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『タルホ事典』

「しかしなんやね、きのうも言うたけど、みんな「人間」というものを考えすぎやね。そんなもんはありませんよ。「人間」などというから わけがわからんようになる。一片のブリキ細工、一個の人形でいいじゃないか、と言いたくなる。「人間」を知った時に、終りですよ。だから僕は自分が人間だなどと思ったことはありませんよ。」
(稲垣足穂・松岡正剛 「タルホニウム放射圏」 より)


『タルホ事典』

潮出版社 
昭和50年10月10日 初版
平成1年6月20日 5刷
592p+190p 
口絵(カラー)2p 図版(モノクロ)4p 
四六判 丸背紙装上製本 貼函 
定価4,200円(本体4,078円)
装幀・装画: まりの・るうにい



本書は、潮出版社版『稲垣足穂作品集』の「別冊」として刊行されました。
本書巻末「タルホ=セイゴオ・マニュアル」は、タルホ作品からの引用および図版を交えた189頁におよぶタルホ入門。この部分以降はスミレ色――というかモーヴ色の用紙です。


タルホ事典 01


帯文:

「怖るべきタルホニウム放射圏への誘い
芥川龍之介、江戸川乱歩から三島由紀夫、五木寛之に至る
50余名が織りなす「稲垣足穂論」の壮大なカレードスコープ。

常識を破る作家論 松岡正剛「タルホ=セイゴオ・マニュアル」

11人による書下ろしタルホ論
詳細なタルホ年譜・完璧な作品年譜」



タルホ事典 03


帯背:

「稲垣足穂の世界を
あますところなく
伝える
画期的オムニバス」



タルホ事典 02


帯裏:

「タルホ・コスモスをとりまいた50余名の共振者群」


タルホ事典 04

表紙。


タルホ事典 05


目次:

口絵
 新婚旅行
 明方の誘惑


Ⅰ タルホ拾遺
 まずこの四つ
 この機会に
 唯美主義の回顧――辻潤、谷崎潤一郎両先輩を中心として
 蜷の区域
 ダンセーニ卿の「酒壜天国」
 一女性からの書簡
 酒につままれた話――私がいちばん飲んだ日
 ウオぎらい――わが家の夕めし
 狂気か死にまで行くべし――私の酒歴書
 平和の鷹が平和の天使を悦楽の園へ導く
 少年自身
 最近の来信
 キャプテン・カポロを送る

 
Ⅱ 対談
 E氏との一夕 (江戸川乱歩)
 祗園閑談 (吉田一穂/司会: 加藤郁乎)
 エロス・愛・死 (瀬戸内晴美)
 わが思索のあと (小潟昭夫)
 男は闘うべし (平岡正明)
 輪廻思想をめぐって (松山俊太郎)
 われらいずこの門に立とうとも (森敦)

 
Ⅲ 稲垣足穂の世界
 イタガキさんとニシガキさん (伊藤整)
 稲垣足穂と江戸川乱歩 (宇野浩二)
 悪魔学の魅力 (西脇順三郎)
 萩原朔太郎と稲垣足穂 (江戸川乱歩)
 丸山薰と衣巻省三 (萩原朔太郎)
 稲垣足穂と梁雅子/女性より見たる「男性文学」の可能性 (山本浅子)
 稲垣氏の「蘆の都」 (江藤淳)
 首吊り男/消えた人 (伊達得夫)
 異端者の系譜 (塚本邦雄)
 バッカスは惑星にのって (瀬戸内晴美)
 稲垣足穂 (三島由紀夫)
 変な連想 (飯沢匡)
 無限デルタの構想 (宗谷真爾)
 火星より土星の方が高級である (草下英明)
 僕のタルホ/同人スケッチ (亀山巌)
 タルホやその周辺 (藤井重夫)
 美少年誘拐魔足穂大菩薩あるいはホムンクルス製造法 (種村季弘)
 『少年愛の美学』/『僕のユリーカ』『東京遁走曲』/『ヒコーキ野郎たち』 (澁澤龍彦)
 奇想片々/『ヴァニラとマニラ』 (出口裕弘)
 聖タルホのいざない/タルホの空 (加藤郁乎)
 模型世界と微粒子 (中村宏)
 稲垣足穂をめぐって/A感覚の生理構造 (笠井叡)
 足穂曼荼羅 (常住郷太郎)
 稲垣さんと私 (高橋睦郎)
 『コリントン卿登場』 (川仁宏)
 強烈な文学的否定精神 (三枝和子)
 足穂空想空間の倫理性 (中野美代子)
 大気圏に突入する空中飛行者 (田中美代子)
 タルホ式飛行の夢を探る (ゆりはじめ)
 〈対談〉タルホ文学の迷路 (種村季弘×松山俊太郎)
 酒仙作家・稲垣足穂の妻として/奇人といわれる足穂との愛情生活/酒を呪う (稲垣志代)
 資料 Ⅰ
  芥川龍之介、室生犀星、武田泰淳、佐藤春夫
 資料 II
  ファンシイ・マッチ (中井英夫)
  〈文明〉の横顔 (五木寛之)
  エテルヌス・タルホ (澁澤龍彦)
  対談「意識・革命・宇宙」(抜粋) (埴谷雄高・吉本隆明)

