塚本邦雄 『異国美味帖』

「イタリアやフランスを旅すると、到るところに、ピンポン球大の林檎が生っていて、試みに口にすると、日本の銘品よりさっぱりしていおいしい。夏の旅の楽しみの一つである。」
(塚本邦雄 「林檎(りんご)」 より)


塚本邦雄 
『異国美味帖』


幻戯書房 
2013年7月31日 第1刷発行
182p 
四六判 
角背紙装上製本 カバー 
定価2,400円+税
装幀: 間村俊一
装画: 「桃の籠とぶどう」(ジャン・シメオン・シャルダン)



塚本靑史氏による「跋」より:

「『異国美味帖』は、月刊誌『味覚春秋』(味覚春秋モンド)に「ほろにが菜時記」として、一九八五年四月号から二〇〇〇年七月号まで連載されていたものの抜粋である。
 二〇一〇年にも、『ほろにが菜時記』(株式会社ウェッジ)の、季節に主眼を置いた抜粋版が、ウェッジ選書39として刊行されている。無論のこと、こちらとの内容に、重複は一切ない。」



没後刊行本。新字・新かな。
『ほろにが菜時記』もそうでしたが、各篇の発表年月の記載がないのは残念です。


塚本邦雄 異国美味帖 01


帯文:

「フランス朝市の泥つきルバーブ、木苺に桜桃、
アルベロベッロの杏仁水にシチリアのアイスクリーム、
バスク地方のアスパラガス。
西欧の土地と
食をめぐる40篇。
馥郁たる味と香、
豊饒なる知――
極上の食随筆。」



帯背:

「極上の食随筆」


帯裏:

「トマトとアイスクリームは、イタリアのものが世界一だと、イタリア人は固く信じているようだ。自信を通り越して、これは信仰に近い。そして、たしかにイタリアのトマトはうまい。殊にローマ以南の各地のトマト、トマトに唐芥子、ピーマンに茄子を含む茄子科植物のうまさは印象的で、かつて、バーリ、アルベロベッロ、マテーラ等に旅して、一流とは言えぬ料理店で食べた、これらの野菜の味が、今も忘れられない。
(本文より)」



塚本邦雄 異国美味帖 02


目次:

アーティチョーク
ルバーブ
クレッソン
キャベツ
アスパラガス
ヨーグルト
柑橘(かんきつ)
林檎(りんご)
葡萄(ぶどう)
木苺(きいちご)
桜桃(さくらんぼ)
杏仁(きょうにん)
黒慈姑(くろぐわい)
トマト
萵苣(ちしゃ)
シャーベット
アイスクリーム
ジャスミン茶
ヒース蜂蜜
ミルテ
サフラン
オクラ
西瓜(すいか)
唐芥子(とうがらし)
南瓜(かぼちゃ)
馬鈴薯(ばれいしょ)
玉葱(たまねぎ)
アロエ
大豆(だいず)
胡麻(ごま)
菜食主義者
銀杏(ぎんなん)
棗(なつめ)

珈琲
紅茶
砂糖
バナナ
パイナップル
パッションフルーツ

跋 爽快ソフト甘味記 (塚本靑史)



塚本邦雄 異国美味帖 03



◆本書より◆


「西瓜(すいか)」より:

「西瓜が嫌いである。大嫌いで、隣々々席から漂って来る匂い(臭い)にも、食欲を喪失する。ものごころのついた頃から、かたくなにこれを拒み、五人の家族から一人だけ離れて、西瓜の饗宴の席では真桑瓜などあてがわれていた。親族に一人、母の弟にあたる人物が、ほとんど同程度の西瓜嫌悪症だったお蔭で、よその家庭よりは、かなり大っぴらに異論を主張できた。彼はおそるべき名筆であった。顔真卿(がんしんけい)をまなんでいたと記憶するが、私はその字にあこがれた。今日、妻が、私に遠慮して西瓜を食べているらしいことが、冷蔵庫にその気配を残していて、ふとあわれを催すこともあり、年に一度は昔の叔父を回想する。」


「水」より:

「水がほろ苦かったり、酸っぱかったりするのは下の下ではあるが、正直、大阪の水道の水は、朝一番にはカルキのにおいがするし、日によっては真昼でも何となくなまぐさい。自衛手段として、種々の浄化器具を水道蛇口附近にとりつける方法が流行しているが、効果が疑わしくて実行する気になれない。
 下戸である代りに、煎茶・珈琲を人並以上に愛し、殊に前者については異常なくらいその味に執念をこめるので、いきおい水にも神経過敏になる。それで、かつては水槽に汲みおいて一夜を経た水を使うことにしていた。友人は金魚じゃあるまいしと嘲笑するし、ふとした油断の隙に、蓋の間からごきぶりが墜落、すべて汚染というハプニングも勃(おこ)る。」











































































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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