フリードリヒ・グラウザー 『クロック商会』 種村季弘 訳

「しかし美男だろうが、醜男だろうが、動物たちならべつに気にはすまい?――動物たちは、二本脚どもがご同類を知っているのよりずっと人間通だ。」
(フリードリヒ・グラウザー 『クロック商会』 より)


フリードリヒ・グラウザー 
『クロック商会』 
種村季弘 訳


作品社 
1999年7月15日 初版第1刷印刷
1999年7月20日 初版第1刷発行
211p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,000円+税
装丁・コラージュ: 間村俊一

Friedrich Glauser : Krock & Co., 1937



グラウザー クロック商会 01


帯文:

「真っ赤なマニキュアにシルクのドレス、ショートヘアのモダン・ガール。
鉄屑と動物たちに囲まれて暮らす変人の自転車屋。
これみよがしの大きなダイヤをきらめかす二重顎の借金取立屋。

アルプスの寒村を脅かす金融資本の魔手
奇妙な男女が引き起こす田園殺人事件
名刑事シュトゥーダーの推理が冴えるシリーズ第2弾!」



帯背:

「名刑事シュトゥーダー
シリーズ第2弾!」



帯裏:

「クロック商会という地方規模の取立屋、だがその背後には国際的なシンジケートとしての金融資本が控えていて、汚れなきアルプスの小村はこの金融資本に汚染され、地場産業の刺繍工業まで破壊されて、その軋轢がついに殺人事件まで引き起こす。とすれば、『クロック商会』の田園殺人事件は伝来の手工業が国際金融資本の手でつぶされて行く、二〇世紀的グロバリゼーションの過程の寓話であるといえようか。――「訳者あとがき」より」


グラウザー クロック商会 02


内容:

クロック商会

訳者あとがき



グラウザー クロック商会 03



◆本書より◆


「「わたしたち二人は、刑事さん」と暗闇のなかの声はいった、「あのエルンストとわたしのことですが、二人ともこんなへんてこな人間になっちまったのは、父親にしょっちゅう殴られたからなんです。(中略)わたしたちは実直な労働者になりました――でも人前に出るのが怖かったんです。わたしは工場で働きました。(中略)でも長続きしませんでした。仲間たちにいつもかつがれて――あれは人生ってなもんじゃありませんや、刑事さん!」

「……二人兄弟――(中略)どうやら二番目のほうが兄貴より不幸で、こちらは唇を人に見られるとどもらないではいられない。――しかし美男だろうが、醜男だろうが、動物たちならべつに気にはすまい?――動物たちは、二本脚どもがご同類を知っているのよりずっと人間通だ。山羊や羊や犬どもの円陣にとらえられてシュトゥーダーはなにやら誇りのようなものを感じた……」



「訳者あとがき」より:

「しかし快癒すれば実現していたかもしれないそれらのプランは、ついに実現しなかった。モルヒネ依存は重症だった。フリードマットの病院記録によれば、患者は「ぷるぷる震え、蒼白で、瞳孔は狭く、ほとんど無反応、発汗し、食欲なく、便秘し、極度に疲労していた」という。
 入院直前のモルヒネ服用量は、日に三〇から四〇グラム。フリードマット入院十二日目の二月十五日、グラウザーは浴室で転倒して頭蓋底骨折を負う。六分間から七分間の意識不明。越えて十数日もたたない三月三日、看護人のきびしい制止を押してベッドを抜けて便所に行く。看護人が異様な物音を耳にして現場に駆けつけると、グラウザーが額の横に打撲傷を負って倒れていた。三分間の意識不明。自殺の試みの疑い。再起を望んでいるのか、それともここでピリオドを打ちたいのか。
 とまれフリードマットのインスリン教育療法は失敗に終わる。そして病院で転んだショックが、この年十二月六日の、行年四十二歳という早すぎた死の引き金になった。
 だがいずれにせよ『クロック商会』は最後から二番目のシュトゥーダー刑事物となり、難渋をきわめた『体温曲線表』と二週間の徹夜につぐ徹夜のあげくに書き上げた『シナ人』という二つの悪天候の谷間に、小春日和のようにうららかにやってきた、スイス東北部――ボーデン湖を望んでドイツ、オーストリア、リヒテンシュタインに境を接した国境の――アッペンツェル州の保養地ホテルを舞台にした作品だったのである。」



グラウザー クロック商会 04





































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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