FC2ブログ

M・ポングラチュ/I・ザントナー 『夢占い事典』 (種村季弘 他 訳/河出文庫)

「エジプト人の信仰によれば、人間の心は眠っている間は天なる原大洋の水中に浸っており、そして翌朝そこからすっかり若返って浮上してくる。この原大洋こそはしかし――エジプト語ではヌン(nun)――あの世であり、死者の国なのである。人間の心はそこで神々と神となった死者たちから夢を授かり、この夢が人間をみちびきかつ人間に未来の姿を打ち明ける。」
(M・ポングラチュ/I・ザントナー 『夢占い事典』 より)


M・ポングラチュ
I・ザントナー 
『夢占い事典』
種村季弘・池田香代子・
岡部仁・土合文夫 訳

河出文庫 ホ-2-1

河出書房新社 
1994年11月25日 初版印刷
1994年12月2日 初版発行
610p 索引x 
文庫判 並装 カバー 
定価1,200円(本体1,165円)
カバー画: 「ベリー公の聖母祷書 “甦る死者”(部分)」
装丁: 中島かほる
デザイン: 粟津潔

M. Pongracz & I. Santner : Ddas Koenigreich der Traeume - 400 Jahre moderne Traumdeutung -, 1963



本書「序」より:

「本書の初めの部分では夢解釈の歴史的展開、夢の書と夢解釈者の歴史が叙述され、第二部では夢象徴とその変遷がたどられる。最後に第三部のアルファベット順(邦訳では五十音順)に並べた索引部ではもっとも重要かつ頻度の高い夢の新旧の解釈が総括される。」


「訳者あとがき」より:

「M・ポングラチュはエジプト学者、I・ザントナーはドイツの精神分析学者である。訳文分担の配分は、原著者序文から第一部「夢解釈の歴史」ギリシア篇までが種村季弘、これ以後ローマ篇から土合文夫、第二部は前半が池田香代子、「動物」以後が岡部仁、第三部は池田、岡部の共同による。全体の訳文の統一は種村によるが、細部の用語統一等は池田香代子によるところが多い。」


「文庫版訳者あとがき」より:

「本書は、先般(一九八七年)河出書房新社より単行本として出版された、ポングラチュ、ザントナー『夢の王国』翻訳を文庫化したものである。
 原著はもともと夢判断用に編集された実用読み物なので、この度の文庫化に際して、書店側と相談の上、訳題を「夢占い事典」と改題した。」



本文中図版(モノクロ)15点。


夢占い事典 01


カバー裏文:

「古代エジプト、メソポタミアから現代の精神分析学にいたるまで、夢に関するおびただしい書物が書き著されてきた。これら古代、中近東、中世の珍しい『夢の書』を広く収集し、現代の夢解釈と比較考証した結果、不思議な事実があきらかになった。本書はその成果を伝えるとともに、人類四千年の夢解釈の歴史を俯瞰し、夢の象徴表現を比較・分類する。」


目次:



第一部 夢解釈の歴史
 エジプト 神の王の夢
 メソポタミア 魔霊の支配
 ギリシア 夢の洞窟への降下
 ローマ 暗躍する夢のスパイ
 イスラエル タルムードの支配は夜も続く
 アラビア 神に憑かれた魔術
 ヨーロッパ中世 暗鬱な夢、燦然たる火刑台
 現代 人格を解く鍵としての夢

第二部 夢の象徴表現
 人体
  眼
  毛髪
  髭
  歯
  肉
  血
  糞
  尿
 人間
  男
  女
  肉親
  死者
 行為
  飛行と墜落
  歩行・走行・束縛
  埋葬
  よろこびと悲しみ
  結婚
  死
  性交
  闘争
 動物
  動物全般
  猿
  蟻
  驢馬
  魚
  兎
  犬
  ライオン
  馬・乗馬
  蛇・龍
  鳥類全般
  梟
  鶏
  鴉
  鳩
 身のまわりのもの
  衣服
  色彩
  履き物
  帽子・花環・冠
  金・貨幣・装身具
  武器
  容器
  鏡
  家
  扉・鍵
  船
 自然と宇宙
  大地・畑
  木
  庭
  火
  水
  太陽・月・星

第三部 頻度の高い夢とその解釈
 夢の書
 頻度の高い夢 便覧

訳者あとがき (種村季弘)
文庫版訳者あとがき (種村季弘)
図版解説

参考文献
第二部・第三部事項索引



夢占い事典 02



◆本書より◆


「第一部 夢解釈の歴史 ギリシア」より:

「今日では「心の自己更生傾向」と名づけられている態の出来事が、当時は「神託夢判断(インクバチオン)」と呼ばれた。昔も今も、これは、肉体と心とがそこでは不可分の一体と見なされている、有機的機構全体の概して突如たる健康回復の意味と解されていたし、またいまもそう解されている。ギリシア人たちのそもそもの初めの、真の神託夢判断の部屋は右のようなものとして直接(じか)に治癒の効果があった。夢が一種の医学的案内所のようなものとなり、患者がそこで服用すべき薬物薬剤を照会するようになったのは、ようやく後代の衰微期に入ってからのことである。
 二十世紀の精神医の寝椅子(カウチ)の上で夢の報告プラス「自由連想」を紡いでいるおびただしい数の患者すべてのうち誰が、あのモダンな治療法の威厳のいかなるものだったかを知ろうか? 自分の医院診療室のベッドがあの古代聖地の場所の双生児であり、そしてあの古代聖地の場所でも夢を見る人がコントロールを解かれてまったく同様のあり方で身心の共同作業を通じて健康を回復したのだと、わきまえている人がいようか? 夢の洞窟または神殿での治癒の眠りとの相似はまさに驚歎に値する。
 夢の洞窟のなかの治癒の眠りには、きわめて祝祭的な、正確に考えぬかれたある儀式が不可欠だった。それは、その衝撃的な感銘の深さにおいておそらく現代のショック療法に比肩しよう。
 患者を日常の軌道から外らして「魔法」の方向に合わせるために、いくつかの印象深い前仕度が用いられた。まず患者は冷たい川の水浴を命じられた(中略)。次に獣の生贄が運び込まれ、祭司がその内臓から治療開始の時間に吉か凶かを占った。吉兆であれば患者は夜の間に「前仕度の家」から二人の十三歳の処女に迎えられて川まで連れてこられ、そこで洗浄と塗油をほどこされるのだった。
 祭司はそれから患者を二つの泉の水を飲みに連れてゆく。忘却(レーテー)の泉と記憶(ムネモシュネー)の泉とである。これは患者がこれまでの一切を忘却し、のちに夢体験をふたたび思い出すだろうことのためである。次いで彼は、ふだんはきびしく隠されている神の立像を見せられた。これは鍛冶屋ダイダロス、あの伝説的な最初の空飛ぶ人イカロスの父が作ったとされるものである。大事なことは、患者にこれまでの生涯を思い起させそうな一切をそぎ落とすことだった。つまり患者は「生れ変」らなくてはならないのだ。彼は象徴的に白い麻布の服を着せられ、何本もの長い紐で襁褓(むつき)に包まれた赤児のようにしばられるのであった。」
「ここで儀式本来のものが患者を待っている。あの蒼古たる、秘密を孕んで生動している夢の洞窟がそれであった。梯子を使って患者は礼拝場へ降りてゆき、下に着くと、さらに両足で人一人分しかない狭い穴のなかをもっと下のほうへと這って行かなくてはならなかった。膝までそこへもぐり込むやいなや、まるではげしい水の渦に巻き込まれるようにしてすっかり洞窟のなかに引きずり込まれた。すると患者はいまやこの不気味な場所に、身を護るものとてもない丸腰の状態で存在している。洞窟に巣食っている蛇のために患者はあらかじめ蜜菓子をひとかけら持ってきていた。
 ここで夢の神託を待つのに――ときには一日中かかるともいわれた。患者がついにはっきりと夢を見つくすと、それからまたこの地下の母胎から外へ出ることを許された。」

「アスクレピオスの神殿でも、各種各様の浄化儀式を身に受けてから、そのあと患者は睡眠に入った。睡眠そのものは「至高聖所(アバトーン)」(Abaton)のなかでとりおこなわれ、そこには(中略)、健康回復の三体の神、睡眠の神ヒュプノス・エピドテス(寛大なる者)、夢の神オネイロス、健康の女神ヒュギエイアが祀ってあった。
 至高聖所(アバトーン)で眠るときには、この目的のためにだけ定められた独特の寝台、すなわちクリーネ(近代語の病院(クリニック)はその呼称をここにさかのぼる!)の上に寝た。つまるところこれは、あのフロイトの精神分析の寝椅子(カウチ)の原型である。」



「第三部 頻度の高い夢 便覧」より:

「【蟻】
バビロニア-アッシリアの夢の書 ある人の家に蟻がいるのを見たら、その家運は傾き、病人がいれば死ぬであろう。
アルテミドロス 羽蟻を見るのは破滅および多難な旅の前触れであるが、そのほかの種類の蟻は農夫に豊かな稔りをもたらす……。
夢を見る人の身体のまわりを羽蟻が這いまわっていたのであれば……蟻は冷たく黒く、また大地の子であるゆえ、死の予言である。
ガブド-アッラフマーン 蟻は同居人である。……蟻が家や村その他の場所から出てゆく夢を見たら、そこに住む者の死ないし病、その場所の荒廃の兆し。
アポマサリス おしなべて蟻は死の前兆である。ある場所、ある住いで蟻の大群が穴から這い出てくる夢を見たら、その夢を見た者は遠からず死ぬであろう。しかし、通りを這っていた蟻がわが家に入ってくる夢を見たら、その夢を見た当人は患うことになろうが、家僕の数は増えるであろう。
アド-ダミリ 夢にあらわれる蟻は弱く貪欲な人間、軍隊、さらには過剰を表わす。富者にとってこの夢は凶。
ダニエル 蟻を見るのは敵から身を守れとの前知らせ。
ビルクマイヤー 蟻は平民であるが、飛ぶ蟻はいとも高貴な秀でた人物を表わすこともある。しかし蟻が何かを汝の耳、鼻、口、あるいは肛門に運び入れたりなかに入り込んだりしたら、それは汝の主人の死因を示す。
近代の夢占いの書 蟻を見るのは不愉快事や、利益はあっても骨の折れる労働を意味する。耳に蟻が入る ― 死。
現代の夢研究 蟻は同居人を意味するが、きわめて意味深い象徴化においては非難をも意味する。飛ぶ動物はすべて死神の使者とされ……(シュテーケル)。」































































関連記事
スポンサーサイト



プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本