 
Ⅳ 書き下ろし作家論
 攪乱された彗星軌道 (相澤啓三)
 夜毎の「蝋人形」 (高柳重信)
 ヒコーキの本 (田中小実昌)
 月への偏執によって結ばれた二つの精神 (谷川晃一)
 早大戸塚グランド坂時代 (萩原幸子)
 それでも飛行機は飛ぶしかしらないだろう (山野浩一)
 タルホとダンセイニ (荒俣宏)
 月光都市・神戸 (西岡武良)
 私のタルホ先生 (窪田般彌)
 男性のなかの男性 (笠井久子)
 緑星暦 (斎藤慎爾)
 
Ⅴ 多留保集作品年譜 (松村實)

 
Ⅵ 稲垣足穂年譜 (高橋康雄 編)
 
Ⅶ タルホ=セイゴオ・マニュアル (松岡正剛)
 或るアナキスム
 宇宙意志
 石膏細工のエルサレム模型
 AO円筒
 量子定数による混乱
 董色反応
 機械の密林
 ミンコフスキー四十五度街
 異物の図形配置
 クナーベンリーベ
 彗星夢
 死の倫理学
 タルホニウム放射圏
 植物的精神生活
 もうひとつの時間流
 タルホ・パトグラフィ
 彌勒におけるミクロとマクロ
 絶対少年
 文章文体命題
 薄板界
 機械学宣言
 パル・シティ
 須弥山的数論
 輪廻の悪夢
 Qあるいはダッシュの美学
 予告篇
 無のスペクトル
 危険と乗物
 前半球への郷愁
 二十一世紀鹿行派
 葉書
 ヰタ・マキニカリス
 歯科医と時計屋
 超鉱物主義
 飛行する天狗
 月は今夜もぶらさがっている
 スカートを穿いた抽象派
 双曲線に乗って
 対消滅――タルホ批判の批判
 電気冷蔵庫の中
 気配の函数
 男と男
 黒板に描いた宇宙論
 星と半円劇場
 サド侯爵とライト兄弟
 街の問題
 前物質・後物質
 プロペラの廻る音
 イソギンチャクの夢


編集を終えて (高橋康雄)


タルホ事典 06


タルホ事典 07


タルホ事典 08



◆本書より◆


瀬戸内晴美(寂聴)との対談より:

瀬戸内 私が初めてうかがったのは桃山の夫人寮にいらっしゃる時でした。窓の所にちいちゃなお机があって、その前から先生とパッと振り向かれて、「おはいり」と言ってくだすったんですけども、あとで奥さまにうかがったら、きらいな人が来ると、あの机をピョンと飛び越えて、そのまま窓から逃げて行ってしまうということでして……。(笑)
稲垣 窓から逃げるということありませんけど、てれくさいから姿くらますというようなことがあったかもしれませんね。
瀬戸内 好ききらいがとてもお強いでしょう、先生は。
稲垣 そうでしょうね。子どものままのとこが残っているんでしょうね。」
稲垣 すべての芸術、ことに文学なんかは、子どもの心の、幼心の完成じゃないでしょうか。それの発展ですね。それがやっぱりほんものだと思いますな。」



