堀一郎 『日本のシャーマニズム』 (講談社現代新書)

「子どもの時からいんきないんきなもの」
「人よりの中へはちょっとも出る気にならなんだ」

(中山美伎)


堀一郎 
『日本のシャーマニズム』

講談社現代新書 256

講談社 
昭和46年7月16日 第1刷発行
昭和49年2月20日 第2刷発行
228p 
新書判 並装 カバー 
定価310円



著者は1910年生、宗教民族学。


堀一郎 日本のシャーマニズム


カバー文:

「天界から死者の霊を呼ぶ〈口寄せ〉、
神のお告げを人間に伝える〈ミコ〉……。
エクスタシーの中に超理性の声をきく
シャーマン現象は、古代から日本にも数多い。
本書は、高等宗教の強い影響を受けつつも、
いまなお日本人の宗教心のなかに生きつづける
シャーマニズムの本質をさぐる。」



カバーそで文:

「文化としてのシャーマニズム――シャーマニズムは、
たんに古代的、博物館的な存在ではない。
その上限は先史時代の靄(もや)のなかにかくれており、
狩猟、牧畜、農耕の各文化層をつらぬいて、
その下限はこんにちに至っている。
つまり常民とともにその存在意義を主張しつづけてきたのである。
人類のもつ最古の文化であり、そして歴史をこえて
それぞれの民族、その社会構造、風土、歴史的環境などに
応じて種々の文化や習合をとげてきた、最も長い生命力をほこる
文化所産と見るべきである。――本書より」



目次:

まえがき

1 ミコの系譜
 1 君主から神楽ミコまで
    さまざまなミコ
    宗教的君主としての女性
    カンカカリ
    朝鮮のミコ
    アイヌのツスとイム
 2 北方系と南方系
    死者に語らせる
    真正巫と擬制巫に大別
    中山美伎の神秘体験

2 聖の領域に入る――シャーマニズムとは何か
 1 エクスタシー
    根強い生命力
    シャーマンということばの由来
    女のシャーマンと男のシャーマン
    エクスタシーに対する見方
    シャーマンの一般的特色
 2 シャーマンの資格
    世襲と召命
    人格聖化
    真正シャーマンの優秀な能力
 3 社会の不安とシャーマニズム
    アノミーの状態
    宗教が発生するとき
    近代日本の宗教運動
    生き神としてふるまう
    教祖的人格

3 燃える人――呪的カリスマとしてのシャーマン
 1 この世のきずなの外に立つ
    カリスマ的英雄
    現世的価値の拒否
    「楯なくして進撃する」
    燃えるシャーマン
    天界飛翔
    天界の扉をひらく樺の木
    鳥への変身
 2 イニシエーション
    シャーマンの受ける試練
    自己否定と自己変革
 3 狂熱のオージー
    生命のエネルギーをかきたてる秘密祭
    民衆の人格を混沌に導く
    近代に見られるシャーマン
    大衆の社会離脱行為

4 山伏の神秘体験――密教のシャーマニズム 
 1 民衆と結びつく
    タントラ仏教
    火焔を背負う明王たち
    真言宗を受けいれた基盤
    鎌倉新仏教と密教との関係
    日本的カリスマ
    日本神道の根強さ
 2 山伏、修験者の足跡
    役行者の伝説
    葛城の一言主神
    「山伏」の本義
    死と再生の儀式――羽黒山の入峰(にゅうぶ)修行
    修行のクライマックス
 3 山嶽に他界を求めて
    山嶽信仰
    冥界歴程の説話
    道賢上人冥途記
    共通するモチーフ

5 人の姿で現れる神――古代日本のシャーマニズム
 1 アラヒトガミ
    「氏神型」と「人神型」
    「氏神型」の特色
    「人神型」信仰の特徴
    神々のはたらき方
    道真の怨魂
    若狭彦神
    「たたり」をもって出現する神
 2 神の妻たち
    その資格
    姫命たちの呪力
    呪的カリスマとしての卑弥呼
    神功皇后紀の政治形態
    女帝と執政者の組み合わせ
    天皇の権威獲得の秘儀
 3 神と人との交流
    ミコということば
    巫覡交替
    生き神さま

6 たたりにおびえた時代――密教の全盛期 
 1 たたり
    社会不安とわざうたの流行
    民間巫覡の活躍
    神の怒り
    個人のたたり
    人間の怨魂
    民衆の攻撃性のはけ口
 2 加持祈祷
    怨魂のいっせい蜂起
    「よりまし」
    政敵をふるえあがらせる
    擬制シャーマン

7 死者の霊をよぶ――口寄せミコの系譜
 1 「口寄せ」とは
    十一世紀に発生
    あるきミコ
    巫女集団
 2 口寄せ巫女はシャーマンか?
    フェアチャイルドの批判に答えて
    口寄せ巫女と真正シャーマンの違い
    イラタカの数珠
    「九重の守り」
    梓弓
    くどき
    横死者の霊を呼ぶ
    トランスにならないらしいこと
    「ひとりがたり」と「問い口」
    「くどき」から芸能へ
    卑賤視

