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フォルケ・ストレム 『古代北欧の宗教と神話』 菅原邦城 訳

フォルケ・ストレム 
『古代北欧の
宗教と神話』 
菅原邦城 訳


人文書院 
1982年10月20日 初版第1刷印刷
1982年10月30日 初版第1刷発行
338p(うち図版32p)
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,800円



本書「訳者あとがき」より:

「ここに訳出したのは、Folke Ström: Nordisk Hedendom, Tro och sed i förkristen tid. Andra upplagan. Göteborg: Akademiförlaget, 1967. すなわち『北欧の異教――キリスト教以前の信仰と習慣』第二版で、第一版は一九六一年に出た。(中略)もともとデンマーク、ノルウェー、スウェーデン複数出版者共同の“スカンディナヴィア・ユニヴァシティ・ブックス”叢書の一冊として、主に大学生レベルの読者を対象にしてまとめられた概説書である。人口に膾炙した神話の要約解説ばかりでなく、より広く北欧の先史時代からキリスト教到来時まで三千年余の期間の信仰をも紹介考察する。」
「索引は、(中略)スウェーデン語原書のものよりも格段に詳しくしてある。」
「添付された地図は原書にはなかったが、日本人読者の便宜を考えて新たに付けたものである。
 本書に含まれている写真は、大多数のものが原書と共通する。」



別丁モノクロ図版32点、地図2点。


ストレム 古代北欧の神話と宗教 01


帯文:

「先史時代からヴァイキング時代まで
北欧神話のオージンやソールの物語、キリスト教到来までの北欧人の運命、霊魂、死にたいする考え方を紹介。世界樹をめぐる宇宙観など言語、民俗、考古学の宝庫」



帯背文:

「北欧の神々と
神物語」



カバーそで文:

「カバー表図版(本文82ページ)
古代北欧において行なわれた祭儀の一面を表わす、ゴットランド島刻画石碑。上から三番目の画面に首をしめられてつり下がっている人間がみられ、猛禽が襲いかかろうとしている。右側には、剣で装備した一団の男たち、先頭の者が祭祀司祭者に縛られた鳥を手渡そうとしている。祭壇の上方には合わさった三個の三角形が見える。その意味は隠されて不明であるが、宗教的な象徴表現と推定される。」

「本書はデンマーク、ノルウェー、スウェーデン複数出版社刊の原題「北欧の異教――キリスト教以前の信仰と習慣」のスウェーデン語版よりの翻訳。著者フォルケ・ストレム博士はスウェーデンの宗教史の専門家、とくに民間信仰の研究で有名。」



目次:

序説

第一部 先史時代
 1 石器時代の狩猟民宗教と農耕民宗教
 2 青銅器時代の宗教
 3 鉄器時代

第二部 ヴァイキング時代
 1 社会 法秩序 宗教
 2 祭祀とその諸形態
 3 世界の創造と秩序
 4 神々と神物語 上位と下位の諸力
    神集団、「支配する者たち」、アース族とヴァン族
    オージン
    ソール
    テュール
    ウッル
    ヘイムダッル
    バルドル
    ロキ
    ヴァン族――ニョルズ、フレイ、フレイヤ
    ニョルズ
    フレイ
    フレイヤ
    ヴィリーとヴェー
    フリッグ
    ヘーニル
    ブラギ
    イズン
    ゲヴュン
    ルーズコナ、ルーズグザ
    フォルセティ
    ヴィーザルとヴァーリ
    低位のアース女神たち
    ディース、ヴァルキュリャ、フュルギャ
    地霊
    アールヴ
 5 運命信仰
 6 霊魂信仰と人格認識
 7 死の信仰と死の習慣
 8 呪法
 9 世界の滅亡と再生
 10 分解 異教の滅亡

訳者あとがき
図版
図版説明
参考書目
索引




◆本書より◆


「第一部 先史時代」より:

「自然人には、文明人の動物にたいする支配者態度は無縁なものである。動物は、実際に人間の優越者と見なされないにしても、人間の対等者とは見なされる。動物の感覚の鋭さ、力、迅速ぶり、あるいは他の諸性質はその十分な証拠である。この評価から、自然人をとりまく動物世界に対する自然人の姿勢が決定されるのである。これはふつう尊重、尊敬を特徴とする。狩猟者が自己の生存のために殺すことを余儀なくされるという事実は、これに対する矛盾とは認識されない。人間に食糧として役立つことは動物の天性の一部をなし、これを動物は、対等なパートナー間の一つの任意の合意と見なすと考えられるのである。
 有名な例を一つあげるならば、ラップ人の熊祭はこのような認識を表わしているのである。スウェーデン人牧師ニウレニウスは十七世紀に、ラップ人が熊の屠殺とその斃された熊の消費を伴う儀式について記述している。とりわけ熊の骨は、注意深くとっておかれ、その後それは埋葬された。その理由を尋ねたところ、次のように答えらえた。すなわち、あらゆる動物が話すことのできた太古に熊が、「もしも人間が私の死んだ後、これらの儀式と栄誉礼でもって遇するならば、私はいついかなる時でも人間に害することなく殺されてやろう」と語ったのである。」

「ユラン〔ユトランド〕半島の火葬墓(ヒマーラン地方ボレモーセ)出土品は、北欧人の祖先の間で火葬の習慣の背後にある考えがいかなる方向へ向っていたかを、具体的かつ明白な仕方で裏付けている。ボレモーセで一人の若い人間の焼かれた骨といっしょに、焼かれた鳥の骨および小ガラス六羽とミヤマガラス(ないしカラス)二羽の切断された翼が発見された。翼を死者の火葬薪の残りの上に置くことの意図は、誤解される余地はほとんどなく、十二枚の小さい翼と四枚の大きな黒い翼を、その死者の霊魂を死の国にもたらす、想定された運び手とみる説明は、我々は喜んで支持するものである。」



