「季刊 思潮 6 テーマ: G・ド・ネルヴァルと神秘主義」 (1972夏)

「ネルヴァルには、昔のほうがよかったという尚古趣味があると思いますね。大古に人間の黄金時代があって、以後人間はだんだん悪くなってきているといった考えが、きっとあるんだろうと思います。」
(入沢康夫)


「季刊 思潮」 6
テーマ: G・ド・ネルヴァルと神秘主義

Gerard de Nerval et son prestige mystique

思潮社 1972年7月1日発行
290p 折込1葉 
菊判 並装 
定価590円
編集人: 菅原孝雄
表紙・目次・本文レイアウト: 清原悦志



思潮社の文学雑誌。
本文中図版(モノクロ)多数。


思潮 ネルヴァル1


目次:

1 
入沢康夫/渋沢孝輔/稲生永 座談会「ネルヴァル像への接近」
2
稲生永 「ネルヴァルの黒い太陽――『オーレリア』の黙示文学性」
大浜甫 「オルフィスムとその周辺――再生の憧憬・永遠の女性・冥界下り」
3
井田三夫 「偶然・夢・狂気・現実――ネルヴァルにおける認識論的懐疑」
篠田知和基 「夜の彷徨――『十月の夜』と漂泊のテーマ」
小浜俊郎 「散策游行をめぐる閑談――旅立ちからロマン派的カーニヴァルまで」
4
ジャン・リシェ 「象徴学とカバラ・マソニスムと数知学――作品典拠としての秘教諸説」 (橋本綱 訳)
アルベール・ベガン 「ロマン的魂と夢――生の変容と存在の開示」 (清水茂 訳)
ジョルジュ・プーレ 「夢想による円環の構造――錯乱する時間と空間」 (小副川明 訳)
5
ルネ・ドーマル 「昼盲者ネルヴァル――夢幻宇宙の深層」 (小浜俊郎 訳)
マルセル・プルースト 「不眠の祝聖と夢の色彩について――サント・ブーヴに反論して」 (川田靖子 訳)
6
アルセーヌ・ウーセィ 「同時代の証言――狂死の謎を巡って」 (内村瑠美子 訳)
井村実名子 「ネルヴァルとゴーチエ――ルーベンス風の女性を求めて」
7
齋藤磯雄 「王者の末裔――ネルヴァルとリラダン」
金子博 「似肖――ネルヴァルとボードレール」
饗庭孝男 「ケルト神話をめぐる覚書――自然渇仰と不滅再生について」
安藤元雄 「括弧の中の暗闇――ネルヴァルのもどかしさ」
生田耕作 「『オーレリア』再読――ネルヴァルとわたし」
鈴村和成 「薄明の四時間――パリからロワジイへ」
8
ネルヴァル年譜 (篠田知和基 編)
写真・図版43葉



思潮 ネルヴァル2


「ネルヴァル像への接近」より:

入沢 ネルヴァルには、昔のほうがよかったという尚古趣味があると思いますね。 大古に人間の黄金時代があって、以後人間はだんだん悪くなってきているといった考えが、きっとあるんだろうと思います。
稲生 ぼくもそれには賛成です。 ネルヴァルの最後に行きついた世界というのは、全部後ろ向きですね。 ヴァレリーが人間というのは常に後ろを向きながら前進すると言ったけれども、ネルヴァルではその前進が実は、後退であるわけです。
入沢 一番原初の世界へ戻ることになります。 神秘主義においても、そういうところに失われた原初世界の鍵が不完全な形ででも残っていないかというふうにして探しているわけでしょう。」



思潮 ネルヴァル3


アルベール・ベガン 「ロマン的魂と夢」より:

「夢は仙女たちの手が織る衣であり、得も言われぬ匂いがする。
                                        ネルヴァル」

「ジャン=パウルやユゴーの場合と同様に、初源のものへの感情が、失われた幼年時代をなつかしむ感情に結びつくとともに、万物が生誕の、不断の融合の、止むことなき混乱の状態にあるあの混沌(カオス)のヴィジオンにも結びついている。 ジャン=パウルが彼のよび起こした夢のおかげでみたものと、ネルヴァルが自分の夢のなかで通った燃える風光との間には、奇妙な類縁性がある。 地球をつきぬけて穿っている同じ深淵が、中心の焰と、融けた金属の流れが地球の胎内で描いている白熱した水脈との傍を通りぬけている。
けれども、ネルヴァルの場合には、ジャン=パウルやユゴーの大饗宴にくらべて、表現がはるかにつつましく、まことに微妙に節度を保っているようにみえながら、夢のなかの大いなる住人たちは、ずっとはっきりした神話的意義をもっているようである。 恐がらせたり、安堵させたりすることに気をつかっている幽霊たちにつきまとわれている人間ではなくて、この世界には、神々の間での争いがみられるのである。

水に浸されたある尖頂には、うち棄てられた一人の女が髪をふり乱して、死とたたかいながら叫んでいるのが、まだ見える。 彼女のうめくようなアクセントは水の音を制していた……彼女は救われたのだろうか? 私は知らない。 彼女の兄弟である神々が彼女に罰を加えたのだ。 だが、彼女の頭上には《夕べの星》がかがやき、彼女の額に燃えるような光線を降りそそいでいた……いたるところで、《永遠なる母》の苦しんでいる姿が死の苦しみを味わい、涙を流し、嘆いていた。

『オーレリア』の第二部の夢は、はじめは暗く、絶望的だが、すこしずつ色彩が変ってゆく。 同時に、はじめの幾つかのヴィジオンに現われるおそろしげで、苦しげな人物たちは、一連の慈悲深いとりなし人たちに譲歩する。 オーレリア自身が現われるが、せつなる願いにもかかわらず、赦しを与えずに姿を消してしまう。 ついで、一人の見知らぬ女がジェラールを咎める。 だが、ほどなく、「甘美な、よく透る光」に浸された楽園ともいうべきあるこころよい果樹園で、夢みる者は、女神が自分に現われるのをみながら、「ふしぎな酔い心地にひき込まれる」のを感じる。 この女神には、彼の希望的な瞬間のすべての守護者たちの顔が一つになっており、彼に次のように言う――

私はマリアと同じです、おまえの母と同じです、また、あらゆる姿のもとにおまえがつねに愛したものと同じです。 おまえが一つの試煉を経るごとに、私は自分の素顔を覆っているマスクを一つずつとり除きました。 ほどなく、おまえは私のありのままを見るでしょう……

つぎに、「はじめての甘美な夢」がふたたび神的な存在を連れてくる。 《聖母》の赦しを予告しに来たのである。 そして、すべては《死》にうち克つ《救世主》の、《とりなしの女性》を伴っての、光りかがやく出現を用意する無限の調和にみちた、すばらしい夢によって完結する。」



思潮 ネルヴァル4

ギュスターヴ・ドレ「ネルヴァルの最期」。































































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