。本文中図版多数。「年譜」は灰色の用紙にセピアで印刷されています。


東野芳明 マルセルデュシャン 01


帯文:

「なぜ彼は、こんなにも
軽いのか――芸術を
遊びのようにやった人

Let Me
hAve
youR baggage;
i will Carry it for you.
no nEed:
i'm wearing aLl of it.
John Cage - 1971

なぜ彼は、こんなにも
重いのか――いつでも
問題にされる人」



東野芳明 マルセルデュシャン 02


帯裏:

「〈現代美術の原基〉としてあまりにも名高いこの謎めいた巨匠にまつわる数々の神話のヴェールを透かし見ながら、その多様な作品の網の目と諸説紛々の解析の迷路が重なり合う〈デュシャン考現学〉の森のドラマに、わが国有数の Duchampian (デュシャン憑き)たる著者が積年の薀蓄を一挙にかたむけてここに会心の道案内!
序文=瀧口修造/年譜20頁/図版200点/総468頁/定価4,900円/美術出版社」



目次:

凡例

余白考 (瀧口修造)

1 伝説の崩壊
2 最後の油絵
3 〈花嫁〉とアンドロギュヌス
4 空っぽの制服たち
5 雌の縊死体テンマツ記
6 神話〈独身者の機械〉
7 ピカビアとデュシャン
8 待っている処女
9 ルッセルとデュシャン
10 塩売りの商法
11 東京ローズ・セラヴィ
12 ある男が噛んだ絵
13 ジョーンズとデュシャン

あとがき
年譜
文献目録
作品目録



東野芳明 マルセルデュシャン 03



◆本書より◆


「東京ローズ・セラヴィ」より:

「瀧口修造とマルセル・デュシャン――大へんなテーマを与えられて、まっさきに瀧口さんの、ある美しい誤訳(?)のことを思い出したのは、それをあげつらうためでないのはいうまでもなく、反対に、それがきわめてデュシャン流のユーモアを伴った出来事だからなのだ。
 デュシャンの「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」、通称「大ガラス」の下半分「独身者」。その右端に、三つ、銀メッキされた楕円形が縦に並んでいる部分がある。それをデュシャンは Témoins oculistes と命名しているのだが、瀧口さんの新潮社版(一九五九年、初版)『幻想画家論』のデュシャンの章では、これが、「占星術のしるし」と訳されている。あるいは、もっと早い例では、一九三八年十月号『みづゑ』誌の「調革の論理――マルセル・デュシャン」では「占星術者の證據物」となっている。」
「ぼくも、はじめての、かなり長いデュシャン論に挑んだとき、瀧口さんの訳をそっくりちょうだいしたことはいうまでもない。ところが、ある日、なに気なく oculiste という単語をあらためて辞書で当たってみたら、「眼科医、眼科医の」とあるばかりで、「占星術」とはどうも関係がないではないか。Témoins oculistes ――眼科医の証人。別名 Tableaux oculistes を考えれば、ずばり、あの視力検査に使う「検眼表」のことではないか。」
「瀧口さんの意表をついた訳はどこからきたのか。キエ辞典の oculiste の項に、類音語(パロニム)として oculariste, occultiste が挙げられており、occultiste がいま流行のオカルト occulte から派生した言葉だから、おそらく、oculiste をとっさに、c と t がひとつずつ加わった occultiste と読んだ結果、「占星術の……」という訳が生まれたのだろう。まさに、デュシャン一流の言葉の遊びに呼応した訳となったわけである。こういう場合、「眼科医の証人、検眼表」が絶対正しい訳で、「占星術のしるし」は完全な誤訳である、というのは、文法だの単語だのは馬鹿みたいに知っているが、言葉で生きたことのない語学バカの下賤ないいがかりでしかない。オキュリストとオキュルティストという、二つの類音語の間の曖昧にとけ合った地帯に Témoins oculistes という、これまた、ふつうでは意味不明の言葉が浮遊しているのであり、デュシャンは occultiste とも読めてしまうことを計算したうえで oculiste と書いたにちがいないのである。あの、French Window と読みかねない「Fresh Widow」のように。」



東野芳明 マルセルデュシャン 04






































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

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趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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