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クラウス・ヴァーゲンバハ 『フランツ・カフカ』 (塚越敏 訳)

クラウス・ヴァーゲンバハ 
『フランツ・カフカ』 
塚越敏 訳

ロ・ロ・ロ・モノグラフィー叢書

理想社 1967年6月15日第1刷発行
183p 索引9p 
17.8×12.4cm 角背紙装上製本 カバー ビニールカバー 定価480円
Klaus Wagenbach : Franz Kafka, 1964



そういうわけで独ローヴォルト社の「ロ・ロ・ロ・モノグラフィー叢書」の日本版です。
本文は二段組。本文中図版(モノクロ)多数。
著者のヴァーゲンバッハは、『若き日のカフカ』やカフカ写真集などの著書で知られる篤実なカフカ研究家であり、出版者です。


カフカ1


カフカ2


カフカ3


目次:

日本の読者に (ロ・ロ・ロ・モノグラフィー叢書編集者クルト・クーゼンベルク)

作家と死後の名声
両親の家と幼年時代
プラハ旧市街の皇室=王室-高等学校
大学時代、プラハの環境、言語
「労働者災害保険局」、友人、計画、旅行
一九一二年
二つの婚約、『訴訟』
チューラウ、三度目の婚約、基本図柄
ミレーナ、『城』、ベルリン

年譜
証言
 ローベルト・ムシル
 クルト・トゥホルスキ
 アルベール・カミュ
 アンドレ・ジッド
 ヘルマン・ヘッセ
 ライナー・マリーア・リルケ
 トーマス・マン
 アルフレート・デーブリーン
 ミレーナ・イェセンスカー
文献
索引
 人名索引
 作品索引



カフカ4


カフカ5


本書より:

「フランツ・カフカの生涯には、二〇世紀作家のおおくの伝記を決定づけている運命の絶えざる盛衰というものはみられない。居を移すとか遠い旅にでるとかいうこともないし、いっぱんに教養体験とかいわれているような体験もなければ、同僚との偉大な邂逅というものもない(中略)。文学上の討論にちょくせつ参加することはしなかった。せいぜい無口の控え目な聞き手といったところで、原稿を依頼されると雑誌や出版社に送るだけ、交際も数人の友人だけに限っていた。(中略)一八八三年七月三日プラハに生まれた。カフカは故郷の都会を離れることもごく稀で(中略)四十一年の短かな生涯を送ったのち、プラハにあるシュトラシュニッツ墓地に埋葬された。法律家としての十四年間、カフカはプラハの「ボヘミア王国=労働者災害保険局」のために働いたのだったが、晩がたと夜なかの「なぐり書き」を「ただ唯一の願い」としていたのだった。
このプラハのユダヤ人の「勤務時間」外にできた散文は、ここ十年のうちに世界的に有名となった。二十年代にはドイツ文学の専門家たちの小さなサークルからでて、カフカの散文はとくべつフランスにおいて、はじめはアンドレ・ブルトンと「ミノトール」のグループによって、後にはカミュやサルトルによって採掘され、ついにはイギリスやアメリカにまで浸透した。一九五〇年になってはじめて、彼の作品はドイツに「戻って」きた。つづく数年のうちに「公の」全集ドイツ版がはじめて出版された。(中略)この作家の死後四十年たってはじめて――いや、それとも「もう」というべきだろうか?――彼の作品は全世界にその読者をもっている、ということができる。」



カフカ6


労働者災害保険局員としてのカフカの仕事。「木材用鉋(かんな)機」に「円形安全回転軸」を採用するよう推挙している。

本書より、カフカ自身による説明:

「図は保護技術という点からみた方形回転軸と円形回転軸との差異を示している。方形回転軸の刃(図版1)は、ねじで直接に回転軸に固定されていて、刃物をむきだしのまま毎分三千八百回ないし四千回回転する。刃のついた回転軸と作業台の面との間隔はおおきく、労働者に生ずる危険は実に顕著である。従ってこの回転軸で働く労働者は、おそらくはさらに増大する危険を知らずして働いていたか、それとも避けられない絶えざる危険を意識して働いていたかそのいずれかである。非常に用心深い労働者ならば、作業にあたって、つまり木材を鉋の刃先にもっていくとき、指関節を木材の先へださないよう注意することもできたであろう。しかしどんなに用心しても、最大の危険はどうにもならない。もっとも用心深い労働者ですら、労働者が一方の手で鉋をかける木材を作業台に押しつけ、他方の手でこれを刃の回転軸のほうへ動かすとき、木材が滑り落ちたり、よくありがちなことだが、木材が弾ねかえったりして、どうしても手を刃の間隙のなかに落してしまうということになった。木材がこのようにもちあがったり、弾ねかえったりすることは、予見することも、阻止することもできなかった。つまり、このことは、木材のどこかが奇形であったり、節があったり、また刃の回転速度が遅かったり、刃の位置が悪かったり、また手の圧力が平均に木材にかかっていなかったりした場合にはかならず起きることであった。しかし、こうした災害が起これば、必ず指の二、三本、いや指全部が切り落されることになった(図版2)。
ところでこの危険にたいしては、どんな注意規則も、またどんな保護装置も役立たないようであった。その装置が完全なものとはいえなかったが、一方では危険度をすくなくするものの(刃の間隙をブリキの保護板で自動的に覆うてしまうか、刃の間隙を少なくするかしてであるが)、他方では危険度を(つまり、その装置によって鉋屑の落ちる空(あ)きが充分でなくなり、刃の間隙が詰まって、鉋屑を取りだそうとすれば、指を怪我することにもなりがちなので)高めることになったからである。
図版4にみられる円形回転軸はこの方形回転軸にたいする安全回転軸なのである。
この回転軸の刃は揚げ蓋と、ないしは凹字形楔と回転軸の堅牢な胴体との間に完全に保護されて埋められている……
しかし保護技術という点からみてもっとも大事なことは、刃物のただ刃だけがでていることと、こうした刃は回転軸にしっかりと結合していることからして、非常に薄くても破損の危険がないということである。
上述の装置によって、方形回転軸の間隙に指が落ちやすいという可能性は防げるし、他方、指が間隙に落ちた場合ですら、損傷をうけるにしても大したことはなく、仕事を中絶するような結果とはならない掠(かす)り傷ですむということになる(図版7)」



カフカ7


カフカ8


カフカ9


最後に、本叢書の日本語版のための前書き「日本の読者に」が、たいへん六〇年代的な文章で泣かせるので、一部引用しておきたく思います。

「これらの人たちの生涯と作品はいつも調和あるものとはかぎらなかったから、時には緊張と不調和の渦にまきこまれたが、それはおそらく創造的な力を生みだすためには必要なものであったろう。尋常でない人たちの存在はしばしば日常的なものでないことがある。大切なことは、社会に安易に調和することではなくて、自己実現であり、円現(エンテレヒー)である。要するに、有能な人間というものは、運命によって自分に課せられた使命を実現する時にあたって、周囲の世界と調和を保つにしろ、周囲の世界に対立するにしろ、その存在というものからどのような成果を創造しうるものであるかということを、読者のみなさんはこの叢書を通じて読みとることであろう。」

そしてたとえばこの叢書の日本版で紹介された人物は、ホーフマンスタールとか、ヘルダーリンとかカザノヴァ、そしてサドだったりしたわけです。



こちらもご参照下さい:
ローター・フィッシャー 『マックス・エルンスト』 (宮下誠 訳)



































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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