佐々木英也 『マザッチオ ― ルネサンス絵画の創始者』

佐々木英也 
『マザッチオ
― ルネサンス絵画の
創始者』


東京大学出版会 
2001年12月18日 初版
347p 口絵・目次xxi 人名索引v 
A5判 丸背バクラム装上製本 カバー 
定価8,800円+税



本書「あとがき」より:

「本書で私が目指したのは、マザッチオの眞筆と目される壁画や板絵のすべて、またこれらとかかわり深いマゾリーノの作品をとりあげ、学問的批判と芸術作品としての鑑賞の双方の立場から追求し、その特質と規模さらには同時代や後世への寄与を明らかにすることである。当代の建築家ブルネレスキの透視図法や彫刻家ドナテッロの造形さらには百年前のジョットの絵画的成果に学んで中世以来の伝統的主題をどのような観点から捉え直し、また自身の内から溢れ出るものをどのように秩序づけ、形式的にも内面的にもフィレンツェの近代社会にふさわしい表現へと転換させていったか、追究したわけである。」


巻頭口絵図版(カラー)20点(16p)。本文中図版(モノクロ)109点。


佐々木英也 マザッチオ 01


帯文:

「ルネサンスの巨匠たちすべてが手本と仰いだという偉大な天才マザッチオ。
克明な実地調査と丹念な資料探索に基づいてその全貌を明らかにした輝かしい学問的業績が本書である。
高階秀爾」



目次:

序説 マザッチオの生涯と芸術
1 サン・ジョヴェナーレ祭壇画
2 聖アンナと聖母子
3 聖ヒエロニムスと洗礼者ヨハネ
4 ある若者の肖像
5 聖母子
6 ピサ多翼祭壇画
 6・1 キリスト磔刑
 6・2 王座の聖母子と四天使
 6・3 裳画
 6・4 マギの礼拝
 6・5 聖ペテロの磔刑
 6・6 洗礼者ヨハネの斬首
 6・7 聖ユリアヌスの両親殺害
 6・8 聖ニコラウスの善行
 6・9 聖人たち
 6・10 聖パウロ
 6・11 聖アンデレ
 6・12 聖アウグスティヌス
 6・13 聖ヒエロニムス
 6・14 カルメル会修道士(右向き)
 6・15 カルメル会修道士(左向き)
 6・16 復元問題
7 聖ユリアヌスの物語
8 デスコ・ダ・パルト(誕生盆)
9 ブランカッチ礼拝堂壁画
 9・1 誘惑
 9・2 楽園追放
 9・3 説教する聖ペテロ
 9・4 洗礼を施す聖ペテロ
 9・5 跛者の治療とタビタの蘇生
 9・6 貢の銭
 9・7 共有財産の分配とアナニアの死
 9・8 己れの影を投じて病者を癒す聖ペテロ
 9・9 テオフィルスの息子の回生と教座の聖ペテロ
 9・10 新発見の壁画
 9・11 フィリッピーノ・リッピの壁画
10 聖三位一体


参照文献
掲載図一覧
あとがき

人名索引



佐々木英也 マザッチオ 02


口絵より、右: マゾリーノ 「誘惑」/左: マザッチオ 「楽園追放」。



◆本書より◆


「序説 マザッチオの生涯と芸術」より:

「マザッチオ(本名トンマーゾ・ディ・セル・ジョヴァンニ・ディ・モーネ・カッサイ Masaccio. Tommaso di Ser Giovanni di Mone Cassai)は一四〇一年一二月二一日すなわち聖使徒トンマーゾ(トマス)の祭日にフィレンツェの東南三〇キロほどのカステル・サン・ジョヴァンニ(今日のサン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノ)に生まれた。」

「ただマザッチオがフィレンツェで誰を師として画技を学んだのか明らかでなく、いくつか推測がなされている。(中略)またヴァザーリの記述などを根拠に、のちにマザッチオときわめて親しい関係をもつマゾリーノ・ダ・パニカーレ(一三八三~一四四七頃)を師とする見方がとられたこともあったが、近年ではほぼ郷里を同じくする先輩後輩といった間柄とみなされている。」
「当時の慣習からみて誰かの工房に属していたのは確かにせよ、そのシステムに馴染まず、独力で研鑽に努めたということだろうか。(中略)ちなみにマザッチオとは本名トンマーゾの蔑称形(ペジョラティフ)である。ヴァザーリによれば彼は仕事一筋の無頓着な性格で、俗事にも自分の身なりにもまったく関心を示さず、そのためマザッチオ(きたないマーゾ)とよばれたという。」

「一四二八年前半のある時期にマザッチオはローマへと旅立つ。まるで死に急ぎするかのような行動であった。六月の末にはもはやこの世にいないからである。前年の七月にマザッチオが提出していた上記税務申告書の欄外に「彼はローマで死んだといわれる」という書き込みがあり、これが彼の死に関する唯一の記録だが、一四二九年一一月一八日より以前に付記されたということ以上はわからない。死因は不明で、あまりに突然なため毒殺説も出された。
 再びヴァザーリによればマザッチオの訃報はフィレンツェの人々に深甚な衝撃を与え、ブルネレスキは「マザッチオの死によってわれわれが失ったものはあまりに大きい」と嘆き悲しんだ。」



「2 聖アンナと聖母子」より:

「一四二四年か翌年の初めにマゾリーノ・ダ・パニカーレと共作したのがこの《聖アンナと聖母子》である。」
「「序説」で述べたように、マゾリーノとマザッチオはほぼ郷里を同じくする先輩後輩の関係にあって一四二三、二四年から親しくなったらしく、作品制作にかかわる交渉などはおそらくマゾリーノが引き受けていろいろと世話をやいたものの、ひとたび仕事にかかればマザッチオはつねに自ら信ずる道を貫き、この絵の場合のように作品としての調和を破ることも辞さなかった。これを許したマゾリーノの雅量も、讃えられなければならない。
 ではなぜこのように、さして大きからぬ絵の制作に二人の画家がかかわったか。(中略)時に臆測されるような二人のあいだのホモセクシュアルの関係を援用すれば都合のよい解釈を引き出すことができるかもしれないが、薄弱な根拠に立つ推理は控えねばなるまい。」



「9 ブランカッチ礼拝堂壁画」より:

「背景の建物に目を近づけてみると、植木鉢や洗濯物、鳥籠や二匹の猿、あるいは窓越しに語り合う主婦らが即興的ともいうべき軽快なタッチで描出され、広場に立ったり椅子に坐ったりする人々の計算のゆき届いた布置や親密感に富む物腰とあいまって当代の庶民の日常の一齣をまざまざと再現、今日のフィレンツェの下町の情景と直ちに結びつくばかりか、人間生活の永続性を語る「言葉」と化している。」


masolino-wikimedia.jpg


Wikimedia より。





































































































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難破した人々の為に。

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趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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