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萩原幸子 『星の声 ― 回想の足穂先生』

「煙草買いに行って、お釣りをくれたので涙が出た。僕の言うことが人に通じたから」
「自由に生きるとは、おそろしい税金を払うことだ。覚悟が必要だ。負けないだけ強くなくては駄目だ」
「私も一般にくらべて変っている。変ったことを引受ける覚悟こそ必要です」

(萩原幸子 『星の声』 より)


萩原幸子 
『星の声
― 回想の足穂先生』
   

筑摩書房 
2002年6月10日 第1刷発行
116p 口絵i 目次3p 図版1p あとがき3p
18.5×13cm 丸背紙装上製本 カバー
定価1,800円+税
装幀: クラフト・エヴィング商會



著者は1925年生。筑摩書房版『稲垣足穂全集』月報連載の文章をまとめた本です。
巻頭(目次その他)と巻末(「あとがき」その他)は見返しと同じ青色っぽい用紙に印刷されています。


萩原幸子 星の声 01



帯文:

「「われわれの地平線は
無限であるべきです」
稲垣足穂と出会って50年余、
静かに刻む追想の記。」



帯背:

「稲垣足穂
没後25年に
捧げる」



昭和二十四年春、勤めていた役所を辞めた著者は、古本屋へ本を売りに行く。そこへ一升瓶を下げて入ってきたのが足穂で、

「そこの台の上に置いてあった白い本を手に取り、つかつかと私に近づきながら、
 「若い人はこういう本を読まなくてはいけない。僕は稲垣足穂です。これは僕が書いた本です」
 扉のページをひらいて見せながら、いくらか誇らしげにそう言う。私は稲垣足穂という名を知らなかったし、突然で返事も出来ないでいると、
 「いまここにないけれど、この本をあなたにあげます」
 お酒が入っている。でも無邪気に明るく、連れの人も主人も声を立てて笑い出した。」


そして急に恥かしくなった著者が店を出ると、

「その人もあとから来て並んで歩き出した。
 その時、突然、
 「ブルーン ブルーン ブル……」
 力をこめて唇をふるわせ、円を描くように右手を大きくグルグル廻す。なにごとか、とびっくりした。これが、先生得意の飛行機の爆音の口真似と知ったのは、十年以上も経ってからなのだ。」



目次:

出会い
行方しれず
宇治恵心院
宇治から桃山へ
丘上の家 その一
丘上の家 その二
受賞まで
受賞後
お伴しながら
助手を呼ぶ
きっぱり
病床で
最後の日々

あとがき



萩原幸子 星の声 02



◆本書より◆


「「――自分はいま転換期にあるので無収入だけれども、これは……と思う自信ができるまで筆を執らないことにして今日に至っている」」

「話題が暮し向きにかかわることになると、ほんの少しその話に及んだだけでも、先生は黙ってしまう。
そして、座を立って床に入り、頭から布団を被ってしまった。終始静かなゆっくりとした動作であった。」

「「麻田剛立は、生徒から届く月謝に酒肴料と書いてあると、きっとそれで肴を買ったそうだ」」

「「僕に何を言う資格があるのか」」

「何か訊ねると、先生は黙ってしまうことがよくある。すぐには答えずに黙ってしまう。
 ご自分に関しての質問には、間を置いて考え、私の問いの程度より自分にとっての正確さで、正直に本気に答えようとされたのを思い出す。」

「聞いているのか、いないのかわからない、こういう時はたびたびあって私も知っている。黙っていても聞いている。あれは先生の聞き方なのだ。その場や相手に合わせていそいで何を言うのか。」

「「今はまだ機会が来ません。そのうち先方からやって来るでしょう」」

「「そうであってもいいし、そうでなくてもいい。どっちでも同じだ」」

「「リズムを持って暮しなさい。無理をしてはいけない。ゆっくりすることだ」」

「「それで『A感覚とV感覚』を書かれた」
 「ちょっと止めようかと思ったけれど……抽象的だし……その頃ですよ、煩悶したの。A感覚いかんと思う。非常に罪ってものを感じましたね」
 「先生がそう思われたのですか」
 「やっぱりよくないからなA感覚。煩悶しましたね。いかんと思う。立派なことやないからな。(中略)」
 「でも、先生が……考えられない」
 「そうそ、反対のようなこと言うてるからね、だけどいかんと思う。立派なことやないからね」」

「「きちんとするな、きちんとすると死んでしまう。やりっ放しでなくてはいかん」」

「「僕は飛行機を書いている時がいちばん楽しかったな」」

「「わからないことは、わからないままでいい。それはそのまま放っておきなさい」」

「「われわれが現にここにいるのは、無限に死んだり生きたりしてきたからここにいるのではないか」」

「「木や石は一生そこを動かないで生きている」」

















































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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