FC2ブログ

種村季弘 『贋作者列伝』

「オリジナリティをむやみに尊重するのは近代特有の呪物崇拝である。」
(種村季弘 『贋作者列伝』 より)


種村季弘 
『贋作者列伝』



青土社 
1986年9月11日 第1刷印刷
1986年9月16日 第1刷発行
270p 
21.5×14cm 丸背紙装上製本 カバー 
定価1,800円
装幀: 高麗隆彦




美術作品贋作者列伝。雑誌「ユリイカ」連載。
『ハレスはまた来る 偽書作家列伝』の姉妹篇です。本文中図版(モノクロ)63点、表1点。



種村季弘 贋作者列伝 01



帯文:

「〈美〉は人を狂わせる
凡作も偉大な画家の作品と銘打たれれば、たちまち〈傑作〉に早変わりする。からくりの多い美術市場を横目に見て、至芸を披露する贋作者たち―― 。〈美〉は贋作には不在なのだろうか。」



目次:

ゴッホという幻想 オットー・ヴァッカー
ブロマイドのマリア ファイ V.S. ロータール・マルスカート
サイタファルネス王の王冠 イズライリ・ルホモフスキー
映画化された贋作過程 アルチェオ・ドッセナ
贋作を作らなかった贋作者 ベッピ・リフェッサー
無署名のデューラーたち
胴着姿の哲学詩人 ジョヴァンニ・バスティアニーニ
愛国者 V.S. 贋作者 ハン・ファン・メーヘレン I
画家 V.S. 批評家 ハン・ファン・メーヘレン II
コレクター V.S. 批評家 ハン・ファン・メーヘレン III

あとがき




種村季弘 贋作者列伝 02



◆本書より◆


「映画化された贋作過程 アルチェオ・ドッセナ」より:

「そもそもドッセナの「作品」を語の正確な意味で「贋作」と呼べるかどうかの判断はかなり難しい。彼の「贋作」には、どれ一つとしてオリジナルがないのである。つまり特定の巨匠のスタイルを模してはいるが、ドッセナの指先を通るとそれは当の巨匠の「新作」となる。巨匠が作らなかった、けれども作ったとしてもすこしも不思議はない作品ばかりを創出したのである。いみじくもマックス・フリードレンダーは、ドッセナとあのルーヴルを欺いた贋作彫刻家ジョヴァンニ・バスティアニーニの二人を並べて「贋作者の貴族」と命名したものだ。」
「過去の巨匠の未発表の、つまりは知られざる傑作。何もない虚空からドッセナの手が発掘したのがこれだとするなら、当然美術史は書き替えを迫られることになる。事実ドッセナの作品は、一時にもせよ美術史を変えた。彼のシモーネ・マルティーニ作と称するマドンナ彫像は、フィレンツェのウフィッツィの美術館にある有名なマルティーニのフレスコ画『受胎告知』のマドンナのポーズを立体に移したものだ。むろんシモーネ・マルティーニが大理石なり木材なりから彫刻したという事実は、これまでの美術史にはまったく知られていない。だから贋作だとは一人として思いつきはしなかったのである。逆に、だからシモーネ・マルティーニが彫刻家でもあったという新事実が判明したと人びとは思い込んだ。
 これほどの凄腕の持ち主が、ではどこでその腕を磨いたのだろうか。蓋を開けてみれば、正体は意外なことに、正規の美術教育を受けたことのない職人である。ドッセナは独学だったのだ。(中略)生家は貧しく、(中略)食うや食わずの日傭職人の身空でイタリアの諸方を転々と渡り歩く、世にもしがない無名石工にすぎなかったのである。」



「あとがき」より:

「オリジナリティをむやみに尊重するのは近代特有の呪物崇拝である。ルネッサンスの画家たちはしばしばオリジナルを二点かそれ以上制作した。戦争や政治的動乱のために一点が破損または劫掠されても、スペアの他の一点が残されるための配慮からである。したがって作品のオリジナリティを保証する画家個人の署名も(まだ)意味をなさない。署名=オリジナル=コレクターの個人所有というサイクルが発生するのは近代的自我の発生と同時である。
 教会や王の権威に自明に帰属していた芸術は、近代的自我の発生とともにバラバラに解体され、ブルジョアジー個人の所有に帰した。この所有には自明の根拠がない。したがって作品は流動する。美術市場が発生し、所有をかりそめに根拠づける美術エキスパートが出現する。こうして本書にもしばしばふれた、(贋)作者=美術エキスパート(または画商)=顧客という美術市場的制度が定着し、制度が定着すればこれをはぐらかすペテンがかならず発生するので、本書に述べたようなエピソードが次々に産出されたのであった。」









































































関連記事
スポンサーサイト



プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本