松山俊太郎との対談より:

稲垣 笠井叡という人がいますね。あれは昆虫の申し子みたいなところがありますね。この間ちょっと読んだんだけれども、種村が「星は回し者だ」ということを書いていますね。僕はひじょうに共鳴しました。天体からの支配――間諜だというんだ。あれはおもしろいね。鉱物はみなそうですよ。これは天体からの間諜――斥候ですよ。
 その次は虫ですね。カブト虫なんか……、あれは妙なやつですね。それを機械にまねしたのが時計の秒針。あれは虫みたいでしょう。じっとしているかと思うと、動いている。
松山 なるほど、なるほど。私は男というのは昆虫の亡霊だという考えに、二十年ぐらい前からとりつかれているんですよ。
稲垣 ほう、とにかく昆虫というのは変なやつだね。おもしろいものですね。おそろしいみたいなところもあるし、妙なものだな。
 植物では竹ですね。これは木じゃないでしょう、草じゃないでしょう。竹は竹ですよ。(中略)だけど、そういう変なやつがおもしろいですよ。
 たとえば、仏教の学者はたくさんおるけれども、それはだいたいノート屋さんばっかりであって、わかった人というと異端者ですね、キリスト教でも。その辺がおもしろいね。(中略)静寂派――クエッティズムというのがあるでしょう。八坂の祇園院とか、あんな異端者がおもしろいですね。ほんとうに人間がひらめいているからでしょうね。坊さんの中にはずいぶん変わった人がいるでしょう。明恵上人とかいう人がいますね。おかゆがうま過ぎるといってよくひしゃくで水を入れて食べた。」

松山 話は違いますが、湯川秀樹さんなんかは、理論物理学をやっていながら荘子が好きだそうですね。
稲垣 ぼくは湯川さん大きらいです。(中略)湯川なんかはったり屋ですよ。あのおしゃべりがいけません。(中略)ハイリッヒ・ベルクとか、ボーアみたいなきびしいものがないね。
松山 先生はああいう学者のいろんなエピソードでも何でも、ずいぶんお書きになっていらっしゃいますけど、もちろん翻訳はないわけだし、あれはみんな原書で……。
稲垣 こしらえるんですよ。いいかげんなものです。わからなかったらいいかげんなやつをこしらえるんです。
松山 でも最初は、たとえば東京にいらっしゃったときは、図書館とか資料館で……。
稲垣 そんなものに行きません、本が大きらいやから。いまぼくが持っているのは、『広辞苑』一冊だけです。うるさいんですよ、本が。
 新聞を見ても腹が立ちます。ようこんなくずばっかり集めたと思うわ。本なんて要らんですよ。本を読まなきゃならんような弱い仕事してないとぼくは言いたい。」



高柳重信「夜毎の「蝋人形」」より:

「そのときの僕は、すでに稲垣足穂氏の本を二冊もっていた。一冊は枡型に近い瀟洒な感じの『一千一秒物語』で、もう一冊は、いま書名を忘れてしまったが、それより少し厚くて少し小型の本で「無何有から来た人」などと言う口絵があったと思う。いずれも古本屋の書棚から見つけ出したもので、次第に月の光が濃くなってくる黄昏どきの不思議な情感や、あるいは人知れず地上に降りてくる星などについて書かれていたが、どこへでも軍人が顔を出して威圧的なことをいう疎ましい時代に読むには、なんとも奇妙な懐かしさを思わせる本だった。
 なかでも、透きとおって見える板硝子にもかならず青い断面があるように、薄ぐらい黄昏どきの空気には、そのどこかに不思議な隙間のようなものがあって、そこから不意に別次元の世界へ吸い込まれてしまうことだってあり得るのだという話には、いたく心ひかれた。」



タルホ事典 09

























































































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Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

すきなことば: 「だれもいない」「ギブアウェイ」「ウポポイ」「隠密」
きらいなことば: 「人と人とのつながり」「キャリアアップ」「ほぼほぼ」「三密」

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歴史における自閉症の役割。

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