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唐十郎 『安寿子の靴』

「自分は子供の時から、暗がりに座ると落ちつくところがあり、押し入れの中とか、外で遊べば、大きな木の洞(ほら)はないものかと思ったもんだから。」
(唐十郎 「伸子の帰る家」 より)


唐十郎 『安寿子の靴』

文藝春秋 昭和59年10月15日第1刷
259p 初出一覧1p 四六判 丸背紙装上製本 カバー 定価1,200円
装画: 合田佐和子



唐十郎創作短篇集『安寿子(やすこ)の靴』。本書収録作のうち、「感傷鬼」の埋めた少年時代の日記を取り戻しにいくテーマと、「安寿子の靴」の押入れのなかにある死んだ女の人が残した紅い靴のモチーフは、ほぼ同時期に書かれた長篇小説『マウント・サタン』に取り入れられています。


安寿子の靴1


帯文:

「生きるために別れた二人…
名も名乗らぬ少女と十五歳の少年。片方だけの赤い靴をめぐり京都をさまよう二人に昔話を重ねた現代の「安寿と厨子王」ほか秀作七篇を収録」



安寿子の靴2


目次(および初出):

伸子の帰る家 (「文学界」 昭和58年3月号)
愛咬 (「小説宝石」 昭和58年10月号)
スッポンポン (「小説現代」 昭和58年6月号)
感傷鬼 (「文学界」 昭和58年12月号)
水陸両用の女 (「オール読物」 昭和59年8月号)
片腕 (「文学界」 昭和58年6月号)
便利屋 (「小説現代」 昭和59年9月号)
安寿子の靴 (「小説現代」 昭和59年4月号)



「安寿子の靴」より:

「名も言わないこの九歳の少女に会ったのは昨日のことだった。
川面の光りも、急に春めいた京都鴨川を、ズボンの裾をはしょって渡って来た時、対岸の出町柳(でまちやなぎ)三角州(さんかくす)から、からかうような鏡の反射が、十子雄の顔に照りつけられた。いつもは橋を渡るのだが、急ぎで対岸に向かう時は、そうして膝頭までしかない水の流れを横切ってゆく十子雄であった。鏡の反射で目くらましになった時は、丁度、川の中程で、しつっこい照り返しに手をかざした時、苔石に足が滑った。水に腰まで浸(つか)って、三角州を見上げると、芝生を這って逃げる小さな女の後ろ姿が見えたが、ずぶ濡れで岸にたどり着くと、鏡を隠した者は、まだいたいけな少女で、別に咎める気もしなかった。
この少女と再会したのは、それから一時間後のゲームセンターの中だった。百円硬貨を何枚か入れてコインを出す変換機に、十子雄が針金の細工を凝らしていた時、硝子窓を通して、いかさまを覗く少女と目が合った。偶然としか思わなかったが、只で出したコインでゲームに打ち興じている時、十子雄の真似をして、マッチ棒でコインを出そうとしている少女が、係員に捕まった。「こんなこと、誰から教わった」と衿首引っ捕まえられた少女は、すかさず十子雄を指さし、「助けて、お兄ちゃん」と喚いた。」
























































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

すきなことば: 「だれもいない」「ギブアウェイ」「ウポポイ」「隠密」
きらいなことば: 「人と人とのつながり」「キャリアアップ」「ほぼほぼ」「三密」

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歴史における自閉症の役割。

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