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レーモン・ジャン 『ネルヴァル』 入沢康夫・井村実名子 訳 (筑摩叢書)

「彼は死の八ヵ月前に、父に向って、次のような、人の憫笑を誘いかねない楽観的言辞を書き送った。「私の状況は良好です。一切は将来にあるのですけれども。」
 彼の作品ほど、未来によって「正当性を認められた」作品は、まずないのである。」

(レーモン・ジャン 『ネルヴァル』 より)


レーモン・ジャン 
『ネルヴァル
― 生涯と作品』
入沢康夫・
井村実名子 訳

筑摩叢書 214

筑摩書房 
1975年3月20日 初版第1刷発行
1985年5月30日 初版第2刷発行
189p 目次1p 
口絵(モノクロ)8p 
四六判 並装 カバー 
定価1,600円
装幀: 原弘



「訳者あとがき」より:

「本書は「永遠の作家叢書」 Coll.“Écrivains de Toujours” の一冊、レーモン・ジャン Raymond Jean 著『彼自身によるネルヴァル』 NERVAL par lui-même (Éditions du Seuil, 1964) の全訳である。」
「本訳書は、ほぼ時を同じくして、筑摩書房から刊行されることになった『ネルヴァル全集』全三巻に対する、一つの読解の手引きともなることを期待しつつ訳出されたもので、はじめの二章(中略)は入沢が、第三章(中略)以下巻末までは井村が担当し、それぞれの訳稿を交換して意見を述べ合い、訳を正し合い、また固有名詞などの統一をはかった。「テクスト」の部分については、前記『ネルヴァル全集』に収録される作品からの引用は、この『全集』における訳者各位の訳文を用いさせていただいた。(中略)なお原書にはかなり多くの写真や図版が挿入されているが、本訳書では翻刻権の関係でその訳四分の一のものを再録した(再録できなかったものの一部は前記『ネルヴァル全集』に口絵として収録されるはずである)。」



別丁モノクロ口絵図版16点。


レーモン・ジャン ネルヴァル


目次:

ネルヴァル、昨日と今日
ジェラール・ラブリュニーからジェラール・ド・ネルヴァルへ
解放された時
読むこと、そして旅すること
作家ネルヴァル
展望

テクスト
年譜
書誌

訳者あとがき




◆本書より◆


「ジェラール・ラブリュニーからジェラール・ド・ネルヴァルへ」より:

「ネルヴァルの、父との関係について物語るべきかもしれない。その関係は、王政復古期と七月王政期の同時代者たちが生きた諸世代間の葛藤を、この上もなくはっきりと明らかにしている。この時代に歴史の中へ入って来る若者たちは、ナポレオン叙事詩の響きを子守唄に聞いて幼年期をすごしたのだ。しかし、彼らが青春に達するとき、戦争が浪費した苦難・怨恨・傷口・毀損や、戦争がいたるところに残した砂漠の如き荒廃しか、彼らはもはや見出さない。この歴史の空虚にあって、彼らは自分自身を知ろうと努める。彼らは、父親たちに対し、挫折と破産と途方もない失望とを遺したことについても、父親たちが彼らの人生よりももっと刺戟的な人生を持ったことについても、同時に不満を抱く。彼らは、現実の世界から亡命して、想像的なものの世界、狂乱の世界、夢想の世界(ネルヴァルの場合には、神話の世界)の方へと退くことによって、この失望から逃れる。しかし、彼らの父親たちは現実の言語を語りつづけているとき、彼らの持ち前のものとなっていた慎重さ、用心深さ、不信の念の中で、彼らは、自分たちが父親たちと共通の言語つまり意志伝達の手段をもはや持っていないことに気づく。そこから、悲劇的な聾者の対話が生ずる。ネルヴァルとその父親との間で交されたすべての書簡の中に跡づけられるのが、それである。医師ラブリュニーは、息子に自分と同じように医師になってほしかった(彼らは一八三二年のコレラ流行に際して、いっしょに何度も往診をする)のであり、つまり、息子に比較的安定した確実な身分を手に入れてほしかったのだ。彼は文学者という職業に対しては敵意しか抱いていない。文学は、彼の目から見ると、金をもたらすことのできるものでもなければ、社会的地位を保証できるものでもないのだ。ジェラールは、文学がこの二重の要請を充たし得るのだということを父に納得させるために、一生の間、精魂を費いつくすことになる。」
「彼が、修業時代に、彼よりは長生きをすることになるこの父親に、次のように書き送ったのは、たしかに当っていた。「幸か(引用者注: 「幸か」に傍点)不幸か、芸術の道にひきこまれてしまった若者は、実際、いつの時代も変らぬ猜疑の目で見られ、普通の青年よりずっと苦労が多いのです。」〔書簡四六〕
 これが、高等中学(リセ)を出るが早いかジェラールをとらえた運命である。」



「作家ネルヴァル」より:

「友人のジョゼフ・メリーは彼がどんな具合に『シルヴィ』を準備していたかをこう述べている。「……ジェラール・ド・ネルヴァルはあせらずに、そして興の赴く時に仕事をするのだった。彼の書き物机はあちこちどこにでもあった。メルシエのように標柱石の上で書き、カフェの小さい円テーブルでもよかったが、決して自分の部屋では書かなかった。服のポケットには四角い紙の切れはしがつまっていたが、彼はしばしば最良の文章(ペリオド)を紛失してしまうのだった。太陽が彼を田園の散策に誘うと、鉛筆を手にして郊外に出かけ歩きまわり、時々、とても人には判読できないような字で、春の若々しい自然が吹込むあらゆる快い事どもを書きとめる。それから後で、この沢山のばらばらの小さい頁を整理し、即興の誤りをただし、真実性のあやしい点は改めて確かめ、可能なかぎり完璧な文体に仕上げ、筆耕をやとって、印刷屋が引受けてくれるような全篇の形をつけなければならなかった。この最初の原稿については、あらためて修正の仕事が必要だった。筆耕にとってもまた仕事のやり直しであり、出費もさらに増えた……」〔メリーが一八六四年雑誌に発表した回想記から〕。」



































































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将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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