「第二部 ヴァイキング時代」より:

「神聖化された占取区域の外には、無人の荒野が横たわっていた。荒野の無人地帯では、未知なるものへの不安が支配した。荒野の荒寥は空虚などというものではなく、そこは、魔(デーモン)的諸存在の住まう荒寥なのであった。ただ法益剝奪の者のみが「森に入る者」(skóggangsmaðr)として、人間と神の共同体から追われて、荒野での生存を余儀なくされた。このような人物は、祭祀共同体に顕現する連帯には、もはやなんの関わりももたなかった。わずかにキリスト教的に装いながらも、その起源と精神では全く異教的なアイスランドの法規「恒久平和の定め(トリッグザマール)」は凝縮した文章で、法益剝奪の者の生存をめぐる観念を我々に示してくれる。平和を破った者は――といわれる――「いかなる所にても人間たちの間で忍耐されず、いずこにてもすべての者から追い払われる――狼どもが狩りたてられ、キリスト教徒たちが教会に詣で、異教の徒らが神殿で犠牲を捧げ、火が燃えたち、草が生え、多弁の童子が母に呼びかけ、母が息子を産み、男たちが火をともし、船がすべり進み、楯が輝き、太陽が照りて雪が降り、フィン人が旅に赴き、隼が春の長き日を飛びつつ両の翼の下に、真直ぐな追風が吹き、蒼穹が弧を描き、大地に人が住み、風が海へと水を運び、農夫らが麦を播く限りは……」法益剝奪の者は死後も、氏族共同体と墓の神聖の分け前にあずかれなかった。彼は無権利と「不浄」(úheilagr)のまま転がっていた。その死体が発見されたならば、ものの言えない畜生の死骸同然に「それは石だらけの土地に捨てられた」のである。」

「宇宙の秩序は、根底ではもろい、そして刻苦して維持される秩序なのである。これは、常にその存在を脅かされていた。他の諸民族と同じく北欧人も、一つの大きな恐れに支配されており、その恐れとは、生命を増進する神々によって支えられた秩序が崩壊する定めにあるというものである。この脅威は、ウートガルズの諸力、巨人たちからやってきた。巨人たちは原初時代の存在であり、天地創造史にあって混沌(カオス)時代を代表するものである。
 しかし混沌、無秩序はまた、神々の囲い柵と人間たちの居住域の外に位置する荒地、すなわち森林、山岳、海洋の特色をも示す。したがって我々はきまって、これら荒涼たる地域に巨人たちの棲家を見出すのである。昔話では今なお、ほかならぬ森や山から巨人たちの重い石塊が勢いよく人間の居住域の境界めがけて転がってくる。恐ろしさにおいて劣らぬ巨人の女たちは、山から出てきて荒々しく泡立ち、御しがたいまで嵩(かさ)を増す急流の擬人化なのがひんぱんである。
 巨人界の諸力に対して、不断の監視をする仕事が必要であった。というのは、巨人の努力はすべて存在を混沌へ引戻すことだったからである。人間たちの守護者にして疲れを知らぬ見張人は、神々中第一の戦士ソールで、この神はまた世界秩序の維持者でもあった。巨人たちに対するソールの戦闘をめぐる神話の中で北欧人は、秩序の存続においた自らの信頼、混沌の諸力を押返して荒地からくる脅威を遠ざけておく可能性においた自らの信頼を表現する。しかし巨人は多数を誇る種族であり、また彼らを恐るべき反対者となす諸特質を備えていた。彼らは甚大な体力ばかりか、深い知恵も有していたのである。古代の物の見方に従えば、知恵とは隠された事物を理解することと同義であった。この見方にとって、他のものよりも原初時代から発した存在の方が世界の秘事について多く知っていることは自明なのである。これは単純な宇宙論的論法である。」

「ベルセルクとウールフヘジンの呼称は、これら勇士の服装、つまり熊の皮ないし狼の毛皮を示唆する。民族移動時代のエーランド島トーシュルンダ出土の青銅板に槍で武装した像――狼の頭部、狼の皮と尾と人間の足を備える――が描かれており、これはどう見ようともオージン戦士である。これら衣服の背後に我々は、原始的な思考を垣間見る。すなわち、ある獣の皮を身につける者は、そうすることによってその獣の特質の一部、その野生性と力にあずかるのである。こうして熊の服と狼の服は、呪術的な獣への変身を、その目的としていた。サガ諸作にも、ベルセルクたちが明かした獣的な野生性の例が、多数示されている。強調されるのは、なかんずく彼らの無分別な激情とすさまじい咆哮である。」

「原始的な思考にとって、死と知恵の贈物との間には密接な関係が支配する。我々が知恵と呼ぶ精神的財産は、原始的な思考法にとっては、秘されたものを見通す洞察、通常の知識追求の手段によっては獲得不能な超自然的(オカルト)に知ることと同義なのである。真の価値を有する知恵は、世俗的な性質のものでない。それは大いなる宇宙のさまざまな謎、原初時代の出来事、世界の起源と神秘的な秩序、そしてこれの最終的な運命にかかわるものである。この種の知識は日光の明るい世界に属さず、その源泉は地下と死との国から発する。あるエッダ詩の中で巨人が、彼がそのはなはだしい知識をいかにして獲得したか尋ねられたとき、その返答は、彼は地下と死との諸世界すべてをへめぐることによってその知識を得たというのである。」



ストレム 古代北欧の神話と宗教 02


「トルロン出土男子の頭部」。


ストレム 古代北欧の神話と宗教 03


「オーセベル船墓の据付物の中の獣頭」。





































































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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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