8 踊り念仏と念仏踊り――日本シャーマニズムの芸能化
 1 「狂燥エクスタシア」
    持経者と念仏ひじり
    源信と空也
    阿弥陀のひじり
    突如踊りだした一遍上人
 2 なぜ踊り狂うか
    空也の生きた不安の時代
    タマシズメ呪術の復活
    狩猟民との結びつき
 3 うかれ女、くぐつ女
    遊女たちの神
    熊野比丘尼

9 現代日本とシャーマニズム――呪的カリスマへのノスタルジア
 1 人間神化の傾向
    人を神に祀る条件
    怨霊を統御する神
    秀吉、家康の場合の人間神化
    生きながら祀りあげられた例
    苦しむ神の説話
    無限に神をつくりあげる
 2 ねぜ女性シャーマンが多い?
    女か子どもに神がつく
    日本女性の強い被暗示性
 3 日本人のあきらめと熱狂
    「ええじゃないか」
    個別的カリスマを持つ
    マス・エクスタシーとナショナリズム

参考文献




◆本書より◆


「ミコの系譜」より:

「現代の新宗教運動の基をひらき、そのモデルケースの一つとなった天理教教祖中山美伎(みき)(一七九八―一八八七)は、「子どもの時からいんきないんきなもの」、「人よりの中へはちょっとも出る気にならなんだ」と述懐しているように、内向的な性格であった。」
「中山美伎のトランス、エクスタシーにおける神秘体験は、そののちの「みかぐら歌」、「お筆先」、「泥海古記(どろうみこうき)」などのなかからうかがえる。そしてこうした教祖型人格のなかに、母系社会から父系社会への移行、神聖王権の形骸化の歴史過程のなかに全く民間に埋没し去った真正シャーマンの遺伝的要素を見のがすことはできない。とくに徳川幕藩体制下では、宗教統制はきびしく、多くのシャーマンはすぐれた組織者を得て教祖となる機会も全く失われていたといえる。従って巫女はわずかに歌舞賽神の業と、口寄せの業とにその形態的命脈を保ってきたともいえそうである。そしてまたこのことが、巫女を社会の底辺にうごめく迷信邪宗の徒とするいわれなき偏見を導き出した。(中略)そうした偏見を解くためにも、まずシャーマニズムとは何か、シャーマンとは何かを説明する必要がある。」



「聖の領域に入る」より:

「シャーマニズムについては、すでに多くの学者の定義があるが、ここでいちおう作業仮説的な定義づけをしておこう。それはシャーマン(巫覡(ふげき))というエクスタシー(脱魂・忘我)技術を身につけた特殊な呪術宗教者を中心に、これをとりまく信者群によって形成される宗教現象であり、呪術的であるとともに、多分に神秘主義的で、かつ密儀的な性格をもつもの、と規定することができよう。」

「一般にシャーマンの資質としては、神経質で気むずかしく、興奮しやすく、夢みがちであり、幻覚や意識喪失、失神やてんかん性発作をおこしやすい性格をもっているといわれる。」

「教祖的人格には、次のような共通の特色がある。
 (一) 先天的に異常体質の持ち主であったということ。入巫以前には病弱で、孤独を愛する内向的性格がいちじるしく、しばしば幻覚や幻聴になやまされた経験を有している。
 (二) 強烈な個人的危機意識、社会不安、熱病などにともなって、イニシエーション的な精神違和(いわ)、すなわち職業的シャーマンになる前段階に見られる精神的違和――極度の偏食、不眠、高熱、突発的なてんかん性発作、肉体の衰弱にともなう異常な精神興奮、夢幻、狂踏(きょうとう)や彷徨(ほうこう)の発作的衝動、内的灼熱感(しゃくねつかん)――を体験している。
 (三) その結果として脱魂、意識喪失の状態のもとで、天界や地下界の他界遍歴、神々や精霊、魔的存在との出会い、降霊、降神などの神秘体験と試練を経ている。
 (中略)
 (五) お筆先、神伝歌(しんでんか)、みかぐら歌、神界物語、特有の神話など、イニシエーション的なエクスタシー、意識喪失のさいの神秘体験やそののちのトランス体験から得た教理書や啓示文学を創作している。
 そしてこうした特徴は、また中央および北アジアから満洲、朝鮮、北海道のシャーマンに見られる典型的なものということができる。
 つまり、シャーマンとは、「聖」の領域にかかわり得ない凡人、教祖的人格資質を持たない俗的な無資格者にとっては、まさに異常な、「誰でも真似のできるというわけにはいかぬ、特殊な、超自然的とも考えられる肉体的、精神的資質の所有者」なのである(ウェーバー)。」




こちらもご参照ください:

C・ブラッカー 『あずさ弓 ― 日本におけるシャーマン的行為』 秋山さと子 訳 (岩波現代選書)
佐々木宏幹 『シャーマニズム』 (中公新書)
『ミシェル・レリスの作品 4 日常生活の中の聖なるもの』 岡谷公二 訳































































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